ドバイ航空ショーに出席したロシア連邦軍事技術協力局長のシュガエフ氏は「トルコへの技術移転について協議が始まっており、S-400を構成するシステムの一部をトルコで生産する」と明かした。
参考:Turkey to produce parts for Russian S-400 missile system
ロシアの狙いはトルコとインドを利用して米国を自滅させるか、対ロシア制裁自体を骨抜きにすること
トルコは時代遅れの防空システム(MIM-23ホークやレイピアなど)を更新するという目的と将来的に高度な防空システムを国産するという計画を達成するため、オバマ政権時代に技術移転や共同生産を含むパトリオット導入交渉を行ったが合意に至らず、トルコ側の要求に応じたロシアからS-400を導入することになった。
すでにトルコは発注済みのS-400を受け取っており追加発注を行うかに注目が集まっているのだが、ドバイ航空ショーに出席したロシア連邦軍事技術協力局長のシュガエフ氏は「トルコへの技術移転について協議が始まっており、S-400を構成するシステムの一部をトルコで生産する」と明かしており、ロシアは約束通りトルコにS-400の技術移転や共同生産を行うという意味だ。
勿論ロシアが約束を履行するのは「契約を守るため」という側面もあるが、トルコのS-400追加導入や米国の対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)に屈しない態度を引き出すためのもので、インドへのS-400引き渡しと合わせて米国に「対ロシア制裁を原則通り発動するのか?矛盾に満ちて自身の首を締めるだけの対ロシア制裁を放棄するのか?」を決断するよう圧力を加えているのだろう。
特にトルコはS-400導入を理由にF-35プログラムから追放された補償を要求しており、バイデン政権はF-16V売却を提案しているものの議会が反対(ギリシャ系やアルメニア系の団体がトルコへのF-16V売却に反対するロビー活動を展開中)しているため実行に移されるか非常に微妙な状況で、トルコは「米国がF-16V売却に応じなければロシアから戦闘機を導入する」と匂わせているためロシアとしては米議会を怒らせる=F-16V売却を承認しない方向に持っていくため「S-400の技術移転や共同生産を行う」とわざわざドバイ航空ショーで発表したのかもしれない。
余談だがトルコはロシアとは別に仏伊とSAMP/Tベースの新しい防空システム(弾道ミサイル、ステルス機、UAV、巡航ミサイルの脅威に対抗できるものとMBDAは説明している)を共同で開発・生産することに合意、これを実行に移すための協議も始まっている。
果たしてトルコの本命は何処にあるのか不明だが、ロシアはトルコとインドを利用して米国を自滅(ロシアや中国に対抗するため不可欠な友好国との信頼性を破壊する)させるか、制裁自体を骨抜き(インドを特別扱いすれば制裁の整合性が破綻する)にさせることを狙っていることだけは確かで、もうすぐその結果を我々は目にすることになるのだろう。
関連記事:トルコ、フランス、イタリアが弾道ミサイルやステルス機に対応した防空システム開発で協力
関連記事:米国によるインドへの制裁発動が目前、ロシアがインドへのS-400引き渡しを開始
※アイキャッチ画像の出典:vitaly kuzmin / CC BY-SA 4.0
チェスの名人にロシア人が多いけど、権謀術数に長けた国民性なのかな?
全てがプーチンの発想では無いだろうが、メインの対米戦略に沿った戦術を提案できる優秀なスタッフがいるのだろう。
政権交代で主要スタッフが入れ替る米国は大丈夫か?
アメリカも何でこんな法律作っちまったんだろうって頭抱えてそう
自国(アメリカ)の影響力を過大評価していたのか、それともCAATSAを署名した大統領によってアメリカの影響力が低下したのか…。
昔のアメリカはほぼ全ての軍事技術の最先端を行っていたから「最先端を求める=アメリカのところに来る」という前提条件で考え、自分らの兵器が旧式扱いされる時代が来ることを想定していなかったんだろ
こないだ代理戦争してたとは思えん間柄だなぁ。
s-400側の技術流出にはならんのかなぁ?
ロシアにはもう最新型(S-500)があるし、運用国が増えて問題点や改善点が見つかれば、修正ができて性能を向上させることもできる。
国内だけで運用していると、問題点や改善点が無視される場合があるからね。
ちょっと前に、中国にS-400にカタログスペックは過大評価と言われたと思ったら、すぐに現地生産か。
制裁の原因になった、S400のレーダにF35がどう映るかわからないまま、コモディティ化とは恐ろしい限りだな。
ロシアは、面白いくらいアメリカが謀略に引っかかってくれると思ってんじゃないか。
米帝時代の終焉かな?
すでにアメリカにおける先端兵器の一部性能は他国に後れをとっているからね
数も中国に押されだしているし
やっとUAV関連で動き出したな。
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外交が戦略だとしたら兵器技術は戦術だよ。逆ではない
その戦略と戦術をうまく使いこなして、アメリカを外交的敗北に陥らせたんだから、立派なもんでしょ。
2015年に領空侵犯したロシアのSu-24Mをトルコが撃墜した時、アメリカが最後までトルコの肩をもっていたらトルコはロシアに接近して無かったかもな。
しかし見れば見るほどデカいミサイルだなS-400
こんな弾道ミサイルみたいな巨大ミサイルで航空機を撃つのか
空対空ミサイルとは違って地対空ミサイルは初速も位置エネルギーもないから大出力エンジンと大量の燃料でそれを補う必要があり、大型化するのは仕方がない
ここまで来たら、アメリカから見ればトルコも敵に見えつつあるのでは。少なくとも双方脅しをかけたわけだから、歩み寄るのは厳しそう。
でもそれするとNATO内で混乱するから、アメリカがトルコと折り合いつけなきゃ、今度はヨーロッパがアメリカを排除しにかかるから、苦しいんじゃないか。
ロシアはヨーロッパロシアからロシア沿海州までの広大な領土を持つ。
民族も多種多様、勿論宗教もだ。
ユーラシア大陸と言っても多くの人には具体的な感覚はないがプ-チンは持っているようだ。
ロシアがトルコとイランとインドと協力するのは自然な成り行き。
異常なのはアメリカ・イギリス・フランスの欧米列強諸国が政治的な介入を彼らに対して止めないことだ。
自由と民主主義とは便利な言葉だ。
最近プーチンの講演会の話を読ましてもらった。
日本の政治家ではこの種の話はできない。
プーチンは本当に真面目な人だね。
政治家より思想家に近い。
ロシアに起こった共産主義・独ソ戦の残酷な結末にも言及しているが誰かを責めている訳でもない。
韓国のこれでもかという日本に対する嫌がらせと比較すると面白い。
逆だろ、っていうのがつい最近までの見立てだった気がするが、地球温暖化で無理に不凍港や温暖な土地を取りに行く必要がなくなったから、そしたら別にトルコと関係を悪化させる理由もないんだろうな。
ロシアもいつまでこういうことが出来るか分らんがなw
地対空ミサイルに関しては冷戦時代からアメリカの高高度偵察機の対策として研究し続けてきたロシアのほうがデータも実績も多いから、そう簡単にロシアの地対空ミサイルを上回るのを作れる国は出てこないんじゃないかな
米国はそりゃ困るだろうけど
中国はもっと困るかもしれない
日本にこっそり資料渡してくれれば魔改造しますよ
日本は勉強させていただく側だぞ