幾つかの国は「非米国製で輸出可能なトルコの第5世代戦闘機計画」に関心を示していたが、プロトタイプの完成と地上試験の開始を受けてアゼルバイジャンがカーン・プログラムに参加、パキスタンも正式参加に向けて協議を開始する予定だ。
参考:Milli Muharip Uçak KAAN Azerbaycan ile geliştirilecek
参考:After Azerbaijan, will Pakistan also join Turkey’s 5th generation fighter program?
カーンが完成すれば「イスラム教徒が多数を占める国」が入手できる初の第5世代機になる
トルコ航空宇宙産業(TAI)は国内の防衛産業企業がもつ技術と経験をフル活用して第5世代戦闘機「TF-X」の開発を進めており、今年3月にプロトタイプがロールアウト、エルドアン大統領は5月1日の式典でTF-Xの正式名称が「カーン(TAI KAAN)」になると発表し、このままプロトタイプの地上試験が順調に進めば12月末に初飛行を行う予定だ。
TAIはカーンの調達コストについて「1億ドル前後になる」と予測しており、幾つかの国は「非米国製で輸出可能なトルコの第5世代戦闘機計画」に関心を示していたが、トルコ産業界にとって本格的な戦闘機開発は初めての経験で、実機も存在しない設計図上の計画に手を挙げる国=開発参加や導入に踏み込んでくる国はいなかったものの、プロトタイプの完成と地上試験の開始を受けてインドネシアのプラボウォ国防相は6月「トルコとインドネシアン・エアロスペースとの交渉を模索している」と言及。
アゼルバイジャンもカーン・プログラムに参加するため7月末にトルコと協定を締結、両国は共同生産に向けてアゼルバイジャン側の産業評価を行い「一部のサブシステムをアゼルバイジャンで生産する予定だ」と報じられているため、アゼルバイジャンは事実上「MiG-29やSu-25の後継機にカーンを選択した」と解釈するのが妥当で、トルコのトゥフェクチ国防副大臣は2日「近いうちにカーン・プログラムへの正式参加をパキスタンと協議する」と発表したため注目を集めている。
米ディフェンス・メディアは今回の動きについて「アゼルバイジャンは主にカーン・プログラムを資金面で支援し、パキスタンはJF-17の開発と生産で得た経験でカーン・プログラムを支援することになる」と予想しているが、依然として国産エンジンの開発状況は謎に包まれており、カーン・プログラムが予定通り開発スケジュールを消化できるのか疑問視する声も多い。
プロトタイプのエンジンにはF110を採用しているが、カーンは海外輸出が前提なので量産機には「制約のない国産エンジン」の採用が不可欠で、昨年6月に発行された提案依頼書(RFP)にはTRMotor、Tusas Engine Industries、Kaleとロールス・ロイスのコンソーシアム(TAEC)が応じたものの、まだ開発の枠組みすら決定されていない状況だ。
カーン・プログラムは複数のBlockで構成され、現在のプロトタイプはBlock0と呼ばれており、トルコ空軍に引き渡すカーンの初期型=Block1は2029年までに開発され2030年~2033年の間に納品する予定なので、トルコは10年以内に国産エンジンを開発しなければならず、これに失敗すればF110の使用に関する承認を米国から取り付けるか、すでに見つけていると公言している「代替エンジン」を入手しなければならないが、トルコはウクライナの協力を確保しているため国産エンジンを本当に完成させてくるかもしれない。
トルコのエルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は2020年10月「国防や防衛産業に関連した21の分野で2ヶ国間協力を拡大させる法的枠組みを含む軍事協定」に署名、この協定について当時のトルコメディアは「航空機用エンジン、装甲車両向けディーゼルエンジンの共同開発、TB2の共同生産に関する内容が含まれている」と報じていたが、BAYKARが製造するAkinciにAI-450S、開発中のKızılelmaにAI-25、TAIが開発中のATAK2にTV3-117VMAの供給が始まっており、トルコの次世代巡航ミサイルにもAI-35の採用が決定。
航空機用エンジンや装甲車両向けディーゼルエンジンの共同開発に関する情報はないものの、カーン向けの「国産エンジン」やアルタイ向けの「国産ディーゼルエンジン」にウクライナ企業や技術者が関与していても不思議ではなく、パキスタンがカーン・プログラム参加を決断するなら「エンジン問題に関する見通しが提示されている」と考えるのが妥当だろう。
