中東アフリカ関連

エジプト、ブラジルから対地用の巡航ミサイル「AV-TM300」を調達か

エジプトはブラジルから巡航ミサイル「AV-TM300」の調達に近づいていると報じられており、これを運用するプラットフォームとして多連装ロケットシステム「AstrosII」の調達も含まれているらしい。

参考:Egypt, Brazil, and AV-TM 300 missiles

日本がバーレーン、クウェート、エジプトに売り込んでいる装備品について今のところ新たな動きはない

ブラジルの防衛産業企業「Avibras」が開発した対地攻撃用のAV-TM300はトマホークと同じように折りたたみ式の主翼を備えた巡航ミサイルで、公式発表の射程は300kmだがエンジン出力を調整することで最大到達範囲は500km~1,000km(公式情報ではない)に延長することが可能らしい。

出典:Ministério da Defesa/CC BY 2.0 AV-TM300

このAV-TM300はAvibras製の多連装ロケットシステム「AstrosII」を使用して運用されるため、米国製のHIMARS/MLRSと地対地ミサイル「ATACMS(最大射程300km)」の関係に似ている。

補足:ブラジル製のAstrosIIはマレーシア、インドネシア、イラク、サウジアラビア、リビア、バーレーン、カタール、アンゴラにも輸出されており、海外市場で人気の高い多連装ロケットシステムの一つだ。

MENA地域の防衛市場に関する分析を行うTactical Reportは「エジプトはブラジル企業(恐らくAvibras)と締結した防衛分野の協定に基づきAV-TM300とAstrosIIの調達に近づいている」と報じており、ウクライナで砲兵戦力に対する認識が再評価されているため非常に目立つ取引の一つと言えるだろう。

出典:TURKISH AEROSPACE トルコが開発中のTFX

因みにMENA地域の主な動きとしてはサウジアラビアが韓国の掃海艇に関心を示し、アラブ首長国連邦はトルコと第5世代戦闘機TF-Xについて協議、アルジェリアはトルコから対艦ミサイル「ATMACA」を調達するため交渉中、カタールは詳細を伏せたままドイツと軍事協定を締結(どうやら防空システム調達に関連したもらしい)、オマーンも詳細を伏せたまま英国と何らかの軍事協定を締結。

日本がバーレーンに売り込んでいる電子戦システム、クウェートとエジプトに売り込んでいるレーダーに関しては今のところ新しい動きはない。

関連記事:エジプトとクウェートの防空レーダー需要、日本企業が売り込み中か
関連記事:三菱電機がバーレーン軍にEWシステムを、他の日企業がレーダーを提案か
関連記事:バーレーン、インドと主力戦車「Arjun MK.II」の調達について交渉中

 

※アイキャッチ画像の出典:MinistériodaDefesa/CC BY 2.0

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

ウクライナ軍、外国人部隊と共にセベロドネツク市内のロシア軍に反撃前のページ

実用化に成功?トルコ製UCAVに搭載可能な未発表の徘徊型弾薬が登場次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    ラファールの追加導入を決めたエジプト、空中給油機や偵察衛星もフランスから調達か

    ラファールの追加導入を決めたエジプトはエアバス製の空中給油機A330M…

  2. 中東アフリカ関連

    イスラエルはシリア新政権との関係樹立を期待、北部マンビジでは内戦再開か

    ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARはシリア北西方面について「トル…

  3. 中東アフリカ関連

    エジプトと韓国がT-50/FA-50の現地製造契約を締結、調達規模は約100機

    英国のジェーンズは18日「エジプトが韓国航空宇宙産業(KAI)とT-5…

  4. 中東アフリカ関連

    露メディア、イランの首都近郊で発生した大爆発はF-35による攻撃

    露メディアは6日、テヘラン近郊のミサイル製造施設を攻撃した所属不明のF…

  5. 中東アフリカ関連

    ヒズボラが対戦車ミサイルでM113を破壊、イスラエルも報復攻撃を実施

    ヒズボラは11日「レバノン国境に近いイスラエル軍駐屯地を対戦車ミサイル…

  6. 中東アフリカ関連

    スーダンで激しい武力衝突、準軍事組織が大統領官邸や国際空港の占拠を主張

    スーダンの準軍事組織(RSF)は15日、首都ハルツームにある大統領官邸…

コメント

    • KAMA
    • 2022年 6月 04日

    ブラジルはアメリ化の顔色を窺わなくても兵器輸出のできる国ですし、優れた兵器開発の基盤のある国でしたね。
    購入しようとしてるエジプトもリビア権益でトルコと冷戦中ですが、トルコまで約1400kmありますのでリビア内戦用でしょうか?

    4
    • もり
    • 2022年 6月 05日

    一方、自衛隊の特火戦力は削減削減また削減なのであった
    無人機の活躍で砲兵戦力はまた返り咲ける様になったのにな

    山がちで曲射火力が活き待ち伏せ側と違い侵攻側は重装備の運搬が困難、さらに大軍の進路が限定される日本の国土は砲兵向きなのにね

    5
      • 匿名
      • 2022年 6月 05日

      必要な事に対して、人と予算が足りず、空と海への対処のツケを陸が支払っている感じかな?
      予算は今後多少改善するとしても、人の方は依然厳しいかも。
      少子化対策とか効けば良いのだけど。

      1
      • いち!にっ!さん!
      • 2022年 6月 06日

      減った分ロジスティクスを強化出来れば身軽になり、より良くなるとは思う。
      実際現場は、物は有っても人と部品、弾がない。

      1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP