米国関連

米国が維持する徴兵再導入のための法的枠組み、12月から対象者の自動登録を開始

欧州では徴兵義務の議論、再導入、拡大が相次いでおり、ドイツやフランスも志願制の兵役導入を発表したが、米国でも徴兵制度を再導入するための法的枠組み=選択的徴兵制度(Selective Service System)は残されており、2026年12月にSSSへの登録手続き自動化の運用が開始される予定だ。

参考:Automatic registration for US military draft-eligible men to begin in December

米国も多くの国と同じように「有事の際の国民動員を認めている」「徴兵制度を復活させるための仕組みを残している」という点に変わりはない

欧州諸国は冷戦終結に伴い「国防予算の削減」と「徴兵制度の廃止(平時の運用停止を含む)」に踏み切って戦力規模を縮小し、こうした削減で解放された資金は公共サービスや社会福祉への投資に回され「平和の配当」と呼ばれるようになったものの、一連の紛争でロシアの脅威が再燃したためリトアニア、スウェーデン、ラトビア、クロアチア、セルビアで義務的徴兵を再導入、ドイツ、フランス、ルーマニアでも新しく志願制の兵役が導入され、イタリアでも志願制の兵役導入を推進している。

出典:Hrvatski Vojnik

日本人が勘違いしやすいのは「平和の配当により多くの国で廃止・停止されたのは平時の徴兵のみ」で、依然として多くの国の憲法は「有事の際の国民動員」を認めており、ウクライナとロシアの戦争は「準備された動員力の重要さ」を思い出させたが、これは「準備された練度の高い人員の動員力」という意味ではなく「軍での勤務経験」「軍隊文化の理解」「奉仕する意思や義務感に対する国民理解」などのこと、つまり有事の際の動員環境を兵役を通じて事前に準備しておく必要性のことだ。

要するに「有事になれば『平時における徴兵制度の廃止や停止』に関係なく国民の強制動員は行われる」という意味で、米国でも徴兵制度は事実上廃止されているが、国家の存亡が脅かされる事態に備えて「徴兵制度を再導入するための法的枠組み=選択的徴兵制度(Selective Service System)」は残されており、18歳~25歳までの男性はSSSに登録することが法的に義務付けられ、この義務を怠るとSSS違反となって連邦政府プログラムへの参加資格剥奪、最高25万ドルの罰金や最長5年間の懲役を受ける可能性がある。

出典:Selective Service System

多くの若者が利用する連邦学生ローンは「SSSへの登録が絶対条件」で、申し込み用紙には「SSS未登録者はこの機会に登録するか?」という問いが用意されており、多くの若者は連邦学生ローンの申し込みを通じてSSSに登録していたのだが、2020年末に「SSS登録をしないからといって教育の機会=奨学金を奪うのは厳しすぎる」「連邦学生ローンの本来の趣旨とズレている」という声が高まり、2021年に「連邦学生ローン申し込みとSSS登録を紐づけるルール」が撤廃された結果、若者のSSS登録が急減したため、議会で「SSSへの登録手続きを自動化する条項」が可決された。

2026年12月にSSSへの登録手続き自動化の運用が開始される予定で、イラン戦争と関連して「米国でも徴兵制度が復活されるのではないか」という心配する声も上がっているが、今回のイラン戦争で選択的徴兵制度のリストを使用した徴兵制度復活はない。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist First Class Theron Godbold

ただし、大統領や議会が「国家の存亡が脅かされる事態」と判断すれば「徴兵制度を再導入するための法的枠組み」は維持されているため、比較的迅速に徴兵制度を復活させることは可能だが、米国の兵力増強は3段階に分かれており、まずは現役部隊と予備役・州兵の動員、これでも兵力が足りない場合は退役軍人の再招集権限を行使し、それでも兵力が足りない場合は議会の承認を得てSSSリストに基づく徴兵の実施(くじ引き)が行われる。

米国の徴兵制度は第三次世界大戦でも勃発しないかぎり復活することはなさそうだが、多くの国と同じように「有事の際の国民動員を認めている」「徴兵制度を復活させるための仕組みを残している」という点に変わりはない。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Austin Knox

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