欧州関連

ウクライナ軍、ロシア軍が発射したキンジャール6発を全て撃ち落とした

ウクライナ軍は16日「ロシア軍が発射した6発のキンジャールを全て撃ち落とした」と発表、これが事実ならパトリオットによる迎撃は「まぐれ」ではなくなり、全ての防空システムを貫通できると豪語していたキンジャールの性能は否定されたことになる。

参考:ПВО сбила все ракеты и дроны россиян, которые летели ночью по Украине, в частности − 6 “Кинжалов”

これが事実ならパトリオットシステムによるキンジャール迎撃には信頼性がおけることになる

ウクライナ軍は今月6日、プーチン大統領が「全ての防空システムを貫通できる」と豪語していたキンジャールを「4日夜にキーウ上空で迎撃した」と発表、米国防総省のパット・ライダー准将も9日「ウクライナ軍のパトリオットによってキンジャールが撃ち落とされたのを確認した」と明かし、米CNNは国防当局者の話を引用して「ロシア軍はキーウ郊外に配備されたパトリオットシステムの信号を傍受して位置を特定し、キンジャールで攻撃を仕掛けてきたが迎撃されて失敗した」と報じて注目を集めていた。

撃墜されたキンジャールの残骸は画像や動画で公開されたものの、この攻撃の意図がパトリオットシステムのレーダー破壊にあったのか、極超音速ミサイルに対する迎撃能力を検証するためのテストだったのかは不明で、1発のみの迎撃結果で「パトリオットシステムはキンジャールを高い確立で迎撃できる=迎撃性能に信頼がおけるかどうかという意味」と判断するのが難しかったが、ウクライナ軍は16日に6発のキンジャールを全て撃ち落としたらしい。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は「ロシア軍が16日午前3時30頃、MiG-31Kからキンジャールを6発、黒海の艦艇からKalibrを9発、地上発射型ミサイルを3発(S-400の対地モードとイスカンデルM)発射したが、計18発のミサイルは全て空軍の防空部隊が撃ち落とした」と発表、オレシチュク空軍司令官も同様の内容を発表しており、これが事実ならパトリオットシステムによるキンジャール迎撃には信頼性がおけることになる。

6発のキンジャールが同時に撃ち落とされた=同着だったのかは不明だが、流石に異なる飛行プロファイルの攻撃手段(キンジャール、Kalibr、S-400の対地モードとイスカンデルM)を全て迎撃したという結果は「西側製防空システムの優秀性」を示していると解釈するのが妥当で、迎撃弾の供給さえ続くなら「ウクライナの空は以前よりも安全になった」と言えるだろう。

追記:米国がキンジャールの迎撃に注目しているのは「理論上の可能性」が実戦で証明されたためで、イスカンデルの空中発射バージョンとも言えるキンジャールをパトリオットシステムで迎撃できたということは「インタセプトコースを計算するソフトウェア」と「弾頭ミサイル迎撃弾=PAC-3弾」の組み合わせが、地上発射ではなく空中発射された弾道ミサイルにも対応できた点だ。

兵器は「性能」と「戦術」の組み合わせで結果が変わるため、個人的には今回の件だけで「キンジャールは大したことはない」と馬鹿にするのは危険だと思う。

関連記事:米国防当局、迎撃されたキンジャールの標的はキーウ郊外のパトリオット
関連記事:米国防総省のライダー准将、パトリオットによるキンジャール迎撃を確認
関連記事:パトリオットによるキンジャール迎撃成功、ロシア軍から確実な攻撃手段を奪う
関連記事:ウクライナにパトリオットシステムが到着、私達の美しい空がより安全になった
関連記事:オランダのルッテ首相、ウクライナへのパトリオットシステム提供を表明
関連記事:米国、パトリオットやJDAMが含まれたウクライナ支援パッケージを発表
関連記事:ドイツ、マルダー歩兵戦闘車とパトリオットのウクライナ提供を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:kremlin.ru / CC BY 4.0 キンジャールを搭載したMiG-31K