因みにカーンが完成すれば「イスラム教徒が多数を占める国」が入手できる初の第5世代機になるため、その需要は非常に大きなものになるはずだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Ismail Demir
非米、非露、非中、非印…
これは成果次第では世界のパワーバランスに影響してもくないですね
アメリカの影響力も、そのカウンターパートとしての露中の影響力も下がる
本当にイスラムが第三極になる時代が近いのかもしれません
昔から戦闘機の開発力がある国だと
アメリカ、イギリス、フランス、ロシアはキリスト教徒が多い国、イスラエルとの関係が良好
中国は共産主義でウイグル弾圧中、イスラエルと関係を強化しつつある
これまでは力が足りなかったから不満があっても従うしかなかっただけで、イスラム教徒が多い国が離れていっても不思議じゃないんですよね
今回の記事に出てくる国だとトルコのアメリカ離れ、アゼルバイジャンのロシア離れ、インドネシアのアメリカとロシア離れ、パキスタンのアメリカと中国離れとなりますが、他にもサウジアラビアやUAEもアメリカ離れしつつある
イスラム教徒が多い国も一枚岩ではないので今後どうなるか分かりませんが、トルコ、エジプト、サウジアラビア、UAE、パキスタン、インドネシアなどが団結できれば人口、経済力、軍事力など米英仏露中でも無視できない勢力になりそうです
万が一そんなことになればイスラエルには輸出しない予定のNGADが供給されそうですね
パキスタンは先日中国からJ-10Cを購入しておりますので中国離れはしておりません。
中国はパキスタンにステルス機(J-20)を売る気がないので、消去法でトルコと組むことを決定したと思います。
順調にいけば結構成功するかもしれない
アメリカの傘下は嫌だけど中国ロシアの影響下に入るのもヤダという需要にこたえる可能性がある
第三極ができるかも
内容はさておき、外観はF35やF22のコピーのような機体が増えるのかな。
ステルス性能はもちろんでしょうが、独創的な形状の機体を見てみたいものです。
この流れは、言ってみれば、技術の拡散のようなものとも思えるので。
トルコは、F-35の胴体を作っていたからね。
機体の技術情報は持っているだろうから、意外と上手くいくかもね。
眺めたり、エースコンバットで使える機体が増える分には嬉しいんだけどね。格下相手の軍事行動への心理的ハードルを下げるような結果にならなきゃいいが。
戦争が終わるとウクライナとウクライナ戦争でできた協力関係がいろいろ効果発揮するのかも。
ウクライナ企業も西側の技術に相当触れたろうし。
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パキスタンがカーン導入したら、インドはチェックメイトを導入するんだろうか?
パキスタンて日本ではパッとしないイメージだけど50年代には日本を超えるGDPになる予想が出てるくらい伸びてる国なんだよね
うーん、軍部の力が強すぎるのと1次産業中心の経済から抜け出さない限り、それは厳しいんじゃないですかね。
パキスタンはまず輸入依存型の経済から輸出で外貨を稼げるようにならないと。
貿易赤字は大国の印だよ
買える力があるって事なんだよね
そういう話ではなく、輸出を増やして輸入超過型の経済を解消して少なすぎる外貨準備高(3月時点で120億ドル。世界70位で71位のベネズエラ並)のを是正をするべきだと言っているんです。世界人口5位のポテンシャルを活かしきれてない。
まったくそうはならない。
「非米国製で輸出可能なトルコの第5世代戦闘機計画」などと言っているが、核心のエンジンがアメリカ頼りではないか。これは韓国製ポラメも抱える同様の致命的欠陥であり、アメリカが気に入らないからエンジン売りませんと発言できてしまう政治干渉能力を持つ。そしてアメリカは制裁や干渉したがる国だ。
エンジンは、ウクライナの技師が何とかするのだろう。
レーダー等の電子装備をどうするか?
Motor Sichにそこまでの技術あるだろうか。電子装備はアセルサンが居るし実績は十分でしょ。
中国、ロシア、フランス、インド(将来)辺りから似たような性能のエンジンを導入するかも。
地震からの復興が進んでおらず、インフレも凄いと聞きますが、完成前に一波乱あるかもしれませんね。
正面から見るとF-22にしか見えないな