欧州関連

フランス、50億ユーロ以上の契約で空軍向けのラファールを42機発注

フランス国防省は12日「50億ユーロ以上の契約で空軍向けのラファールを42機発注した」と発表。ラファールへの投資継続は今後も約束(2023年以降に計117億ユーロ)されており、同機の開発・製造に関与する企業、サプライヤー、労働者は今後も安定した仕事量が期待できる。

参考:France buys 42 Rafale jets for more than $5.5 billion

フランスはラファールの維持と能力向上に継続的な投資、2023年以降に予定されている投資額は計117億ユーロ

フランス国防省(軍事省)は「50億ユーロ以上の契約で空軍向けのラファールを42機発注した」と12日に発表、今回発注されたラファールCはF4規格のF4.2バージョンなので構造的改良の恩恵(機体構造の強化、電気配線の改良、新しいEWシステムに対応した構造変更など)を受けられ、予定されている次期バージョン(F5規格)へのアップグレードが保証されている。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Alexander Cook AtlanticTrident21に参加中のラファール

2020年9月以前に製造された機体=F3RからF4規格へのアップグレードはF4.1バージョン(ネットワーク能力の強化、データ解析へのAI導入、RBE2-AESAやM88の改良、MICA NGの統合、主翼下のハードポイント追加など)で、一般的には「データ共有能力とサイザーに対する保護能力の向上によってラファールの共同交戦能力は新しい次元に突入した」と評価され、ミーティアに関する運用能力に大きな変更(射手と管制の分離)が加えられているのもの特徴の1つだ。

新造機のF4.2バージョンは生産段階から構造的改良が取り入れられるため、2030年代に予定されているF5規格へのアップグレードが保証されており、まだ正式な仕様は固まっていないものの採用候補のRBE2-XGは「AIの本格的な統合によって認識力が向上し、ステルス能力を備えた第5世代機だけでなく現行のレーダーでは識別困難なマイクロドローン=極小目標などを識別できるようになる」と噂され、最近では仏上院(元老院)が「nEUROnプログラムに基づいた無人戦闘機等の統合=制御能力の追加」を要求。

出典:Gary Emery/Domaine public

この他にも高度なEW能力の追加、パッシブステルス能力の向上、コンフォーマルアレイ・アンテナの組み込み、ASN4G(核弾頭を搭載可能な超音速巡航ミサイル)、電子戦とサイザー能力を備えた専用機開発などが挙げれているが、これは全て予想なので正式なF5規格に盛り込まれるかは分かっていない。

因みにフランスはラファールの維持と能力向上に継続的な投資を続けており、2023年10月に予算化されたプログラムへの投資額は計117億ユーロ(2026年までに64億ユーロ+2026年以降に53億ユーロ)で、これはF4規格へのアップグレード、F5規格関連の開発、ラファールの調達・維持(海外発注分も含まれる可能性が高い)などを含めた数字=つまりラファールに関与する企業、サプライヤー、労働者は今後も安定した仕事量が確保できるという意味だ。

ダッソーが抱えている受注残数は2023年末時点で211機(内輸出向けが141機)に達しており、今回の発注で受注残数は250機以上に増加し、現在の生産ペース(年間15機前後で増産が予定されている)で考えると10年以上分の仕事量になる。

関連記事:受注が集中する仏製戦闘機、クロアチア空軍も次期戦闘機にラファールを選択
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Brandon Cribelar

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コメント

    • 58式素人
    • 2024年 1月 15日

    素直な疑問なのですが。
    今回の仏空軍の発注分の納入が10年後なら。
    欧州(例えばウクライナ)でラファールは価値はあるのかな。
    4.5世代機に相当すると思うのだけれど。

    4
      • TKT
      • 2024年 1月 15日

      今、ウクライナ空軍が欲しているのがF-16であり、MiG-29でもくれるものはもらえるとありがたいという姿勢ですから、ラファールでも十分価値があるのではないでしょうか?

      一方のロシア空軍で活躍しているのはMiG-31や、Su-34、Su-30などであり、むしろステルス戦闘機であるSu-57の話は現状では何もありません。ウクライナ空軍ではSu-24などもまだ使っています。

      アメリカ空軍のF-22は改良のための予算もつかず、F-35が実戦で活躍しているという話は現状ではほとんどありません。

      フランス空軍も当然、F-22やF-35のこと、そしてウクライナでの実戦を研究しているでしょうから、塗料の塗り替えなどで維持費がかかり、稼働率も下がるステルス戦闘機よりも、ラファールの方が実用的、実戦的と判断したのではないでしょうか?

      もちろん戦闘機を輸入に頼ることの弱みや、戦闘機を国産できることの強みなども痛感しているでしょう。ラファールが航空自衛隊のF-2のような国際共同開発の戦闘機であったら、フランス政府が独自で増産を決めることはできなかったのです。もちろんF-35であればなおさらです。

      14
        • バーナーキング
        • 2024年 1月 16日

        今即納されるならそりゃラファールは性能的にはウクライナにとってありがたい装備でしょう(コストやインフラ面はさておき)。

        >今回の仏空軍の発注分の納入が10年後なら

        とわざわざ書いてるんだから「(2033年以降に納入されることになるであろう)今後の発注分」に価値はあるのか、という話では?
        まあ下でも書きましたが私自身は2030年代に欧州でF-35以外の第5世代機が劇的に増えるとも思えませんのでラファールの価値が劇的に下がるとは思わないですが。

        1
      •  さ
      • 2024年 1月 15日

      フランスやダッソーは『現状の』ステルス機に対して、当分は「自分たちのニーズに合わない」と考えてる模様

      フランスは兵器について常に、自国の経済力や予算を気にかけて開発してる
      本気でステルス機にすると武装も機体内に収める必要がある=機体の大型化が必須の為、価格が高騰する
      高くなりすぎて数を確保できない機体を作るくらいなら妥協って感じ
      輸出商品としても考えても、価格が高くなりすぎると売れないし

      ステルス性の問題は、武装の射程を伸ばすことでカバーするつもりっぽい
      実際、一番ステルスが大事な核攻撃については、
      (搭載)核ミサイルの射程の方を伸ばす方向でカバーみたいな事をしてるから、

      14
        • TKT
        • 2024年 1月 15日

        ステルス性能の問題を、空対空ミサイルなり滑空爆弾などの射程を長くすることでカバーする、というのはまさにロシア空軍のMiG-31の方向性と同じです。

        一方で爆弾倉が必要なステルス戦闘機の方は、簡単にミサイルや爆弾を大型化することはできず、射程や搭載弾数などでは妥協を強いられます。機体を小型化すればなおさらそうですし、また機体を大型化すれば機動性が下がります。

        3
      •  さ
      • 2024年 1月 15日

      あと、無人随伴機を使うプランもあるから、それも念頭にあるのかも

      2
      • バーナーキング
      • 2024年 1月 15日

      2030年代に東側の第5世代機が十分な近代化改修を受けた百機単位で欧州に投入されるとも思えませんので近代改修されたラファールはそれなりに有用なんじゃないですかね。

      10
    • emp
    • 2024年 1月 15日

    買う側からしたら、フランスはめっちゃ信用できるよな
    フランスに直接敵対しなければマジで誰にでも売ってくれる

    17
      • 匿名希望係
      • 2024年 1月 15日

      台湾の件があるからそうでもない

      6
    • ラファールA
    • 2024年 1月 15日

    ドイツ空軍向けの受注以外は生産縮小なタィフーン・・・
    対照的ですね

    1
      • バーナーキング
      • 2024年 1月 16日

      タイフーンは先週サウジ向けの追加輸出(48機?)が解禁されそうとの報がありましたが…

        •  さ
        • 2024年 1月 16日

        2018年に署名されたがドイツの反対で保留状態だった48機が、
        ドイツが反対しなくなったのでようやく売れるようになった話とは、また別に違う話があるのです?

        1
          • バーナーキング
          • 2024年 1月 19日

          まさしくそれを「解禁」と表現しただけですが。

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