ウクライナ戦況

主張する状況が食い違うスバトボ方面の戦い、ウクライナ軍が拠点を奪還?

スバトボ方面の状況について情報が交錯しており、複数のロシア側情報源は「ナディア、ノボエホリフカ、セルヒフカをロシア軍が保持している」と、ウクライナ側情報源は「ナディアを奪還し、ノボエホリフカの一部から敵を追い出した」と主張している。

視覚的証拠が無いことを良いことに「言ったもの勝ち」の匂いがプンプンするが、、、

スバトボ方面についてロシア側情報源(Рыбарь)は30日「ロシア軍がナディアからノボエホリフカまでの前線位置を押し上げてなだらかにした。ロシア軍は反撃に備えて解放した地域の守りを固めているが、敵はノボエホリフカ近くのトヴェルドクリボーヴに大軍を集結させている。さらにカルマジ二フカ付近の突出部付近にも敵は増援を引き入れており、ノヴォセルヒウカ付近に大口径の砲兵装備を配置して前線をクラスター砲弾で攻撃している」と報告。

出典:GoogleMap スバトボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

さらにロシア人軍事特派員(Русской Весны)も31日「ウクライナ軍の第25空挺旅団がライホロトカからカルマジ二フカの間で失われた陣地を取り戻すため攻撃を2度試みたが、ロシア軍の反撃で敵部隊は壊滅した。逆にロシア軍は敵の陣地を幾つか占領することに成功した」と主張、さらにロシア人ジャーナリストが運営するWarGonzoも31日「ゼレベツ川左岸の足場を再び広げるためノボエホリフカ方向でロシア軍が攻撃を行った」と述べている。

しかしウクライナ側情報源(DeepState)は31日「ウクライナ軍の反撃でナディアとノボエホリフカの一部から敵を追い出した。敵が完全に支配しているのはセルヒフカだけだ」と主張しており、両陣営とも視覚的証拠を提示せず、全く異なる状況を主張しているのが興味深い。

出典:GoogleMap スバトボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

同じ地域の戦況がここまで異なるのは珍しく、視覚的証拠が無いことを良いことに「言ったもの勝ち」の匂いがプンプンするが、ここから真実を見つけていくのも観測者にとって醍醐味の一つだろう。

因みに管理人は「両陣営の情報源が本当の状況を把握していないのではないか?」と思っている。

出典:GoogleMap スバトボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

追記:どちらの陣営でもないSuriyakmapsは31日「ウクライナ軍が反撃を開始してノボエホリフカを完全に解放した。さらにナディア郊外にもウクライナ軍が迫っている」と主張しており、ウクライナ側情報源(DeepState)とは奪還した拠点が反対で、もうどれを信じるかは個人の判断次第だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • class
    • 2023年 7月 31日

    >>ここから真実を見つけていくのも観測者にとって醍醐味の一つだろう。
    両陣営が意味不明に食い違い始める度に凡人の私は悶々としてきましたが、
    それを楽しみだすとは管理人ニキはすげぇですね、情報収集者としての矜持でしょうか?

    21
    • gepard
    • 2023年 7月 31日

    セレベツ川橋頭堡の戦いは両軍ともに攻撃的な行動をとっており戦況は流動的ということだろう。

    興味深いのはクレミンナ戦線においてCV90が始めてロシア軍に鹵獲された映像が報じられたことだ。至近距離からRPGの直撃を受け車長が戦死したと伝えられている。
    CV90はスウェーデンからおよそ50両供与され反攻作戦に投入されていると見られていた。
    貴重な最新鋭IFV装備の部隊を守勢の東部に配置していることは、ロシアの攻勢をかなり警戒している証のようだ。

    13
    • bbcorn
    • 2023年 7月 31日

    チョンがル橋また攻撃受けて通行止めらしいね。
    修復したばかりなのにまた使えない。
    まあ わざとやってんだろうけど。
    修復中のクリミア大橋も同じことになりそう。
    南部のロシアの兵站はボロボロだわ。
    クリミアほんとに奪還しちゃうかもね。

    8
    • ふむ
    • 2023年 7月 31日

    逆に言えばロシア軍の侵攻が止まって本格的な交戦に入った事までは一致してますね

    後はもう取った取られたはいったもん勝ちなとこありますからね…
    (自軍兵が少し入っただけでも戦闘の絵が撮れて「敵拠点を占領して残敵を掃討中」とか言えてしまうので)
    焦ってそこまで細かく知ろうとして誤情報に飛び付くリスク犯すよりは、戦場の霧の向こうと割り切るのが良さげ

    8
    • panda
    • 2023年 7月 31日

    このあたりの集落は規模が非常に小さく戦術上の価値が低そうですね
    ナディヤ・ノボエホリフカ間の戦術上重要な高地はロシア軍が占拠しているようですが

    2
    • 2023年 8月 01日

    個人的に信仰心が厚くないので、分からないのだから信じる必要がない気もする。

    最近変わったこととして、ISWによるとイゴールガーキン逮捕されてからロシアのミルプロガーが政府に協調的に動いているそう。
    前は半分バカにしていた節があるプーチンなど政府高官の西側戦車238台撃破(供与数より多い)にも協力して、同じ戦車の破壊映像を角度を変えてupしたり、6月の映像を西側戦車を破壊したと繰り返し流しているとも。
    信じてないけど、ミルプロガーが面白くない存在に今は成り下がっているんだなと思った。
    ミルブロガーは個人で前線に取材に行くので、西側でいうジャーナリストみたいな存在に似ているとも思っていたんだけど。

    14
      • KNOB CREEK
      • 2023年 8月 01日

      それって要はロシア側の情報がプロパガンダありきになって西側基準だと信頼度ガタ落ちってことなんじゃ…。
      良くも悪くもあっちのブロガーが好き勝手出来たからこそロシア側の情報でもそれなりにソースとして使えたのにこれじゃ本当に使えないソースに成り下りかねないじゃないですか。

      26
        • class
        • 2023年 8月 01日

        ロシア軍公式の信頼性は本当にアレだからね
        ロシアのミルブロガーの方々がそのレベルに落ちられると情報収集が非常に心細い

        18
    •  
    • 2023年 8月 01日

    バチバチの殴り合い…とはいえどちらも展開している戦力はそこまで多くないだろうしこの戦場の勝敗はあまり重要じゃなさそう
    強いていえば増援を投入したら他の戦場で不利になりそう

    2
    • BBQ
    • 2023年 8月 01日

    まあ視覚的証拠って自ら自分の手の内を晒すようなもんですからね、リアルタイムには出てこないでしょう。

    14
    • 6gma
    • 2023年 8月 01日

    ロシア軍がスタロマイオルスケに逆襲を仕掛けた話もガセネタだったみたいですし、ロシア側情報源の信憑性がどんどん低くなっているような。

    20
    • ポンポコ
    • 2023年 8月 01日

    スバトボ方面のロシア軍の攻勢戦力はそれほど大きくなく、無理をしない傾向の強いロシア軍がここで大きく前進したのは、この地域のウクライナ軍がたまたま薄かったからだと思います。

    だから、兵力に勝るウクライナ軍が、増援を差し向けたら、ロシア軍の進撃はとまったり、押し戻されるのは当然だと思います。

    後は、ロシア軍側が増援を送るかどうか、兵力が少ないロシア軍にはその余裕はないかもしれません。

    5
    • ななし
    • 2023年 8月 01日

    Staromlynivka 方面でもStaromaiors’keをどちらが実効支配しているか双方の言い分が180度違ってますよね。
    ロシアは再占領したと言っている一方でウクライナは奪還後完全に保持していると言っている。
    ロシアのミルブロガーの一部がStaromaiors’keはウクライナが保持していてUrozhaineも数日で落ちると悲観的な事を言っていたりするので、実際のところはウクライナ優勢で争奪戦継続中だろうと思いますが。

    3
    • りにあ
    • 2023年 8月 01日

    ロシア政府側もISW等の情報見ているんでしょうね。

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