米国関連

米紙、ウクライナ軍とロシア軍の戦いは短距離走ではなくマラソンだ

ウクライナ軍は反攻作戦に関する情報提供を制限してきたが、最近は報道関係者に前線や兵士への取材を許可するようになり、ニューヨーク・タイムズ紙も南部戦線で戦っているウクライナ人兵士に取材を行い「この戦いは短距離走ではなくマラソンだ」と報じている。

参考:‘It’s Not a Sprint,’ Ukraine’s Marines Insist. ‘It’s a Marathon.’

各国のウクライナ支援は強化され続けており、最も重要なウクライナ人の戦意が折れていない以上、この戦いはまだまだ続くだろう

ニューヨーク・タイムズ紙に取材が許されたのは南部戦線で戦う第35海兵旅団、第37海兵旅団、第38海兵旅団で、同旅団の指揮官達は「数日間の戦闘で多くの死傷者が発生した。この作戦に参加した殆どの部隊にとって初めての戦闘で過酷な経験だった。新兵の中には精神的に参っているものいる」と明かしたが、この大損害も戦闘経験が豊富な指揮官達にとっては日常的な出来事で「我々は過去16ヶ月間の戦いで何度も部隊が壊滅するのを見てきた」と述べ、失った戦車や装甲車輌についても「戦争で装備が失われるのは普通のこと」と気にしていない様子だ。

出典:Telegram経由

第37海兵旅団のオレクサンドル大隊長は「反攻作戦について多くの人は『戦いがハイテンポで進んで秋にはクリミアに入れるだろう』と考えていたが、木々が生い茂るゾーンを1メートル進むだけも非常に困難で、この戦いは短距離走ではなくマラソンだ」と、第38海兵旅団のプロフェット中隊長も「司令官達は非常に慎重なアプローチを採用している。敵は強く狡猾なので、この反撃には着実な準備が必要だ。水が石を切り裂くように、我々も少しづつ進んで行くだろう。最初は小さな流れでも最後には大きな川になるはずだ」と述べているのが興味深い。

因みにニューヨーク・タイムズ紙は取材結果に基づき「少なくとも新たに編成された1個旅団は甚大な人的被害を被り、再編を行うため戦場から撤退した」と報じており、反攻作戦の初手でウクライナ軍が予想外の損害を被ったのは確実だが、これだけで「反攻作戦の成否」や「戦争の行方」を決めるのは早計だろう。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

もう珍しくなくなったので取り上げていないが、各国のウクライナ支援は強化され続けており、最も重要なウクライナ人の戦意が折れていない以上、この戦いはまだまだ続く見込みで、ロシア軍も決して余裕というわけではないため何が起きても不思議ではない。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • v12wu
    • 2023年 8月 08日

    最近の西側軍事アナリストは「ウクライナにNATO式の戦闘訓練を教えたのは間違いだったのでは?」、「そもそもNATO式の戦闘訓練は本格的な対国家戦争で通用するのか?」と自信喪失気味。
    逆に「ウクライナが西側に学ぶのではなく、西側がウクライナに学ぶことの方が多い」と考えるアナリストもいる。

    米軍がウクライナ兵に教えた戦術は間違っていた、これからは従来の戦法で
    リンク

    26
      •  
      • 2023年 8月 08日

      間違ってはいない

      西側の戦術はあくまで自分の軍隊に充分な弾薬と兵器がある場合の戦術

      つまり、強者の戦術

      ウクライナの様な弱者国には最初から無理な戦い方だったんだよ

      弱者には弱者の戦術が合う
      ただ、それだけ

      23
        • 名無し
        • 2023年 8月 08日

        だからウクライナの現状に合わない戦術を教えたのは間違ってたって話だろ

        21
        •  
        • 2023年 8月 08日

        総力戦下で全てが満ち足りる戦場なんて存在しない(今より圧倒的だったWW2のアメリカだってそうだった)というのに、足りないから勝てません、足りたら勝てます、っていうのは事実上の敗北宣言じゃないか?
        ポスト冷戦時代の西側の黄金期にイラクやアフガンのような劣位の相手を叩き潰すだけならNATOの戦術は確かに有効だったが、それに特化しすぎて総力戦に対応出来なくなっているのは事実だし、これからの多極化時代のドクトリンはまた別に必要だと思う

        5
      • ななし
      • 2023年 8月 08日

      そもそも「NATO式の戦術を試みようとしたが訓練の習熟や連携に難があって上手くいかなかった」という話が出てきているのに(つまりそもそもNATO式を実践できていない)それだけでNATO式の否定をして間違っていたなどと言うのは一面的すぎるような……
      記事にあるような制空権の話にしても、東側式は制空権や航空戦力重要視してないかと言われたらそんなことはないわけで、NATO式にしたって制空権や航空戦力が無ければ何もできないのかと言われたらそんなこともないでしょう
      結局付け焼刃じゃなく慣れた戦いでやるしかなかったというだけのことで、仮に最初から西側ドクトリンを採用していた国であれば逆にウクライナ(東側)式はダメという話にもなりかねない

      もちろんウクライナに西側戦術を教えるという判断についての是非はあるだろうし
      西側がウクライナから学ぶことは多いというのは全く否定できない事(現状最高の経験値を持っているのは間違いないので)
      NATO式はNATO式で各国でアップグレードの検討してる最中なんだろうなあ

      26
    • おわふ
    • 2023年 8月 08日

    長期戦になると、政権の安定しているロシアが有利。
    西側は援助疲れが出やすいというのが痛いところ。

    ウクライナ側は、ロシア側兵士を塹壕戦で消耗させ、逆に自軍兵士の消耗を抑えて戦いたいですね。
    アホがピンハネして、兵士の回復や士気が落ちるのも問題。

    26
      • bbcorn
      • 2023年 8月 08日

      ロシアは半年で今年の軍事予算を使い切った。
      資源収入からの利益は増産してるのに大幅減少。
      ロシアには金がない。
      制裁のせいで借金もできない。
      金がないと戦争はできない。

      23
      • 名無しさん
      • 2023年 8月 08日

      記事を読んでますか?
      大げさに発表されなくなっただけで、西側諸国の強化されています。

      西側諸国の世論はどちらかと言えば「支援疲れ」と言うより「支援自体に無関心」になりつつあります。
      政治においては新規の税制導入や新規事業に税金を投入する際は、マスコミ含め世論は大騒ぎしますが、増税や税金投入が決まってしまうと世論は沈静化し、そのまま惰性で延々と税負担が続いても国民は気にしなくなります。
      国民が関心を失うと、政治家は国の資産を割と自由にばら撒けるようになるので、このまま無関心のまま長期間、支援が継続することになるのではないかと思います。

      22
        • リック
        • 2023年 8月 08日

        西側諸国からの支援が途切れてウクライナの継戦が不可能になるというシナリオはまずないでしょう。
        それはこれまで積み上げてきた戦略の崩壊を意味しますからね。
        事実上見捨てられた形となるウクライナがそれでも緩衝地帯として西側に残ってくれるなどという都合の良い想定は、どこの首脳もしていないでしょうから。

        転換点があるとすると、「西側は平時を維持しながら、いかにロシアに戦時体制を強い続けられるか」という基本線の元に行われている支援をロシアの生産力が凌駕した時でしょう。
        欧米諸国もロシアにお付き合いして戦時体制に突入などしたくないでしょうから。ここで明確に戦況は動くと思います。

        4
    • アイスノン
    • 2023年 8月 08日

    ウクライナの反攻が上手く行っていないとなると、武器支援が遅れ、機密情報を漏らした米国の責任も議論になってしまうのが痛いところ。

    現在の苦戦の大きな要因が、(反攻開始の遅れにより)ロシアによる膨大な地雷や多重の塹壕を含む防衛陣の構築にあるとして。
    ウクライナは対抗手段を持っていなかったから仕方ないにせよ、ずっと軍事衛星で見えていたはずなのに米英等からの長距離砲▪砲弾やクラスター弾の提供とそれによる防衛陣構築の防止あるいは抑制ができなかったのは遺憾。

    16
    • MAT
    • 2023年 8月 08日

    夏の攻勢はまだまだこれからになるのかな。
    既に1個旅団が下がったとされてますが、投入された旅団数は分からないものの、ある程度勢いを保ってる状況から一定数の損害を前提にした構成そうですね。

    損害を見ていると、この1ヶ月で300両が何らかの損害を受けたとあるミリブロガーの方が仰っていてこの数ヶ月のウクライナとロシアの損害比率は3:5。
    ロシアの損害は通年でペースは変わらないとされてるので、ロシアの供給が止まらない限りはなんか古い兵器と新しい兵器が併存が進むでしょう。

    一方で、ウクライナがこれからの3ヶ月の間に900両(±100両)の痛みに耐えられるかも念頭に入れるところですかね。ペース的には今のとこ優秀かなと個人的には思いますが、仮にドローン攻勢が強まって損失スピードが月400,500に増えた場合に戦線がどこまで吸収できるかが気になりますね。

    8
      • gepard
      • 2023年 8月 08日

      申し訳ないですがどの戦線で進捗があるのでしょうか?
      ある程度勢いを保っている戦線はどこにも無いように見受けられます。

      30
        • MAT
        • 2023年 8月 08日

        これは言葉選びが良くなかったですね。
        ここで考えてた勢いはスピード感をもってロシア陣地を突破しているとかではなく、継続的に攻勢を仕掛けられている状態を考えています。

        で、どこの戦線?となると、個人としては南部の方を想定していました。

        色々言わんことも分かります。ISWを見てるだけでも今まで情報があった場所がパッタリ止まってる所(例としてバフムト周辺)もあるので、最悪吸収率れているとこもあると思います。
        ただ、守勢に回った話はあまり聞かないのと、彼らの攻勢は11月まで続ける事から考えてまだ終わらずに攻勢を続けられているニュアンスで話をしています。
        誤解を生む表現ですみません。

        5
          • gepard
          • 2023年 8月 08日

          ご丁寧にありがとうございます。

          クピヤンスクからセレベツ川橋頭保についてはロシアのカウンター攻勢が始まっていますので、この地域では守勢でしょう。
          戦略予備の第10軍団もザポリージャ方面に投入されたので、私の認識としては従来の攻勢戦力は消耗したという認識です。

          11月まで攻勢は続けられるかもしれませんが、どんな軍隊でも敵が1年近くかけて待ち構えている戦線に正面から繰り返し攻撃するのは賢いとは言えないでしょう。

          7
            • MAT
            • 2023年 8月 08日

            続けて返答ありがとうございます。

            北東部について(クピャンスクからリマンまでの範囲)は、仰ってる通りなので、初期攻勢軸の南部を意識して話してました。
            1個前のコメントでも少し書いたものの、最初のコメントにはその手の記載が無かった事もあり、全体を見たら止まってるという指摘と、北東部は守勢はまさにその通りです。
            一応自己弁護をすると、ウクライナ側の攻勢ポイントは東と南としていて、かつ元々東側は芳しくなかったので、比較的マシだった南部に絞った話を考えていました。(7月初期の段階で東部は南部の1/3くらいだった事がyoutubeにある日テレとかの報道であったため)
            もっとも、今ISWを見たら南部もかなり止まってきている様子なのでそもそもの根底が間違ってる事になりそうです。

            予備戦力が出てきた部分を自分は予備としつつも、ある程度想定した存在と考えていました。今回の攻勢のために編成されている事や、第2梯団としての活躍、ローテーションのための存在の可能性もあったのでここの予備軍団は、個人的に想定の範囲として動いてたのかと捉えていました。
            感覚としては、訓練→戦闘→補充のサイクルを回すための予備という認識です。

            で、最後のですがウクライナ側も戦闘方式を変えているので愚策にも正面突撃を続けるとはまた異なるのかなと捉えてます。
            仁川上陸作戦のような驚きと変える力があれば別ですが、今だとヘルソン東の方で少し動きがあるかも…?くらいで驚きがない戦闘ばかりなので、正面で殴り合う日露戦争形式にならざるを得ないだけなんじゃないかなと。
            とはいえ、攻勢がゴールではないので、どこかでロシア軍みたく中止を宣言する勇気がウクライナにも求められるのかもですね。

            3
    • 名無し
    • 2023年 8月 08日

    モスクワへの攻撃はデモンストレーションであり、量産が進み次第ウクライナ側もインフラへの攻撃を可能性がありますが、これにロシア国民がどう反応するかですね。
    ウクライナへ敵愾心を燃やすか、自分達を守ってくれない政権への反発を強めるか。

    6
    • TKT
    • 2023年 8月 08日

    一番の問題は兵士の士気が下がっていることでしょう。強制動員を行っている場合はなおさらです。

    「我々は過去16ヶ月間の戦いで何度も部隊が壊滅するのを見てきた」
    と述べ、失った戦車や装甲車輌についても
    「戦争で装備が失われるのは普通のこと」
    と気にしていない、と言いますが、部隊が壊滅しても、装備が失われても気にしない指揮官を、部下の兵士は信頼できるでしょうか?

    ゼークトいわく人間は四種類に大別できる。勤勉で頭の悪い奴は、軍隊から追放するべきだ。間違った命令でも延々と続け、気がついたときは、取り返しがつかなくなる。と、小林源文氏のマンガにもあります。

    装備を失っても、部下が死んでも気にしない指揮官や参謀は、損害や犠牲を減らすための努力や工夫もできなくて当然です。

    20
      • paxai
      • 2023年 8月 08日

      ウクライナ軍幹部って自軍の士気を過剰評価してる気がするわ。
      ずっと戦場に貼り付いてるせいで強制動員の現場とか知らないんじゃないの?

      12
      • ななし
      • 2023年 8月 08日

      部下が一人死ぬたびに、装備が一両失われるたびに、いちいち強く心を痛め続けてたら指揮官なんてみんな鬱病になると思う。
      そして鬱病で頭がおかしくなった指揮官なんかを部下が信頼できるわけもなく。

      作戦指揮を誤ったとか、何か明らかな自身の過失によって部下を死なせたり装備を失ったのでない限り、気にする必要はないし、むしろ気にしてはならないと思う。
      一日一万発以上の砲弾が飛び交い、両軍数十万人以上、車両数万両以上が失われてる激烈な消耗戦争の渦中では、どんなに細心の注意を払い、ベストオブベストの作戦指揮をしたところで死ぬ時はあっさり死ぬ。その際は運が悪かったと割り切るしかない。

      15
      • kitty
      • 2023年 8月 08日

      引用元をゲンブン氏にするなら、それでもいいんですけど、実際にはゼークトの発言ではないですよ。

      9
      • 名無し
      • 2023年 8月 08日

      それはロシアへの説教でしょうか。
      最近ロシアの地方の徴兵事務所が5日で28件
      火炎瓶なげこまれたかで放火されてます。
      ここではロシア軍は予備役の志願兵のみと言う事になっていますが強制動員がらみでしょう。

      7
      • 2023年 8月 08日

      ウクライナ軍の47旅団の下士官が言ってたけどウクライナ軍の将校にとって兵士の損害は統計上の数字にしかすぎんとのこと。
      このソ連軍体質から変革するのには士官学校の古い教官を総入れ替えしなければならないと。

      6
    • サクラダ
    • 2023年 8月 09日

    典型的な野戦。織田信長、秀吉、家康ともに、このような正面突破戦闘は選ばなかったと思う。長距離にわたり並行した戦線に、こういう形態で突入すると、後方以外の3方向から反撃がされるため、もともと非常に不利だ。信長なら、R軍に致命傷を与えられる武器を大量保有できるまで待つだろうか?秀吉なら、後方を長距離型兵器で長期に攻撃したり、インドに別口で安く原油を売ったり、Rの石油輸出施設を攻撃するかも?家康なら、どうする?勝てる確信が得られるまで、相手方の攪乱戦にとどめるか?

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