米国関連

米陸軍がトマホークを取得、MK.41を流用したロングレンジウェポンの実用化

米海軍は巡航ミサイル「トマホーク BlockV」を154発調達するためレイセオンに2.2億ドルの契約を授与、発注した154発の内30発を陸軍に引き渡す予定で、これはMK.41を流用したロングレンジウェポンの実用化に向けての動きだろう。

参考:U.S. DepartmentofDefense Contracts For May 24, 2022

航空戦力に頼らない「火力の遠距離投射能力」に今後多くの国が関心を示すだろう

米陸軍は中距離核戦力全廃条約(INF)が失効したことで空軍が担当していた中長距離攻撃能力の獲得を目指しており、複数のロングレンジウェポン開発を同時進行で進めているのだが、その中で最も革新的なのが弾頭に極超音速滑空体を採用した「LRHW(長距離極超高速兵器)」で、開発が順調に進めば2023年にはプロトタイプが完成して陸軍の引き渡される予定だ。

出典:ロッキード・マーティン

これとは別にMK.41を流用した移動式の発射基でトマホークとSM-6を運用するロングレンジウェポン(正式名称はMid-Range Capability:MRC)の開発をロッキード・マーティンに発注済みで、海軍から引き渡されるトマホーク BlockVはMRC向けのものである可能性(用途が明記されている訳では無い)が高いが、MLRSやHIMARSで使用する地対地ミサイル「MGM-140 ATACMS」を発展させた「Precision Strike Missile(PrSM)」の実用化に取り組んでいる。

米国とオーストラリアが共同で開発しているPrSMは、移動目標に対する命中率を改善(海上を移動する目標にも対応)するため新しいマルチモードシーカーを採用、射程も499kmまで延長される予定(INF脱退により700km~800kmまで延長)で、米国、オーストラリア(HIMARS導入予定)、英国(M270でPrSM運用)が導入を表明しており、米海兵隊が導入を進めている地対艦ミサイル「Naval Strike Missil(射程185km)」よりもカバーエリアが広いため台湾有事の際に南西諸島への展開も視野に入っているらしい。

ウクライナとロシアの戦いで「航空優勢の確保」が如何に難しいのかを多くの国が再確認(米軍ですら大国間=中国との戦いで航空優勢を確保できるのか未知数)した言われており、さらに無人機の登場で戦場認識力(レーダーや偵察衛星ではカバーできないリアルタイムな地上部隊の細やかな動き)も拡張されているため航空戦力に頼らない「火力の遠距離投射能力」に今後多くの国が関心を示すだろう。

補足:有人機が廃れるという意味ではなく、有人機、無人機、短距離弾道ミサイル(戦術弾道ミサイル)の3つで構成された攻撃能力の整備に関心が集まるという意味

因みに米国製MLRS「HIMARS」を500輌導入する意向(米国の輸出許可や導入交渉はこれから)を発表したポーランドもATACMSの取得を予定している。

出典:BAYKAR 巡航ミサイルの運用も可能なバイラクタルAkinci 

追記:英国はシリア内戦に関与したという理由で課していたトルコへの武器禁輸措置を全面解除、トルコ製UCAVの導入に英国側は関心を寄せていると報じられている。

関連記事:米陸軍、トマホークとSM-6を流用してロングレンジウェポン開発に着手
関連記事:ポーランド、米陸軍が開発した次世代防空レーダー「LTAMDS」を調達

 

※アイキャッチ画像の出典:Voice of America

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コメント

    • news
    • 2022年 5月 27日

    >有人機、無人機、短距離弾道ミサイル(戦術弾道ミサイル)の3つで構成された攻撃能力の整備

    頭のお堅い人たちは、これを理解できるだろうか?
    研究もいいが、いい加減実用化への予算を出して欲しい。
    もし実用化の目処が立たないほど技術力がないなら、早急に他国の支援を受けるなり、輸入するなりしてほしい。
    国産に拘る必要は全くない。

    26
      • トクメイキボウ=サン
      • 2022年 5月 27日

      確かに入念な研究や調査は必要ですがあまりにももどかしすぎますよね、せっかく優秀なカメラやエンジン等の基盤産業があるのにもったいない
      ACSL、テラ・ラボ、フジインバック等のまともなドローンメーカーが国内にある訳なんですからいい加減に物を作って欲しいですね。
      防衛省も巻き返しを図ろうとはしてるらしいです、参考までにどうぞ
      リンク

      24
      • G
      • 2022年 5月 27日

      もちろん理解はしていると思いますが、既存のミサイルの在庫さえほとんどない(継戦能力のない)現状では、まずそれらを充実させるほうが予算の優先度が高いかと

      もっともそれさえも、水陸機動団や各種護衛艦、無人機(無人随伴機を含む)、次世代戦闘機開発などの予算と比べると優先度が下のように思えるため、国防予算の大幅な増加、ひいてはそのための国民の理解を得なければならないので先は長そうであり、その間にまた異なるドクトリンが生まれ振り回される可能性も否定できないのがもどかしい限りですが

      14
        • STIH
        • 2022年 5月 27日

        むしろ日進月歩で新しい運用方法が生まれるんだったら、一歩引いて情報を整理するのも大事だと思いますがね。
        とはいえ自分達でも運方法を考えるのは必要でしょうから、とりあえず研究用でいいからさっさとTB2を調達すりゃ良いのに。日本が運用したことがない中型UAVなんですし、幸い先方(トルコ)との関係は悪くないんですから。

        12
          • バクー油田
          • 2022年 5月 28日

          個人的にはこの状況に対しての陸自の謎の動きの鈍さは
          究極的には日本の政治家の軍への理解が薄い事から来てるかなとは思います。
          陸自からしてもドローンの使い方の正解は知らないわけで、当然アメリカも試行錯誤中で
          横展開できる確実なセオリーなんかまだありません。
          その中で陸自側がドローンの予算くれと自ら動いた場合、「曖昧なものを買う予算」を要求する事になり財務省との折衝で当然財務省に崩されると思います。
          仮に予算が取れてTB2を数十機購入して使ってみたら日本の本土防衛には使えない事が分かったとなった場合、別のドローンを調達する予算を請求する事になりますが、
          TB2買った直後にまた請求なんかしたら財務省から完全に信用を失いあらゆる予算要求にケチがつきかねません。
          陸自側からすれば無駄にストライクのカウントを上げたくないから動きが鈍いのかもしれません。
          つまり、何が正解か分からないものを買う場合、防衛省単独で財務省から予算を勝ち取るのは無理で
          こういう場合、国のトップ側の判断で降ろさないと防衛省だけで財務省と戦わせても予算獲得は無理でしょう。
          でも岸田総理は軍備に対してリテラシーは無いでしょうし、岸田総理の周りにリテラシーがある人が居なさそうなんでなかなかトップとして「ドローンは戦場のゲームチェンジャーやから失敗してもどんどんやれ」というGOサインは下りないでしょうね。
          安倍さんが総理の時には青山繁晴さんが居たのでもしかしたら動きが早かったかもしれませんが。

          6
            • 通りすがり
            • 2022年 5月 28日

            UAVやUCAVの使用はまだまだ試行錯誤だから〜みたいな話に持って行こうとしてるけど、MQ-1が登場して20年以上経ってるしMQ-9を導入してる国も多い。

            ミリタリー向けのUAVはマイクロサイズ(手のひらサイズ)のUAV普及が進んでて、オーストラリアはこれを数百機レベルで導入済みだし、一般的な小型サイズのUAVも1000機2000機単位で調達してる国が多いよ。

            いい加減その辺を認識しないと10年後もUAVはまだまだ試行錯誤で〜って言い訳してるんじゃないの?

            16
              • STIH
              • 2022年 5月 28日

              言いたいことはわかるけど、ウクライナがどんなにUAVを使いこなしていてもそもそもの物資不足が現在の苦境を招いていることを鑑みるに、自衛隊もUAV以前の問題が山積している中で、それらを押しのけてまでUAVを大量導入させるための論理武装が自衛隊にできない気がするんですよね。
              日本にどんなUAVが必要なのかわからないのに、大量導入するには要件定義をしっかりしなけりゃ金が出てこない。しかも相手は、ジャベリンあれば戦車不要って挑発してくる手練れですから。

              12
              •  
              • 2022年 5月 28日

              とはいえロシア軍の動きがまともになりだしてからはTB2の有効性が聞こえにくくなったため、ロシア軍やそれ以上に脅威な中国軍を想定している日本としては再びその有効性に疑問を持つようになってもおかしくないかと

              4
              • tarota
              • 2022年 5月 28日

              UAVなんて湾岸戦争の頃から使っている
              30年あれば菱形戦車がパーシングになるくらい進化するわけで
              試行錯誤とか言ってる場合じゃないわな

              4
              • 名無し
              • 2022年 5月 28日

              遥かに格下の相手用のドローンがどれだけ長く運用されようと、日本には参考にならないので
              それはまた少しズレた避難に思えますね

              1
                • 残念
                • 2022年 5月 28日

                >遥かに格下の相手用のドローン、、、

                もう認識に差がありすぎる。

                11
                  • 名無し
                  • 2022年 5月 29日

                  MQ1やMQ9が大国間の戦争に通用するなど誰も思っていないでしょう

                  2
            • tarota
            • 2022年 5月 28日

            UAVなんて湾岸戦争の頃から使ってる。菱形戦車がパーシングまで進化するような膨大な時間が経ったよ。
            それでも動きが鈍いのは端的に言えば政治家も陸自も無能なんだと思う。謎でも何でもない。

            1
        • minerva
        • 2022年 5月 28日

        予算だけでなく人員が足りてないと言われています。
        陸自はスキャンイーグルを様々な運用試験に使っており、中には対艦ミサイルの目標選定の試験の話もあります。
        スキャンイーグルの部隊はわずかながらに増加しており追加購入の契約も出ているので陸自自身は決して軽視しているわけではないはずで、研究の終了と本格配備が望まれます。

        6
    • そら
    • 2022年 5月 28日

    英国がトルコに近づきましたか。
    次期戦闘機開発にも影響有るかな?
    しかし現代戦はBFのスポットみたいなのが実用化されてきてるとは。
    島国でよかった。

    3
    • 折口
    • 2022年 5月 28日

    対テロ戦争中に形骸化していった陸軍の高射部隊や地対地ミサイル部隊の能力を回復させる動きがいよいよ活発になっていますね。これらも日本に配備されるのかな。同じく海兵隊も南西諸島の島嶼での戦いを強く意識した装備への刷新を続けていて、まさに再始動という感じですね。

    「敵が占領する前の離島に展開し、敵航空・海上優勢下で包囲されながら戦う」といえば旧日本軍の十八番のように聞こえますが、まさか70年後に米海兵隊が同じ戦い方を指向するとは、世の中面白いですよね。自衛隊が推し進める「島嶼の再奪還」と、海兵隊がねらう「先回りして展開」がうまく合致してくれるといいですね。

    4
    • 匿名
    • 2022年 5月 28日

    如何せん、バイデン本人は兎も角、その所属政党やブレインが台湾有事に対して軒並み及び腰ではなぁ…
    新たに中長距離攻撃能力を取得しても宝の持ち腐れとなりそうな予感

    1
    • 匿名
    • 2022年 5月 28日

    日本の弱さを抜本的に改善するには、憲法9条を改正して正式な軍隊を保有するしかない。これは何ら悪い悪い事ではない。外国はみな正式な軍を保有しているのだから、日本が正規軍を保有し攻撃能力を持つのは当たり前だ。

    憲法9条改正、絶対賛成!!
    日本軍創設、絶対賛成!!

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