オーストラリアは予告していた2026年版の国家防衛戦略と統合投資計画を16日に発表し、この中で「今後10年間に計1,170億豪ドル=約13兆円を追加し、計8,870億豪ドル=約101兆円を国防予算に投資する」「GDPに占める国防支出の割合は2033年に3.0%に到達する」と発表した。
参考:2026 National Defence Strategy and Integrated Investment Program
参考:2026 National Defence Strategy and 2026 Integrated Investment Program
オーストラリアが国家防衛戦略と統合投資計画を発表、3.5%には届かないものの大幅な国防費増額方針を示してきた
オーストラリアは2024年版の国家防衛戦略と統合投資計画の中で「今後10年間(2024年~2033年)の国防予算として7,650億豪ドル=約87兆円を投資する」と発表したが、2025年にトランプ政権が再登板してNATO加盟国にGDPに占める国防支出を5.0%まで引き上げるよう要求、NATO加盟国は2025年6月の首脳会談で「国防支出=3.5%」と「軍事インフラとしても活用できる分野(重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤など)への投資=1.5%」を組み合わせた総額5.0%の新支出基準で合意。

出典:NATO
これを受けて国防総省のコルビー政策担当国防次官は「NATOが5%の国防費目標を達成するため非常に強いコミットメントを示した」「これは世界中の同盟国、特にアジアにとって新しい基準となるだろう」と言及、ヘグセス国防長官もシャングリラ会合で「この地域の安全を保証してきた米国の役割に頼るのではなく、米国の同盟国はより大きな軍事負担を受け入れる必要がある」と発言し、2026年1月に発表した国家防衛戦略(NDS)の中でも「5.0%が国防支出の新基準だ」と明記してきた。
メディアの報道では米国が要求する国防支出の基準について「5.0%」と「3.5%」が用いられ混乱すると思うが、総額5.0%を構成する「軍事インフラとしても活用できる分野への投資=1.5%」はトランプ大統領の5.0%要求を満たすために考案された「都合の良い数字」でしかなく、軍事インフラとしても活用できる分野の明確な基準も定義されていないため会計処理の変更、例えば港湾施設への投資を防衛・安全保障関連への投資としてカウントできるため「各同盟国が柔軟性をもって支出できる」と表現される部分だ。

出典:U.S. Department of Defense
米国が要求する国防支出の新基準が5.0%であっても核心的な数字は従来の国防支出に相当する「3.5%」で、オーストラリア、韓国、台湾、日本も新基準に準じた国防支出へのコミットメントを求められており、オーストラリアは米国の要請を拒否して「2033年~2034年までに2.4%(現在は2.02%)まで引き上げる方針」を堅持、韓国も「国防予算を3.5%まで段階的に引き上げる」と約束、台湾も「2026年までに3.5%、2030年までに5.0%を達成する」と約束している。
日本は当時の石破首相が「防衛費は日本が決めるものだ」「他国に言われて決めるものではない」と述べたが、高市首相は所信表明演説の中で「防衛費2.0%への引き上げを2年前倒して今年度中に実現する」と表明、ただし「2.0%以上への引き上げ」については議論が始まったばかりで、インド太平洋地域の同盟国やパートナーの中で「国防費増額への取り組み」が最も遅れており、オーストラリアと日本だけが3.5%への引き上げを約束していない。

出典:Australian Defence Force/LSIS Susan Mossop
オーストラリアは予告していた2026年版の国家防衛戦略と統合投資計画を16日に発表し、この中で「今後10年間の国防予算として8,870億豪ドル=約101兆円を投資する」「2024年版の国家防衛戦略と統合投資計画と比較した場合の追加投資額は今後4年間で計300億豪ドル=約3.4兆円、2026年~2035年の10年間では計1,170億豪ドル=約13兆円になる」「NATO基準の計算方法で測ると2033年までにオーストラリアのGDPに占める国防支出の割合は3.0%に到達する」と明かし、3.5%には届かないものの大幅な国防費増額方針を示してきた格好だ。
国家防衛戦略と統合投資計画は長期的な国防支出に関する大まかな方針を示すもので、実際の資金は通常予算から供給されるため議会から毎年承認を得る必要があるものの、オーストラリアは8,870億豪ドルのうち4,250億豪ドルを優先事項に設定した水中能力(最大1,300億豪ドル)、海上能力(最大770億豪ドル)、長距離攻撃能力(最大350億豪ドル)、宇宙・サイバー能力(最大350億豪ドル)、水陸両用能力に対応した陸上システム(最大590億豪ドル)、航空能力(最大410億豪ドル)、ミサイル防衛(最大300億豪ドル)、兵站・後方支援(最大210億豪ドル)、精密誘導兵器・弾薬生産(最大360億豪ドル)に投資する。

出典:防衛省 海上自衛隊
ちなみに、汎用フリゲート艦(もがみ型護衛艦)計画には2035年までに150億豪ドル~200億豪ドルが投資される予定で、事前に報道されていた「オーストラリアは今後10年間の国防予算に530億豪ドルを追加し、この140億豪ドルを最初の4年間に追加する」という言及は「今回発表の実質的な増額分」であり、2026年版の国家防衛戦略と統合投資計画の中で言及された「計1,170億豪ドルの増額」は「2024年版の国家防衛戦略と統合投資計画の発表後に実施された増額分まで含んだ数字」という意味だ。
つまり、1,170億豪ドルから530億豪ドルを差し引いた「640億豪ドル」はアルバニージー政権が2024年版発表後に実施した「国防費増額分」で、ここに530億豪ドルを新たに追加すると2026年~2035年の10年間で計1,170億豪ドルの追加になる。
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※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force



















オーストラリアは、水中・海上・水陸両用+ロジスティクス(兵站・弾薬・情報支援)と見れば、『制海権+海中権』重視を感じますね。
イラン戦争のホルムズ海峡封鎖に対して、オマーン湾~アラビア海の逆封鎖で対抗している戦訓を見れば、海軍能力の重要性を非常に痛感します。
我が国も増額しなくては!だけでなく、この各国軍事費増額のビジネスチャンスに、いかに乗れるか?が大事。
インフラ、人材的にも、今が防衛関係企業のラストチャンスかも。
日本も負けてはいられないな