オランダはワルラス級の後継艦に「トマホーク」と「AIP機関」を搭載する潜水艦を4隻調達する予定で、ポーランド、ルーマニア、エジプト、インド、フィリピン、カナダ、アルゼンチンも潜水艦調達を進めており、通常動力型潜水艦に対する海外市場の需要は30隻以上だ。
参考:‘Niche capability’: Netherlands to assess 3 offers for 4 new submarines
8ヶ国が導入を予定している潜水艦の数は30隻以上で、契約総額は控えめに見積もっても300億ドル=4兆円以上になる計算だ
通常動力型潜水艦に対する海外市場の需要は非常に旺盛で、少なくとも8ヶ国(オランダ、ポーランド、ルーマニア、エジプト、インド、フィリピン、カナダ、アルゼンチン)で潜水艦の調達が進めており、この需要を巡ってフランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン、韓国が売り込みを行っている。
オランダはワルラス級潜水艦の後継艦に「トマホークとAIP機関を搭載した潜水艦」を要求、フランスがシュフラン級原潜の通常動力バージョンを、ドイツが212CDを、スウェーデンがC718(A26の派生型)を提案中で、2024年の第1四半期までに最終決定が下される予定だ。
ポーランドもAIP機関と巡航ミサイルを搭載する潜水艦の調達(オルカプロジェクト)を進めているが、まだ誰が入札に応じるのかは分かっていない。
黒海に面したルーマニアはスコルペヌ型潜水艦を、エジプトはバラクーダ級潜水艦(シュフラン級原潜の通常動力バージョン)を調達するためフランスに接触中で、インドは調達中のスコルペヌ型潜水艦を追加発注(6隻→9隻)し、入札準備が進められている通常動力型潜水艦(プロジェクト75-I)にはドイツがルフィン級潜水艦、214型、218型の何れか、韓国がKSS-III BatchIIをベースにしたDSME3000、スペインがS-80Plusを提案して注目を集めている。
フィリピンが計画中の潜水艦部隊創設にはフランスがスコルペヌ型潜水艦、韓国が209/1400型潜水艦を提案、フィリピン国防省は「大統領の承認が得られれば2028年までに最終決定を下す」と述べているものの資金的な問題で計画が実現するは未知数だ。
カナダもヴィクトリア級潜水艦の後継艦を検討中で「最大12隻の新型潜水艦を調達したい」と海軍が政府に働きかけており、まだ公式な調達プログラムは立ち上がっていないものの海軍の視察団が韓国を訪問してKSS-IIIを建造しているハンファオーシャンと現代重工業の造船所を視察、10月頃に韓国を再訪問して島山安昌浩(KSS-IIIの1番艦)に試乗すると噂されているが、フランスやドイツもカナダ海軍の潜水艦調達に関心を示していると噂されているため、最終的に誰と誰が入札で競合するのは蓋を開けてみるまで分からない。
アルゼンチンもTR1700型潜水艦の後継艦調達を検討中で、13億ドル以上と見積もられた契約を獲得するためフランスがスコルペヌ級とシュフラン級の通常動力バージョン、ドイツが209/1400型と214型を提案していると報じられているが、フィリピンと同じようにアルゼンチンも資金的な問題を抱えている。
この他にも「サウジアラビアが小型潜水艦の導入を決めた」という噂や、湾岸諸国が「イタリアやトルコの小型潜水艦に関心を示している」という噂もあり、海外の防衛装備展示会ではXLUUVや水中発射型UAVの出展が増加して関心を集めているため、近い将来の輸出トレンドはAIP機関+巡航ミサイル+水中発射型UAVを搭載した大型潜水艦、AIP機関を搭載する1,000トン前後の小型潜水艦、これを補完するXLUUVの組み合わせになる可能性が高い。
因みにオランダ、ポーランド、ルーマニア、エジプト、インド、フィリピン、カナダ、アルゼンチンが導入を予定している潜水艦の数は30隻以上で、契約総額は控えめに見積もっても300億ドル=4兆円以上(インドが予定している契約額で計算)になり、これを誰が最も多く獲得するのかに注目が集まっている。
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※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr U-Boot-Klasse 212A
“オランダ、ポーランド、ルーマニア、エジプト、インド、フィリピン、カナダ、アルゼンチン”
他の国は置いておいて、オランダは潜水艦建造能力を喪失したのでしょうか。
バーベル級のデータをもらったニカ国のうちの一国なのに。
残念なことです。
「継続は力なり」を地で行くような海自式発注法にも理があったわけですね。
なんか隔年で新造する方式は、伊勢神社の遷宮を連想させますね。
あれも宮大工の技術継承に役立っているそうですし。
オランダは西側じゃ珍しい大型通常潜の運用国だったんだけどなあ
似たような装備の日本にお声がかからないのを含め残念やね
RDMもフェイエノールト造船所も既に無いのですね。
ワルラス級の後継ならば。外洋哨戒潜水艦なのでしょうね。
米海軍潜水艦の戦闘システムは必須でしょうが、
他の部分(船体や機関)は自前でなんとかできないのかな。
今のワルラス級の整備はどこで行っているのでしょう。
フランスやドイツ、スウェーデンだけでは不安なのでは。
今回のウクライナ戦役を見ても、フランスとドイツは
国策が変わりすぎるのでは。
わかってはいるが、日本のにの字も無いな
日本はまずは法改正からだな。
そして、30隻もの建造能力を各国で割り振ったら、カナダくらいは日本調達があるかもね。
(韓国が頑張って受注し建造能力オーバーに陥り、納期的に日本が受注になる、かな?)
正直なところ潜水艦建造に関して国内なのか現地なのかの問題あるし戦闘システムとかセンサー類、運用兵器まで考えたら日本選ぶ価値あるんかな。
秘である事は承知だが日本製ソナーが凄いとか聞かない話だし出せる兵器が魚雷しかなくて、18式すら出すのか不明。18式後継?改善型?魚雷があるから出したら出しただけど共通部分があるから情報漏れたら困るケースが有りそうだが。
日本の潜水艦建と整備は神戸一箇所に週中しているので
どこかもう一箇所 神戸から離れた場所に製造拠点を作って
そこで建造した潜水艦を輸出できるようにしてほしい。
今のままだと、神戸が攻撃されれば潜水艦建造、補修能力を
大きく損なう恐れがあるので。
他所の記事で言っていますが。
室蘭が空いているみたいですね。
たまに地震被害があるのがアレですが。
あと、これもたまにヒグマ(!)が同居人面をするそうですが。
室蘭製鉄所と日本製鋼所が側ですね。
立地は良いのではと真面目に想像します。
VLSを装備した艦を実際に配備しないと、他国からは興味を持たれないのだろうね。
日本の潜水艦建造は年1で発注が来るように海自側で調整し、受注企業は内需だけで回るようにできてしまっていますが、今後それが続くかどうか不透明なんですよね。SSG(極超音速ミサイルを搭載するならSSB)になると言われている次期潜水艦はペイロードの都合で相応に大型化するという見立てもありますし、そうなると場合により既存のドックで適合しなかったり建造期間が伸びることもアリえますから、年1建造で20数年で退役させる現在のスタイルが続かない可能性もあるかもと勝手に思っています。
例えば隔年発注にして納品後の運用期間を伸ばす方向で対応する場合、一概には言えませんがドックは今ほど過密にはならないですから、そこを活用する形で輸出用潜水艦の建造を行うという選択肢もあるのかなと。
海自の潜水艦は、当たり前だけどチョークポイントでの警戒中心の日本の防衛計画に適合された仕様となっており。また、オーストラリアの商談の際に問題となったダメコン重視の要員の多さなど、名前の上がった国々への輸出となると難しいものがあると思います。法整備や販路開拓の問題は別として本当に海外へ潜水艦を輸出したいなら、海外向けモデルの開発は必定だと考えます。
どっかのスレでも書いたけど、海上艦はわかりますが、潜水艦の人手を要するダメコンってなんなんですか?
潜水艦と海上艦でダメコンの内容は特段変わりません。潜水艦でどのようなダメコンに最も人員を要するかについて、定量的なものを持ち合わせていませんが、戦記等を読むと爆雷等の衝撃を受けた場合、影響が広範囲に渡るため、人員を多く必要とするようです。
これも前に書いたのですが、海上艦であれば浮力がある限りやりようはあると思うのですが、現代の潜水艦の場合、船殻の気密が破綻したら、浮上するか圧潰するかの二択になると思うのですよ。
潜水艦が「可潜艦」の時代になら、漏水個所に一生懸命詰め物する図も説得力があったのですが。
まあ、水圧に負けない船殻自体が強固だと言うことはありますが、A-10みたいな例外を除き、戦闘機に装甲が無くなったのと同じ理屈が潜水艦にもありそうで。
現代の潜水艦の場合でも、船殻の金属(固く粘り強い)は応力特性を有しており、気密が破綻した時の破城部位のサイズや周辺圧力等によっては、浮上するか圧潰するかの二択にならない場合があると思います。