欧州関連

米国、他国が発注したパトリオットシステムをウクライナに回す予定

Financial Timesは20日「米国政府はウクライナが十分な防衛力を持つまでパトリオットシステムと迎撃ミサイルの納品を停止する」「この決定は木曜日に正式発表されるだろう」と報じており、要するに「受注済みのパトリオットシステムと迎撃ミサイルをウクライナに回す」という意味だ。

参考:US to redirect Patriot air defence orders to Ukraine

パトリオットシステムと迎撃ミサイルを発注している国は何らかの影響を受けるのだろう

バイデン大統領はG7首脳会談で「ウクライナは(追加のパトリオットシステムを)比較的早く受け取るだろう」と述べていたが、 Financial Timesは20日「米国政府はウクライナが十分な防衛力をもつまでパトリオットシステムと迎撃ミサイルの納品を停止する」「この決定は木曜日に正式発表されるだろう」と報じており、要するにドイツ、ポーランド、ルーマニア、スペイン(ランチャーのみ)、スイスなどが発注しているパトリオットシステム本体、運用国が発注している迎撃ミサイルの納品を止めてウクライナに回すという意味だ。

出典:Michigan Army National Guard photo by Spc. Aaron Good/Released

実際の内容は木曜日の発表を見てみるまで何とも言えないが、WAR ZONEは「米国の安全保障に影響を及ぼす事情がある場合は『合意された条件=武器取引の条件のこと』から逸脱することが出来る」と指摘しているため、パトリオットシステムと迎撃ミサイルを発注している国は何らかの影響を受けるのだろう。

因みにパトリオットシステムで使用するPAC-3MSEの生産量は年550発、これを年650発に引き上げ取り組みが行われており、PAC-2GEM-Tの生産量は年240発(月20発)程度だが、ドイツ企業やスペイン企業の生産参加によって2027年までに生産量は年470発(月35発)まで増加する予定。

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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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コメント

    • F-117A
    • 2024年 6月 20日

    岸田マリー「パトリオットがなければ中SAMを買えばいいじゃない!」

    10
      • 落ち着け
      • 2024年 6月 20日

      中SAM改の性能にもビビったけど、予想されている中SAM改能力向上型はホンマかいな?と軽く疑うレベル。
      本気で(PAC2弾はともかく)PAC3弾の代わりになり得る?
      てか、どう言う使い分けしてるの?
      ミサイル本体の量産、どこまで出来るのだろうか。。。

      米軍や米国同盟国の在庫が減る事は、台湾有事を前提にするとあまり嬉しくない。

      16
        • F-117A
        • 2024年 6月 20日

        中SAM(改)能力向上型がサイドスラスター装備じゃね?という話が本当なら、PAC3の代わりもいけるかも。

        6
        • イーロンマスク
        • 2024年 6月 20日

        中SAMとパトリオットはただの陸自と空自の縄張り争いにしか見えねえw

        20
          • 落ち着け
          • 2024年 6月 20日

          言いたくないけど。。。
          ・・・ですよねぇ(ホーク導入時)。

          まあそれだけミサイル万能の時代、分散型(車両搭載型)の時代になってしまったのかな、と。

          8
          • 2024年 6月 21日

          パキスタンあたりが顕著だが、似たような性能の兵器を複数国、複数の供給源から調達することがある
          理由はある兵器に欠陥や問題が起きた時に全ての兵器が使用不能になる事態を避けるため
          兵站や維持コストに悪影響が出るのを承知した上で、リスク回避の為にしている

          8
        • バーナーキング
        • 2024年 6月 23日

        「高高度での対処」「高速・機動する標的への追随」を謳ってるので空力操舵依存は抜け出すにしてもサイドスラスターの追加みたいな全面改修にしては開発期間も予算も少な過ぎる気がするので、推力偏向化くらいじゃないかなぁ。
        だとすればBMD対処能力でPAC-3(MSE)には及ばないけどできなくもない、くらいで住み分けもできるしコストにもかなり差が出るのでは。

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 6月 20日

    「米国の安全保障に影響を及ぼす事情がある場合は『合意された条件=武器取引の条件のこと』から逸脱することが出来る」

    これは理解できるが、ウクライナの防衛が整うまでという話がこの条項のトリガーとして成立するのかというのは法的にどうなのかが気になる。「米国の安全保障に影響を及ぼす事情」というのがいくらでも拡大解釈できちゃう?

    12
      • abm
      • 2024年 6月 20日

      アメリカ議会が意義唱えなければ問題ないでしょね
      相手国から多少の苦情はでるでしょうが、アメリカ相手に国際司法に訴えるなんて事もないでしょね

      14
    • Whiskey Dick
    • 2024年 6月 20日

    我々西側はロシアのT90戦車の件を笑えなくなった。

    14
      • F-117A
      • 2024年 6月 20日

      アメリカは契約に基づいてパトリオットをウクライナに持ち出した。
      一方、ロシアはインドの戦車を黙って自分で使った。
      そしてアメリカ空軍は、工場を言いくるめて、海軍向けのエンジンを生産ラインから引き抜いた。

      28
        • 伊怜
        • 2024年 6月 21日

        あれがインド軍の個体である証拠はないし、仮にそうだったとしてもインドと話がついてない証拠もない

        1
      • たけやぶやけた
      • 2024年 6月 21日

      「我々」とか「西側」とか主語が大きすぎ。
      今回の措置はアメリカという一主権国が行ったもの、別にG7とかNATOが圧力をかけた訳ではない。

    • F-117A
    • 2024年 6月 20日

    >ドイツ、ポーランド、ルーマニア、スペイン(ランチャーのみ)、スイスなどが発注
    1国1基としても、4基分か。
    今までの分も合わせて7基分にはなりそう。

    ゼレンスキーが「私たちはNATO加盟国から7基の『パトリオット』システムを受け取れるだろうか? 私たちは、私たちの全ての州を守りたいし、同システムを20〜30基得たいところだ。しかし、せめて7基は受け取れないだろうか?」と言ってたのが実現しそうだな。

    7
    • たむごん
    • 2024年 6月 20日

    日本も、アメリカにパトリオット輸出を決めていますからね。

    中東方面も、米軍駐屯地・イスラエルなど需要がありましたから、パトリオットミサイルの物の動きがどのようになるのか注目ですね。

    >「受注済みのパトリオットシステムと迎撃ミサイルをウクライナに回す」

    4
    • HUNK
    • 2024年 6月 20日

    本邦はミサイルをライセンス生産してるから影響は少ないでしょうがライセンス生産してない国は割と発狂物では?

    20
    • 名無し
    • 2024年 6月 20日

    S-400等と違って展開してれば短距離弾も迎撃してますし、米国がある程度勝手な事をしても人気は衰えないでしょうね。

    3
      • まる
      • 2024年 6月 21日

      性能が良いのと、必要な時に調達出来ないのは混同してはいけない。契約を守らないアメリカの兵器全般を調達するリスクがある。

      11
    • nachteule
    • 2024年 6月 21日

     ポーランドのWZLはPAC-3MSEランチャー生産ライン開設(ミサイル生産じゃなくて意外)、日本と米国の二国間協定でパトリオットの共同生産提案、PAC-3とPAC-2を三菱がライセンスしているが両方?スペインのオエシアはPAC-3 MSE生産。ドイツの合弁会社COMLOG(レイセオンとMBDAドイツ)でパトリオットGEM-T量産だけど、米国以外で唯一パトリオット・ミサイルを製造できるとかどう言う意味だろうか。三菱はアッセブリー生産になるのか??

     何だかんだで世界中でパトリオット量産が加速しているけど、ウクライナ中心になると韓国やイスラエルのSAMとか需要かっさらわないのかな。イスラエルなんかパトリオットをメインじゃなくてサブ扱いしてるんだしどこかに輸出して外貨でも稼げば良いのにな。
     

     

      • ななし
      • 2024年 6月 21日

      ヒズボラが15万発もミサイル保有していると言われててそれをイスラエルに使う恐れがあるから
      イスラエルとしても迎撃に使えるミサイルを一発も輸出する気はないと思いますよ

      1
    • 58式素人
    • 2024年 6月 21日

    優先順位なのでしょうね。
    昔から、武器の提供は、商売だけではなかったですから。
    この記事の一つ後の記事を読むと、
    ウクライナの要請する7基のパトリオットやSAMP/Tのうち、
    6基までは目処がついたようですから、
    それほど大きな騒ぎにはならないのでは。

    • ネコ歩き
    • 2024年 6月 21日

    >パトリオットシステム本体、運用国が発注している迎撃ミサイルの納品を止めてウクライナに回す
    ウクライナがインフラ等防衛に必要とするシステム本体とミサイル供給を優先するということで、ウクライナの支援要求に早急に応えるための決断ですね。
    G7首脳会談で「ウクライナは(追加のパトリオットシステムを)比較的早く受け取るだろう」とのバイデン発言は、米国の安全保障上保持すべきことが定められた装備の一部をウクライナに提供し、それを他国が発注したパトリオットシステムで補充するということでは。
    そのような方法を採るから、
    >米国の安全保障に影響を及ぼす事情がある場合は『合意された条件=武器取引の条件のこと』から逸脱することが出来る
    ということになるのかと思います。

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