英国、ウクライナ人パイロットに訓練機会を提供しても戦闘機は提供しない前のページ

露メディア、ウクライナ軍はSu-24でストーム・シャドウを運搬している次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トーネード後継機問題は来年に持ち越し、ドイツ新政権に参加する3党は「核兵器共有協定」維持で合意

    ニュークリア・シェアリング体制からの離脱を主張していたドイツ社会民主党…

  2. 欧州関連

    ギリシャ、スペインを味方につけたエルドアン大統領は祝杯を挙げているだろう

    ギリシャにとってトルコとスペインが大型空母建造で合意したというニュース…

  3. 欧州関連

    搭載するF-35Bの調達は? イタリア海軍の軽空母「カヴール」でF-35B受け入れ準備完了

    イタリア海軍は今月6日、近代改修が無事完了した軽空母「カヴール (C5…

  4. 欧州関連

    ドイツ軍の軍事機密が流出、売却処分したパソコンに防空システムの情報が残ったまま?

    ドイツメディアは16日、ドイツ軍の機密情報が入った中古のノートパソコン…

  5. 欧州関連

    戦闘機不足の次はパイロット不足?失態続きのドイツ空軍に国民も失望か

    まともに飛行できる戦闘機が不足しているという問題に悩まされてきたドイツ…

  6. 欧州関連

    欧州、米国依存からの脱却を目指し電磁式レールガンを共同開発

    欧州防衛庁(EDA)は先端軍事技術の米国依存から脱却するため欧州は電磁…

コメント

    • emp
    • 2023年 5月 16日

    これが本当なら,キンジャールは派手なだけのゴミじゃん
    生産コストも高いだろうし

    9
      •  
      • 2023年 5月 16日

      今回18発のミサイルに対して少なくとも30発を超える迎撃ミサイルが発射されて少なくとも1発は撃ち漏らして着弾しちゃったからまあMDは難しいって話
      リンク

      7
      • ジエチルエーテル
      • 2023年 5月 16日

      最後の段落まで読んでくださいね

      29
    • 鼻毛
    • 2023年 5月 16日

    アメリカの超音速ミサイル開発は失敗続きらしいですが、それだけ難しいということで
    あっさり完成させられたロシアはなんか別の変なものでも開発してたんですかね?

    14
      • panda
      • 2023年 5月 16日

      キンジャールは単なるイスカンデルの空中発射型なので

      37
      • STIH
      • 2023年 5月 16日

      物は言いようですから、それなりにドラスティックな妥協をしてるんでしょう。単に飛行速度が速いだけなのかもしれない。考えてみればPAC3は超音速に達する弾道ミサイルの終端迎撃をも担う兵器ですから、単に速くて軌道が単純なら迎撃できて当然なのかもしれない。
      アメリカ製兵器はアメリカの人件費とも絡んでかなりお高いですが、ロシア製兵器が安いのは安いなりの理由があるということなんでは。

      28
        • みいつ
        • 2023年 5月 16日

        ん?ウクライナに派遣されたのはパック2だと思ってたけどパック3なのか

        • nachteule
        • 2023年 5月 17日

         安いって言ったってキンジャール1発7億円超えみたいな話もあるし安いのかな。イスカンデルで3億円超えとか言われているしカリブルが6億円越えでトマホークと比較しちゃいけないけど米軍調達価格より遙かにお高い単純計算した日本導入価格で5億円なんでいくら高速で飛行すると言っても安くはないと思うけどな。

        2
          • 神田明(仮名)
          • 2023年 5月 17日

          昨年のイギリス発のニュース(日本語訳)なんですが、11発のキンジャールの価格が日本円に直して約1400億円だったと報道していました。
          もしこのニュースが正しいのであれば、キンジャールは1発当り約127億円という事になります。

          • 神田明(仮名)
          • 2023年 5月 17日

          昨年のイギリス発のニュース(日本語訳)なんですが、11発のキンジャールの価格が日本円に直して約1400億円だったと報道していました。
          もしこのニュースが正しいのであれば、キンジャールは1発当り約127億円という事になります。

      • tofu
      • 2023年 5月 16日

      イギリス国防省によれば、キンジャールはイスカンデルの空中発射型なので、あくまでも「比較的新めの短距離弾道ミサイル」に過ぎなかったということかと

      極超音速で飛ぶとはいってもそこまで複雑な機動をとれるわけでもなく、PAC3からしたら着弾地点付近にさえいれば特に問題ないんでしょう
      もともと中距離弾道ミサイルまで対応できるわけですし

      23
      • ヤゾフ
      • 2023年 5月 16日

      米陸軍は今年にもLRHWの配備予定で失敗が続いてキャンセルされたのは空軍のプロジェクトですね

      2
    • zerotester
    • 2023年 5月 16日

    ロシアとしては航空機をウクライナ領で安全に運用するためにパトリオットを是が非でも排除したいのでしょう。そこで虎の子のキンジャールを使ったがダメだったと。

    これが本当なら日本にとっても朗報ですよね。中国の極超音速ミサイルもパトリオットで打ち落とせる可能性が増えたわけで。
    日本にあるのはPAC-2ファミリーとPAC-3だと思いますが、ウクライナに供給されたのはどれでしょうか。

    17
      • umJ
      • 2023年 5月 16日

      キンジャール(空中発射式イスカンデル)はMaRV方式ですからねぇ。
      MaRVはパーシングⅡの頃から存在するので、特筆するような技術ではありません。
      中国が開発したのは極超音速滑空体(HGV)ですが、キンジャールとは似て非なる代物ですね。

      4
    • gepard
    • 2023年 5月 16日

    リンク
    今回の空襲で対空ミサイル陣地に何らかの爆発が起こる映像が記録されており、ロシア側はパトリオットシステムの破壊に成功したと主張している。
    この情報の真偽は不明だが大量の西側SAM弾を消耗したのは映像に記録されているため確かだ。

    12
      • 鼻毛
      • 2023年 5月 16日

      ものすごい消費量ですね。でも、命中率がわからないからとりあえず全ブッパしてるけど、今後は最適化されて減るのかな?

      4
      • TA
      • 2023年 5月 16日

      花火みたいに打ちまくってるな

      3
      • ネコ歩き
      • 2023年 5月 16日

      SAM発射を伴わない閃光の後も発射され続けているので、映像はパトリオットシステムを破壊した(機能を喪失させた)とは言えませんね。
      少なくとも、迎撃している単位発射システムのレーダ装置、射撃管制装置及び複数の発射機は無事機能していることになります。

      1
    • たまねぎ
    • 2023年 5月 16日

    高い金だして配備した日本にとっても、これは朗報では。
    発射する未来がなけりゃ良いけど。

    25
    • みり
    • 2023年 5月 16日

    供与されたパトリオットは3基なので、もし同じキーウに3基設置されていれば、最低4×3=12発 最大16×3=48発のミサイルしか迎撃できない

    パトリオットはレーダー、発射台、指揮車の3台で構成され、レーダーはレーダーを発信しているため、レーダー源に向かって飛んでいく対レーダーミサイルで攻撃可能だ

    やるならやるで48発以上のミサイルで攻撃すべきであり、もしくはデコイとして大量のシャヘドや巡航ミサイル飛ばせば良い
    今回はパトリオットの迎撃能力を探る意図があるだろう
    基本的に配備されているS-300の性能は分かっているからな

    3
      • 名無し
      • 2023年 5月 16日

      1セットあたりの発射機は5基以上あるのでは

      23
      • らっしー
      • 2023年 5月 16日

      シャヘドや普通の巡航ミサイルでは、飛来する角度も速度も違いすぎて囮には為らんのでは…?

      それに虎の子のイスカンデルとキンジャールですが、
      確か半年程前の情報だと残弾が合わせて二百数十か百数十とか言ってませんでしたっけ。
      情報の正確性云々言い出すと話が出来ませんが、あれから大分時が過ぎて残弾は減っているでしょうし、
      他のミサイルよりは制裁でパーツ不足な状況では増産はおぼついて無いでしょうから、
      飽和攻撃は無理ではないかと思います。コスト的にも…。

      そもそも去年イスカンデルが使用されてもかなり命中精度が悪い様な話を聞きましたが、
      仮に迎撃されなかったとしてもパトリオットのレーダーシステムを破壊出来る見込みは
      どれ位と見積もって攻撃したのか、ずっと気になってるんですよね。
      まさか迎撃失敗でもラッキーパンチに期待する程度の期待値で撃ったのなら
      相当雑な作戦方針だと思いますが、対レーダー攻撃って結構精度要りますよね?

      8
    • ななし
    • 2023年 5月 16日

    キンジャールが空中発射式のイスカンデルに過ぎないという米英軍事筋の評価が正しいなら、パトリオットで普通に撃ち落とせても不思議はないんですよね。
    逆にこの防空戦闘でこれまで言われていたことが証明されてしまったというか、S-300とパトリオットの性能差がはっきり示されてしまったというべきかと。
    今後キンジャールは単にS-300/400の対空網なら突破できるというだけじゃないのかって疑われることになりそうです。

    14
      • umJ
      • 2023年 5月 16日

      中国はS-400でマッハ9の目標を迎撃するのに成功しているので、S-400もキンジャールを普通に迎撃できると思います。
      「キンジャールは空中発射式の弾道ミサイル(イスカンデル)に過ぎない」がはっきり分かっただけかと。

      16
    • 58式素人
    • 2023年 5月 16日

    先日の、4日のものに次いで2回目のお試しということでしょうか。
    結果は、”マグレでは無い”ということですね。
    最近では無い良いニュースでしょうか。
    先日の情報漏洩の紙を見てみると、PAC3は、米独合わせて173発提供で良いのでしょうか。
    オランダの提供数は書いてなかったですね。
    次は、消耗弾の補充と、システムを増やすことでしょうか。
    どこか、システムを提供してくれる国があると良いのですが。

    2
    • bbcorn22
    • 2023年 5月 16日

    虎の子のキンジャルがこれでは・・・
    張り子のトラだったな。
    まあ あっても数がそれほどないんだよね。
    スペック倒れ 乏しい生産量
    いつものロシアですね。

    11
    • 無題
    • 2023年 5月 16日

    いくら速くても所詮弾道ミサイルだもの
    巡航ミサイルに比べたら迎撃の難易度ははるかに低い

    4
      • TA
      • 2023年 5月 16日

      え!?逆じゃね?
      それとも今の巡行ミサイルは複雑な機動するの?

      7
    • TDN
    • 2023年 5月 16日

    キンジャールを撃墜するのにどのくらいのパトリオットミサイルを発射したのか気になります あと何発供与されたのかも こいつ撃墜するのに盲に撃ちまくってはすぐに尽きてしまいそうなので

    8
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2023年 5月 16日

    どっちの主張も裏付けが無いんですよね
    ウクライナ側の主張はキンジャールとおぼしき弾頭・破片のみ
    ロシア側の主張(現地動画?)ではパトリオットが破壊されたというが爆発映像のみで確認はできず
    停戦・終戦して何年か経たないと本当の事はわからないのかもしれませんね

    4
      • TDN
      • 2023年 5月 16日

      バイラクタルTB2の直接戦果も報道されていた程ではなかったですもんね(偵察にはかなり貢献してると思うけど) 戦時はかなりのバイアスがかかるので検証が難しいですね

      2
      • ミリオタの猫
      • 2023年 5月 16日

      パトリオットが破壊されたとする動画を見たのですが、自分が見た限りではキンジャールの弾着では無く、SAMと思われる物体が乱れ撃ち状態で多数発射された中の一発が発射直後に機能不全状態となって落着した様に見えましたので、キンジャールがパトリオットを撃破したとするのは早計かも知れないですね

      9
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP