米国関連

米空軍がYFQ-42Aの実機を公開、CCA即応部隊もビール基地に創設予定

米空軍は有人戦闘機に随伴可能な協調戦闘機=CCAを計1,000機取得するため開発を進めており、第1弾調達のYFQ-42AとYFQ-44Aは今夏に初飛行を予定しているのだが、米空軍はYFQ-44Aに続きYFQ-42Aの実機を公開、アルヴィン参謀総長も「この無人戦闘機が敵に警告を与えることになる」と述べた。

参考:DAF begins ground testing for Collaborative Combat Aircraft, selects Beale AFB as the preferred location for aircraft readiness unit
参考:GA-ASI Moves Into Ground Testing of New YFQ-42A CCA

実際に運用してみると「想定外」があるかもしれないが、従来の有人戦闘機で航空戦力の質と量を増強するより安価になる可能性は高い

米空軍は有人戦闘機に随伴可能な協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraft(CCA)を1,000機調達する予定だが、特定のCCAを1,000機調達するのではなく特性の異なる複数のCCAを調達するつりもりで、第1弾調達=Increment1にはLockheed Martin案やBoeing案を破ってAndurilのFury案とGeneral AtomicのXQ-67A案が選定された。

出典:General David Allvin

もはや有人戦闘機と無人戦闘機が協調して任務を実行する未来は夢物語ではなく「目前に迫った現実」で、米空軍のアルヴィン参謀総長も今年3月「我々は既にCCAのプロトタイプを2機保有している」「数年前に空想上の産物でしかなったCCAは今夏に飛行可能になる予定だ」「どちらのプロトタイプも将来の制空権確保において極めて重要な存在になるだろう」「我が国の歴史上初めて(両プロトタイプを)戦闘機を意味するYFQ-42AとYFQ-44Aと指定した」と発表。

米空軍も今月1日「CCAプログラムの地上テストを開始した」「これは自律システムを空軍に供給する取り組みの大きなマイルストーンだ」「地上テストはYFQ-42AとYFQ-44Aの厳格な評価が含まれ、特に推進システム、アビオニクス、自律能力統合、地上管制インターフェイスが重点的にテストされて今後の設計案決定に役立てられ、今年後半に予定されている飛行テストに向けて準備を行う」「Increment1の生産決定は2026年度に予定され、同じ年にIncrement2の開発も開始される」と述べてAndurilのFury=YFQ-44Aの実機を公開。

アルヴィン参謀総長も「CCAプログラムの地上テストが正式に開催された」「これは初飛行と迅速な納入へ向けた新たな1歩だ」「この無人戦闘機はきっと凄いものなるだろう」と述べていたが、20日「YFQ-42Aを世界で初めて公開する」「CCAは費用対効果が高いだけでなく本当に強力な戦闘機だと証明されるだろう」「この無人戦闘機が敵に警告を与えることになるのは間違いない」と述べ、General AtomicのXQ-67A案=YFQ-42Aの実機を公開した。

General Atomicも「YFQ-42Aは当社にとってエキサイティングな次へのステップだ」「今夏後半に予定されている初飛行に向けて地上テスト段階に移行したことを嬉しく思う」と、米空軍も「CCAは拡張性の高い戦力パッケージと人間の機械のチーミングに向けた空軍の取り組みとって必要不可欠だ」「CCAは有人機と一緒に運用することを前提に設計されており、作戦範囲を拡張し、生存性を高め、戦闘環境における致死性を向上させる」「航空戦力の増強においてCCAは迅速な展開、手頃な価格、大量調達を実現し、従来戦闘機の数分の1というコストで戦闘能力を提供できる」と述べている。

さらに興味深いのは米空軍がCCA運用に向けてカリフォルニア州ビール基地をCCA即応部隊(ARU)の根拠地に選定したことで、ARUは即座に展開可能なCCAを供給するのが役割となり、CCAは半自律システムなので即応性の維持に日常的な訓練飛行は必要なく、ARUは従来の飛行部隊よりも少数の人員で「CCAを飛行可能な状態に維持すること」に集中するらしい。

要するにMQ-9の即応性を維持するには訓練飛行を通じてオペレーターの練度維持、この日常的な訓練飛行を実施するには機体を整備する人間も必要となり、もし1,000機のMQ-9を同時運用するなら1,000人のオペレーターも必要になるが、CCAは半自律システムなのでオペレーターも日常的な訓練飛行も必要なく、従来機に比べてCCAの戦力維持コストは劇的に安いという意味だ。

出典:U.S. Air Force

勿論、これは理論上の話なので実際に運用してみると「想定外」があるかもしれないが、従来の有人戦闘機で航空戦力の質と量を増強するより安価になる可能性は高いと思う。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force

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コメント

  • コメント (4)

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    • ブルーピーコック
    • 2025年 5月 20日

    自衛隊が空戦AIのゆっくり動画を出してたけど、ああいうのをインストールするだけで済むなら安上がりよな。いざとなったら盾にもできるし(機体画像識別式のシーカーだと分が悪いが)

    2
    • あるまじろ
    • 2025年 5月 20日

    コイツ自体がスペック的に強いって訳じゃなくて、便利とか効率が、良いって感じか。さてモノになるかしら

    2
    • さとし
    • 2025年 5月 20日

    有人機は大型全翼機に寄っていくのに対し、無人機は案外小型に見えますね
    ウェポインベイの有無、容量や戦闘行動半径が気になるところ

    2
    • ゲストさん
    • 2025年 5月 20日

    半分使い捨てのドローンと違って、曲がりなりにもジェットエンジン積んで、繰り返し長期間運用する機体が1,000機増えるとか、整備員への負担は凄そうですね。
    各即応部隊に何機配備されるのか知りませんが、維持整備体制をどの様に構築するのか興味があります。

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