欧州関連

NATO、欧州のパトリオット運用国向けに1,000発の迎撃弾を一括発注

NATO支援調達庁は3日「加盟国が運用するパトリオットシステムの迎撃弾(GEM-T弾)調達を一本化して1,000発の契約を締結した」と発表した。因みにウクライナにはPAC-3弾とGEM-T弾の両方が供給されているらしい。

参考:NSPA SUPPORTS A COALITION OF NATO NATIONS WITH CONTRACT FOR PATRIOT MISSILES

欧州におけるGEM-T弾の新たな生産能力は供給の安全性を高め、各国の備蓄在庫の補充に貢献するだろう

MBDAはレイセオン(現在のRTX)と1987年に共同でCOMLOGを設立、 同社はパトリオットシステムで使用するPAC-2弾のメンテナンス(5,000発以上)を請け負ってきたが、2022年11月にGEM-T弾(PAC-2形態で使用する最新の迎撃弾で弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機との交戦能力が向上したタイプ)のドイツ生産で合意、両社は当時「ドイツで生産されたGEM-T弾を欧州の運用国に供給する可能性が開かれた」と述べていたが、NATOは運用国による一括発注を発表して注目を集めている。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Alexandra Shea

NATO支援調達庁(NSPA)は3日「ドイツ、オランダ、ルーマニア、スペインを含むNATO加盟国を支援して1,000発(全てのオプションが行使された場合の数量)のGEM-T弾調達契約をCOMLOGと締結する」「加盟国の調達統合はスケールメリットをもたらし需要増に対応するGEM-T弾の生産拡大を後押しする」「欧州におけるGEM-T弾の新たな生産能力は供給の安全性を高め備蓄在庫の補充に貢献するだろう」と発表。

要するに加盟国のGEM-T弾調達を1本化することで「より有利な条件」で契約し、1,000発分の大型契約を受注したCOMLOGも「GEM-T弾の生産拡大に安心して投資できる」という意味だろう。

出典:vk経由 流出したと思われる機密資料

因みに、流出した機密文書によればウクライナにはPAC-3弾とGEM-T弾の両方が供給されているらしい。

追記:1,000発分の契約額は55億ドル(サポートやスペアパーツなどの関連費用が含まれている)になるらしい。

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※アイキャッチ画像の出典:NATO Support and Procurement Agency (NSPA)

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コメント

    • 58式素人
    • 2024年 1月 04日

    EUは、PAC-3弾は量産しないのかな。
    それとも、PAC-3弾も量産する方向に行くのかな。
    ローッキード・マーティンだけでは、おそらく、
    需要をタイムリーにこなすことには無理があるだろうし。

    7
      •  
      • 2024年 1月 04日

      まあ本件はEUお得意の非関税障壁でもあるわけですし、ロッキードが現地法人現地工場を作ってPAC-3弾の生産体制を欧州域内で完結するようにしない限りは基本的にPAC-2GEM-T弾一本で行くことになるのではないでしょうか
      しかし周知の通りターミナルフェイズの弾道弾迎撃に特化したPAC-3弾と弾道弾迎撃にも対応したレベルのPAC-2GEM-T弾では同じBMD対応とはいっても性能に差がありますし、不足する部分では新型SAMを独自に開発することになるような気がします

      7
        • 58式素人
        • 2024年 1月 04日

        そうですね。
        でも、これから新規開発だと時間がかかるでしょう。
        10年くらいでしょうか。並行作業でそれを行うとしても、
        PAC-3のライセンス生産は行った方が良いと思えます。
        ポーランドの言い分によれば、あと3年なのですから。

    • 樺太
    • 2024年 1月 04日

    米本土のPAC-2ラインが閉じてもライセンスラインを維持した上でシーカージャイロ等の逆輸出を実現させた日本の努力は評価されるべき。

    米軍への弾体完成品輸出からの玉突きウクライナ支援は日本の多大な国際貢献となろう

    37
      • ash
      • 2024年 1月 04日

      しかしこうしてパトリオットシリーズの優秀さが実証されるのはいいのですが、必用量の6割しかないという本邦が供与しなければならないのはどうにかならないのか…
      ただでさえ挨拶代わりにミサイル撃ってくる隣国がキナ臭くなっているのですし。

      13
        • 58式素人
        • 2024年 1月 04日

        供与の数量はまだわかりませんが。
        今回の供与だけでなく、米軍の在庫用発注もこなすようになれば、
        現在の少量生産(?)より生産規模を拡大できるのでは、と期待しています。
        自国用に必要な時に発注をしても、納入が数年先ではまずいでしょうし。

        20
      • たむごん
      • 2024年 1月 04日

      情報ありがとうございます、勉強になります。
      米軍装備は、中国製の部品が多数使用されてる事が懸念されてきましたからね。

      アメリカが、日本(友好国)から重要部品を調達できるという事は、仰る通り、極めて高い評価となる事案でしょうね。

      3
    • インゼクター
    • 2024年 1月 04日

    このサイトを見てると「流出した機密文書」というワードになんの疑問も持たなくなってくるけど、どんな情報であっても軍事情報が、それも戦争当事国関連の情報が流出しまくってるのを見ると漏らした相手がNATOなのかEUなのか、ウクライナなのかロシアによる工作なのか知らんけど、情報を完全に保全するのは不可能なんだろうか。

    16
      • 黒丸
      • 2024年 1月 04日

      米機密文書の流出、犯人は米軍事基地で働いていたミリタリーマニアか
      リンク
      鉄オタは鉄道会社に就職させない、ミリオタは軍人にしない。というのが理想かもしれませんが
      オタは時としてその分野に秀でて見えるのが厄介なんです。

      7
      • たむごん
      • 2024年 1月 04日

      仰る通りと思います。

      米軍人ゲーマーが、ウクライナ戦争の機密情報を、discordに流出させたことが話題になりました。
      動機は『承認欲求』『見栄』でした。

      情報の保全、本当に難しいですね…。

      5
    • kitty
    • 2024年 1月 04日

    GEM-Tってどんなんだっけって復習したら、このサイトがわかりやすかった。

    リンク
    ミサイル防衛に関する最近の話題(13)パトリオットは複雑怪奇

    3
    • 名無しパン
    • 2024年 1月 04日

    ちょっと前までパトリオットは性能限界なので新しいの作るって話があったはずだけど、どうするんだろうか。

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