ノースロップ・グラマンが開発を手掛ける新型ICBM「LGM-35A Sentinel」と次期爆撃機「B-21 Raider」は対照的な姿を見せており、LGM-35Aはコスト超過で開発中止の危機に直面、一方のB-21は順調で「低率初期生産」に関する承認を獲得した。
参考:B-21 Raider stealth bomber in production, Pentagon says
参考:Air Force’s next nuclear missile at risk after costs spike
B-21が採用した新しいアプローチは今のところ成功している
米軍が手掛ける大規模な兵器開発は「様々な理由」によってスケジュール通りに進むことは殆どなく、もはや議会が「開発作業の遅延」や「コスト超過」を厳しく糾弾するのが日常化しており、最近ではミニットマンIIIの後継プログラムが「重大なコスト超過に陥った」と判明して開発中止の危機に直面している。
ロシアや中国は地上配備型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を次々と開発しているものの、米国は運用開始から50年が経過した「ミニットマンIII」に依存しているため「ICBM戦力」にギャップが生じており、これを更新するためノースロップ・グラマンが「LGM-35A Sentinel」の開発を進めているのだが、当初コストの見積もりを「最低でも37%上回る=1発あたりの取得コストが1.18億ドルから1.62億ドルに増加+開発遅延2年」と判明したためナン・マッカーディー条項に引っかかってしまった。
同条項によって「25%以上のコスト超過」に陥ると「議会への報告」と「詳細な說明(安全保障にとって不可欠で低コストの代替手段がない/上昇したコスト見積もりは妥当で管理されているなど)」が必要になり、これに議会が同意すれば取得プログラムは継続できるものの拒否されると中止に追い込まれ、陸軍の未来戦闘システム、海兵隊の遠征戦闘車、海軍のズムウォルト級駆逐艦が同条項に違反して中止されたことがある。
つまり「LGM-35Aが必要で上昇した取得コストは妥当である」と証明できなければ「ミニットマンIII更新が中止される」という意味だが、ノースロップ・グラマンが開発を進めているB-21は非常に順調だ。
下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は2021年に「B-21はF-35で学んだ教訓を生かしている」「インテリジェントな方法でコスト超過もなく予定通りに開発が進んでいる」と手放しで称賛し、2022年12月にプロトタイプを一般公開、2023年11月にカルフォルニア上空を飛ぶB-21が目撃され、米空軍も17日「エドワーズ空軍基地で2回目の飛行テストが行われた」と認めていたが、国防総省は22日「B-21の低率初期生産にゴーサインを出した」と発表。
B-21 RAIDER FIRST FLIGHT 11-10-23 #RAIDER33 #B21Raider pic.twitter.com/3tEKudqDiw
— Matt Hartman (@ShorealoneFilms) November 10, 2023
ノースロップ・グラマンも「B-21は予定されていたスケジュール内で飛行試験が始まった」「この中で飛行性能とデータ要件を満たし生産準備が整っていることを示した」と述べており、LGM-35AとB-21の何処で差がついたのかは不明だが、開発遅延が問題視されているF-35では「開発を開始する段階で詳細な仕様が固まっていない」「開発途中で要求要件が追加される」といった課題が指摘されているため、この問題は開発の進め方自体に「スケジュールを壊す要因」が潜んでいそうだ。
因みにB-21の素早い開発・取得プロセスについてティモシー・レイ大将は「開発権限を事前に国防総省から地球規模攻撃軍団(AFGSC)が得ている」「B-21は複雑で手間のかかる国防総省の手続きをスキップできる」「JASSM-ER統合にかかる時間はB-2の1/10」「デジタル・エンジニアリングの採用によりB-21の近代化は現場で随時行われる」「ブロック毎に区分された従来方式のアップグレードは余程のことが無い限り行わない」と述べており、この新しいアプローチは今のところ成功している。
関連記事:米軍のICBMは有事の作動を保証できるのか? ミニットマンIII試射に失敗
関連記事:国防予算削減なら「核の3本柱」維持は無理? 米国でICBM廃止の可能性が浮上
関連記事:米空軍とノースロップ・グラマンがステルス爆撃機「B-21」を公開
関連記事:数時間後に米空軍がB-21を公開、世紀の瞬間をYouTubeで視聴可
関連記事:開発予算の超過もなく予定通りに進捗、F-35を批判する軍事委員長もB-21を称賛
※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman B-21
案外B-2は2030年までに全機退役しているかもしれませんね
5年後もう居ないかも
機体寿命はまだ充分にありそうな気もしますね。
無人護衛戦闘機母機またはB-21の空中給油機に改装して、
B-21が戦術任務(例:クリミア大橋爆撃?)に就く時に、
随行してもらう、という妄想(笑)をします。
ミニットマンはいい加減古いし、生産もしてないから老朽化が深刻なんですよね、発射実験してますけど偶に失敗してますし。
ロシアはソ連崩壊の影響でロケット技術の維持が危うくなってましたけど、アメリカも全段個体式のロケットはピースキーパー以来ずっと作ってないから技術の継承に失敗してるんですかね。
ピースキーパーの制御部分だけを今手に入る半導体に置き換えてそのまま生産するだけで
ミニットマンよりはましになるんじゃないの
新車を設計するたびに車輪から発明しなおすような開発は厳に戒められるべきですが、米国の兵器開発プログラムはレガシーな遺産の流用、ひいては過去の投資の回収にこだわり過ぎているように見えます。これは兵器開発に限ったことではなく、米国の場合は第二次世界大戦後の大きな政府時代に青天井で行った公共投資を活用しつつ最小限の追加投資で最大限の成果を出そうという事を90年代あたりからずっと続けています。有名所だと子ブッシュ政権下でのITERプログラムからの脱退と独自のレーザー核融合プログラムの立ち上げなどがあります。
これらの件に関して別にアメリカ人が愚かだとは思いませんが、法が投資の方向性や規模・範囲を数字で決定してしまった影響は着実にあの国の足を引っ張っているでしょう。60年代にアナログコンピュータとパンチテープで収集した超臨界領域の物理特性のデータにしろ、ベトナム戦争中に開発された機械式コンピュータと火薬点火方式で稼働する精密兵器にしろ、半世紀以上過ぎた現代においてはベースとなる技術ごと世代が入れ替わってしまっています。それらレガシーな遺産やその過程で得たデータは時代を問わず有用ですが、それを読み解いて活用できる形に翻訳できるエンジニアがあの国にどれだけ残っているのかというと…。人の問題はしばしば「新規で作ったほうが安くて早い」という状況を招きます。そういう意味ではB-21は古すぎない、でも技術は進歩したという程よい時間間隔だったのかもしれませんね。
何でここの管理人は、説明 を 說明 とするのかが分からん。
中国人?
パクリ対策
ここの記事を完コピしてYouTubeに載せるアホがいる
意図的に誤字や旧字を混ぜることによってパクリの言い逃れが出来ないようにする
そういうの、やめましょう。
こんだけ面白い記事を頻繁に上げてくれるんなら中国人でもええわ。
アメリカの核戦略にとってはICBMよりもSLBMと戦略潜水艦の方が優先度が高いと思います
最悪はSLBMを陸上発射式に改造すればいいと思うのですが
ICBMからSLBMを開発・更新する方が性能やコスト等で圧倒的な優位があるのでしょうか?
生存性: SLBM>>>ICBM
運用コスト:ICBM>>SLBM
射程: ICBM>>>SLBM
と共通化できるような性格のものではないですよ。
ナン・マッカーディー条項やら、今のアメリカの兵器開発はコスト管理にばかりこだわって
かえってコスト増を招いている気がする
とある兵器開発で予算10を見込んだら実際は15になる事が分った
議会から追及されて7までかけて中止
仕切り直して今度は予定通り10で出来た、万々歳
結局、開発には17かけてる、しかも配備は元計画から10年遅れ
単価はインフレ上昇分アップし、もたつく間に追い上げる中国との差は縮まり
現場では兵器ギャップが生じて、抑止力の低下による危険やら見えない損失が
生じている事を考慮していない
管理も何も無い我が国よりましかも。
ロイヤルウィングマンと組み合わせて空対空戦闘するみたいな話を聞いて、アメリカは未来に生きてんなと改めて感じた
褒めてる様に見えて、見方によっては嫌みに聞こえるなw
アメリカの兵器開発は未来を見過ぎてボツになった前科が沢山あるからね
チャレンジしないと進歩しないから…
それに無理に量産して現場から悲鳴が上がるよりはボツにするのは正常
そのせいで骨董品を大事に使い続ける羽目になってるのは自分もギャグだとは思うけどね
未来見過ぎた開発して案の定失敗、でもその過程で検証した一部の技術や装備は使えるんじゃね?ってなって現行装備や保守的な開発してた別プロジェクトに流用、とかはよくあるので…
ドイツ連邦でも米国と共同で未来的な戦車開発→ダメだったけどレオパルトだかに一部フィードバック、とかあったはず
試してみたけどこれダメだわ!ってなることも成果は成果だしね
尾翼と和解せよ