ウクライナ空軍は13日「ロシア軍が計40発の無人機とミサイルを発射した」「内8発を撃墜した」「20以上の無人機とミサイルがEWシステムの影響を受けて目標に到達できなかった」と発表、ハードキルとソフトキルの結果を合わせると最低でも40発中29発が無力化された格好だ。
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仮にハードキル8発+ソフトキル21発だった場合「40発中29発が無力化された」という意味になる
ロシア軍は13日に無人機とミサイルを計40発(Shahed-131/136、Kh-101/Kh-555/Kh-55、Kh-22、S-300/S-400、キンジャール、Kh-31P、Kh-59)を撃ち込み、ウクライナ軍は「Kh-101/Kh-555/Kh-55×7発とKh-59×1発を撃墜した」と発表。
ウクライナ空軍発表の情報は上記の通りで、Su-35(2機)がブリャンスク上空でKh-59を4発、Tu-22M3(1機)がブリャンスク上空でKh-22を6発、MiG-31K(6機)がタンボフ上空でキンジャールを6発、Tu-95MSがカスピ海上空でKh-101/Kh-555/Kh-55×12発、Su-35(2機)がヘルソン上空でKh-31Pを2発、クルスク方面からShahed-131/136を3機、ベルゴロド方面からS-300/S-400の迎撃弾を7発発射し、ウクライナ軍はKh-101×7発とKh-59×1発を撃墜。
ウクライナメディアのRBC-Ukraineは「キンジャールはドニプロ、キーウ、リヴネ、クリヴィー・リフ方向に、Kh-101はウクライナ西部に向かって移動した」と報じているが、ウクライナ空軍は「発射された20以上の無人機とミサイルがEWシステムの影響を受けて目標に到達できなかった」と主張し、恐らく(ミサイル攻撃に対する)ソフトキルの戦果に言及したのは今回が初めてだと思う。
仮にハードキル8発+ソフトキル21発だった場合「40発中29発が無力化された」という意味になるが、残りの11発が何処に着弾したは不明で、東京新聞のインタビューに応じたUkrainska Pravda紙のセウヒリ・ムサイエワ編集長は「ウクライナには戦時検閲がある。ミサイル攻撃の標的を公開しない、配備された兵器の場所を明かさない、最初の数時間はミサイルが落下した場所を明かさないなど細かい規定が存在する」と述べているため、報道がない=被害ないという意味ではない。
但し、RBC-Ukraineは「スームィ州のショストカ市でミサイルの着弾があった」「ポルタバ方面の民家にミサイルの残骸が落下した」「ドニプロで爆発音が聞こえた」と報じているため、前回と同じようにザポリージャ、ドニプロ、クリヴィー・リフが攻撃を受けた可能性が高く、ウクライナ西部に向かったKh-101はSu-24の運用拠点があるフメリニツキー、東部や南部の企業が疎開しているリヴィウなどを狙っていたのだろう。
追記:ウクライナ空軍は「20以上の無人機とミサイルがEWシステムの影響を受けて目標に到達できなかった」と発表したが、イグナト報道官は「発射された6発のキンジャールの内、その半分は間違いなく目標に届かなかった」「20以上の無人機とミサイルが目標に到達できなかった」「荒野に落下したか、空中で爆発しか、我が軍のEWシステムが作動した可能性がある」と言及。
つまり目標に到達できなかった無人機やミサイルは「誤作動で目標に到達しなかった」もしくは「EWシステムの影響」という意味になり、20以上の無人機とミサイルが「ソフトキルで無力化された」という訳ではなさそうだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Александр Бельтюков/CC BY-SA 3.0 DEED
