欧州関連

欧州の次世代戦闘機プログラムが新たなパートナーを獲得、ベルギーが参加

パリ航空ショーの開幕に合わせてマクロン大統領は19日「ベルギーがFCASプログラムにオブザーバー資格で正式参加する」と発表、米ディフェンスメディアも「FCASは新たなパートナーを獲得した」と報じている。

参考:Salon du Bourget 2023 : la Belgique rejoint le Scaf comme observateur
参考:Belgium joins European FCAS warplane program as observer

FCASプログラムに参加するフランス、ドイツ、スペインは新たなパートナーを獲得した

ベルギー産業界はF-16導入でライセンス生産や整備事業など経済的な恩恵を手にれたが、政府はF-16の後継機にプログラム参加を見送ったF-35Aを選択したため、同国の航空産業界は水平尾翼を製造する代替サプライヤーの地位しか得られず、現地メディアは「この選択は産業補償の面で大きな失望を伴うものだった」と酷評しており、既にベルギー産業界はF-35Aの後継機を検討する作業グループを結成、国防総省に働きかけて第6世代戦闘機プログラムの開発に関与できるかを探っている。

出典:Public Domain ベルギー空軍のF-16AM

独航空産業界の関係者は米ディフェンスメディアに「ベルギーは未来戦闘航空システム(Future Combat Air System=FCAS)プログラムの関係者と接触し、当面は正式加盟ではなくオブザーバー資格でプログラムに関与できないか協議している」と明かしていたが、マクロン大統領は19日「ベルギーがFCASプログラムにオブザーバー資格で正式参加する」と発表した。

オブザーバー資格でのベルギー参加はフランス、ドイツ、スペインの間で締結された契約内容を変更するものではなく、ベルギー産業界が将来的にFCASプログラムで「何に関与できるか」を検討するための措置に過ぎない。

出典:Rama/CC BY-SA 3.0 fr NGFのArtistImageで公式のイメージではない

つまりオブザーバー資格で参加するベルギーは「限定的なFCASプログラムに関する情報へのアクセス」が許可され、これに基づき正式参加の検討=プログラムの将来性、進捗状況、投資とリターンの兼ね合いを検討することが可能になり、プログラムに参加しているフランス、ドイツ、スペインの参加企業も現段階でワークシェアの変更を心配する必要がなく、米ディフェンスメディアは「FCASは新たなパートナーを獲得した」と報じている。

仏国防省は「ブリュッセルをFCASプログラムに参加させることでベルギー産業界とFCASのサプライヤーとの協力関係がより緊密になり、これはフランス政府にとってメリットだ」と述べ、エアバスも「研究・開発段階のプログラムにオブザーバー資格で参加することはよくあることで、新たなパートナーが正式参加国と協力関係を築くのに有効だ」と言及したが、ベルギー参加の意義については「まだ言及するには少し早く、これからの歩み次第で歴史が刻まれていく」と語った。

出典:Lockheed Martin

因みにダッソーの最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は「F-35を選択したベルギーに仕事を分け与えたくない」と主張しているが、FCASのエンジン開発を担当するサフランで最高経営責任者を務めるオリビエ・アンドリエス氏は「ベルギーがGCAP(日英伊が次世代戦闘機を開発するための枠組み)ではなくFCASに参加することを希望する」と述べており、フランスもトラピエ氏を除けばベルギーのFCAS参加に好意的だと言えるだろう。

関連記事:ベルギーが欧次世代戦闘機に関心、ダッソーは仕事を分け与えた無くない
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関連記事:サウジアラビア、英国主導のFCASプログラム=テンペスト開発に参加

 

※アイキャッチ画像の出典:SCH Hamilcaro / Ministère des Armées

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コメント

    • 匿名希望係
    • 2023年 6月 21日

    ダッソーからしたらライセンス生産やノックダウンでもメリットなさそうだしな
    60機だとノックダウンですらつらいのでは?

    7
    • ブルーピーコック
    • 2023年 6月 21日

    生産数の増加と開発費の負担軽減になるならって感じか。

    2
    • 七面鳥
    • 2023年 6月 21日

    むしろこっち(GCAP)くんな、と。
    ※完成後に言い値で買うならOK。
    あっちいって、「船頭多くして船山を上る」の再現でもしててくれと……

    4
    • バーナーキング
    • 2023年 6月 21日

    反対してるのはトラピエ氏のみ、と言ってもよりによってダッソーのトップだからなぁ。
    そして公言してるのは1人でも内心では同様に思ってる人間は少なからずいるだろうし正直また余計な火種を抱え込んだ様に見える。
    60〜70機ってのは開発段階での見込み需要としては相当大きい数字だとは思うけど、それだけに↑の潜在的反対派とスケールメリット目当ての賛成派が揉めそう。

    6
      • 匿名希望係
      • 2023年 6月 21日

      ベルギー軍の戦闘機全機と交換する前提ですけどね。>60~70

      1
        • バーナーキング
        • 2023年 6月 21日

        「見込み」需要ですから。
        F-35すら更新しようってんだから国内産業への還元度合いによっちゃあ当然F-16も同じ機種で更新する可能性はあるし、少なくともベルギーはそれを見せ札にしてくるでしょう。

    • DEEPBLUE
    • 2023年 6月 21日

    こう言ってはあれですがババを引き取って貰って助かりましたね。しかし、航空機の国際共同開発で平等なワークシェアってやっぱり机上の空論のような・・・。B787とかにしてもボーイングが他国に任せられる範囲を投げてる訳ですし

    4
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