ロシア関連

ロシア国防相はクリンキー掃討が完了したと発表、ウクライナ軍は即否定

ロシアのショイグ国防相は20日「ドニエプル川左岸のクリンキー掃討を完了した」と発表、ウクライナ軍は直ぐ「(クリンキーの掃討完了は)現実と一致していない。左岸の陣地を保持して敵に大きな損害を与えている」と否定した。

参考:ВС России полностью зачистили территорию в Крынках в Херсонской области
参考:В ОК “Юг” опровергли заявление Шойгу о захвате плацдарма на левом берегу Днепра

もう「国旗を掲げる映像を出してきた方」が真実を語っていると認めるしかない

ショイグ国防相は「ドニエプル川左岸のウクライナ軍はペレコプへの突破を任務としていた」「当然敵はクリミアの西海岸からも侵入しようとしていた」「ウクライナ軍はクリンキーだけで1,820人の兵士を失った」「クリンキーにおける掃討作業は完全に終わったものの地下には多くの人が隠れている」「我々は『彼らが泣きながら退避を求めてきた』という事実を考慮して投降を呼びかけている」と明かし、ヘルソン州占領地域の知事を務めるウラジーミル・サルド氏も「敵が完全にクリンキーから排除されたと確認した」と述べた。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍南部司令部は直ぐ「敵指導部はドニエプル川左岸の橋頭堡掃討を宣言したが、我々はこの情報が現実と一致していないと公式に通知する。左岸の陣地を保持し続けて敵に大きな損害を与えている」と述べ、ショイグ国防相の発表は「事実の改ざん=プロパガンダ」と主張している。

ウクライナ軍はクリンキー上陸から約4ヶ月間「橋頭堡を維持している」「橋頭堡を拡大させている」「敵に損害を与えている」と定期的に発表し続けてきたが、これを裏付ける観測者の報告や視覚的証拠をほぼ見たことがなく、ウクライナメディアや海外メディアが報じる「ドニエプル川左岸の作戦状況」も加味すると「ショイグ国防相の発表がプロパガンダだ」と強く否定できない。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ウクライナはアウディーイウカ陥落の影響を受けている時期なので「プロパガンダを仕掛ける絶好のタイミング」とも考えられるが、もう「国旗を掲げる映像を出してきた方」が真実を語っていると認めるしかない。

追記:ヘルソン州占領地域の知事を務めるウラジーミル・サルド氏は「クリンキーでロシア国旗を掲げる動画」を公開した。

これがクリンキーの何処で撮影されたのかは今のところ不明で、まだウクライナ側の反応は出ていない。

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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России

ギリシヤがレオパルト1A5のアップグレードを検討中、EODHが改修案を提出前のページ

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コメント

    • 歴史と貧困
    • 2024年 2月 21日

    >「国旗を掲げる映像を出してきた方」が真実を語っていると認めるしかない
    残念ながら、そうしたら今度はウクライナ兵が「国旗を掲げる映像」を撮るためだけに無理な作戦をさせられるだけなのでしょうね。

    翌日にロシア兵にウクライナ国旗が降ろされた例がゴルロフカ近郊でもありましたが、結局、キエフの大本営発表気質が改善されない限りはどうにもならない。

    ザルジニー総司令官を更迭したり、ポーランドとの国境を自分達で封鎖し始めたことといい、キエフの指導部はもう支離滅裂になっている。支援が遅いとアメリカにも噛み付き始めたようですし。

    このような劣悪な政権を“民主主義の守護者”などと持ち上げたのが、欧米の間違いだったようです。

    別記事より
    ウクライナのクレバ外相はCNNに対し、米議会が大規模な支援策を承認し、ウクライナが米国から兵器の供給を受けていれば、アブデーフカは陥落しなかったとし、米国を非難。「ロシアは一時停止も撤退も視野にない。アブデーフカ制圧後は間違いなく別の都市に対する攻撃を始める」と語った。

    37
      • kitty
      • 2024年 2月 21日

      何気にスマホは戦争を変えたような気がします。
      自衛隊の基地でもwifiが使えるかどうかで士気が違うとも聞きました。

      16
      • たむごん
      • 2024年 2月 21日

      プロパガンダの自家中毒、どなたかが指摘していましたが、そうなっているのかもしれませんね。

      アメリカにすら嚙みつくようでは、かなり厳しく、感謝や見返りを期待して何かを与えてあげるべきではないなと。

      自国民が不満を感じない範囲、貸した金・物をあげるくらいに思える範囲、喜捨として割り切れる付き合いにすべきと考えています。

      14
    • 傍観者
    • 2024年 2月 21日

    河口地域で長期間作戦が続く。橋頭保の確保は重要だが攻勢作戦が前提のはずだ。ウクライナ軍は有利な位置まで後退して防御を行うという雰囲気を出しているがどうもいう事とやる事に矛盾があるようだ。露軍の撤退作戦とは真逆だ。不利だったら、さっさと引くのが兵法の基本のはずだ。ウクライナ軍の作戦指導は硬直しすぎていて柔軟性が失われている。ゼレンスキーがクリミヤを目指すとか大言壮語を並べるためだけに兵士を死なせているようではウクライナ軍は長くはもつまい。

    31
    • kame
    • 2024年 2月 21日

     前回の国境封鎖も含めると最近のウクライナは四面楚歌状態に陥っているようですね。私個人は開戦初期からのゼレンスキー政権の猛々しい(人によっては図々しい?)支援要請にうんざりとしていた口なので、欧州にも似たような感情を抱く人たちもいたという事の現れなのかもしれません。
     ドニプロ川近くでの攻防に関しては、管理人さんの仰っているように映像証拠なりが出ないと真相は不明でしょう。ただ、個人的にホイホイと撤退できる状況なのか?という疑問はあります。あれだけウクライナ側から渡ってくるのに苦労していたのに、ロシア軍の攻勢が強まったので、後退しますと言っても、結局は行きも帰りも同じように川を渡る必要があるわけで、難易度は変わらないでしょう。
     完全にウクライナ軍が排除されてはいないが、撤退も出来ずにいるだけで、残り少ない兵士と装備で抵抗しているのをロシア軍が投降させようとしている、というの妥当なラインでしょうかね。

    24
    • Easy
    • 2024年 2月 21日

    シルスキー将軍の指揮下になってようやく戦線整理が始まり。
    ここも保持するのは無意味なので放棄が決定したのだと思いますが、どう見ても撤退が間に合ってませんね。
    ボートで帰るしかないんですが、来る途中でドローンや各種砲撃に狙われているのに,さらに生き残って到達し、待機して兵員を探し出して載せ、そして同じ道を帰らねばなりません。歩けばなんとかなったアウディーウカ撤退の数倍の難易度です。
    ここでこの戦場の興味深い側面があり。
    現在クリンキーに潜伏して、来るかどうかも分からない救出を待っているウクライナの兵士たちは、同時にスターリンクを使ってネットで最新ニュースが手に入ります。そのため,ウクライナ国軍側は兵士が残っているのに「撤退した」とは言えないんですね。兵士本人が聞いてますので。
    アウディーウカでも起きたことですが、兵士が見捨てられたと感じると、ネットで大暴れするんですよ。自分の家族に電話をかけ、SNSで惨状を訴え、ブログを更新し、国内外の新聞社にコンタクトをとり。
    不都合な真実を大々的にオープンにしてしまうんですね。
    これはこの戦争がもたらした面白い現象です。孤立して包囲された兵隊が、情報的には孤立しておらずネットで実況を始める世界が来てしまったんですね。

    46
      • たむごん
      • 2024年 2月 21日

      ご指摘、勉強になります。
      情報リークが金銭目的ではなく、サボタージュに近い性格のものを感じますね。

      コメント欄でどなたかが指摘されていましたが、スマホの電波が繋がっている事が、兵士の士気を繋いでいるという指摘を思い出しました。

      9
    • 暇な人
    • 2024年 2月 21日

    戦線縮小なのでは?
    流石に現実を理解したのかなと

    9
    • ミカ
    • 2024年 2月 21日

    >>クリンキーにおける掃討作業は完全に終わったものの地下には多くの人が隠れている

    まだ敗残兵が残ってるなら掃討完了というのは勇み足のような気がする。
    Z垢からも批判の声が出てるし。
    アウディーイウカの旗立てに触発された現地部隊が俺たちも続けとばかりに無理やり旗立てた感がある。
    グレーゾーンに旗を立てるだけなら両軍ともやろうと思えば可能なのでもっと情報が出てくるまでは様子見。

    11
    • ふむ
    • 2024年 2月 21日

    注目されてない間にシレッと撤退、とかされないようにワザと勇み足で掃討発表して反論させて政治的にクリンキに縛る作戦とかでしょうかね…?
    そもそも自分で地下に隠れて残ってると言ってて、それ掃討終わってないやないかーい!と

    10
    • たむごん
    • 2024年 2月 21日

    ウクライナ軍の兵士は、大河の対岸で孤立しながら長期間粘っており、奮戦したと思います。

    ウクライナ政府上層部は、これだけ戦える兵士を無駄に消耗させて、本当に目的を達成できているのか検証すべきでしょう。

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