米陸軍は2025年度予算案の中で「拡大射程砲(Extended Range Cannon Artillery=ERCA)に関する取り組みを停止した」と明かし、ブッシュ陸軍次官補は「(ERCAの代わりに)市場を通じて入手可能な自走砲をテストして購入する」と述べた。
参考:US Army scraps Extended Range Cannon Artillery prototype effort
参考:Army’s $186B budget request shuffles artillery, aviation plans
参考:Tech maturing too fast for multiyear drone buys, Army’s Bush says
砲身の摩耗問題を解決できなかったM1299の開発を放棄し「入手可能で実績のある自走砲をテストして購入する」と意味だ
米議会は2024年度の国防権限法(FY24 NDAA)を承認したものの予算をブロックし続けており、政府機関閉鎖を回避するつなぎ予算も前年度レベルに支出を制限するため、2023年10月~2024年9月に計画していた米軍の研究・開発や調達は重大な影響(国防権限法で確保した新しいプログラム向けの資金に手を付けることが出来ないため契約を結ぶことが出来ない→既に契約授与が半年遅れているという意味)を受けているが、バイデン大統領は11日に2025年度予算案を議会に送付した。

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昨年成立した財政責任法の制限を受け、2025年度予算案に含まれる国防関連の予算(国防総省向けの資金と核兵器の開発や維持に関するエネルギー省向けの資金など)は1%増となる8,952億ドルだが、この程度の伸び率ではインフレの影響をカバーできないため実質的にはマイナス予算となり、国防総省は前年度の計画から100億ドル以上の削減を余儀なくされている。
米陸軍は2025年度予算案の中で「拡大射程砲(Extended Range Cannon Artillery=ERCA)に関する取り組みを停止した」と明かし、調達や兵站を担当するブッシュ陸軍次官補は「58口径の砲身をM109A7に追加した試みは量産に移行できるほどの成果が得られなかったが、戦術射撃の徹底的な研究において射程を拡張したプラットホームの必要性が再確認されている。そのため開発済みのプラットホームや弾薬に関する情報提供依頼書(RFI)をまもなく発行する予定だ」と説明。

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さらに「結果が良好なら量産用に購入することになる」「新しいものを開発するのではなく、内外で入手可能なものを使って(火力投射の)範囲と量を確保する方向に移行する」「ERCAの構成要素だった新型砲弾の開発は継続する」とも付け加えているため、砲身の摩耗問題を解決できなかったM1299の開発を放棄し「入手可能で実績のある自走砲をテストして購入する」と意味だ。
陸軍近代化を担当するジェームズ・レイニー大将も昨年「砲兵戦略をウクライナの教訓と米太平洋陸軍の要求の両方に対応させる必要がある」「ウクライナで最も多くの敵を破壊しているのは通常砲だ」「まもなく発表する通常火力戦略には戦場での通常射撃を強化する施策(射程延長や自動装填装置の採用など)が含まれている」「NATO加盟国の中に我々の関心を集める装備をもつ国がある」と述べ、これを受けて米ディフェンスメディアも「新たな砲兵装備を迅速に取得するため実績のある自走砲調達を再推進するのかもしれない」と報じていた。

出典:Ministerie van Defensie
NATO加盟国に取得先を絞るならPzH2000、CAESAR、ARCHER、DANA、ZUZANA2、DITA、MORANA、RCH155などが導入候補になるものの、Hanwha Defense USAのケリー最高経営責任者は2022年末「K9のテストをユマ試験場で行い相互運用性(米軍規格の弾薬)を実証した。このテストを通じてK9の能力を米国に示すことができたと思う」と明かし、Hanwhaは招待した西側関係者が見守る中でXM1113の試射まで披露したため大きな注目を集めたことがある。
まだ通常火力戦略が発表されていないためERCAの代わりに調達するプラットホームが「M109の更新用なのか」「M777の更新用なのか」「M109やM777とは異なる位置づけなのか」は不明で、もしM109の更新用に装軌式を望むならPzH2000とK9の二択になり、M777の更新用なら装輪式が候補になるのだろう。

出典:Shield AI
因みにブッシュ陸軍次官補は「無人化技術の開発がスピードが早すぎるため、従来のやり方で無人機を調達すれば調達が終わる頃には時代遅れになっている可能性が高い」とも述べおり、開発テンポが早い装備類については調達方法を変更しなければならないと訴えている。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by Ana Henderson
米陸軍はクルセイダーあたりから次期装軌自走榴弾砲に時間をかけ過ぎた。海外輸入なら実質的には韓国とドイツの一騎打ちだろうけど実績や本国の生産能力等を考えると韓国優位かな?
99式が生産中だったらノミネートしたかった。
米陸軍は数年前にやっていた装輪自走榴弾砲のコンペも音沙汰が無いし時間をかけすぎに見える
K9よりPzH2000の方が実戦で使われるなど実績はあるのでは?
生産国の工業力、技術力も。
韓国製だからという理由で腐したいだけであればオブラートに包まずはっきり言えば良いんじゃないですか?
そんな意図はないんだが、どこからそんな思い込みを?
世界販売の半分を占めて居るはずのK9よりPzH2000進めて居る時点で韓国に対するバイアスかかってませんかね?しかも理由が工業力と技術力とかで実際の戦闘にすごく関わるような要因やコストとかを無視し上いる感じなのが引っ掛かりますね。
実戦経験だって延坪島であるし、反撃出来て防御力に一定の評価は出ていた筈でしょう?それにウクライナにクラブ自走砲渡されて居る訳だし、ユーザー数が多ければ将来の発展も期待出来るし韓国品質が気に食わないなら自国でその部分を作れば良いだけ。そこまで評価を下げる意味がわかりません。
戦争・紛争のタームを、どの程度の期間に設定するのは重要な問題ですね。
予算の制約があるわけですから、コストパフォーマンスが悪くなれば、そもそもの弾薬が不足して厳しくなります。
拡大射程砲にしても、特殊な砲弾(装薬が多い)が不可欠と思うのですが、量産も進んでいないですからね。
通常の155mm砲弾、米国で3000ドル程度よりも確実にかなり高くなると言えます(設備・研究開発の減価償却が終わっていないため)
一体どういう兵器が欲しいのだろう?
砲身の傷みが問題なら、技術的にどの砲を選んでも射程に満足できないだろう。
70kmの射程が必要なら、ミサイルだろう。
それか、ドローンで雲霞のごとく爆弾を運ぶか。
アメリカ軍は遠征前提なので空輸が容易で展開の早いシロモノを望むだろう、そうなると自走砲は装輪式の方が良いはず。敵からの反撃を避けるため長射程化したい、命中率を高めて少ない弾数で目標を破壊したいとなれば「ラムジェット推進誘導機能付き砲弾」が最適でしょう、調達価格は知らんけど。
>70kmの射程が必要
ハンヴィーに搭載できるサイズの多連装ロケット砲を作り、ロケットに発射後展開する翼を付加すれば射程70kmは狙えるでしょう、ハイマースより安価で小型かつ隠蔽が容易だ。
装軌式ならK9A2自走砲で良いのでは。
恐らく装軌式で一番高性能な自走砲ですし。
PzH2000のほうが高性能だし良いでしょう。
流石に天下のアメリカが韓国製は…
>PzH2000のほうが高性能だし良いでしょう。
これは言いたいこともわかるけど
>流石に天下のアメリカが韓国製は…
こっちは認識が時代遅れすぎでしょ。
韓国製ってだけで視野が狭くなってない?
仰っている意味がよく判りませんね。
第一に、何を以てPzhの方が採用に優位だと判断したのでしょうか?
第二に、天下のアメリカ〜云々は単なるあなたの感想で宜しいですか?
米軍の装備はすべからく米国設計でなければならない!というような信条をお持ちなのであれば結構ですよ
まあ、小銃から主力艦にいたるまで諸外国に設計をアウトソーシングする事がデフォな現状では今更な主張ですが…
アメリカの装備に外国製も少なくないのは知っていますが、どれも欧州先進国の歴史あるメーカーの製品なので、後発組の韓国製をアメリカが採用するというのは…
と考えた次第です。別に韓国製はポンコツとかは考えていません。
その後発のK9
安くて数が揃えられる(ウロ戦争最大の戦訓)
それでいて性能はほぼ同じ
あと若干(約8t)軽い
自走砲の輸出シェアで50%超えてて各国の反応もおおむね好印象
で、ある以上採用しない理由がドイツとのお付き合い以上の理由がないと言いますか
>PzH2000のほうが高性能だし
プーマ歩兵戦闘車「(満足気に頷く。)」
>航空万能論GF
>2020.01.27
>訓練も通信も敵との交戦も無理? ドイツが手を焼くプーマ歩兵戦闘車の欠陥
どの国もアメリカに採用してもらえたらかなりの宣伝になりますし、受注数も見込めるのでセールスがすごい事になりそうですね
採用活動ではウクライナでの実戦や運用が有る自走砲が有利になるのかな?
ウクライナ紛争での戦訓として、非自走砲はドローンでの観測からの砲撃に弱すぎるというのがあるのでこの方針転換は妥当だと思います
でも装輪式と装軌式のどっちになるんでしょうねこれ。アメリカがどこでの戦闘を想定してるのかがわからない…
ウクライナに提供されたM109 155mm自走砲はランセットのオヤツになってましたね。
M777榴弾砲も牽引能力が低いなど良い評判全く聞きませんし、世界最強の米軍と言うイメージですが陸戦兵器においてはイマイチぱっとしない性能の兵器ばかりですよね。
米軍はいざとなれば圧倒的な航空戦力で支援攻撃を行えますからね。
砲兵の優先順位が低くなるのは仕方がないかと。
牽引式榴弾砲と基礎設計が古い自走砲ですからね。
これらの例だけで陸戦兵器においてはイマイチぱっとしない性能の兵器ばかりとは言えないでしょう。
M1A2戦車は強いですし。
M109魔改造とM777で戦ってゆくのはもう無理って事でしょうか
M109の後継を作るはずが、どうしてこうなった…?
クルセイダーとかNLOS-C(C-130での空輸)とか寄り道し続けた挙句ドボンとか笑えない
島嶼で戦うならアーチャーかカエサル、広野で戦うならPzH2000かK2、かなぁ
155mmは西側だと52口径が一般的ですし、口径の変更は適正値を図る場合、炸薬の量や燃焼速度の調整も必要になります。
余り考えず、39口径のM109から58口径へと思い付いたのでしょうが、常識的に52口径で揃えるべき案件でしたので、58口径化の凍結を歓迎します。
また、そもそもとして52口径から58口径とした場合の上澄みというのも微妙でしたでしょうし、155mm52口径弾薬への共通化を繰り返しですが歓迎します。
米軍もわりと柔軟ですよね
こういう国は強い
無人砲塔(チェコ/スロバキア/スウェーデン)をM109に載せることは考えられないか、と思います。
ある意味、時間稼ぎをしているようにも思えますので。
ならば、車体はM109を利用すれば、お金が浮くのでは。
名前を挙げた砲塔ならば、重量的にもきつくはないだろうし。
飛行機での輸送は譲るつもりはなうだろうし、軽い方が良いのでは。
米国の常として、他所の兵器を採用しても、国産化をしなかったことはないような。
米国内の防衛企業が黙っていない、と思えます。
あと、射程は砲弾の種類でも違うでしょう。M107を使い続けるとは限らないでしょう。
そこまでなにがなんでも空輸する必要ってあるかな
即応性ばっか重視してもあんまり意味ない気がするけど
改造案とかまた時間掛かりそう
チェコ/スロバキアは、以前より砲塔ビジネスに熱心です。
インドで一度採用されかかったりしています。
なんだか、汚職があったとかで流れたようですが。
チェコでしたか、自国のT-72に載せて採用しています。
砲塔で完結しているようなので、思ったよりは楽なのかと想像しています。
多分、話が出れば、対応は早いだろうと想像します。
アーチャーの方はまだ実績例も提案例もはないと思います。
これをもって米陸海軍が進めていたいくつかの次世代長射程砲プログラムは全滅ですかね(海軍のAGS、陸軍のSLRC、そしてM1299)。まあこれらのプログラムは内陸国での対テロ戦争ドクトリンの面影が残る要件に基づいた開発でしたから、インフレ関係なくどこかで潰されていた可能性はあったと思います(射程が2倍の自走砲を作ったところで長射程のミサイルや敵性航空機の前では誤差であり、米国自身も空軍と巡航ミサイルのヘビーユーザーなので米軍にとって長射程砲はコスパがちょっと良いだけのニッチ需要に過ぎない)。
同盟国からの調達というと色々候補があると思いますが、トラック型に統合するとか言い出さない限りは管理人殿の提案していた中からライセンス取得して米国内で生産する流れになるんじゃないかと。ただまあ、今や米国は10年以上かけて自前で作ってきた自走砲の開発計画すら潰さなきゃいけないくらい財政難の国なので、コスパの点で某ドイツ製は除外されそうな。
アメリカとの関係の近さからしても装軌式ならほぼ確実にK9だろうしもはや世紀のベストセラーなったな
別の人も言ってるけどPzH2000のほうがアリなのでは?
K9がダメではないけど大国には合わない気が。
2022年時点で新規発注されても2024年以降じゃないと納品ムリ
なんて言ってたPzH2000は米軍で必要な納入数で考えたら逆にナイんですよね……
その点韓国はポーランドのK2のように自国向けの分をまわしても初期ロットを即納したり、
ライセンス生産に柔軟なんで米軍仕様に変更も余裕でしょう
ドローンの出現で空中からの弾着観測技術が劇的に向上して無誘導弾でも命中精度を上げる事が可能になりましたので
自走砲はドイツのPzH2000みたいな高価高性能なものから安物を大量に揃える方が今後の陸戦で揃えるべき仕様として理に適っているように見えますね。
要は故障せずに長期間使えるタフな車体と砲身さへあれば良い。あとデータリンクとGPS誘導弾も打てる装備と。そこに更に長距離狙える砲身があれば尚可みたいな感じでしょうか
そういう観点では表のスペック的には戦車も直接射撃できる男ロマン溢れたPzH2000より韓国製のK9の方が良いように見えますが、K9は故障率や耐久性がどうなのかが気になりますね
安かろう悪かろうで数十発撃てば、数キロ移動したら故障しまくるのであれば幾ら値段が安くても選択肢からは外すべきでしょう。
その点から延坪島砲撃戦のK9の伝わってくるしょぼさが気になりますね。
>延坪島砲撃
当時はいろいろ笑われてたけど言うほど酷いものではない、というのが最近の評価じゃないの?
自走砲自体に直撃弾食らっている状態での反撃だったわけですからね
それに命中精度や耐久性に関しては実際にテストすれば分かるし、
テストしてから買って使ってるユーザー国が性能に満足してるって表現を(国民に対していいものを買ったと言うことも含めて)リップサービス込みとはいえ複数国が発表してるから実用上の問題はないと思うよ
延坪島砲撃戦では訓練による即応弾射耗後を狙われた上で、北朝鮮側の初弾が4門中2門に命中して火災発生という状況からのスタートなので、K9がしょぼいというよりもアンラッキー過ぎたという所ではないでしょうか
そんな状況から応急復旧と消火対応に並行して再装填/応射までやってるダメコン能力と敢闘精神は寧ろ評価されるべきかと思います
結局のところ、今回の戦争で数の優位性を認められた以上は、K9で良いのではないでしょうか?もはや、高価なものが少数で活躍するというのは困難でしょう。どうしても1対1で考えがちですが、戦闘は組織的なものですから、その観点から見ても数でしょう。
日本は蚊帳の外
日本は防衛産業を振興するにはもう色々遅すぎた
70年代~80年代の日本企業がまだハングリーだった頃ならともかく
デフレ不況で石橋を叩いて渡らないのが習い性になった日本企業が今更兵器輸出で儲けるとか絶対無理だしこれだけ韓国企業が食い込んでるのを挽回とか尚更無理
クルセイダーからのFCSでXM1203まで作って更にはM109魔改造のERCAまでもがお陀仏とは・・・。こうなるとパラディの後継はK9砲塔にAMPVのロング車体の組み合わせですか?XM30の車体に互換性へ行き着く可能性はゼロではないでしょうがだったらMPFのM10車体がアスコッド系の低車高車体が適当かとは思います。
EFV開発頓挫からの既製品採用でACV1.1に全く同じ轍ですけど、これは本邦の国産AFVも無視できない流れではありますね。何が何でも国産で施設科作業車に日立のあんなん採用しちゃうようじゃどうもならんでしょうが。
問題は、アメリカの議会や企業がどう動くかだよなぁ
(雇用の問題を絡めて)国産にしろと言い出すような気がする
アメリカが何を重要視するかによって変わるでしょうが、純粋な後継ならPzH2000がNATOでの実績の積み重ねがあると思っちゃいますが、K9しか選択肢なくないかなぁ
装輪式は、別ラインで調達するんじゃないかな…
ぶっちゃけパラディンじゃ駄目なの?
公開情報見る限り、他国の装軌式自走砲と比べるとはるかに高い上に
重量以外ほぼすべての性能で負けてるぽいので
まず相手の射程内に入り込まないと一発も撃てない
ロシアの新型、情報が正しいなら射程に収めることが不可能です
同距離で撃ちあった場合完全に撃ち負ける
そもそも価格差で同数用意できない
と散々な結果になりそうというのが
韓国がK9開発した経緯もパラディンに更新するほうが新規開発するより高くつくからとかいう
何コレ案件らしいですし
写真のダックインさせた自走砲の姿は、80年代の暴走族の写真を見たときのような気分にさせられる。
エクスカリバーを6秒に1発70kmくらい飛ばせる自走砲がほしい、なんて要求はどの自走砲選んだって無理だろ
そのために1.5mくらいある装薬使うくらいなら普通にロケット砲でやればいいだろなんのためのHIMARSだよ
RAPとかラムジェット推進砲弾は炸薬搭載量が通常弾の3-7割程度になるから普通の砲弾飛ばしたいのはわかるが、もう物理的実用的限界に達してるだろ…