F-35 Block4の新型レーダーは「2025年製造分=Lot17からの組み込み開始」を予定してたものの、国防総省とLockheed Martinの強引な開発スケジュールが破綻し「米軍にはレーダー未搭載のF-35が納入されている」「バランスを保つため機首に重りを追加する必要がある」と報じられている。
参考:Current F-35 Configuration Complicates Fielding Of APG-85 Radar
参考:Are F-35s Being Delivered To The USAF Without Radars? (Updated)
参考:Air Force Now Denies Receiving F-35s Without Radars
どう見ても米空軍の発表は「これまでの事実と食い違うため怪しい」というしかない
F-35 Block4を完成させるにはBlock4のソフトウェア、システムインフラストラクチャーを刷新するTechnology Refresh3、F135の能力を強化するEngine Core Upgrade、電力・冷却システムを改良するPower and Thermal Management Systemの4要素、さらにAN/APG-85への換装、AN/ASQ-239、EOTS、DASの強化、ウェポンベイへのサイドキック搭載なども必要で、現時点で完成しているのはAN/ASQ-239のアップグレードとサイドキックぐらいしかなく、TR3はLot15から量産機への組み込みが始まっているもののソフトウェアが未完成だ。

出典:Northrop Grumman AN/APG-81
AN/APG-85の存在は米空軍が2022年に提出したウィッシュリスト(空軍予算でカバーできない案件への資金供給を議会に要求する要望書)で初めて存在が確認され、F-35が採用しているAN/APG-81の後継レーダーではないかと予想されていたが、Northrop Grummanは2023年1月「Block4向けの次世代レーダーとしてAN/APG-85を開発中だ」「これは全てのF-35と互換性のある先進的な多機能レーダー」「将来の敵対的な空中の脅威や地上の脅威に対抗する能力を備えている」「利用可能な最新技術を幾つか採用して制空権の確保に貢献する」と発表。
さらにF-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)の担当者も「Lot17(2025年から始まる生産ブロックのこと)からAN/APG-85の組み込みが始まる」と明かし、Breaking Defenseは昨年6月「Northrop GrummanがAN/APG-85のタイトな開発スケジュールに懸念を表明していた」「この懸念はJPOとLockheed Martinによって却下された」「両者は出来るだけ早くF-35と新しいレーダーを統合したいと考えていた」「両者はNorthrop Grummanに圧力をかけてタイトな開発スケジュールを受け入れさせた」と報じていたが、Northrop Grummanの懸念は的中。

出典:Lockheed Martin
Breaking DefenseはLockheed Martinのジム・タイクレット最高経営責任者が米空軍のアルヴィン参謀総長に送った3月21日付けの書簡を入手し、この中で「AN/APG-85には遅延のリスクがある」「Lot20生産機に向けて現実的な選択肢を提供するため積極的な措置を講じている」「設計チームは今年1月に新しい機体の設計を開始した」「この作業は8月までに完了する予定だ」「この新しい機体設計は長期に渡る共通の構造を提供する」「これによって生産の最適化と潜在的な遅延のリスク軽減を実現できると記述している」と報じた。
この話を要約すると「Lot17からのAN/APG-85組み込みは絶望的」「Lot20からの組み込みにもリスクがある」「両方に対応できる機体設計を開始した」「Lot20にAN/APG-85が間に合わないリスクを軽減するためLot20向けのAN/APG-81調達を開始した」「もしLot20にAN/APG-85が間に合えば調達したAN/APG-81はスペアパーツに回される」「リスク軽減策についてNorthrop Grummanは費用の25%を負担している」「この設計がプログラム参加国とFMS調達国に拡大適用されると両レーダー搭載に対応した共通構造になる」「そうなれば将来的にAN/APG-85への換装を希望した際の改修範囲を最小限に抑えることができる」となる。

出典:Lockheed Martin
つまり「AN/APG-85は米軍向けで、今のところ国際顧客に採用されない」という意味になり、Defense Dailyは最近「Lockheed Martinは昨年6月以降、F-35Aを含む全てのF-35をレーダー未搭載状態で各軍に納入している」「米軍の現場部隊に納入されたF-35はAN/APG-85用のマウントが備わっているもののAN/APG-81とは共通性がない」「レーダー未搭載機は飛行中のバランスを保つため機首に重りを追加する必要がある」「レーダー未搭載機もデータリンクを備えたAN/APG-81搭載機が随伴すれば飛行可能」「この問題は国際顧客には影響を与えていない」と報じた。
War Zoneは12日「Lot17製造分の機体がレーダー未搭載状態で納入されているという報道を米空軍は否定した」「Lot17製造分のF-35AはAN/APG-81を搭載して納入されている」「一方でJPOはセキュリティ対策の強化を理由に報道内容への回答を拒否した」「依然としてAN/APG-85搭載機にAN/APG-81を一時的に搭載できるのか不明なままだ」「それが可能でも変更作業がどの程度大規模なものになるのか、機体構造にどの程度影響を及ぼすものになるのかは分かっていない」「仮にレーダー未搭載機が納入されていなくてもBlock4が重大な課題に直面している事実に何の変わりもない」と指摘。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
米軍向けのLot17製造分が「レーダー未搭載機なのか」「AN/APG-81を搭載して納入しているのか」は情報が錯綜しているものの、Lot17からのAN/APG-85の組み込みを開始するという目標が達成されていないことに変わりなく、両方に対応できる機体構造をもつF-35の設計はLot20(推定2027年~2028年の間の生産分)まで待たなければならず、どう見ても米空軍の発表は「これまでの事実と食い違うため怪しい」というしかない。
因みに米空軍のシュミット中将は2024年4月「F-35 Block4の能力は2030年代まで実現しないためBlock4自体を再構築する」と言及、米政府説明責任局(GAO)も2025年9月発表の報告書の中で「F-35は過剰な約束と期待外れの成果を繰り返している」と指摘し、Block4ダウングレード計画についても「Block4はF135の改良と熱管理システムの能力向上を必要とせず、2031年までに実現可能な機能(電子戦、兵器、通信、ナビゲーション機能)に重点を置く」「F135の改良と熱管理システムの能力向上に依存する機能の一部は将来のアップグレードまで延期され、戦闘ニーズを満たさなくなった機能も削除される」と説明した。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Eduardo Otero TR2仕様のコックピット
GAOは「我が国だけでなく同盟国・パートナー国の安全保障にとってもF-35は極めて重要だが、生産開始から20年が経過した現在も過剰な約束と期待外れの成果を繰り返している」「国防総省は2025年秋までにBlock4の主要サブシステム調達文書を正式化する計画だ」「この文書には承認されたBlock4の能力リストが含まれる見込みだ」「現時点でダウングレードされたBlock4の推定コストは不明」「担当者は2025年後半まで新たなコスト見積もりは完了しないと述べている」「当初予定より55%も増加した開発費用165億ドルからコストがどう変化するか予想できない」とも指摘。
F-35Block4の開発は「いつ完成するのか誰にも分からない」と言われるほどコントロールされておらず、Block4のダウングレードは新たに定義されたコスト、スケジュール、パフォーマンス目標の範囲内で新たなサブシステムを実行可能な状態にすること、つまりBlock4の機能追加を「現実的に提供可能な機能のみ」に削減することで「開発計画を予測可能なものに戻す」という意味だが、既にF-35の発電・冷却能力は設計要求を越えているためF135の摩耗が問題になっており、F135の改良と熱管理システムの能力向上なしでのBlock4実装はさらなるメンテナンスコストの増加と航続距離の低下を招くかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Northrop Grumman





















そのうち三式戦飛燕みたいに首無し機体が並びそう……
レーダー未搭載は実質首無し機体なのでは…。
きっとペットネームは、デュラハンですね。
レーダー未搭載なりに、使い道あるんですかね?
素直に考えれば、スクランブルなど各種の任務には使えないのだろうなあと…
よくわかりませんが、爆撃任務なら行けるんじゃないでしょうか?
F-117はステルス性のためレーダー無しで運用されてました。
勉強になります。
思いもよらない使い方をするかもしれませんね。
TR3の戦闘ソフトウェアがまだ完成してないので対地攻撃もできないと思いますよ
ほんとどうしますかね。
中途半端な機体で、ただ飛行訓練して機体やエンジンが摩耗するのも、金捨てるみたいで勿体ないだけな気もしますし…
逆に考えればこの未完成な機体を積極的に活用することで、実戦に対応した既存のTR2仕様機を訓練で消耗しないで済む。
仰る通りかもしれませんね。
本末転倒なのですが、完成を待つという意味では現実的な選択肢かなと感じます。
多分、飛ばして基地に戻るくらいの訓練とか、地上訓練には使えるんじゃない?
よその記事にレーダーを搭載した僚機がいればデータリンクで照準できるような事を書いてあったけど、レーバテインじゃあるまいし……
なんだか、超高価な訓練機みたいな位置づけになるでしょうかね…。
第三次中東戦争では、イスラエルが当時使っていたミラージュ3が搭載していたシラノレーダーの肉眼以下の探知距離と信頼性の低さに業を煮やして、レーダーを降ろしてバラストを積んで戦っていた話を思い出しました(笑)
情報ありがとうございます、勉強になります。
前例があるという意味では、先祖返りしたんでしょうかね(笑)。
こんな有り様でどうやって米軍はPLAと戦って勝つつもりなのか…?(長嘆息)
中国みたいに武器も物資も無くとも、その分精神力で勝つのだ
トランプ級もゴールデンドームもいらないから早くF-35を完全体にしてくれ!
本家のアメリカでもこの有様だと日本もJSMの導入決めてるだけにF-35 Block4の迷走は頭が痛い話ですね。
対空ミサイル自体にレーダー付いてるから
AWACSの情報を元におおよその方向にミサイル放てば勝手に撃墜してくれないかな
そんな古臭い発射方法しなくても、レーダー切った母機から発射したAMRAAM(AIM-120D)の中間管制をAWACSがコマンド誘導で実施して、真面目に当てに行くこと出来ますよ。先日もミサイルはPL-15でしたけど、パキスタン空軍がやってて、インドのラファールを撃墜してました。
ただ、AWACSはPL-17の超長距離攻撃に無力なので、ガチの軍との戦闘になると、AWACS自体が使えない世界線になってるのです。。。
似たようなことはA-10で既にやった。
F35の件でアメリカへの要望があるとすればblock4の実装はもういいから!
とにかくミサイルや機銃を発射できて戦えれば多少の事には目を瞑るから早く物を寄越せだな。
B-21は上手くいったのになーんでF-35は……まじで飛べてミサイル撃てて空戦出来るようにしてくれ、対艦ミサイルとか贅沢な事は言わんから
ノースロップ・グラマンは結構狭い範囲で限界を見極めて行動してる感じですけど、ロッキードとボーイングは手を広げ過ぎて失敗しているキがしますかね。
F-35の炎上から反省して、開発方法を見直して開発したのがB-21なので
B-21まで炎上してたら、アメリカの航空機開能力は本当に酷い事に…
F-35から学べることは、「F-35と同じ方法で航空機を開発してはならない」ぐらいでしょうか
F-35採用国に情報開示してシステム自由に開発できるようにすれば解決できると思うがな
一方、ロシアはエンジンを使い捨てにした。
スターリンクの使用ができなくなったロシア軍は中継器を搭載した気球を飛ばしている。
真っ先に三式戦が思い浮かんだけど先に書かれてた(笑)。
それはそうと「生産開始から20年が経過した現在も」は原文がそうだったのでしょうが、より正確には初飛行から20年ではないですかね。
じゃあ、三菱電機あたりがコンパチだけどもっと性能が上のレーダーを開発して、載せちゃえ。
そっちの方が評価されたりして。
仮にレーダー未搭載機がしばらくの間あるとして。
レーダー以外は大丈夫なのかな?。IRSTとか、データリンクとか、機載コンピュータとか?。
IRSTが健在であれば、レーダーを使わない作戦にならば、実戦参加ができるのかしら?。
それとも訓練用途だけなのかな?。
話が変わって、実用化が近いとされている?人造ダイヤ基盤の半導体はどこまで進んでいるのかな?。
熱に強いそうだから、ある意味冷却に掛かる手間が減って、現用のエンジンで間に合ったりして?。
しかしNGがここまで梃子摺る上にやたら機密度が高いのなんでだろうな
やってることはAN/APG-81のGaAsからGaNへの変更だと思ってけど、胴体延長の話もあるしよっぽど高性能なのか、単にエンジンの発電力が足を引っ張ってるのか
このていたらくで「第六世代技術を組み込んだF-35」とか双発型の「F-55」とかよくも言えたモノだなと……
やっぱりC++言語は不味かったんじゃ無いかなあ。
F22とかで実績あるADA言語がよかったんじゃ。🤔
ADAなんかにしたらそもそも扱える人が…
だめですか・・・。
何の言語えらんだら良かったんだろう。
普通にC/C++で良かったと思います。強いていうなら次に作る時はRustあたりでしょうかね
軍に限らず産業系は動的確保とか例外が禁止されるのでそこが一番重要であって、ある程度普及してるなら言語の種類はそこまで関係ないでしょう
ガーベージコレクタの有無はそういった世界では重要視されるというか?
どういう評価なんですか?
リソースの上限が決まっていて一定時間内で処理や応答を返す必要のあるシステムでは一般的なガーベージコレクタは使われません。
ガーベージコレクタはペナルティの大きい処理で応答時間にも影響を及ぼすため、言語やランタイム仕様上実装されていても使えないように制限されています。
つまり、言語の問題でなく要求されている仕様(ハードウェア、要件)に応じて言語で使える機能すら制限されることがあります。
へえ、コンピュータが高性能化されてるのに意外ですね。
回答、ありがとうございました。
言語の問題というよりも規模でしょうね。
F-22と比較してF-35は10倍のコード量(システム全体で20Mstep、うち戦闘機上で動作するのが8Mstep)と言われています。
少なくとも戦闘機上で動作するソフトウェアは高Gかつ高温から超低温環境下で一部をのぞいてリアルタイムに動く必要がありますから一般的なソフトウェアよりも過酷な条件だと思います。
そのうち、AIが統合ソフトを書くようになりますよ。
F-47とかKAANあたりで使うかもしれませんね。
今までは、AN/APG-85はレイセオンが開発/製造というニュースがありましたが、結局ノースロップ/グラマンだったのですか?
> レーダー未搭載機もデータリンクを備えたAN/APG-81搭載機が随伴すれば飛行可能
F-35のMADLとセンサーフュージョン、ミッションシステムの凄さはわかる一方でLMには「どんな判断だ」と言いたくなりますね。
TR3以前から楽観視が酷すぎます。
APG85へのアップグレードにどのような作業が必要になるのか不明ですが、「既存機体のレーダーマウントが交換できるものなのか」など米国連邦議会やGAOなどで明らかになってほしいですね。