ポーランドのブラスザック国防相は今年5月「新型潜水艦の取得プログラムを立ち上げる」と表明したが、この計画に欧州とアジアから11社が手を挙げており、SAAB、Naval、TKMS、Navantia、Fincantieri、現代重工、ハンファオーシャンの戦い発展しそうだ。
参考:Polish “Orka” Submarine Procurement Gains Weight (and Bids)
ポーランドは安全保障面で韓国との結びつきが強いため、伝統的な欧州勢と韓国勢の戦いは非常に興味深い
ポーランド海軍は旧ソ連製のキロ級潜水艦「オゼル」に加え、ノルウェーから購入した4隻の中古潜水艦(205型潜水艦の派生型で207型もしくコッベン級潜水艦)を運用していたものの、2021年までにコッベン級潜水艦は退役し、老朽化したキロ級潜水艦の能力は非常に限定的で、新たな潜水艦を調達するためオルカプロジェクトを立ち上げた。
当時のポーランド海軍は潜水艦の運用範囲を「バルト海」に限定していたため、オルカプロジェクトで調達する潜水艦には「全長70m以下」という条件(ポーランドメディア曰く馬鹿げた条件)が設定され、2014年1月までに手を上げた企業は8社、設計案を提示してきたのは4社(SAABがA26、Navalがスコルペヌ、TKMSが214もしくは212A、NavantiaがS-80)だけで、検討が進められていた過程でウクライナ侵攻が勃発し、ブラスザック国防相は今年5月「新型潜水艦の取得プログラム=新オルカプロジェクトを年内に立ち上げる」と表明。
新オルカプロジェクトで調達する新型潜水艦には「AIP機関による長距離作戦能力」や「巡航ミサイルによる対地攻撃能力」が要求され、ブラスザック国防相も「調達する潜水艦の維持やサポートを行うためオフセット協定=関連したサービスを国内で行うための技術移転を求めることになる」「オルカプロジェクトの入札アプローチはオーストラリアの潜水艦入札モデルを参考にした」と明かしていたが、この計画に11社(Babcock、SAAB、Naval、TKMS、Navantia、Fincantieri、現代重工、ハンファオーシャン+建造実績のない欧州企業)が手を挙げているらしい。
ポーランドが要求する潜水艦のサイズも能力も大きくなったため、SAABはC718、Navalがバラクーダ級(シュフラン級原潜の通常動力バージョン)、TKMSが212CDもしくは212CD-E、NavantiaがS-80Plus、FincantieriがU212NFSを提案する可能性が高いが、興味深いのは韓国勢に対するポーランドメディアの言及だろう。
旧オルカプロジェクトに関心のあった大宇造船海洋(現在のハンファオーシャン)は当時「ポーランドにはDSME1400(209/1200をベースに開発された輸出可能な独自モデル)しか提案できない。214型は輸出する権利がなく最新のKSS-IIIも提供できない」と述べていたが、ポーランドメディアは「6年が経過して状況が変わっている可能性(KSS-IIIベースのDSME3000をインドやカナダに提案中)があり、通常動力型にも関わらす弾道ミサイルを垂直発射できるKSS-IIIはポーランド海軍にとって非常に魅力的だ」と指摘している。
ポーランドは安全保障面で韓国との結びつきが強いため、伝統的な欧州勢と韓国勢の戦いは非常に興味深いものがあり、K2のようにDSME3000の採用が実現すれば面白いことになるだろう。
因みにブラスザック国防相は今年1月「ボルスクを1,400輌購入する」と発表した際、M1A2装備部隊向けに「K9の車体を流用したヘビーボルスクを開発する」と言及していたが、14日にCBWP(ヘビーボルスクのこと)開発・調達に関する契約をスタロヴァ・ヴォラ製鉄所と締結、2025年に量産車輌(調達規模は数百輌/噂では400輌~700輌の調達を予定)の引き渡しが開始される予定らしい。
Pierwszy z zatwierdzanych dokumentów dotyczy opracowania Ciężkiego Bojowego Wozu Piechoty (CBWP). Podstawą tej konstrukcji będą elementy haubicy samobieżnej Krab/K9, ponadto CBWP uzbrojony będzie w Zdalnie Sterowany System Wieżowy ZSSW. Rolą nowego wozu będzie bezpośrednia… pic.twitter.com/rE7asF2bFa
— Ministerstwo Obrony Narodowej 🇵🇱 (@MON_GOV_PL) August 14, 2023
さらに16日にはアローヘッド140の起工式(現地建造)がポーランドの造船所で行われるとアナウンスされている。
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※アイキャッチ画像の出典:NAVANTIA S-80Plus
>「オルカプロジェクトの入札アプローチはオーストラリアの潜水艦入札モデルを参考にした」
つまり最終目標は原子力潜水艦だな!(ネタ
多分、NATOの指揮下で行動すると思うので、バルト海から出ないのでしょう。
とすれば、日本みたいに航洋型の大型の物である必要はないでしょう。
AIPもあれば良いのでしょうが、バルト海は狭いし、通常潜の行動は
待つのが主と思うので、絶対必要ではないような気がします。
言い方悪いけれど、領海内で待つ場所が決まるなら、そこまで地上から
動力/通信ケーブルを引いても良いのではと思ったりします。
ケーブルが繋がれば、海中での行動時間に制約は、一応、無くなるでしょうし。
待機場所からは、搭載する二次電池の性能の範囲で行動ができるでしょうし。
通常潜が水中からSLBMを撃つことは、ソ連のゴルフ型で前例がありますね。
仮にモスクワを狙うならば、射程は1,000kmくらいでしょうか。
ちょうど良い既製品はないと思いますので、巡航ミサイルになるのでは。
領海内での聴音と待ち伏せ、カリーニングラード封鎖なら無人艦でも十分では。
バルト海の外で活動できる潜水艦が必要なのか、ミサイルをたくさん積める潜水艦が必要なのか
どちらを選んでもロシア側の対抗手段は限られそうな
有事の際バルチック艦隊にできることは、なんだろう・・・
無益・時間の無駄なので、煽りに触れないようにしましょう。
バルト海は、ほとんどが水深100m未満だしなぁ…
リンク
その前に先立つモノが…。
今回の件はただのSSG入札ですが、この十数年で陸軍国の海洋進出とでも言うべき現象が加速度的に進んでいるのが面白いですよね。ポーランドは元をたどればコテコテの陸軍国家ですし、今や軍艦や潜水艦の輸出強豪である韓国もほんの20年前までは海軍なんてあったっけ?という扱いでした(そしてここには当然中国なども入ってくる)。
以前は自明のものとして扱われていた米国の世界覇権は米軍の軍事力の優位に、米軍の軍事力の優位はシーパワーに立脚していました。中国海軍の崛起が西太平洋での米国の政治的優位までをも揺るがしている事は今や説明不要ですが、中国だけでなく世界の海で海洋進出が進んだ時、覇権国家の優位性や国際規範のあり方もまた変わるのかもしれませんね。
嫌な言い方をすると。
大陸国家は、”自分達の海岸線のその先の海底も自分達の物”
と言っていると思えます。潜水艦を”水中戦車”と思っているのかな。
国府政府(現中華民国:台湾)が言い出した”九段線”もその類と思います。
ロシアも北極海で似たこと(セクター理論)を言っています。
今は大陸棚ですが、そのうちに”海溝の底もオレの物”とか言い出しそうです。
今までは、笑い事(?)で済んでいましたが、技術が進むと現実になります。
日本の場合、日本海分割論(?)と戦わねば、ですね。その件で竹島も。
東シナ海では、尖閣を巡って既に戦っているわけですし。
歴史的に見れば帝政ドイツや旧ソ連邦の「陸式海軍」も滅んだわけで、それらの国にあやかりたいものです。
そうそうたるメンツだけど、要求の一つである巡航ミサイルを単独で用意出来そうなのってフランスと韓国ぐらいじゃないかな。これ以外だとトマホークか将来的に出てくる潜水艦発射型NSMだけど、自国でミサイル用意出来ない国は何を積むんだろうか。