米海軍はT-45Goshawkの後継機(UJTS)探しを進めていたが、2025年度予算案の中で「UJTSの調達を2026年度から開始する」と言及、後継機候補にはM-346N、TF-50N、T-7Aが浮上しているもののT-7Aは選定時期までに完成しないかもしれない。
参考:U.S. Navy Budget Details T-45 Replacement Plan
2026年に調達を開始するなら後継機は2025年中に決まるはず
米海軍がパイロット養成に使用しているT-45GoshawkはHawkを空母運用に耐えられるよう再設計した機体で、運用開始から30年近くが経過したため2020年5月に後継機プログラム(Undergraduate Jet Training System=UJTS)が動き出したが、非常に興味深いのはT-45の後継機に「アレスティングワイヤーによる着艦能力」や「タッチアンドゴー対応」を要求していない点だ
従来のパイロットは空母への最終アプローチを手動で制御する必要があり、この能力をパイロットに身に付けさせ維持するには膨大な訓練が必要だったものの、F-35Cには最終アプローチを安全に行うためのDelta Flight Path(DFP)が採用されているため、パイロットは経験や能力に頼った最終アプローチから解放されている。
この技術をベースにMagic Carpetと呼ばれる精密着艦モード(Precision Landing Mode=PLM)が開発され、F/A-18E/FやEA-18Gの着艦作業も劇的に容易になり、PLMを使用しないと最終アプローチ(平均18秒間)中に300回近いコース修正が行われるが、PLMを使用すると着艦経験の少ない新人パイロットでも20回程度のコース修正で着艦でき、既に着艦資格取得訓練(Carrier Qualifications=CQ)からも手動による最終アプローチが廃止済みだ。
最新の要求要件によればUJTSは訓練のため空母に行く必要もなく「無風着陸の繰り返しに耐えれる耐久性」が要求されており、米海軍はシラバスからも手動着艦資格取得を削除するかどうかの検討に入っているらしい。
グレゴリー・ハリス少将も「将来的に固定翼機を運用する空母は削減される可能性がある」「運用に費用がかかる空母を使用して着艦資格の取得や維持を行うという贅沢(ドック入り前や海外展開前の空母を訓練空母に指定すること)はもう許されない」と述べているため、UJTSの要求要件も「PLM採用」や「手動による最終アプローチの廃止」に基づいたものだろう。
米海軍は2025年度予算案の中で「UJTSの調達を2026年度から開始し、2026年度に10機、2027年度に12機、2028年度に12機、2029年度に12機調達する」と言及し、Aviation Weekは「少なくともUJTSには3つの競合が浮上しており、TextronとLeonardoが提案するM-346N、Lockheed Martinと韓国航空宇宙産業が提案するTF-50N、BoeingのT-7Aだ」と報じているが、開発に手間取るT-7Aについて「IOC宣言は2028年度の予定で4年先の話だ」と付け加えている。
2026年に調達を開始するなら後継機は2025年中に決まるはずで、マイルストーンCやIOC宣言に到達してないT-7AはUJTSを逃す可能性が高く、仮にM-346NとTF-50Nの一騎打ちになった場合、どちらが勝利しても「米軍採用」という肩書きを獲得するため大きな注目を集めるはずだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Petty Officer 3rd Class Kallysta M Castillo
技術進歩を取り入れるのは良いが、自動化に頼り過ぎるのは、不安だな。
災害時に自動化設備が使えず、吹きっ晒しで手作業をやった身としては、戦時の対応として正しいと思えない。
非常時に人間がマニュアル対応出来なかったり、対応が遅くて間に合わない場合も
考えられるので、どっちが正しいとは言えません。
どちらが一方が機能しなかった場合に備えて、双方で互いを補完し合うシステムに
するのが正しい方向性かと。
今時の空飛ぶコンピュータ状態の戦闘機で自動着艦機能に異常が出ているならそもそもまともに飛んでいる事自体が難しいと思いますけどね
空母側で問題起きているなら無理に着艦させるわけにもいかないでしょうし。
その認識は正しくないな
こういう自動化機能って飛行システムとは切り離されてるのが普通だし、作動には多くのセンサーが絡んで条件が決められてるもんなんで、ピンポイントで使えなくなるってのは十分あり得る想定
まあその頻度が少ないと実証されたからこその訓練改定なのだろうけど
そーゆースキルは「艦載機乗り」になってから実任務しながら身につけろ、と言う事でしょう。
運悪く身につける前にそうした事態に遭遇してしまったら機体(あるいは命も)を失う事になるでしょうが、そのリスクの確率×コストが、恒常的に空母を訓練に使うコストよりは軽い、と評価されるくらいには頻度が低いと言う事では。
F-35C型の「Delta Flight Path」やFA-18、EA-18G用の「PLM:Precision Landing Modes」「MAGIC CARPET」は少なくとも5年以上の運用実績があります。
「100回着艦して失敗がゼロ、理想的着艦が80回。」、結果として「理想的着艦が多い影響で甲板の特定箇所のみ摩耗が進む。」「3本ある着艦拘束ワイヤーの2本目ばかりが摩耗する。」等の弊害があるそうで、システム自体の信頼性は既に確立されているようです。
実戦時のイレギュラーには状況に応じた対処マニュアルが準備されているだろうと思います。
米LM輸出製造ラインがある関係でT-50が相当有利でしょうね。>T-45後継
ノースロップあたりがM-346のライセンス生産して企業分担させない限りは
陸上空母離着陸訓練とシミュレーターだけで良いならまあそっちの方が安上がりよな。その後にシステム問題とかで「やっぱり実際の空母でマニュアル操作の訓練も〜」とならなければいいが。
”非常に興味深いのはT-45の後継機に「アレスティングワイヤーによる着艦能力」
や「タッチアンドゴー対応」を要求していない点だ。”・・・え?。
ひょっとしてアレスティングフックは無いのでしょうか?。
陸上機ということ?。フネには乗せられないですよね?。
ストラトリバーサ付きのビゲンでも着陸には500mを必要とするし。
フネは頑張っても全長は300mだし。
何だかお金が勿体無いような・・・。
F-15、Su-27などのように緊急時用のアレスティング・フックを付けるかもしれませんが、それだけ精密着艦モードが優秀ということではないでしょうか。過去記事でも着艦訓練をシミュレーターで行うみたいな事を見た気もしますし。記憶違いだったらすみません。
アメリカ空軍の第355訓練中隊のA-10や、フランス空軍がミラージュの訓練に採用したDCSworldのように、ゲームで安価に訓練するといったこともできる時代になったのには自分も隔世の感は有りますが。
そうでしたか。
”昔は遠くになりにけり”、でしょうか。
ひょっとすると、これで海軍パイロットの
技量の平均値が下がるのかな。
海軍の底辺パイロットでも、技量は空軍
パイロットの平均以上(笑)と言われていたのに。
着艦訓練に時間を割かねばならない以上どうしても空戦の技量は劣るとも聞いたことがありますからむしろ上がるかも知れませんよ。
普通に考えたら練習用の艦載機は要らないと言うその物でしかありません。艦載にする為の部分強化やひょっとすると塩害対策すら省略して訓練も省く流れならとことんコストを抑えたい目的があるでしょう。
勿体無いですか?逆に省けるものはあるのに省かないのが勿体無いとも考えられますけどね。海軍パイロットが艦で練習するのが全プログラムの何%なのかは寡聞にして知りませんが数%だった場合にその為にコストを割くべきかは考える必要があると思いますが。
機体の制御技術が進むと戦闘妖精雪風みたいな無茶な着艦も出来るようになりそう。
着艦訓練を行わないということは、陸上基地でのNLP (Night Landing Practice) も廃止、ってこと?
以前、NLPが行われている基地周辺に住んでいました。訓練は日が暮れると始まりました。とんでもなくうるさいだけでなく、落ちるんじゃないかって恐怖を感じるくらいの音がしたこともあるのを記憶しています。海軍航空基地の周辺住民も、大いに助かりますね。
そういえば、RFXプログラムって結局どこが勝ったの?
続報を聞いた記憶が無いです。
コロナで延期の後続報なしなので中止のようです
なるほど。8機程度の象徴的な調達でしたが、有耶無耶か。