ロシア軍占領下のヘルソン州とクリミアを結ぶ「チョンガル橋」がミサイル攻撃を受けて損傷、ウクライナ側は「橋の損傷は非常に重要で占領軍の兵站に打撃を与えるものだ」と主張、ウクライナ南部の物流ルートには混乱が発生しているらしい。
参考:Ukraine Strikes Key Bridge To Crimea, Hints At More Long-Range Attacks
参考:Early stages of Ukrainian counteroffensive ‘not meeting expectations,’ Western officials tell CNN
今回の攻撃でウクライナ南部の兵站に与える影響は限定的、ヘルソンの戦いを再現するには陸橋の遮断とクリミア大橋の破壊が必須
ロシア軍占領下のヘルソン州とクリミアを結ぶ「チョンガル橋」がミサイル攻撃を受けて損傷、ロシア側は現場で回収されたミサイルの破片を提示して「4発のストーム・シャドウによる攻撃だ」と主張、ロシア側のヘルソン州知事を務めるウラジーミル・サルド氏も「この攻撃はキーウ政権がロンドンの命令に基づいて行ったもので完全に無意味なものだ。ヘルソン州とクリミアを結ぶルートには陸路もある」と主張している。
Results of a strike by an unknown side on the Chongar bridge on the way to the temporarily occupied Crimea last night. pic.twitter.com/IRMwSbZYmn
— Dmitri (@wartranslated) June 22, 2023
RIA Novosti-
“The strike on the Chongar bridge in Crimea, was carried out by Storm Shadows – the appropriate markings are on the wreckage”..
So what next #Shoigu sir? @KremlinRussia_E ?
Still red line not crossed? pic.twitter.com/yi58O5AsLH— Sandeep Mukherjee (@Libertarian196) June 22, 2023
Big queues at the Perekop checkpoint on the border of Crimea and Kherson oblast after the missile strike on the Chonhar bridge. The waiting time is one and a half hours. pic.twitter.com/LQYzCsJgGq
— NOELREPORTS 🇪🇺 🇺🇦 (@NOELreports) June 22, 2023
チョンガル橋の橋脚は無事で橋梁部分しか損傷していないため「比較的修復は容易だ」という指摘もあり、ロシア当局も「損傷部分は直ぐに修復されるだろう」と述べているが、ウクライナ側は「チョンガル橋の損傷は非常に重要で占領軍の兵站に打撃を与えるものだ。占領者と占領軍への心理的影響は計り知れない。連中がヘルソンに安全を感じられる場所はないのだ」と主張、実際にヘルソン州とクリミアを結ぶ物流ルートの変更で陸路ルートのペレコップ検問所には1時半待ちの渋滞が発生しているらしい。
この攻撃はドニエプル川にかかるアントノフスキー橋やノーバ・カホフカ水力発電所の架橋部分への攻撃を彷彿とさせるが、ヘルソン州とクリミアはサルド氏が指摘する通り「陸路ルート(ペレコップ検問所経由とアラバット砂洲経由)」でも結ばれ、マリウポリ~ベルジャンシク~メリトポリを経由する「アゾフ海沿いの輸送ルート」もあるため、チョンガル橋への攻撃はヘルソンの戦いほど致命的なものではなく、検問所の渋滞=兵站の混乱も短期的なもので終わるだろう。
ウクライナ南部の兵站に致命的な影響を与えるためには「物理的な陸橋を遮断(もしくは榴弾砲による通行の妨害ができる範囲まで接近)」と「クリミア大橋を破壊」がセットでなければならず、ウクライナ軍はストーム・シャドウを手に入れているため「クリミア大橋の破壊」を実行することができる。
直ぐにウクライナ軍の反攻がマリウポリ~ベルジャンシク~メリトポリを結ぶ陸橋に到達する訳では無いが、なんとか陸橋の遮断に成功すればウクライナ南部に陣取るロシア軍はジ・エンドだ。
CNNは西側当局者と米軍関係者の話を引用して「ウクライナ軍の反攻作戦はあまり成功しておらず、ロシア軍は予想よりも実力を発揮している。塹壕・龍の歯・防衛陣地の構築でロシア軍の防衛ラインは要塞化され、ウクライナ軍の装甲部隊は敵航空機や敵砲兵部隊の攻撃を受けなら地雷源を突破できずにいる」と指摘しているが、同時に「反攻作戦は始まったばかりで、ウクライナ軍側もロシア軍の戦術に適応してきているため、時間はかかるものの領土を奪還できると米国も同盟国も楽観視している」と報じている。
ゼレンスキー大統領もBBCのインタビューの中で「反攻作戦の進展が思ったよりも遅い」と認めたが、同時に「秋の反撃もゆっくりしたプロセスで始まった。ある時点を過ぎた時、反撃が急速に進展していると誰もが気づいたが、現在の反攻作戦も同じようになるだろう。我々は間違いなくもっと大きな一歩を踏み出したいと思っている。最終的に戦い続けた者が勝利し、ノックする者に扉は開かれる」と付け加えた。
一つだけ言えるのは「ロシア人は過去の失敗から学び戦いに適応して善戦しているものの、西側諸国もたった3週間の結果でウクライナを見捨てるということはない」という点で、初戦の結果だけで戦争の行方を決めつけるのは余りにもせっかちだ。
管理人も心情的にウクライナを応援しているが、今回の反攻作戦に絶望などしていない。
追記:チョンガル橋にミサイルが命中する瞬間を捉えた映像
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※アイキャッチ画像の出典:Twitter経由
今回の橋に対する攻撃は西側諸国や国内向けの成果を出していますよアピールでしょうね。
事前にカメラ回して1発で終わり、ということで費用対効果は高いと思うよ。ドローン使える距離じゃなかったんでしょうね。
まぁそうでしょうね。このタイミングで完全に破壊できる訳でも無いのに残弾数に限りのあるストームシャドウを4発使ってでも橋を攻撃したというのは「橋を破壊できるんだぞ」というアピールでしょうね
ただ、効果の点からは微妙なので兵站拠点の破壊に回したほうが良かったんじゃないかと思ってしまいます
>「秋の反撃もゆっくりしたプロセスで始まった。ある時点を過ぎた時、反撃が急速に進展していると誰もが気づいたが、現在の反攻作戦も同じようになるだろう。」
ゼレンスキー大統領は加熱する世論の期待を抑制したいのか、煽りたいのか、どちらなのかよくわからなくなりますね。
他方では「現在の反攻がハルキウ反攻のように進むことを期待しないでほしい」と述べながら
一方ではこのように、いずれは秋の反攻の再来になると期待を煽り立てるような形をいう。
どう解釈すべきのか少し難しいです。
言いたいのは「早急な戦果を期待しないでほしい。焦らずに見守ってくれれば最後にはハルキウと時と同じくらいの勝利するから」ということで、それほど複雑な事をいっているわけではありません。
最終的な結果はハルキウ州奪還のようになるが、その結果を得るまでのスピードは別と言いたいんでしょう。
そりゃあ火加減というものでしょう。沸騰して吹きこぼれてもいけないし、火が弱すぎて生煮えになってもいけない
国民には適度に危機感を持ちつつ戦い続けてほしいし、西側諸国には期待しすぎず期待して最終的な勝利を信じて根気強く応援してほしいと思ってるんじゃないですかね。
温度管理のために発言する時期によって煽ったりたしなめたりするのは仕方ないと思いますよ
やはり橋などの大型の構造物に壊滅的なダメージを与えるのは中々難しいのですね。
なんとか南部を孤立させられる程度まで進軍できることを願っています。
そのまま解釈すればいいんでは
この戦争は総力戦なんだから大統領の手からは既に手は離れている
ゼレンスキーの戦争ではないし、今の時点ではもはやプーチンの戦争ですらない
軍事的決着がつくまで終わりがないんだよ
ヘルソンの時はかなり早い段階でHIMARSによる後方打撃が成功し、重要なアントノフスキ橋とノヴァカホフカダムのダム橋が継続して攻撃されていた。弾薬庫や指揮所への攻撃も視覚的に多く確認されていた。
ヘルソンより遥かに強化され、要塞化の時間も十分にあり、陸橋からの補給も海上輸送も期待できるザポリージャのロシア軍をこの時と同じように孤立させるには散発的に橋を攻撃するのでは不十分である。
ストームシャドーは亜音速の巡航ミサイルに過ぎずロシア軍の標準的な防空兵器で迎撃可能であり、母機も不十分と推測されるため現在のウクライナ軍に同じ成果を求めることはできないだろう。
更なる後方打撃能力の緊急供与をウクライナは求める必要があるが、約束違反の西側兵器使用の越境攻撃の影響が影を落とす。
ロシア領への攻撃は明らかに悪手だったと改めて強調しておこう。
残念ながらパンツィルでストームシャドウの迎撃に失敗してる画像がネットに流れてますね
西側各国の見解見ても越境攻撃にそれほど否定的な意見は無いし世論も沸いてない。
何より一番微妙な反応していたアメリカはついこの間の国防権限法の草案にウクライナ向けATACMS供与を盛り込んでるから影なんて落ちてないよ。
越境攻撃をした直後に英国ドイツは認めるような発言をしているし、アメリカもあえて推奨はしないがやるのはウクライナの自由と言ってるし、基本的には西側諸国はどこも黙認してるから何の問題もない。
むしろその後に戦闘機連合が加速してF-16の供与が事実上決まったし、西側諸国に対してエスカレーションの心配が無いというウクライナの越境攻撃によるアピールが成功した形だ。
日本の有事にもこういう国際世論への間違った配慮が蔓延るんでしょうね。
少なくとも4発のストームシャドーがロシア軍の防空網を突破し、目標に命中して損害を与えたということですよね。
今後の展開を見る必要がありますが、その意味で今回は目的を達成したと言えるかと。
探知回避のための地形プロファイルマッチングによる低空侵攻だったのでしょうか。ロシアにとって厄介な兵器になるかもしれません。
いくつかのソースを見ましたが「4発のストームシャドウが発射され、うち1発が着弾」だと思います
機械翻訳の結果を精査できるほどロシア語に詳しくないので間違っているかもしれませんが、出回っている映像でも着弾は1つに見えるので、たぶん合っていると思います
か○ぱぱや他のツイッターアカウントでも分析してるけど、2発着弾なのが確実そう
参考記事添付のツィッター映像からすると、
チョンガル橋及び並行する車道橋が損傷を受けたようです。他に至近の着弾痕が映っています。
橋への命中は計2発で少なくとも1発は至近弾ですね。もう1発は外れて川の中かも。4発の攻撃を受けたと言明されているのは計4発の着弾が目撃されたということでしょう。
最終誘導の精度は今一ですが、目標までの長距離を撃墜されずに到達したことに意味があるかと。
クリミアからウクライナ南部に渡る交通の70%がこの橋を通過するとの話で
決して過小評価できるような攻撃ではないですね
迂回ルートがあるとはいえ時間や交通容量の問題もありますし
ただし修理が可能な程度の損傷であると言う点はその通り
日本で例えると大阪あたりから四国にいくのに明石海峡大橋~淡路島~四国を通ってたのが、ぐるっと迂回して岡山県の瀬戸大橋やフェリーを使わなきゃいけなくなるような状態ですかね。
この戦争中の疑問なんだけどロシアはなぜドニエプル川にかかる橋を攻撃して東西のウクライナ軍の兵站線を分断しようとしないのだろうか?
鉄道橋だけでも破壊したらウクライナの兵站にかなりダメージを与えそうな気もするが。