管理人様、分かりやすいMAP・情報、いつもありがとうございます。
ウクライナ軍は対空ミサイルが貴重なため、EWシステムによる無力化の効果は、対空ミサイルを温存できるため非常に大きいですね。
ロシア軍が、ウクライナの通信会社を利用したのに対して、ウクライナ軍が効果的に対抗した結果なのか気になります。
>…さらに撃墜された残骸からキーウスターのSIMカードと4Gモデムが見つかっており、既存の技術を流用してGeran-2の能力は洗練されつつある。
(2024年1月10日 ウクライナでShahed-238の残骸が見つかり、新型のShahed-107も完成間近 航空万能論)
ハードキル8発に対してソフトキル21発が多いのが印象に残りました。ロシア軍も
当然これを教訓とするはずなので、次回の大規模攻撃には最初に安価なドローンを
各所に打ち込み、狙い通りに当たらなかったエリアを妨害機器在りと見做して
無誘導タイプや狙いが逸れても広範囲を破壊できる燃料気化爆弾などを打ち込み、
最後に誘導タイプのミサイルを打ち込む3段式攻撃でくるのではと思いました。
仰る通り、ソフトキルが多いと感じています。
戦争中に、兵器・戦術は思わぬような形で、急速に進歩していきますよね。
もっとも、ソフトキルへの言及が恐らく初めてという辺りに敵を
攪乱する目的で仕掛けたブラフ(例えば、実際はハード21ソフト8
だとか)の匂いも感じるので、様々な情報戦の駆け引きがありそう
ですよね。理論(設計思想)上こうだと予想しても、実戦投入したら
案外真逆の結果になったとかもありそうですし、大金を支援する
以上はこの戦争の戦訓を残さず吸収して国防に役立てて欲しいです。
面積や兵員数という意味では小国なので、アメリカの運用法を輸入
するよりウクライナの戦い方の方が当事者になった際の参考になる
かもしれません。アメリカの兵器はアメリカの国力で運用することを
前提にしているので(勿論他国への販売もしていますけど)、日本も
国力に見合った兵器(性能を犠牲にしてでも安価に量産でき少人数で
整備運用できるもの)の開発に予算を割いて欲しいものです。
仰る通りですね。
ウクライナから、(戦訓・電子戦情報など)何を得る約束をしているのかは、少し気になっています。
エイブラムスは、米軍の強靭なロジスティクスがある前提を、思い出しました。
>アメリカの兵器はアメリカの国力で運用することを前提にしているので…
ウクライナのEWがGLONASSに対するジャミングだったのかスプーフィングだったのかが気になります。ジャミングだと衛星信号が妨害されて見えなくなるだけなのに対し、スプーフィングだと偽の位置を注入されて誘導できるので、安全性が違います。
ご存知の方、教えていただけるとうれしいです。
GelanがウクライナのSIMを使ったのは、私の拙い考えでは、おちょくり以上のものではないのかなと思っています。通信したらウクライナ側に通信先がバレてしまいます。通信せず基地局の応答から自己位置を推定するだけに使用するとしても、同一ディストリビュータが扱ったSIMはまとめてBANされてしまうだろうし。おちょくり以外の有効な利用法が思いつきません。
わりと小規模なので、全開撃ち漏らした地点や破壊不十分だった地点への追加攻撃という印象。必要最小限の攻撃という感じ。
毎回疑問に思うのですが、他の分野に関しては、ウクライナ側の戦果や被害に関する発表がいわゆる「大本営発表」であると次々と明らかになっているにも関わらず、ロシアのミサイル攻撃に関するウクライナの迎撃成果に関しては、なぜか正確であるかのような前提で議論されていると感じます。
知識不足で申し訳ありません。
他の方がどう分析されているかはわかりませんが、私は『ウクライナも
流石に隠し切れなくなり比較的実情に近い数値を出し始めている』と
感じています。アメリカから「聞いていた話と違う」と怒られたのか、
