米国関連

米海軍長官、半年に及ぶ紅海の作戦で1,500億円近い損耗を被ったと明かす

デル・トロ米海軍長官は上院の公聴会で「紅海での作戦やイスラエルをイランの攻撃から守るため10億ドル=約1,500億円近い軍需品(SM-2、SM-6、SM-3など)を消耗した」「これを補充するため追加予算を認め欲しい」と訴えた。

参考:Navy is down $1B in munitions from ops in Red Sea, says SECNAV
参考:Mideast missile duels have cost US Navy nearly $1B, secretary says

フーシ派のドローンやミサイルを迎撃し続けるのは持続性の面で米海軍にストレスをもたらす

イエメンのフーシ派はパレスチナ人との連帯を示すため「イスラエルに関連した船舶」や「イスラエルに向かう船舶」への攻撃を宣言、そのためスエズ運河を経由する海上輸送は混乱をきたし、米国を始めとする西側諸国は艦艇を派遣して紅海の航路を保護しようと試みているが、フーシ派の攻撃は6ヶ月が経過しても収まらず、イランが直接イスラエルを攻撃するなど中東を取り巻く安全保障環境は悪化するばかりだ。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class William McCann/Released

ハドソン研究所のブライアン・クラーク氏は「高価な兵器システムでフーシ派のドローンやミサイルを迎撃し続けるのは持続性の面で米海軍にストレスをもたらす」と警告していたが、デル・トロ米海軍長官は上院の公聴会で「紅海での作戦やイスラエルをイランの攻撃から守るため10億ドル=約1,500億円近い軍需品を消耗した」「我々はイランが発射したミサイルの脅威に対抗するためSM-2、SM-6、SM-3を消耗している」「これを補充するため追加予算を認め欲しい」と訴えた。

因みに米海軍長官はSea Air Space 2024で「防衛産業界は国防総省向けの生産能力に資金を投資するのではなく、利益を自社株価のつり上げに投資している」と批判したが、ジョン・テスター上院議員も「(防衛装備品の増産が緊急の課題にも関わらず)一部企業は生産能力の増強ではなく自社株の買い戻しに資金を投資している。これは本当に信じられないほど無責任だ。彼らが批判に耳をかたむけてくれることを願っているが、我々も彼らの労働力確保に出来ることは何でもやるつもりだ」と述べている。

関連記事:イスラエル軍元准将、イランの攻撃阻止にかかった費用は1,600億円以上
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関連記事:米紙、フーシ派の問題解決には米国の力の限界を理解する謙虚さが必要
関連記事:空爆だけでフーシ派の脅威を根絶するのは困難、紅海に誰も戻ってこない

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Petty Officer 1st Class Ryan Seelbach

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コメント

    • sada
    • 2024年 4月 17日

    イランはフーシ派の行動を制御できるわけではないが、現状には満足している
    自分が支援した額の何倍もの出費を、イランの敵に強いてくれるから

    なお、イランとサウジの関係が改善したら、サウジへの攻撃は控える程度にはフーシ派も空気を読むらしい

    45
    • たむごん
    • 2024年 4月 17日

    バイデン政権は、人権問題を重視して、サウジアラビアの人権問題を批判したり、フーシ派のテロ指定解除をやってきたわけですか。
    サウジアラビアをイエメン内戦介入により批判、支援停止もやったわけですから、アメリカ外交失敗のツケを払っている訳です。

    アメリカ海軍長官が、資本主義(アメリカ)を否定するような発言をしている事にも驚いています。
    独占企業・寡占企業が、余剰資本(利益)を生産に投じて、過剰生産により値崩れさせる必要がないのは基本だからです。

    特にアメリカの防衛産業は、配当・自社株買いに積極的ですから、今更の話なんですよね。

    >(防衛装備品の増産が緊急の課題にも関わらず)一部企業は生産能力の増強ではなく自社株の買い戻しに資金を投資している。これは本当に信じられないほど無責任だ。

    (2021年2月12日 米、イエメン・フーシ派のテロ指定解除へ 人道危機に配慮 ロイター)
    (2021年8月23日 バイデン政権と中東 日本国際問題研究所)

    19
      • 犬の〆
      • 2024年 4月 17日

      >アメリカ海軍長官が、資本主義(アメリカ)を否定するような発言
      自分の住んでいる国を忘れてしまったのですかね。
      苦言を言いたくなるのも分からないでもないですが、サプライチェーンが発達してホワイトカラーが牛耳るようになってからというもの、アメリカの製造業は根無し草も同然だというじゃないですか。
      まして、インフレが進んで労働者の一人当たりの賃金が高騰する中では、到底、昔のような工業力なんて持ち得るはずもないのに。

      なんか、この一連の中東でのアメリカの存在感のなさを見るにつけ、もうアメリカの影響力もとっくの昔に賞味期限が切れていたのかもとしみじみ思いますね。

      21
        • ahoge
        • 2024年 4月 17日

        学問の世界ではもう百億回くらい言われてそうだが。
        社会が資本主義の下で安定的・持続的に発展するためには、所得と資産に対する累進課税が必須なのだね。
        自社株買いのモチベーションはストックオプションにあるのだから。
        これでやっと累進課税という形で出口が閉められて、投資は、最適ではないかも知れないが、ある程度は適正に行われるわけだ。

        だがオバマがタックスホリデーを実施した事実から直ちに理解されるように、この本質的な問題に対してリーマンショック以降ですらアメリカは事実上何もしていない。
        というよりアメリカは60〜70年代のケインジアンの敗北からずっと、WW2で得たはずの教訓に背き続けてきた(そして中国に敗北しつつある)。
        覇権国家の没落とはかくも長い時間を費やして成るものであり、一世代たかだか30年の人間が政治を全うするなどおよそ不可能事なのかも知れないね。

        12
          • ふむ
          • 2024年 4月 18日

          新自由主義の限界ですね

          財の総量、ストックは唸るほどある
          しかし必要なところに流す、フローを構築できない
          動脈硬化で西側経済の末端が死につつあります

          8
          • 犬の〆
          • 2024年 4月 18日

          なるほど、ちょっと調べてみましたが勉強になりました。
          ありがとうございます。

        • たむごん
        • 2024年 4月 17日

        仰る通りです。
        アメリカの製造業は、インフレの帰結として仕方ないのですが、話しにならないくらいに弱体化していますね。

        アメリカ国内で石油(一部の重質油除く)や天然ガスを自給できるようになったため、中東で存在感がなくなっても、無理する必要がなくなりましたからね。

        シェール革命が、非常にいいタイミングで発生したなと思っています。

        2
    • ふむ
    • 2024年 4月 17日

    イスラエルに国際法守らせるだけで、反発はだいぶ減ると思うんですけどね…

    イスラエルが安保理決議497号(イスラエルのゴラン高原併合宣言は国際法に照らして違法で無効とする非難決議)や
    2334号(イスラエルのパレスチナ占領と入植等の違法行為への非難決議)を無視し続けているのですから、
    反発が出ない訳が無い

    その尻拭いにアメリカが奔走すればする程、莫大なコストが掛かるだけでなくイスラエル以外からのアメリカへの信頼も損なわれます
    政治家はロビー活動で献金得られて嬉しいのかも知れませんが、こんなのアメリカの自滅ですよ

    43
    •  
    • 2024年 4月 17日

    ケースが異なるけど支那事変の時に重慶爆撃の成功に湧いてる航空兵を見て「こんな費用対効果の悪い事は何度も続けらるワケがない」と嘆いていた将校がいたなぁと思い出した
    航空機や艦船はいつの時代でも膨大なコストで運用されている事を意識させられる

    25
    • Bak.
    • 2024年 4月 17日

    その10億ドルはイスラエルに請求すべし。
    ワールドセントラルキッチンの分とか、別枠の損失も多いしねえ。

    16
    • 幽霊
    • 2024年 4月 17日

    政府や軍隊が満足出来るだけの兵器や弾薬を確保しようと思うなら国防関連企業を国有化して税金で支えるほかないでしょうね
    営利企業にお国の為に滅私奉公しろとは民主主義の社会で言うわけにもいかないでしょうし。

    26
      • kitty
      • 2024年 4月 17日

      そこまでは極論で、単に生産力増強に投資できるだけの、確実に履行される長期調達契約を結べば良いだけの話なんですけど、政府調達は自分たちの都合しか言わない。
      まあ、我が国もなんですけど。

      16
        • 犬の〆
        • 2024年 4月 17日

        しかも政権が変われば調達数や計画も変わるかもしれませんからね。民主主義は。。。(白目)

        13
    • 58式素人
    • 2024年 4月 17日

    ウクライナでの戦訓(?)では。
    ドローン(プロペラ/ジェット)は機銃で撃墜、
    亜音速ミサイルはMANPADS/短距離SAMで撃墜、
    超音速ミサイルと弾道弾はPAC-3で撃墜、と言うことと思います。
    スタンダードミサイルは中/長距離用ですから、もったいないですね。
    次に出すフネはその辺りを工夫するのでは。武装無人機を載せるとか。

    2
    • けい2020
    • 2024年 4月 17日

    ドローン飽和攻撃が海上でも有効なのが証明されつつあるな
    ドローン100単位で戦闘艦に攻撃すれば、確実にミサイルと砲弾を使い切らせる事ができそうで
    補給されても同じことするだけで軍の兵站が崩壊すると

    迎撃だけでは、負けるの確実な時代に入ってる感じがする

    18
      • 765
      • 2024年 4月 17日

      単にアメリカが縛りプレイをしてる中でフーシ派が好き勝手攻撃してるだけなので、ドローン飽和攻撃には賛同できないですね
      西側側がもっと真剣にフーシ派の拠点を攻撃するなり、フーシ派が”お行儀の良い”武装組織ならこんなに苦労はしないでしょう。それこそエアカバーの戦闘機が数機いるだけでドローン攻撃は壊滅するんじゃないでしょうか
      迎撃だけでは負けるには賛同します

      4
        • けい2020
        • 2024年 4月 17日

        ドローンは簡易拠点で運用できるのが大きいかと
        民間トラックを使った移動拠点で困らないので、これを全部叩くのは難しいでしょう

        ドローンを生産できないように戦略爆撃となると難易度が跳ね上がりますし

        12
    • DEEPBLUE
    • 2024年 4月 17日

    機銃や機関砲再評価の流れあり得る?

    4
      • HAi
      • 2024年 4月 18日

      高出力マイクロ波装備の実装までは物量には物量をぶつけるしかないでしょうね。
      なんとも空想科学じみた装備で胡散臭くすら聞こえるけど、防衛装備庁いわくすでに試作を使ったドローン迎撃への有効性なんかは検証してるし、アメリカでは試作品が去年軍に納品されたりと着実に実用化へ近づいてるように感じます。
      レールガンやレーザー兵器がメディアやネットでは持て囃されてますが、本当の本命はこいつじゃないかと自分は思ってます

    • 傍観者
    • 2024年 4月 17日

    西側の軍事戦略は陳腐化したことが明らかになった。しかし軍産複合体の産軍・癒着構造を変えることはできまい。結論はあらゆる帝国がそうであったように亡ぶしか道はない。ウクライナ戦争、ガザ戦争は過程を加速した。

    2
      • 名無し三等兵
      • 2024年 4月 18日

      もう「軍産複合体」なんて三文小説のネタにしかならない言葉は忘れましょう。
      とっくにこんなの過去話です。
      今は民需の方が軍需より遙かに市場が巨大で、かつ、サプライチェーンのグローバル化で
      1カ国内で原材料の調達から最終製品の製造まで完結させてる工業国なんてほぼないんです。
      自国以外で戦争してくれたら国内産業には影響が無い、むしろ戦争特需で儲かるなんて世界は
      とうに終わってます、今は地球の裏側の出来事が自国の基幹産業に影響しちゃうんです。
      コロナが良い例なんです、海外から材料や部品が入って来なかったら自国の工場が止るんですから
      儲けの柱の民需が滞ったら会社が傾きます。
      戦争特需で儲ける時代なんてもうとっくに終わっています、軍事部門の儲けなんて民生部門に
      比べた今や微々たるもんです。仮に軍事部門がある企業でも民生部門側で利益損なうだけでしょう。
      戦争で喜ぶ大企業なんてもうありませんよ。

      1
        • kitty
        • 2024年 4月 18日

        日本の防衛企業は民需部門の儲けで「お国のために」と義務感で続けてるのが現実ですからねえ。
        ダイキンも三菱も川崎もIHIも軍需部門は1割以下。

        1
      • 名無し三等兵
      • 2024年 4月 18日

      ちなみに2022年の世界の軍事費は過去最高と言われますが2兆2398億ドルです。
      対して2022年における世界の総生産量(GDP)は数字比較が可能な178か国の合計
      だけで見ても95兆8921億ドルです。
      もう軍事費なんてこの程度の割合しか世界のGDPの中で占めて無いんですよ。
      どっちの市場の安定を世の企業家は望みますか?、95兆円の市場より2兆円の市場
      を取るわけがないでしょうに。

    • 暇な人
    • 2024年 4月 18日

    来年になったらウクライナが運用してるような水中ドローンというか長距離魚雷みたいなのが量産されてそうだなあ
    そうなると軍艦もヤバイ

    3
    • 名無し三等兵
    • 2024年 4月 18日

    >「防衛産業界は国防総省向けの生産能力に資金を投資するのではなく、利益を自社株価のつり上げに投資している」
    ちょっとこれは防衛産業側を擁護してあげたいですね。
    企業は持続性が保障されないもの、一過性の需要に対して、他に転用も出来ないニッチな分野
    への設備投資など簡単に決断出来るものではありません。

    「今、我々は武器・弾薬を欲している、だから防衛産業は設備投資して緊急増産して対応しろ」

    では、その紛争なり戦争なりが終わったら、その後はどうするんですか?、国防総省が余剰になった
    有休施設の維持費を出してくれるのですか?、増員した人員の給与を払ってくれるのですか?
    そうしなければその投資は全部、企業にとっては持ち出しで負債になるだけです。

    「我々も彼らの労働力確保に出来ることは何でもやるつもりだ」

    それにはこの紛争が終わった後も、投資に見合った持続的な仕事量の確保を議会も国防総省も
    企業に保証しなければなりません、長官一人のその場限りの口約束では企業は動きませんよ?

    今は戦争と平時の区別がとても曖昧です、世界大戦の様な明確に国家の存亡がかかった大戦争なら
    損得抜きで企業も協力するでしょうが、今はどこも民需が儲けの柱です、その民需の世界だって戦争です
    市場競争に勝つ為に本来かけるべき資金を圧迫してまで軍需に過剰な投資は出来ません。
    需要が不確かでムラのある軍事部門だけで存続出来る企業がどれだけありますか?
    「おまえら儲けてばかりいないで協力しろ」、別に好きで儲けているわけじゃないでしょw
    戦争のせいで材料の仕入れコストが上がったり民間需要が落ちたりしたら、本業が危ういのですからね。
    むしろ今は軍事部門ってお荷物になりかけているのに、そこは理解して欲しいですね。

    株価についても時勢から儲かりそうな企業の株は買われるから上がるのですし、企業は資金確保の
    為にそれを利用するだけです、そこは単に資本主義経済での市場原理が働いてるだけでしょうに。

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