どうやらF-35の調達コストは進行するインフレ調整費用、製造現場のCOVID-19対策費用、Block4製造のため追加費用、各国からの受注減が重なり、ロット12~14よりも高額になると報じられている。
参考:New F-35 Lot 15-17 Deal Hung Up on Inflation, COVID-19 Mitigation Costs
Block4の製造が始まるロット15~17で供給されるF-35の調達コストは上昇に転じる
ロット12~14までのF-35製造コストは478機という発注数に支えられ2019年末に340億ドル(約3兆6,960億円)で契約を締結、ロット14発注時のF-35Aの調達コストは7,600万ドル、F-35Bの調達コストは8,028万ドル、F-35Cの調達コストは9,150万ドルまで値下がりしたため「戦闘機の調達価格としては高額すぎる」という批判を黙らせることに成功したが、交渉が難航しているロット15~17のF-35製造コストは前ロットと比較して高額になると報じられている。
ロット15~17の契約は昨年の11月までに締結されると予想されていたが進行するインフレ調整費用、製造現場のCOVID-19対策費用、Block4製造のため追加費用、各国からの受注減が重なり、これらの要因を加味した調達コストの合意で国防総省とロッキード・マーティンの溝が縮まらず契約の締結は早くても3月以降になるらしい。
特にロッキード・マーティンの戦闘機担当執行役員副社長のウルマー氏は「ロット15~17に対する各国の発注数はロット12~14よりも少なく、新機能が追加されるBlock4は製造コストを確実に押し上げるためF-35の調達コストはロット12~14よりも上昇する」と述べているが、そもそもBlock4の構成要素は全て完成している訳ではないので恐らく調達コストを設定すること自体が困難なのかもしれない。
因みにBlock4へのアップグレードはソフトウェア、ハードウェア、エンジンの3つで構成されており、ソフトウェア部分のアップグレード4.0、4.1、4.2、4.3、4.4といった感じで分割パッケージで配信される予定だが、ハードウェアのアップグレードはメインコンピュターの換装、外部燃料システムの改良、パノラマ式コクピット表示装置やサイドキックの導入など物理的な改造(Technology Refresh3/TR3)が含まれており、全ての要素がロット15に間に合うのか不明(完全なBlock4対応のF-35が完成するのは2020年後半までかかると噂されている)だ。
さらにBlock4で追加される初期能力増加分(どこから何処を指しているのは明かされていない)までは現行のエンジンが提供する発電能力や熱管理能力で対応できるが、以降の能力増加分を機能させるためにはエンジン能力の強化が不可欠で、米空軍向けF-35Aには次世代戦闘機用のエンジン研究の過程で開発されたアダプティブエンジン(AETP)を統合することが予定(2027年見込み)されており、同盟国向けのF-35AやF-35B/F-35CはP&Wが提案しているF135の強化パッケージ「F135EEP」を採用する可能性が高いと見込まれている。
つまりロット15~17で製造されるF-35は完全にBlock4の構成要素を備えたモデルでない可能性が非常に高く、中途半端なF-35Aを調達しても追加要素を後から組み込むと余計に費用がかさむという理由で米空軍は2022年からF-35Aの調達数を削減してF-15EXの調達に資金を回し始めており、これを見て同盟国もF-35の取得スケージュール調整しているためロット15~17の発注数がロット12~14よりも少ないのだろう。
どちらにしてもF-35はBlock3F→Block4への過渡期を迎えるため「能力や機能が大幅に追加されるBlock4をロット12~14と同じコストで寄越せ」というのに無理があるのは理解できるが、7,600万ドルが再び1億ドルを超えるようなことにならない事を祈るしかない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Brian G. Rhodes
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たくさん作ることで安くなるとされてた仕組みが逆回転して運用コストに跳ね返ったりしないのかな
そこまでの問題ではないとは思うけど
トランプ、かむばーく!
自衛隊のF-35はいつblock4にアップグレードされるんかな、アップグレード完了した頃にはF-2とAAM-4の後継が出来てるといいんだが
こういう記事をみるとロッキード側は次期戦闘機に開発協力出来るだけの余裕あるのかなぁと思ってしまう、少し言い方は悪いかもしれんがテキトーな技術協力で済ましてぼられまくる可能性が高いのでは?と思ってしまう
とは言っても自衛隊の仕様がグダったり財務省が「小型戦闘機にしようぜ」とかちゃちゃ入れたり、ロッキードとやるんだ!とかテンペスト計画に乗っかるんだ!とかで色々と紛糾した上で今の開発体制に決まったんだろうな〜
既存機のソフトウェア部分はすでにしてるのでは?>BLOCK4
某防衛ジャーナリスト「「値上げ」が止まらないポンコツ戦闘機、こんなに買っちゃって大丈夫?」
的な記事出ると予想(最近は装備品に難癖をつけるよりあからさまに日本•アメリカを批判してるけど)。
>「値上げ」が止まらない
それも最安値との比較で語ると予想。
V字の様な価格変動傾向まで語ると、批判として弱くなるだろうから。
どうせ、批判の為の批判、といったやつだろうし。
ソフトウェアはともかくハードウェアなんてやり出したらきりなく上がるのF22でもあったじゃないかと
まずはblock4の完成に全力をつぎ込んでもらいたいね。
F-35が必要な国は早々に入手してるだろうし。
そういやドイツが、、、
そらまあ新機種とか性能向上版が出るなら、そっちを買おうとなるのは消費者心理として当然ですわな。問題はブロック4に移行した後でF-35が売れるかどうかだが。
逆を言えば、頼めばすぐ納品できる戦闘機でもあるということでもある
3、4年で納品できるってのも魅力に見えるかもしれない
世界中がきな臭くなってるわけだし
日本も少数調達でF-15JJSIにリソースぶっ込むのかな?
隣国が中国やロシアで無ければ、選択枠としてアリだろうけど…。
特に中国の状況を眺めると、ステルス機の少数調達化は、選択し難いと思います。
現状だと日本が使いたい機能がほとんど実装されてないからとりあえず早くBlock4を完成させてください
どうでもいいですが、F-35の下腹部って妙に柔らかそうで、えちえちですねぇ…
こんなこと日本がF 35を導入する前から言われてたこと。
未だに維持費が計画の3倍では、米空軍の発注数満額は無理で、半分に減らすなんていう話もある。
そうなった場合F 35は期待価格と維持費の更なる増大に苦しめられるし
それがさらなる発注キャンセルを呼び起こし、負のスパイラルに突入する。
未完成だった F 35計画が潰されないように見切り発車して強行生産してしまったツケが回ってきてるんだろう。
そのツケを回されるのが買ってしまった日本とか他の諸国。何ともやるせない。
ステルス世代機の、他の選択肢がないもん、最初に要望してたF22が入手できても、もっと費用がかさむ可能性高いし
しかし、この流れは一過性のもので、また価格は下がるかも知れない
ポンコツをつかまされた被害妄想に囚われても何にも解決しないから
それとも代案ある?
F-3も、評価機を含めた開発リソースに限りがあるから、F-35を補完する能力・機能が優先で、統合作業も含めた開発が進むと見ています。
なので、F-3も登場から結構な期間、F-35置き換えの役割は難しいだろうと予想します。
だからといって、もっとタイヘーンは候補にもならん