先日キンジャールは10発全部迎撃できたと発表した直後に市民から
実際は着弾しているという投稿(着弾したものがキンジャールか他の
ミサイルかの確証はありません)があったからかはわかりませんが。
ここの読者なら說明する必要がないと思っていたのですが、防空システムの迎撃弾で飛行物体を破壊しても物体自体が完全に消失することはほぼありません。現在のウクライナ軍は防空システムの数が不足しているため、巡航ミサイルの予想ルート上に防空システムを展開させるのが難しく、そもそもパトリオットの弾道弾迎撃能力はターミナル・フェイズの下層に限定されています。
キンジャールやIskander-Mといった弾道コースを飛翔してくる物体を迎撃するには落下地点=目標付近で待ち受ける必要があり、仮に迎撃できても残骸がキーウ市内に落ちて被害をもたらすことは十分考えられます。
要するに迎撃に失敗してキンジャールが目標に命中したのか、迎撃に成功して目標への命中を阻止できたのかは機密事項なので公表されることもないし、もし命中しているならロシア国防省あたりがキンジャールの能力をアピールするため大々的に利用してくるでしょう。
戦争に情報操作はつきもので「自国がやれば情報戦」「敵がやれば嘘つきと罵る」のが日常的な光景です。仮にキンジャールが命中していてもウクライナ側が正直に公表するはずがなく、これはロシアも同様で「ウクライナよりもロシアの方が正しい」「ロシアよりもウクライナの方が正しい」と言ったところで前線の状況は少しも変わりません。
ウクライナも都合の悪い事実(セベロドネツク、リシチャンシク、リマン、ポパスナ、ソレダル、バフムート、マリカンの喪失など)は国内の政治的調整が終わるまで認めませんし、最近の話で言えばロシア軍が占領したマリンカについてウクライナ軍は「まだマリンカを巡る戦いは続いている」「我々の兵士はマリンカの行政区域内にいる」「まだマリンカの完全占領を語るのは間違っている」と主張していましたが、ウクライナ人が運営するDEEP STATEは「マリンカ北西郊外で撮影された戦闘映像は拠点の喪失を証明している」「現在の戦争は街の郊外で行われているためマリンカが占領されていないと言い張るのは控えめに言っても奇妙だ」と批判。
逆にロシアも侵攻初期の軍事的失敗や損失を未だに認めておらず、最近の話で言えば大型揚陸艦ノヴォチェルカスクに対する攻撃も「損傷した」「攻撃に使用されたSu-24を撃墜した」と主張していますが、衛星写真を見れば誰の目にも同艦が爆沈しているのは明らかで、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARもSu-24の撃墜について「スニフリヴカ上空でミサイルを発射したSu-24Mがカナトヴォから離陸していることを考えると撃墜したという主張には疑問が残る」と指摘しています。
どちらを応援するのも個人の自由ですが「戦争には情報操作、嘘、プロパガンダがつきもの」とだけ認識しておいた方が良いと思いますよ。
>「戦争には情報操作、嘘、プロパガンダがつきもの」とだけ認識しておいた方が良いと思いますよ。
あの、それ(情報操作等)については私も過去に「ロシア軍が記録的な数のShahed-136で
キーウを襲撃、75機中74機を撃墜」言っているのですけど…。誤解を招く表現で申し訳
なかったですが、74/75迎撃は流石に盛り過ぎだろと思った印象が強かったので、最近の
発表はそんなことないから事実を出すようになったのかなと思ったという意味でした。
追記:上記の通り、最近は極端に高い迎撃率が発表されていない中、キンジャールだけ10発中10発迎撃成功ということに疑問を抱き、例の1つとして挙げました。
数字の多少の割増や婉曲的な言い回し、計算方法の違いはあってもあからさまに分かるような嘘ってありましたっけ?
