米国関連

米陸軍がER-GMLRS量産を承認、HIMARSの攻撃範囲は150km以上に拡張

Defense Newsは27日「米陸軍がER-GMLRSの量産を承認した」「アーカンソー州カムデンの生産ラインにER-GMLRSが組み込まれる」と報じており、MLRSやHIMARSで使用されるロケット弾の射程は70km→150km以上に拡張される。

参考:Extended range version of Army guided rocket enters production

射程が70km→150km以上に拡張されたER-GMLRSにも発注が殺到するだろう

Lockheed MartinはMLRSやHIMARSで使用するロケット弾=GMLRSの射程を70km→150km以上に拡張したER-GMLRS開発を進めており、昨年9月と今年3月に実施されたホワイトサンズ・ミサイル実験場でのテストで能力を証明、Defense Newsは27日「米陸軍がER-GMLRSの量産を承認した」「アーカンソー州カムデンの生産ラインにER-GMLRSが組み込まれる」と報じている。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara

ウクライナ軍に提供されたMLRSやHIMARSで使用されるGMLRSの需要は非常に大きく、伝統的な砲兵装備の再評価と相まってオーストラリア、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、イタリアがHIMARS導入を決定、米陸軍とLockheed MartinはHIMARSとGMLRSを増産する予定で、HIMARSは2025年10月までに年60輌から年96輌に、GMLRSは年6,000発から1万4,000発(達成時期は不明)に生産能力が引き上げられ、HIMARSランチャーのコストは680万ドルから640万ドルに、GMLRSのコストも18.9万ドルから16.9万ドルに値下がりするらしい。

さらにRheinmetallとLockheed MartinはHIMARSの技術を流用してGMARSを開発、これに複数の国が関心を示しているためGMLRSの需要は今後も増え続けることが予想され、射程が70km→150km以上に拡張されたER-GMLRSにも発注が殺到するだろう。

出典:Rheinmetall GMARS

因みにWashington Postは5月「HIMARSは前線よりも後方に位置する敵司令部や弾薬庫の攻撃に成功して称賛されたが、ロシア軍がGPS信号を無力化すると完全に効果を失った」「そのためウクライナ軍は高価なHIMARSの弾薬を優先順位の低い目標への攻撃に使用するようになった」「まだウクライナ軍はHIMARSを見限っていないものの、妨害環境下では最大50フィートも目標から外れることがある」と報じていたが、ハルキウ州のシネグボフ知事は最近「ロシア軍は電子戦でHIMARSの攻撃に干渉しようとしたが、アップデートされたHIMARSは干渉に対する耐性が強化されている」と明かしている。

関連記事:S-300によるハルキウ攻撃は停止状態、代わりに滑空爆弾の攻撃が増えただけ
関連記事:エクスカリバー砲弾の命中率、2023年8月までに55%から6%に低下
関連記事:戦争は適応力の勝負、現在効果を発揮している兵器も1年後に効果が減少
関連記事:米国防次官、ウクライナに送ったGLSDBは上手く機能しなかったと示唆
関連記事:欧州の多連装ロケットシステム調達、GMARS、EuroPULS、Chunmooが競合
関連記事:米独がHIMARSと共通性をもつGMARSを開発、火力面で競合と対等に
関連記事:ラインメタル、ドイツ版HIMARSの開発でロッキード・マーティンと合意

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

侵攻855日目、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻しリマン方面の支配地域を回復前のページ

ロシア、市民権を取得した移民1万人をウクライナ侵攻作戦に動員次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    またF-2と同じ運命? 米国、日本の次期戦闘機「F-3」開発は日米同盟の象徴となる

    米国のシンクタンク「大西洋評議会」は17日、日本の次期戦闘機「NGF(…

  2. 米国関連

    米海軍の次期戦闘機「F/A-XX」は有人機、ただ将来の空母航空団は40%以上が無人機に

    米海軍の関係者が久々にF/A-18E/Fの後継機=つまり次期戦闘機につ…

  3. 米国関連

    ロッキード・マーティン、スカンクワークスが開発した謎の無人航空機「Speed Race」を公開

    ロッキード・マーティンは今月23日、独自に開発したデジタル・エンジニア…

  4. 米国関連

    ズムウォルト級を見捨てない米海軍、新たなアップグレードのアイデアを募集

    米海軍の調達部門である海軍海上システム司令部は17日、Zumwalt …

  5. 米国関連

    ロッキードマーティン、F-35スペアパーツ問題を認め補償支払いで合意

    ロッキード・マーティンはF-35のスペアパーツ電子ログ問題についてミス…

  6. 米国関連

    米国防総省とLMが3年375機のF-35購入で合意、発注減で調達コストは増加

    国防総省とロッキード・マーティンは2023年~2025年の間に計375…

コメント

    • jimama
    • 2024年 6月 27日

    有効なものを増産するのは結構なこと
    ただ
    ランチャー 680万$→640万$
    GMARS  18.9万$→16.9万$
    うーん、弾のほうはもっとようけ使うからもう少し勉強してもらえへんかな、という感じの値下がり感
    これ以上の値引きは難しいのか
    妨害環境でも50ft(15m)ぐらいしか外れてないんだし
    ロケット砲なんて10発撃って5発外れるなら20発撃てばいいじゃないの精神でいくわけだから
    もう少し気軽に撃てる価格まで下がらないものか

