中東アフリカ関連

ネタニヤフ首相が即時報復を中止、イランの全面衝突は回避される見込み

New York Timesは「ネタニヤフ首相は報復攻撃を中止した」と、Times of Israelも「ネタニヤフ首相は攻撃の被害が軽微だったこと、バイデン大統領が自制を要請したことを受け即時報復を脇に置いた」と報じており、イスラエルとイランの全面衝突は回避される見込みだ。

参考:Live Updates: Israel’s War Cabinet Is Set to Meet After Attack by Iran
参考:Gallant: Israel has opportunity to form international alliance against Iranian threats

このまま事態が沈静化に向かえば軍事的オプションの応酬という最悪の結果を避けられそうだ

イラン国連代表部は「今回の攻撃は国連憲章第51条の正当防衛に基づくものだ」「外交施設の破壊に対する報復は終結したと見なしていいだろう」「しかし、イスラエルが再び過ちを犯せばイランの対応はより厳しいものになるだろう」「これはイランとイスラエルとの紛争なので米国は絶対に関与してはならない」と発表したが、イスラエルのゾハル文化相は「我々は前例のない規模でイランを攻撃する国際的な正当性を得た」「イスラエルを破壊しようとする蛇の頭に対していい加減であってはならない」と表明。

Keshet12も政府高官の話として「イスラエルはイランによる前例のない攻撃に重大な対応を計画している」と報じていたが、New York Timesは「攻撃の被害が軽微だったことを受けてネタニヤフ首相は報復攻撃を中止した」と報じている。

Times of Israelも「戦時内閣に加わっているガンツ元国防相とエイゼンコット氏はイランへの反撃を提案したが、ガラント国防相やハレヴィ参謀総長が反対し、ネタニヤフ首相も攻撃の被害が軽微だったこと、バイデン大統領が自制を要請したことを受け『即時報復』というオプションを脇に置いた。イスラエルは自制の見返りとして政治的利益(パレスチナ問題等で譲歩なしに何らかの戦略的協定を引き出せるかどうか)が得られるかどうかを見極めようとしている」と報じており、イスラエルとイランが全面衝突に発展する可能性は低い。

このまま事態が沈静化に向かえば軍事的オプションの応酬という最悪の結果を避けられそうだ。

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※アイキャッチ画像の出典:Prime Minister of Israel

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コメント

    • 名無し
    • 2024年 4月 15日

    >イスラエルは自制の見返りとして政治的利益(パレスチナ問題等で譲歩なしに何らかの戦略的協定を引き出せるかどうか)が得られるかどうかを見極めようとしている

    図々しすぎて草
    いやもうほんと草としか言いようがない

    116
    • せい
    • 2024年 4月 15日

    とりあえずよかった
    倫理や人道は本気でどうでもいいから、燃料代に影響があることだけはほんとに勘弁
    今より悪化されたら、本気で食卓に野草が並ぶことになるよ

    40
    • ななしのシロウト
    • 2024年 4月 15日

    イスラエルの国防相と参謀総長がイランへの攻撃に反対
    アメリカはイスラエルの防衛は支援するが、イランへの攻撃は反対
    これで「即時報復」は中止になったが、引き続き動向を注視すべき

    31
    • ぬぬぬ
    • 2024年 4月 15日

    米国がイランへの攻撃に反対、参加しないと表明した途端にこれとはダサキモすぎるが、エスカレーションしないのは何より良かった

    28
    • 58式素人
    • 2024年 4月 15日

    多分。
    ミサイルではなく、他のことで報復はするのでしょうね。
    米/英/ヨルダンには直接手助けをしてもらい、
    レバノン(?)/イラク(?)/サウジアラビア(?)
    には、領空を開けてもらっているのですから。
    上記の国々と協力して、相手を追い詰めるのでは。

    4
    • バンダイは早くジムⅢのMG作ってくれ
    • 2024年 4月 15日

    イランの攻撃を撃ち落とさなかった場合の被害を考えると
    ただで引けるものではないでしょうね

    極端な話
    核ミサイルを撃たれて、
    撃ち落とせたからハイ終わり というわけにもいかないでしょうから

    イランは他国にあるイスラエル大使館を爆破するぐらいにしとけばよかったんじゃw

    5
      •  さ
      • 2024年 4月 15日

      イランの国民が相当頭に来てるみたいで、指導部としてもある程度ガス抜きする必要があると考えたのでは?

      27
      • 名無し
      • 2024年 4月 15日

      自分で原因作っておいて、ただで引けないとか草

      48
    • jiro.siwaku
    • 2024年 4月 15日

    軍参謀総長のモハマド・バゲリ少将

    この作戦は(イスラム)革命防衛隊の努力と他の軍隊の助けによって実行された」と

    イラン軍はイスラエルに情報を提供する「大規模な情報センター」と、ダマスカスの領事館襲撃に関与した米国設計のF-35戦闘機を保有するネバティム空軍基地を標的にしたと

    これら2つの基地は破壊されたが、テヘランは人口密集地を攻撃していないと参謀総長は主張した。

    RT 14 Apr, 2024 07:15

    イランは、この攻撃は予想以上に成功したと評価し、イスラエルの施設を2つ破壊したと主張している。

    RT 14 Apr, 2024 11:56

    5
    •  
    • 2024年 4月 15日

    そもそも大使館吹き飛ばした報復受けてるだけなのに何が報復中止やねんと

    67
    • 無名
    • 2024年 4月 15日

    イスラエルの判断は意外だったけど、イスラエルの事だから何の発表もなく、いきなり空爆したり要人を暗殺したりして、また「知らない、関係ない。」って言い張りそう。

    28
    • 暇な人
    • 2024年 4月 15日

    というかゴラン高原というシリア領土占領して空軍基地つくって、そこからシリアにあるイラン大使館とその周辺を攻撃して、
    そのシリア高原に勝手に作っている占領軍の基地に報復されたから報復しないと、
    とか理屈が無茶苦茶なんだよなあ。
    ウクライナ占領してるロシア軍基地から大使館攻撃されてその基地を報復攻撃されてロシアが激怒したみたいな話だからな、報復攻撃したイランを非難してイスラエル庇うから増長するんだよ。

    50
    • ネコ歩き
    • 2024年 4月 15日

    反撃を提案したガンツ元国防相とエイゼンコット氏、対して反撃に反対したガラント国防相やハレヴィ参謀総長、という図式がイスラエルの事情を示しているように思います。
    ①実際の攻撃は当初予測された規模の倍以上だった。
    ②今回の攻撃目標は空軍基地等を含む東部広域に限定されていた。
    ③イラン側の攻撃開始通知や欧米及びヨルダンの協力もあって攻撃の大部分を迎撃できた。
    ④今回要した迎撃コストは1,600億円~2,000億円と見積もられる。
    ⑤迎撃コストと攻撃コストに10倍ほどの開きがあり、中長期的には攻撃に耐え続けるのが困難。
    というところが実際でした。ここからは推測交じりですが、
    ⑥イスラエルや欧米諸国は攻撃実施母体の備蓄残量がどれだけあるか恐らく把握できていない。
    ⑦政経中枢に集中した同規模以上の攻撃を連続的に受けた場合、今回と同様の結果になるか軍として保障できない。
    ⑧防空能力を十分と言えるほど強化するには多大な予算と相応の時間が必要になる。
    ⑨イスラエル軍の現有装備でどれだけの打撃をイラン及びフーシ派その他の反撃能力に与え得るか不透明。
    ということで、政治的には早急な反撃を行いたいが、軍事的には当面避けるべきという判断なんだろうなと。

    32
    • たむごん
    • 2024年 4月 15日

    イスラエルが、イラン大使館に奇襲攻撃をかけておいて、被害者ぶってるのは嫌悪感を感じますね。
    放火魔が、放火した後に報復を受けて、被害者ぶっているように聞こえてしまいます。

    アメリカが、対イラン攻撃に参加しない事を明言しています。
    イスラエルの国力では、ガザ紛争の継続・ヒズボラ(レバノン)との火種を抱えている中で、単独でイランまで相手にはできないでしょうね。

    (2024年4月15日 米、対イラン攻撃「参加せず」 情勢悪化回避へ自制要求か 時事通信)

    22
    • 765
    • 2024年 4月 15日

    国連憲章第51条の正当防衛に基づく正当防衛なのに『報復』なのか…(困惑)
    原文じゃ意味合いが違うのかもしれないけど

    12
    • 鼻毛
    • 2024年 4月 15日

    関係ないけど日本にとって北朝鮮の暴発っていうのがもし起こってもMDちゃんとやってればこの程度で済むという事例ができたのかな

    1
      • きゅうり
      • 2024年 4月 15日

      いいえ
      今回は①イラン側が全面戦争に引きずり込まれない意図で相当自制した報復計画だった(そもそもイスラエル側からのアクションに対する返報)、②米国が場合によっては紛争非拡大で一致したイランともうちうちに協調もして48時間以内の攻撃と相当確度の高い情報が通知されていた、③イスラエルに向かう弾頭弾やドローンの進路に第三国がありそこでも米軍含む地上部隊や航空戦力の迎撃が行われた、④そもそもイスラエル側の迎撃率99%については未検証でありこれを前提とする時点で楽観的過ぎる

      以上の事からMDをちゃんとやってればという理由付けには何の寄与もしないものかと考えられます

      11
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