ロシア側はハルキウやヘルソンを転進したり、配備されてない装備破壊したり、提供数以上破壊したりはありますけど……
ポーランドへの誤射すらなかったことになっているのですか…。
私がこれまで聞いたウ発表の最もひどい嘘は反転攻勢時の「予備兵力が枯渇したロシア軍の第一防衛ラインさえ突破すれば崩壊する」というものでしたね…
嘘の戦果発表ではなく予想ですよそれ
原文だと「だろう」と推測じゃないですか
そのものいいもデマの類になりかねない
そのひどい予想に基づいて作戦が決行されて散々に終わったんです。無謀な作戦で死んだ兵士や失った装備は帰ってきません。
元のコメントからしてハリコフとヘルソンに言及しているので戦果報告に限った議論では無いでしょう。
あからさまなのは自軍ミサイルの誤射を「ロシア軍の都市攻撃だ!」と大々的に非難するパターンですかね。
2-3ヶ月後経って事件がだんだん忘れられた頃に、どこかの情報機関が「解析の結果、ウクライナ軍の誤射の可能性が高い」と発表するが特に軍側からのコメント無し、というのがお約束になってますね。
あとまあ、一番酷いのはノルドストリーム爆破ですかね。あれもロシアの仕業にされてました。
自分が真面目に怖かったのが原発への攻撃です
ロシアの攻撃としてロケット弾を撃ち込んでたのを、メルトダウンが起きれば
ロシア側だけでなく自国の国民も多く被ばくすることを考えてなかったんですかね?
S-300の管制システムでS-200の機体を運用できると思うのですが。
S-200をSSMの代用とするよりは良いように思えるのですが。
射程距離は300kmに伸びますし。
ロシア領空スレスレならば、引っ込んでいる爆撃機を狙えるし。
旧東側諸国でいらない子扱いされているだろうし。
敵に手の内を明かしてもメリットないわけで
単なる大本営発表だろう
「戦争で最初に死ぬは事実」というくらいで双方がフェイクとデマとプロパガンダをまき散らすのは当然なんだけど(1)負けてる方が嘘度が高い(2)筋悪側ほど嘘度が高い(3)嘘つき度にはそれぞれの個性があるといったところは読み解きのベースになる。(3)で言えば米欧側は戦争の口実などのための”ウソの飽和攻撃”に躊躇がないという長い歴史がある。ぱっと思いつくだけでも米西戦争の口実にした1898年の「米戦艦メイン号の撃沈(自演か事故)」から2023年のバイデンの”ハマスが赤ん坊の首を切り落とす写真を見た”など、一連のイスラエルによる残虐なるハマスデマ(死者の多くはイスラエル軍の皆殺しによるもので、喧伝されたハマスの残虐行為はなかったとユダヤ人生残者が暴露)の流布まで無茶苦茶な話の連続。
最近のいくつかのウクライナ側の自己分析、自己批判で”プロパガンダのために「ロシアは弱い、根性がない、兵器がない」などと噓ついて煽ってました”とあった。ウクライナはロシアの戦争犯罪(子供の移送など※)を国際刑事裁判所に訴えたが、外国プレスを大量に招待して見せた「ブチャの虐殺」などはなかった。※ロシア語話者の保護者の許可を得て戦地からロシア共和国などに一時疎開し、ついでに音楽学校などで専門の勉強させてもらった。提訴の段階ではもう親元に帰っていたといったことが提訴のネタ元への取材ほかですでに暴かれている。
単純にロシア側の情報も並べれば実態に近づくというものでもないけれど、比較なしにキエフ政権側の”大本営発表”を実態に近いものとして評するのは…。
先日の戦況分析でのウ軍の反攻成功の記事は珍しく、ソースがウクライナ側だけ&視覚情報なしで、ロシア側からの裏取りのないものだった。過去のウクライナ側実績(ウと露の主張と結果の比較)からすると、(そうかもしれない)(そうだといいな)(う~~~ん。トレンドとの乖離が大き過ぎないか?)くらいの評価だろう。
ちなみに、露軍は部隊に”動画や情報を外部に出すな”、軍事ブロガーに”大人しくしていろ”と命じた模様。プリゴジンが異常で正規軍は元々あまり情報を出さなかったので、これは通常運転なのか、弱さの表れなのか、何か企んでいるのか?