    15
      • 通りすがり
      • 2024年 6月 27日

      弾頭重量90kgのロケット弾が手榴弾の殺傷範囲に着弾するなら十分「当たり」と言って良いよね

      15
        • 765
        • 2024年 6月 27日

        90kgRDXの爆風による危害半径が、10mで建物全壊、18mで建物半壊なので十分でしょうね
        実際は破片効果で危害半径は数倍になるでしょう

        7
      • 古銭
      • 2024年 6月 27日

      これだけ下がれば十分努力した方かと。
      世界のどこかで常に大量消費されるか延々と備蓄が積み重ねられ、なおかつ原材料が高騰せず安定して入手可能な環境であれば、更に価格を下げることも可能だとは思います。
      世界のどこかで総力戦が起きたので(超長期大量契約するかはわからないが)特需対応と今後の保険のためにお願いします、程度であれば国営でやってくれ案件かなと。

      11
      • 通りすがり
      • 2024年 6月 27日

      誘導榴弾砲のエクスカリバーは8割当たらなくなったって以前有りましたが、こちらの方はそんなに当たるんですか?
      よかったら情報ソースを教えて下さい

      1
        • arisona
        • 2024年 6月 27日

        まず記事を読もう、それから眼の前の光ってる箱か板で「HIMARS 50feet」と検索しよう

        25
          • 通りすがり
          • 2024年 6月 29日

          すみません
          8割外れるとあったのがこのサイトだったので外の情報かと思ってしまいました
          それにしても、最大と最低の誤翻訳はあるものに、ここの人の多くも15フィート以内なら問題ないというのに、「まだ見捨てられてない」という表現はとても違和感がありますね
          ウクライナ軍から記事になる何処かで数字や単位が間違って伝わっている事も考えられますね

        • 事実
        • 2024年 6月 27日

        GPSの妨害だけを考えると
        妨害エリアに長時間滞在することで命中率が下がる

        同じ距離なら
        敵占領エリア(妨害エリア)移動距離が長い方が影響を受ける(後方から前線を狙うよりも進出して奥地を狙う方が影響を受ける)
        低速の方が影響を受ける(SDBは小径の方が速い)
        機動力が高いほど影響を受ける
        高高度にまで妨害電波は届かない

        ER-GMLRSはM30と同じ直径で飛距離を2倍超まで伸ばしている
        GLSDBは妨害の影響が大きい
        PrSMは弾道弾かつシーカー付

        4
        • 戦闘機
        • 2024年 6月 27日

        エクスカリバーもインクリメントⅠ.Ⅱ.Ⅲと分かれて、ⅠもⅠ以外にⅠa-1、Ⅰa-2Ib、Ⅰb、S、N5とわかれてましてウクライナに渡してるのは初期型のⅠ、a-1と言われてます。
        で、HIMARSはM30、M30A1、M31などの色々な弾頭を使用するんですが、GPS妨害に対抗する為に機器自体をアップデート(具体的には言ってませんが衛星の電波帯を変更するとか色々)したり、新たに生産された弾頭は妨害されにくくする(実際エクスカリバーIa-2はGPS妨害に抵抗する装備を持ってる)処置をしてるのかもしれません。

        4
          • 事実
          • 2024年 6月 27日

          軍事用GPSの使用している電波はL1とL2のみ
          各衛星が発信するコード(符号)は固定されている

          ジャミングに対しては、notchi filterやWBIでの対応が一般的
          スプーフィングに対しては、電子署名による認証が一般的

          GPS blockⅡ R-M以降はMコードを発信しているが、まだ対応機器は量産されていないはず
          Mコードでの主な妨害対策は暗号の強化(コード長の巨大化?)
          blockⅢ以降はスポットビームも搭載(20dBW程度上昇)

          2
            • U.N. Owen
            • 2024年 6月 28日

            >軍事用GPSの使用している電波はL1とL2のみ
            >各衛星が発信するコード(符号)は固定されている

            という事はGPSではスペクトラム拡散(周波数ホッピング、直接シーケンス・スペクトラム拡散)は利用できないのでしょうか?

              • 事実
              • 2024年 6月 28日

              現行のGPSでもDSSSを使用している
              てか、GPSの基礎原理
              GPSは同一周波数を衛星ごとに別コードで符号して発信しているので混信せずに受信できるし妨害に強い
              Mコードでは帯域幅が24MHzに広がるので、この意味でも妨害には強くなるのでは?

              2
                • U.N. Owen
                • 2024年 6月 29日

                そうなんですね。勉強になりました。
                ありがとうございます。

        •     
        • 2024年 6月 27日

        “最大50フィート”の部分は原文が”50 feet or more”なので「50フィート以上」ですね。

        リンク

        9
          • jimama
          • 2024年 6月 27日

          情報ありがとうございます
          まあそこは、50m(164ft)ずれなければヨシ!!のアメリカ的おおらかさでいいかなと

          1
      • MK
      • 2024年 6月 27日

      ホント高いですよね値段。世界中から支援される状態でも無いと大半の国は数持てないのではと思いますよ、たまたま特需なだけというか。射程倍なら値段も倍を超えるでしょうし。

      3
    • 58式素人
    • 2024年 6月 27日

    GLSDBは棄てられた(笑)のかな。
    弾頭の重量はGMLRSと比べて、両方共200lb級と思うのだけど。
    誘導装置でミソを付けてしまったから、もうダメでしょうか。
    滑空爆弾に推進器を付けるというのは悪い考えではないと思いますが。

    4
    • 2024年 6月 28日

    妨害にも耐性が出来たんなら、需要は更に鰻登りだな
    海上目標にも当てられるようになれば、台湾海峡封鎖も楽になる

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP