米国関連

米海軍も無人戦闘機を研究中、海軍版CCAは最大でも1機1,500万ドル

米空軍は有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機=CCAの本格開発に着手したが、米海軍も「海軍版CCAの研究を進めており、最大でも1機あたり1,500万ドルでなければならない」と述べ、Breaking Defenseは「耐用年数を犠牲にして調達コストを抑えるつもりだ」と報じている。

参考:Navy says future drone wingmen need to come in under $15 million price point

空軍版CCAと海軍版CCAは根本的に運用コンセプトが異なるのかもしれない

米空軍は有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機のことを「協調戦闘機(Collaborative Combat Aircraft=CCA)と呼んでおり、ジョーンズ空軍次官補は今年1月「CCAの競争試作に参加する5社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、アンドゥリル、ゼネラル・アトミックス)と設計・製造契約を締結した」と発表、米空軍は今後5年間でCCAに58億ドルを投資予定で、CCAの調達コストはF-35の25%~50%=2,000万ドル~4,000万ドルだと言われている。

出典:Northrop Grumman Model437

米海軍も空母に無人戦闘機を持ち込む方法を検討中で、このプログラムを担当しているスティーブン・テッドフォード少将も「海軍版のCCAはプログラムを開始するための初期段階にあり、F/A-18E/FやF-35Cの能力を拡張するのに必要な無人機のペイロード、センサー、ミッションシステムを研究中で、実戦配備は2020年代後半を目標にしている」「我々が求めているのは数百時間の飛行が可能な機体で、最後の1時間は標的か武器(自爆型攻撃という意味)として消耗される」「この機体を30年間も維持するつもりはない」と言及。

さらに「1つだけ確かなことは取得コストが安価でなければならないという点だ」「最大でも1機あたり1,500万ドルでなければならない」と述べ、Breaking Defenseは「海軍は耐用年数を犠牲にしてCCAの調達コストを抑えるつもりだ」と報じている。

出典:EGLIN AIR FORCE BASE

因みに空軍はCCAのコンセプトを「消耗を前提にした安価な調達コスト」から「手頃な価格で消耗も可能」に変更しているため、空軍版CCAと海軍版CCAは根本的に運用コンセプトが異なるのかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Boeing MQ-28

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 10日

    F35に随伴させるのであれば、ステルス性を求められそうですから、設計・量産化も難しくなりそうですが注目したいと思います。

    設計の簡略化・機体の小型化・機能の絞り込みなどの設計思想だけでなく。
    既存技術の活用・既存部品の流用・量産化による価格低下など、製造面の工夫が価格低下には不可欠だろうなと。

    グローバルホークが、1機1億ドルくらいだったでしょうか。

    5
      • バーナーキング
      • 2024年 4月 10日

      CCA、「協調」戦闘機であって協調はしても随伴はしない、と割り切って高度なステルスは求めないんじゃないでしょうか。
      なんせ単価20億円ちょいとかですし。

      2
        • たむごん
        • 2024年 4月 10日

        単価を考えれば、仰る通りですね。

        1
          • 戦略眼
          • 2024年 4月 10日

          有人機と変わらない値段になってきたな。

          1
      • ネコ歩き
      • 2024年 4月 10日

      米空軍が構想するモザイク戦では、無人戦闘機は有人機の機能拡張を担う随伴機という位置付けはしてないですね。
      有人機も無人機も戦術ネットワークの構成要素として連携・協調し機能します。有人戦闘機は戦術単位の意思決定とハブ機能を担います。無人機が有人戦闘機を補佐する編隊行動前提という構想ではないです。
      有人機との編隊行動を大前提としないならば、無人機はそれぞれの担う任務に適化した機能・性能なりステルス性があれば良いことになるのかと。

      5
        • たむごん
        • 2024年 4月 10日

        勉強になります。

        無人機の中でも、ハイローミックスのような、用途に合わせたものになりそうですね。

        2
    • 58式素人
    • 2024年 4月 10日

    3月29日記事の英国(ACP)戦略になぞらえると。
    損耗を許容できるTier2に相当する物でしょうか。
    初めはそれで良いのでは、と思います。
    怒涛のバージョンアップ(笑)はそれからで良いような気がします。

    • ネコ歩き
    • 2024年 4月 10日

    >「我々が求めているのは数百時間の飛行が可能な機体で、最後の1時間は標的か武器(自爆型攻撃という意味)として消耗される」「この機体を30年間も維持するつもりはない」
    は先見の明だろうと思います。
    米空海軍とも2020年代中の実戦配備を目指しているわけで、構成要素はほぼ確立済あるいは見通しの立った技術群がベースになるのだろうと思います。
    2030年代以降、AI始め関連技術は急速な進展を見せそうです。ハード/ソフトウェア更新や機能追加の小改修等である程度は対応可能かもですが、いずれ早い時期に陳腐化してしまう可能性のほうが高いように思われます。
    消滅したらしいデジタル・センチュリーシリーズの構想は、今後進化を続けるだろう先端的軍用無人機の分野でこそ有効なのかも。

    • Authentic
    • 2024年 4月 10日

    「最大でも1機あたり1,500万ドルでなければならない(実勢価格3,000万ドル)」
    とかになりそう
    最近の米国製兵器で想定価格通りになったものがあったためしがないし

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