米国関連

米紙、バイデン政権はウクライナ支援のため52億ドルの資金を持っている

WSJは2日「ウクライナ安全保障支援イニシアチブの資金は空になり、国防総省の在庫を補充する資金には16億ドルしか残っていないものの、まだバイデン政権はウクライナの安全保障を支援するため52億ドルの資金を持っている」と報じた。

参考:Pentagon Sees Months Left in Supply of Weapons for Ukraine

バイデン政権はウクライナ支援のための資金として16億ドル+52億ドルを持っている

国防総省のマイケル・マッコード会計監査官は下院の民主党トップ(ハキーム・ジェフリーズ議員)に宛てた書簡の中で「国防総省はウクライナ支援資金をほぼ使い尽くしており、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)に割り当てられた資金は枯渇した。大統領権限(PDA)に割り当てられた資金も16億ドルしか残っておらず、追加の資金供給がなければ防空システム向けの弾薬や砲弾の供給を遅らせるか削減しなければならなくなる。さらにウクライナ軍に不可欠な155mm砲弾の調達契約にも影響を及ぼす恐れがある」と訴えた。

出典:Democrats Appropriations Committee

USAIの資金が尽きているということは「ウクライナ軍が必要とする装備、弾薬、サービスを産業界から調達する資金がない」と、PDAの資金が16億ドルしか残っていないということは「米軍在庫から引き出す装備・弾薬の提供を3回~5回行うと資金が枯渇する」という意味で、1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法は9月30日に期限切れを向かえているため、バイデン政権に残されたウクライナ支援はPDA経由しか残されていないという意味だが、WSJは「まだバイデン政権はウクライナの安全保障を支援するため52億ドルの資金を持っている」と報じた。

WSJは2日「USAIに割り当てられた資金は空になり、ウクライナへの武器供与後に国防総省の在庫を補充する資金(PDAに配分された資金のこと)には16億ドルしか残っておらず、支援を維持するためには不十分であると政府当局者が述べた」と紹介しているが、同時に「会計ミスの発覚で返還された資金がまだ約52億ドル残っている」とも報じて注目を集めている。

出典:U.S. Army photo by Spc. Christian Carrillo

この約52億ドルについてWSJは「ウクライナに兵器を送ったり、その他の安全保障支援を提供するための資金で『過去6ヶ月間に送った武器の価値と等しい』ものの、政府当局者はあと数ヶ月しか持たないと考えている」と報じており、恐らくバイデン政権は会計ミスの発覚で返還された資金を「国防総省の口座」ではなく「政権の口座」のプールしているのだろう。

国防総省はウクライナ支援のためUSAIの口座とPDAの口座を持ち、前者は空になり後者には16億ドルの資金が残っているが、バイデン政権は約52億ドルを国防総省ではなく「政権の口座」のプールしている可能性が高く、これを国防総省の口座に移せば「過去6ヶ月間に送った武器と同等のものを支援できる」という意味なのかもしれない。

出典:PHOTO BY Senior Airman Duncan Bevan

但し、今後のウクライナ支援には過去6ヶ月に含まれていなかった「F-16運用するのに不可欠なロジスティクス構築のため投資」や「ATACMS提供」が追加されるため、手持ちの16億ドル+52億ドルだけでは先が見えており、何よりもウクライナが必要としているのは「米国が今後もウクライナ支援を継続するという政治的なシグナル=議会による追加資金の承認」だ。

因みにバイデン政権は8月にウクライナへの軍事援助(131億ドル)が含まれる追加資金(計400億ドル)を議会に要請、この131億ドルには「米軍在庫の埋め戻すための95億ドル」が含まれていたため、管理人は「実質的なウクライナへの軍事援助額は36億ドルに過ぎない」と解釈していたものの、米紙の報道を見る限り「国防総省の在庫を補充する資金=PDAに配分された資金」という認識なので、USAI経由36億ドル+PDA経由95億ドル=131億ドルという意味なのかもしれない。

関連記事:国防総省、ウクライナ支援資金をほぼ使い尽くしたと民主党に警告
関連記事:米下院がつなぎ予算を可決、共和党に譲歩してウクライナ支援資金は除外
関連記事:バイデン政権、ウクライナ関連を含む計400億ドルの追加資金を議会に要求
関連記事:1度も使用されなかったウクライナ・レンドリース法、ウクライナ側は延長を要求

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Eugen Warkentin

コソボ首相、襲撃事件はセルビア側によるコソボ北部併合計画の一部だった前のページ

ポーランド外相、ウクライナとの2ヶ国関係は衰退期に突入しつつある次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米下院、ファイブアイズへの日本、ドイツ、インド、韓国加入を示唆する法案を可決

    ファイブアイズを拡張して日本、ドイツ、インド、韓国の4ヶ国を加える可能…

  2. 米国関連

    砲弾の増産に必要な原材料は十分過ぎるほどある、問題は工作機械の入手性

    ウクライナ軍が驚異的なスピードで消耗する155mm砲弾の問題について米…

  3. 米国関連

    日本のF-35整備拠点を利用するアジアの国は? シンガポールへF-35B販売を米国承認

    米国防総省の国防安全保障協力局(DSCA)は9日、シンガポールに対し最…

  4. 米国関連

    米海軍は資金不足、中国海軍とのギャップが287隻対395隻に拡大する可能性

    米海軍は予算が不足する中で即応性維持を優先、2025年度予算案の中でF…

  5. 米国関連

    ウクライナに暖冬が到来、気まぐれな自然がプーチンの計算を狂わせる

    ロシアとウクライナの泥濘んだ国境地帯は暖冬の影響で今だに凍結しておらず…

コメント

    • 名無し
    • 2023年 10月 03日

    そのカネ、バルカン半島用に残したほうが良くないか?

    8
    • 名無し
    • 2023年 10月 03日

    なんもかんもヨーロッパがグズグズすぎるのが悪いんだよなぁ

    18
      • 2023年 10月 03日

      金出しすぎるとすぐ国民がキレて暴動や略奪がおきるからな
      日本人がおとなしすぎるんだよ
      増税メガネと愚痴言うだけで

      11
      • 幽霊
      • 2023年 10月 03日

      まあ他国よりも自国を優先しろと国民が要請するのは当然ですからね
      それに直接ロシアと国境を接していない国からすれば、ロシアのウクライナ侵攻後の予想外の弱さを見れば核兵器以外であまりロシアを脅威と認識しなくなるのも理解できます。

      10
    •  
    • 2023年 10月 03日

    レンドリースすれば良かったのに

    5
    • XYZ
    • 2023年 10月 03日

    会計ミスと呼べるレベルとは思えないのは私だけでしょうか?
    現在のような状況になる事を見越してヘソクリを会計操作で作り出していたように感じます。

    23
      • あさん
      • 2023年 10月 03日

      うちの妻も会計ミスで溜め込んだへそくりでiPhone15Pro買ってたよ。
      よくある話なんですね

      6
      • ( ゚Д゚)
      • 2023年 10月 03日

      そもそも会計ミスで生じた返却分は速やかに
      元の口座(国防総省?)に戻さなくて良いの
      ですかね(主に法的にな意味で)?それとも
      ウクライナ支援を目的に承認を受けた
      予算だから特に問題は発生しないのか…。

      3
      • nachteule
      • 2023年 10月 03日

       正直、資金をプールする為に過剰に算出するのは自国に対して不誠実だし、そんな事が許されるならGAOなりがもっと厳しく予算に対して監視の目を光らせるべきでしょう。

       2つ?ある価格の内で高くなる方を使った結果だし通常作業でもない急ぎの非定常作業故で、人がやる以上は普通に有り得る話。

      3
    • たむごん
    • 2023年 10月 03日

    アメリカの予算制度も複雑ですね、勉強になります。
    日本も、一般会計、特別会計。その中身も幅広く、500兆円位をぐるぐる回しているので、似たようなものでしょうか?

    日本も、対米追随でウクライナ支援を行ってきましたが、どうするのか検討すべき局面ですね。

    2
    • 匿名(JDAM博士)
    • 2023年 10月 03日

    大統領の権限だけでお金を勝手に使ったらそれこそマズイでしょ。
    予算は何でも上院・下院を通して決めないと民主主義国家ではなくなり、独裁国家に成り下がりもっと悪手です。
    そしてそれは今後の選挙に影響しますし、中途半場に金を突っ込んで負けたらもっと民主党はピンチでしょう。
    米国の税金は米国人のものであってウクライナ人のものではありません。

    2
    • ar
    • 2023年 10月 03日

    まぁアメリカなんだし逆さにして振れば幾らかは金が出てくるでしょ
    あくまで共和党が譲歩を迫るためにやってるだけで本当に支援をやめるとは思えない
    まぁヨーロッパの中小国は限界だろうけど

    6
    • Artillery
    • 2023年 10月 03日

    ずっこけてしまった
    70億ドル近くあるなら、贅沢しなければ今年中は持つでしょう
    多くはないが、緊急事態ってほどでもなさそう
    結局は、年越し頃に決まるであろう本予算次第かな

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP