欧州関連

スペイン海軍のS-80Plus、建造の遅れで予定通りの引き渡しは不可能

Navantiaはスペイン海軍向けにAIP機関を搭載したS-80Plus級潜水艦を建造中で、1番艦は2023年11月に就役して「テスト結果も良好だ」と報じられていたが2番艦の建造が遅れており、ロブレス国防相も「2024年末に2番艦を受け取るのは不可能だ」と明かした。

参考:Robles, preocupada por los avances en el submarino S-82: “Vamos a intentar con Navantia reconducir los retrasos”

運用実績が乏しいS-80Plusに本国での建造遅延が加われば潜在的な顧客はいい顔をしないだろう

Navantiaはスペイン海軍向けにAIP機関を搭載したS-80Plus級(Isaac Peral class)潜水艦を建造中で、1番艦は2023年11月に就役して「テスト結果も良好だ」と報じられていたが、スペインのInfodefensaは22日「2番艦の建造が遅れている」「ロブレス国防相も2024年末に2番艦を受け取るのは不可能だと明かした」「遅れを最小限にするためロブレス国防相とNavantiaが協議している」と報じている。

ロブレス国防相は建造が遅れている原因について詳細を明かしていないものの、Infodefensaは「スペインにとってS-80Plus建造は産業的にも技術的に挑戦だ」と述べており、建造の遅れが長引けば海外輸出の評判にも影響を及ぼすかもしれない。

S-80Plusはオランダ海軍の潜水艦受注で最終候補に残ることが出来なかったが、インド、ポーランド、フィリピンにも提案されスコルペヌ型、212CD、KSS-IIIと受注を争っており、カナダ海軍の次期潜水艦候補にもS-80Plusの名前が挙がっている。

出典:Armada S-80Plus IsaacPeral

フィリピンに提示しているオファー内容(レイテ島西海岸に潜水艦基地建設、フィリピン人によるメンテナンス体制の確立、契約を100%カバーするスペイン政府の融資保証など)も競合に見劣りするものではないが、まだスペイン海軍による運用実績が乏しく、特にスペイン製AIPの評価が未知数なため、ここに本国での建造遅延が加われば潜在的な顧客はいい顔をしないだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Armada S-80Plus IsaacPeral

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 23日

    フィリピンは、日本の安全保障(シーレーン)を直撃するため、これ大丈夫なのか気になりますね。

    潜水艦は安全性が重要なため、工期通り作るのも難しいですね。

    3
    • fusa
    • 2024年 4月 23日

    私の毛根へは順調に髪の毛が引き渡されております

    5
      • のー
      • 2024年 4月 23日

      ロブレス国防相も「2024年末に2本目を受け取るのは不可能だ」と明かした。

      14
      • たむごん
      • 2024年 4月 24日

      順調すぎて、生産が間に合いません…

    • 774545
    • 2024年 4月 23日

    10年以上もダラダラと建造していてよく中止されないなとは思う
    これでフィリピンやカナダがS-80を選択したら賄賂を疑ってしまうかもしれない

    8
    • 航空太郎
    • 2024年 4月 23日

    日本がそうりゅう型潜水艦(AIP機関搭載)を安定して量産配備できている事を誇らしく思います。
    他国を見ると、この記事にもあるように潜水艦周りはなかなかうまくいってない事も多いですから。

    そして、たいげい型潜水艦で、そうりゅう型の「ディーゼルエンジン+鉛蓄電池+AIP機関」というある意味、もしもの為のオマケ機能で船内スペースを取られていた状態から、「ディーゼルエンジン+リチウムイオン電池」と構成がシンプルになり、全体性能が大幅に底上げされたというのも嬉しい進化です。

    そうりゅう型も「ディーゼルエンジン+鉛蓄電池」という従来型の限界を打ち破るための「+AIP機関」であり画期的ではありましたが、非常時以外だとAIP機関って単なるデッドウェイトですからね。

    12
      • hiroさん
      • 2024年 4月 23日

      AIP廃止+リチウムイオン電池化は「そうりゅう」型11番艦「おうりゅう」からですよ。
      個人的には「そうりゅう」型の凄い所は直流電動機をPMSMに変更したことだと考えています。
      これにより応答性·保守性が格段に向上している様なので。

      2
        • 航空太郎
        • 2024年 4月 24日

        ご指摘の点は、話の簡略化で端折ってました。
        鉛蓄電池とリチウムイオン電池って体積当たりの重量が違ってたり、出力が違ってたり、充放電特性が違ったりしていて、ディーゼルエンジンは鉛蓄電池向けなままだったりと、リチウムイオン電池搭載を前提とした全体設計が行われたのは「たいげい型」からなので、話をシンプルに書きました。もちろん、「そうりゅう型」11、12番艦で、ご指摘の通り、AIP廃止&リチウムイオン電池搭載に切り替えて性能は向上してますけど。説明的には過渡期相当の船かな、と。

        そうりゅう型のPMSM導入は確かに凄いですね。それまでのモーターと比べても高効率、高制御、高耐久、高トルクと言うことなし。リチウムイオン電池との相性も最高でしょう。

    • 58式素人
    • 2024年 4月 24日

    スペインは何に躓いているのだろう。
    想像するに、バイオエタノールを使うとされる水素発生用の改質器なのかな。
    それと副産物の処理装置でしょうか。
    燃料電池は米国のUTCの物だそうだから、NASAで実績はあるでしょうし。

    • 匿名
    • 2024年 4月 24日

    浮上時に艦橋上部に出てる筒の数がシンプルですね
    そうりゅう型は某第三新東京市のビル群が如くこれでもかとニョキニョキ立ってますが

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