ウクライナ戦況

FrankenSAMが初戦果、FPVドローンの製造コストが半分に値下がり

ウクライナのカムイシン戦略産業相は17日「FrankenSAM計画の防空システムでShahedを撃墜した」と、ドローンの製造コストについても「FPVドローンは1,000ドルから500ドルに下がった」「ウクライナで生産される最も安価なドローンは300ドルだ」と明かした。

参考:Україна вперше успішно застосувала вночі “гібридну” ППО проєкту FrankenSAM – Камишін
参考:Україна почала виробляти артсистеми за стандартами НАТО, удвічі збільшила випуск боєприпасів – Камишін

FPVドローンの製造コストは1,000ドルから500ドルに値下がり

米国とウクライナが取り組んでいる「FrankenSAM」とは短距離、中距離、長距離をカバーする5つの防空システムの総称で、ウクライナのカムイシン戦略産業相は「FrankenSAMとは西側製防空システムの一部をウクライナ軍で使用されている旧ソ連製防空システムに統合するプロジェクトだ」「米国製ミサイルが入ったコンテナを旧ソ連製ランチャーに統合するだけの取り組みもあれば、米国製ランチャーをS-300のような防空システムに統合する取り組みもある」と說明している。

出典:VoidWanderer/CC BY-SA 4.0 Buk-M1

これまでに判明しているのは「旧ソ連製のBuk M1へのAIM-7統合」「旧ソ連製レーダーへのAIM-9M統合」「ウクライナ製レーダーへのパトリオットシステム統合」「旧ソ連製S-300への西側製防空システム統合」の4つで、最後の1つは未だに何なのか判明していない。

ニューヨーク・タイムズ紙は昨年10月「AIM-7を統合したBuk M1がウクライナに到着した」と報じていたが、カムイシン戦略産業相は17日「FrankenSAM計画のハイブリッド防空システムを15日夜に初めて使用し、9km先(高度400m)を飛行していたShahedを撃墜した」と明かした。

出典:Сухопутні війська ЗС України

さらに「ドローンの製造コストが大幅に下がった」「特にFPVドローンの製造コストは1,000ドルから500ドルに下がった」「ウクライナで生産される最も安価なドローンは300ドルだ」とも言及しており、2024年もFPVドローンの生産数が増加するため製造コストも更に下がるかもしれない。

因みにニューヨーク・タイムズ紙は「ウクライナには保管状態のBuk-M1が約60セットある」「ウクライナは17セットの改修を望んでいる」「米国が1ヶ月で改修できる数は5セット」と書いていたが、米国は昨年12月にFrankenSAM製造に不可欠な技術データをウクライナに提供しているため、恐らくウクライナはFrankenSAM(Buk-M1へのAIM-7統合)を独自に行えるようになっているはずだ。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • kitty
    • 2024年 1月 18日

    戦後、ウクライナが存在すれば基幹産業になったりして>激安FPVドローン製造

    19
      • うくらいだ
      • 2024年 1月 18日

      恐ろしいことです。今後世界にどういう影響をあたえるのでしょうかね。
      小さな組織でも効果的に相手を攻撃できるようになりましたし、そのうちどこの都市圏内にはドローン対策の電波妨害の施設なんかが設置されるのでしょうか。

      7
        • kitty
        • 2024年 1月 18日

        202X年のAmazonには

        「202X年最新型!ウクライナ製ドローン」

        とか並んでいそう。
        もちろん炸薬は外しているでしょうけど元に戻す改造は難しくないでしょうから、治安関係者にはずいぶん頭の痛いことになりそうで。

        5
          • 名無しの悪夢
          • 2024年 1月 18日

          記事の画像がわかりやすくヤバいね

    • 58式素人
    • 2024年 1月 18日

    FrankenSAMが揃いつつあるようですね。
    既存のものと組合せて、有効な防空ができると良いですね。
    多分、防空には、課題がいくつも残っていると思いますが。
    そして、いずれは、戦略兵器に相当する国産の長距離ドローンも必要でしょうか。
    例えば、チェリャビンスクの戦車工場を空襲で破壊できるほどのもの。

    8
    • 樺太
    • 2024年 1月 18日

    海上自衛隊向けのシースパローのライセンス生産ラインは流石にもうESSM用に転用済みかな?

    シースパローも新規生産しているところはないだろうから誘導弾の新規供給は期待出来ないといずれは弾切れになってしまう

    3
      • Whiskey Dick
      • 2024年 1月 18日

      海軍向けSAMと空軍向けAAMの在庫ならまだ余裕があるはずだからESSMもいずれ統合される。但しアメリカがイエメン攻撃を継続する場合は海軍向け兵器も枯渇するかもしれない。

      3
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 1月 18日

    「ドローンの製造コストが大幅に下がった」はスケールメリットによるコスト低下だと思いますが、となると2倍以上生産しているといわれるロシア側はもっとコストが下がっているのでは?
    それとも経済制裁の影響がこの分野では効いているのか
    ウクライナのFPVドローン生産コストが下がるのは喜ばしいのですが、ここは相対的に生産数・コストを見ないと意味が無いような

    4
    • たむごん
    • 2024年 1月 18日

    ウクライナは人件費が安い国ですが、そこに量産効果が加われば、恐ろしい程に製造コストが低下しますね。
    中国製の基幹部品をどの程度使う必要があるのかは少し気になっています)。

    日本の防衛力強化のために、ドローン活用の戦訓・訓練支援などを、経済支援の見返りとして得たいですね。

    >…「ウクライナで生産される最も安価なドローンは300ドルだ」とも言及しており、2024年もFPVドローンの生産数が増加するため製造コストも更に下がるかもしれない。

    2
    • 名無しの悪夢
    • 2024年 1月 18日

    ヤベェ、絶対こいつら作るのこういうの楽しくなってんよ

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