中東アフリカ関連

サウジもC-390導入か、エンブラエルとSAMIが同機の最終組立ラインを検討

エンブラエルのC-390はC-130Jを破ってオランダ空軍から受注を獲得、オーストリア空軍やチェコ空軍も同機の導入を発表して注目を集めているが、エンブラエルは29日「C-390の最終組立ライン設置を含む協力関係の構築でサウジアラビアと合意した」と発表した。

参考:SAMI and Embraer sign MoU to Begin Cooperation Between Saudi Arabia and Brazil in the Defense and Security Sector

今回の合意内容はC-390導入を前提にした取り組みである可能性が非常に高い

中型軍用輸送機のシェア(1,500機前後)はC-130が独占しているものの平均機齢は30年を越えており、アフガニスタン撤退やウクライナ侵攻を経験した欧州諸国は「旧式の輸送機によるロジスティックシステムが時代遅れになっている」と再認識、エンブラエルのC-390にも多くの関心が集まっていたが、オランダ空軍はC-130Hの後継機にC-130JではなくC-390を選択(平均稼働率、運用性、メンテナンス性、技術要件、調達コストの全てでC-390の方が優れいたらしい)して世界中を驚かせた。

出典:Bundesministerium für Landesverteidigung

さらにオーストリア空軍やチェコ空軍もC-130JやA400MではなくC-390を選択して「セールスの好調さ」を印象付け、韓国空軍が実施している次期輸送機選定でも「C-390の評価がC-130Jを上回った」と報じられており、韓国メディアは「C-390を選択する可能性が高い」と見ているが、サウジアラビアもC-130Hの後継機にC-390を選択する可能性が浮上している。

エンブラエルとBAEは昨年7月「中東地域に対するC-390のマーケティングで協力することに合意した」と発表していたが、エンブラエルは29日「サウジアラビアのSAMIと航空宇宙産業における協力関係を確立することで合意した」と発表、この合意は産業構造の非石油化を推し進める「Saudi Vision 2030(安全保障分野では2030年までに国防支出の50%を国内に投資する予定=調達する装備やサービスの半分を国内で調達するという意味)」を支援するためのもので、エンブラエルはSAMIと協力してサウジアラビア国内での事業拡大を目指すらしい。

エンブラエルとSAMIは「サウジアラビアにおけるエンブラエル製航空機の包括的なメンテナンス能力確立に取り組み、C-390の地域MRO、最終組立ライン、ミッションシステムの統合を検討する」と述べており、エンブラエルが「サウジ空軍のC-130H後継機(33機)にC-390を提案した」という噂もある。

この噂が本当かどうかは不明だが「C-390の地域MRO、最終組立ライン、ミッションシステムの統合を検討する」という発表は「C-390導入を前提にした取り組み」である可能性が非常に高く、サウジ空軍のC-130H後継機に対する需要(33機分の更新)を考えると、この受注中に成功すればC-390にとって「過去最大の契約規模」になるかもしれない。

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※アイキャッチ画像の出典:Embraer

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コメント

    • 58式素人
    • 2023年 11月 30日

    個人攻撃(?)になるかもですが。
    左端の人の服装は、誰かアドバイスをする人はいないのかな。

    4
      • あばばばば
      • 2023年 11月 30日

      スーツの下のボタンの事を言っているなら、そこは開けておくのが普通では? 国際会議の集合写真でも多くの人が一番下のボタンを開けいる。
      それ以外におかしいと思われる部分は見当たらないのでわからないが……

      5
        • kitty
        • 2023年 11月 30日

        いやズボンの方では。

        3
          • 南極1号
          • 2023年 11月 30日

          ズボンがルーズソックスみたいになってますね。

          3
          • 八ゲ
          • 2023年 11月 30日

          ダボったく見えるが、ワンクッションのパンツ丈なので変ではない。脚を組んだ時に靴下が見えすぎないようにしているのだろう。

          7
    • 無印
    • 2023年 11月 30日

    名機C-130の時代も終わりかけているのか
    70年以上続けば上等ですな

    10
    • AH-X
    • 2023年 11月 30日

    日本のC-130後継機も差し迫ってるのでC-390もいい候補だと思います。C-130の不整地運用はさほど必要性があるか疑問ですし、これにしてもいいのでは?

    4
      • 幽霊
      • 2023年 11月 30日

      日本でC-390を採用するのは難しいのでは?
      国内からはC-390を導入するならC-2の導入数を増やせと主張する人も出てくるでしょうし、アメリカからはそれとなく圧力をかけられる事になると思います。

      7
        • 匿名
        • 2023年 12月 01日

        C-2は調達予定を減らされたり増やされたり?
        これまた事業計画的に企業側はたまったものではありませんね

      • ばく
      • 2023年 11月 30日

      ラピッドドラゴン運用したいからC-130かその系列って選択はありそう…輸送機側の対応いらないのならC-390でもいいのかもしれんけど。C-2にも導入したいみたいな話もあった気がするしその辺は大丈夫なのかな?

      5
    • のののの
    • 2023年 11月 30日

    日本の場合救難ヘリへの空中給油任務が有るので、ヘリに合わせてゆっくり飛べるC-130以外の選択肢は無いでしょう。
    それに、不整地運用を求めないならC-390よりC-2を選択するんじゃないかな?

    12
    •  
    • 2023年 11月 30日

    ぶっちゃけ輸送機なんかそんなにいるもんかね

      •  さ
      • 2023年 11月 30日

      みんな同じような時期に導入したので、同じような時期に寿命による代替え更新が必要になってるのでは?

      7
    •  
    • 2023年 11月 30日

    ロッキードマーティンは新型を開発する気、有るのかしら?

    4
    • daishi
    • 2023年 11月 30日

    ・C-17や日本のC-2ほどのペイロードは不要だけどC-130と同じかそれより上は欲しい
    ・不整地運用は普段使うものではない
    ・旅客機と同じ路線(高度・速度)が使える方が重宝する
    ・フライングブーム対応の空中給油機型が出れば空中給油機を持っていない国も輸送機のリプレースで提案できる
    とC-130を整地運用前提の国にはC-390は「ちょうどいい」になりそうですね。
    もともとC-130のリプレース市場を前提に設計方針を固めているとはいえ、ここまで注目を集めたのは大きいと思います。

    気になるのはアメリカ空軍のC-5とC-17の後継機の話が出てこないことですね。
    近代改修したC-5Mの寿命も2030-2040年には尽きるでしょうし、C-17も2015年に製造ラインが閉じたので、有人・無人輸送機に関わらず何らかの計画が動いている必要がありそうですが。

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