インド太平洋関連

印米関係の強化、コーチン造船所と米海軍が艦艇の修理契約を締結

バイデン大統領はモディ首相との首脳会談で「インド国内の造船所を活用した米海軍艦艇の修理契約」を提示、これに基づいて米海軍は昨年6月にラーセン&トゥブロと、昨年8月にマザゴン・ドック造船所と修理契約を締結していたが、コーチン造船所とも契約を締結したと報じられている。

参考:Cochin Shipyard Inks Ship Repair Deal with U.S. Navy: A Strategic Partnership Unfolds
参考:India to Take on Future U.S. Navy Ship Maintenance Per Agreement

インド太平洋地域の民間造船所活用は日本に限った話ではない

デル・トロ米海軍長官は2023年9月「米国では日本や韓国を含む親密な同盟国の造船企業と提携する機が熟している」「世界で最も先進的な造船企業を誘致し、米国に子会社を設立させ投資させることで米造船産業の近代化や拡充を図り、より健全で競争力がある造船産業を創出する」と述べ、今年3月には日本と韓国を訪問して佐世保重工業、三菱重工業、Japan Marine United、現代重工業、Hanwha Oceanと会談、米国の商業造船や海軍造船施設への投資を呼びかけた。

出典:U.S. Navy photo by Seaman Apprentice Rafael Avelar/Released

さらに米国は日本の民間造船所で米海軍艦艇の修理を行いと考えており、バイデン大統領と岸田首相は首脳会談で「米海軍艦艇(日本に前方展開する艦艇20隻のみ)の整備、修理、オーバーホールを日本の民間造船所で行うためのプロセス」を正式決定する見込みだが、インド太平洋地域の民間造船所活用は日本に限った話ではない。

バイデン政権は軍事分野におけるインドとの関係強化が中国への重要な対抗手段になると考え、昨年6月の首脳会談で「インド国内でのF414共同生産」「海軍艦艇の修理契約」「海底領域における共同認識力の強化」「防衛産業のサプライチェーン強化に向けた協定交渉」「防衛産業協力と技術共有を強化する枠組み(INDUS-X)の創設」を提示、これ受けて米海軍は昨年6月にラーセン&トゥブロと、昨年8月にマザゴン・ドック造船所と修理契約(Master Shipyard Repair Agreement)を締結している。

出典:Commander, U.S. Naval Forces Europe-Africa/U.S. 6th Fleet

さらに米海軍はコーチン造船所ともMSRAを締結したと報じられており、インドのラーセン&トゥブロ、マサゴン・ドック造船所、コーチン造船所は米海軍艦艇(MSC所属の補給艦艇のみ)を修理する優先パートナーの地位を確保した格好だ。

因みにデル・トロ米海軍長官は「インド太平洋地域で艦艇の整備を行うヤードは数が限られている上、その全てが中国軍の攻撃範囲内にある。ハワイと本土には大規模な施設があるものの前方展開している艦艇が直ぐに利用できる訳では無い」と述べたことがあり、中東方面やインド洋に前方配備される米海軍艦艇にとってインドの修理拠点は理想的な位置にあるのかもしれない。

関連記事:バイデン大統領、対中政策の一環としてインドにF414の現地生産を提示
関連記事:日米首脳会談、米国は防衛産業基盤への日本統合の可能性を夢見ている
関連記事:韓国のHanwha、米軍プログラムの元請け参加が可能なAustal買収に動く
関連記事:造船への投資、米海軍長官がハンファオーシャンと現代重工業に米国進出を促す
関連記事:韓国のハンファオーシャン、米海軍需要を獲得するため米造船企業を買収か
関連記事:韓国企業が海軍艦艇向けのMRO事業に本腰、潜在的な顧客に米海軍が浮上

 

※アイキャッチ画像の出典:Commander Naval Sea Systems Command

米海軍も無人戦闘機を研究中、海軍版CCAは最大でも1機1,500万ドル前のページ

セルビアが旧ソ連機更新のためラファールを選択、契約は2ヶ月以内に締結次のページ

関連記事

  1. インド太平洋関連

    日米からのオファーがない? 韓国空軍、日本のF-35整備拠点利用を否定

    韓国空軍はF-35Aのメンテンナンスについて「日本の国際整備拠点「MR…

  2. インド太平洋関連

    韓国、8年以内に国産戦術輸送機を開発して海外市場に挑戦か?

    韓国メディアは5日、韓国航空宇宙産業(KAI)が軍用輸送機の開発を進め…

  3. インド太平洋関連

    KF-21が全ての地上試験をクリア、1号機の初飛行は今月19日に実施

    韓国が開発を進めているKF-21の1号機が予定されていた地上試験を全て…

  4. インド太平洋関連

    中国軍のドローンを石を投げて追い払う台湾軍、アンチ・ドローンシステムの配備を前倒し

    台湾軍の兵士が石を投げて侵入してきた中国軍のドローンを追い払う動画が出…

  5. インド太平洋関連

    無力化される可能性が高い韓国F-35A、北朝鮮の新型兵器ほぼ迎撃不可能

    北朝鮮が試射を行った新型短距離弾道ミサイルと、新型大口径誘導ロケット砲…

  6. インド太平洋関連

    豪州にアスチュート級原潜導入を勧める理由、バージニア級より原子炉技術が古いため

    米ヘリテージ財団の専門家も「オーストラリアが最も早く原潜を入手できると…

コメント

    • うみ
    • 2024年 4月 10日

    これはいい
    中国のみならず中東にもしっかり睨み効かせられる
    インドも金かかる海軍力は出来れば外注したいだろうし、見事なwin-winだ

    8
    •  さ
    • 2024年 4月 10日

    ロシアから内々に、工事を送らせてくれなどの依頼が来た場合にインドは、
    アメリカとロシア、政治と商売の仁義、どちらを、どれを優先するのか気になる所

    6
    • 58式素人
    • 2024年 4月 10日

    現時点での米国進出は難しいのでは。
    特に西海岸は。
    本国(日本)での受注は望ましいと思いますが。

    1
    • lang
    • 2024年 4月 10日

    アメリカの軍事兵器とかワクチンとか何があったとしても買うほうの責任みたいな契約ですよね

    同じような契約突き付けてあげるべきではないでしょうか

    頭を地面にこすり付けて何があっても責任はそっち持ちみたいな同意書でも書いてこないかぎり、契約するべきではないのでは

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP