米下院はマッカーシー議長を解任してしまったため法案の採決が出来なくなり、CNNは「ウクライナに装備や弾薬を送るための資金は2ヶ月分しか残っていない」と、戦略国際問題研究所も「支援資金案の可決が遅れればウクライナは危機的状況に陥る」と警告した。
参考:Ousting of US House speaker darkens outlook for Ukraine aid as funds dry up
参考:Biden says he is worried about the future of Ukraine aid as speakership dispute plays out in US House
CNNは米軍在庫から装備・弾薬を引き出すPDAの資金については「実施的に2ヶ月分だ」と主張
マッカーシー下院議長は歳出削減と移民制限を含む「つなぎ予算案=共和党案」の可決に失敗し、政府機関閉鎖を回避するため上院案に近い「つなぎ予算案=上院の超党派案」を民主党と協力して可決させたが、共和党議員の協力も必要だったため上院案に含まれていたウクライナ支援資金(60億ドル)は除外されてしまう。
これに怒った共和党の強硬派はマッカーシー下院議長の解任を発議、つなぎ予算案の可決で協力した民主党も国防権限法関連の恨みがあるためアテに出来ず、下院は216対210でマッカーシー下院議長を解任してしまい、議長が居なくなった下院は法案の採決が出来なくなってしまった。
後任の下院議長がいつ決まるのか不明だが、CNNは「新たな下院議長の選出に1週間以上かかる可能性があり、ウクライナに対する米国の軍事支援に疑問が生じている。(共和党の中でウクライナ支援に理解を示していた)マッカーシー氏は下院議長選への再出馬を断念し、何人かの後任候補者は現在の水準でウクライナ支援を継続することに懐疑的な立場だ」と報じており、下院議長が直ぐに選出されてもウクライナ支援への追加資金に関する議論は難しいものになる上、もし下院議長の選出(マッカーシー氏に決まるまで15回の投票を要した)で揉めれば貴重な時間を失い「残りわずかになった支援資金」が先に尽きるかもしれない。
CNNは支援資金の残高について「大統領権限(PDA)の口座に54億ドル、ウクライナに送られた武器・弾薬を補充する国防総省の口座に16億ドル、ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)の口座は0だ」と報じ、ウクライナ軍が必要とする装備、弾薬、サービスを産業界から調達するUSAIの資金が枯渇しているため「155mm砲弾などの弾薬購入契約は遅れるだろう」と指摘、さらに米軍在庫から装備・弾薬を引き出すPDAの資金については「実質的に2ヶ月分だ」と主張している。
PDAの資金(54億ドルのみか54億ドル+16億ドルなのかは謎)が「あとどれだけ保つのか」については諸説あるものの、戦略国際問題研究所のバーグマン氏は「議会が早急に支援資金案を可決しなければウクライナは危機的状況に陥り、多くのウクライナ人が死亡し、彼らの戦闘能力は著しく損なわれるはずだ」と警告、CNNも「不確実な状況は冬季攻勢や防空計画を立案するウクライナ人にとっても課題で、もし支援が滞るなら懸念の声を上げるだろう。しかしウクライナ政府の関係者は公の場で楽観的な見方を示そうと努めている」と指摘した。
現時点で判明している米国の支援状況は以下の通り。
- 大統領権限(PDA)の口座に54億ドル
- ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)の口座は0億ドル
- 国防総省の武器・弾薬埋戻し口座に16億ドル
- PDA経由の資金残高は過去2ヶ月分の支援に相当
- PDAの拡張は9月30日で期限切れを向かえているため予算枠は年間1億ドルに戻っている
- USAI経由の資金がないため産業界と新たな契約が結べない状態
- ウクライナ・レンドリース法は9月30日に期限切れを向かえている
この状況を楽観的に捉えるか危機的に捉えるかは人それぞれだが、何となく「前線の変化」が見られなくなっている状況と「ウクライナ支援」に関する米議会の状況がリンクしているように感じられ、ウクライナ軍は「支援の遅れ」を警戒して消耗を控えているのではないかと疑ってしまう。
追記:バイデン大統領は「ウクライナ支援資金を調達する別の方法もある」と述べたが、その方法について詳細は明かさなかった。近いうちにウクライナ支援に関する演説を行うらしい。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
ウクライナは後二ヶ月以内に何だかの成果を出さないといけなくなったな
政治が軍の作戦にノルマを強要すると碌なことがない
なんとか予算を繋いでいってほしいが…。
戦場が徐々にウクライナ優勢に傾いていってる中でこういうゴタゴタがあるのは凄くもどかしい。
今までは割と楽観的だったけど今回の史上初の議長解任と言い、なんかトランプ大統領が誕生してからアメリカの民主主義がおかしな方向に行ってるのがとても怖い。
こういう隙を作れば作るほどロシアや中国みたいな専制主義国家が勢いづくきっかけになってしまう。
アメリカの民主主義がおかしな方向だから、トランプ大統領が誕生したんだと思いますが…。
トランプ大統領はアメリカ国内の歪みや分断が表に現れた一つの現象というだけで、トランプ大統領が誕生してからおかしくなった、というのは違うと思いますよ
それ以前からあなたの言う「おかしな」方向性が積もっていっており、トランプ大統領就任でその一部が表面化した、ということでしょう
いずれにせよこういうゴタゴタがないほうが良いというのは事実ですが、民主主義国家だからこそこういうこともあるわけで
ウクライナ支援を望む人もいればそうでない人もいてそれぞれが多数決で権利を行使できる、という点ではまっとうです
ウクライナに早く勝ってほしいと思う人間としては忸怩たるものがありますが…
議会を通さずに支援金を捻出するって、寄付でも集めるんですかねえ。
イランや北朝鮮船舶から接収した密輸兵器を放出する可能性
日本と韓国に協力を依頼するのではないでしょうか。韓国は欧米以外では155ミリを大量に供給できる唯一の国ですし
日本にとっては最も都合がいい古典的な共和党議員の力がどんどん弱まってますね
内政は似通ってるものの外交に関しては、民主党を挟んで真逆の立場なんですよね
世界の警察は同盟重視 孤立主義は同盟軽視
アメリカの有権者が、外より内を重視してくれる政治家を支持するのは当然ともいえますが
それって日本などの同盟国には不利益になりますよねって日本の「米国の孤立主義者」を応援してる人に言いたい
陰謀論者に悪のネオコン呼ばわりされる人って日本や欧州の同盟国を重視して反中国 反北朝鮮 反ロシアの人ばかりなんですけどね
Xやまとめブログなどにいっぱいいる本物の保守を名乗るトランプアイコンや旭日旗アイコンの人たちはそれだと困るんですかね
同盟国に不満ばかりいってロシアと関係良好で、北朝鮮とも対話(融和)を試みた孤立主義がそんなに素晴らしいだろうか
今のところ反中ではありますがアメリカの国益になるのであれば中国との融和も試みるんじゃないかと危惧してますよ
>日本の「米国の孤立主義者」を応援してる人
菅見の限りではこの手の人たちもまた「日本の孤立主義者」に思えるんですよね。例えば、政治家の外遊が報じられると脊髄反射で「バラマキだ、海外旅行だ」などと決め付けたり、海外ODAをお財布扱いだのボロクソに批判したりするタイプの。
その割には日米同盟は頼りにしていたり地球儀を俯瞰する外交を標榜していた安倍氏をヨイショしてる人もいて、まぁあんまり深く考えていないのかな?と思います。
おっしゃることは事実です。トランプ支持派は、言論の自由や昔風の民主主義を重視します。大きな政府や言論統制を嫌います。
主流メディアからは、陰謀論者と言われていますが。
今回、マッカーシー下院議長の解任に賛成したのは、民主党議員に加えて、共和党の10人くらいが加わったのです。それで過半数を越えたのです。
この10人らはトランプ支持層とも重なると思います。トランプ自身は解任に反対ですが。
彼らは、マッカーシー議長選任の時に揉めて幾つかの約束をしたのです。
・1月6日事件の監視カメラの全動画を一般公開すること。
・予算の膨張に歯止めをかけること。
・予算案が示されてから、議決までに最低72時間の間をおくこと。(最近では、何万ページの予算案が提示されて、議員は読む間もなく採決がとられるようになってきました)
・予算案のパッケージを基本的にしないこと
(例えば、国境警備と温暖化対策を1つのパッケージにするようなことをしないことです。最近では過度なパッケージがされるようになってきました。
今回のウクライナ支援に関して言えば、ウクライナ支援の予算案だけにしてそれを審議して採決することです)
そういう約束をマッカーシーが破ったからです。
ただ、この解任がアメリカにとって、吉とでるか凶とでるかは分かりません。
泥濘期が明ける来年初めが危ないとな。
ロシアの第二次攻勢が始まるのか?
ウクライナに対するアメリカからの武器と資金の支援、援助が完全に尽きた後に、ロシア軍は果たしてどう出るのか、しばらく現状維持で様子見を続けるのか、それとも小規模で局地的な反撃を開始するのか、あるいは一気に大規模な攻勢を始めるのか、色々な選択肢、状況が考えられます。アゼルバイジャンのように、突然一気に一斉攻撃を始める場合もあります。
もちろんロシア軍の方もかなりの損害や消耗があるわけで、アメリカの支援がなくなったからすぐに一斉に反撃、攻勢を開始、というほど簡単ではないでしょうが、かといって目の前で弱っている敵をそのままずっと放置してくれるかもわかりません。
解任動議に下院民主党が賛成に回ったため、議長が解任されたという事実は重要。
民主党にとってウクライナ支援が優先順位が高ければ話の分かるマッカシー議長の擁護に回ったはずだ。
下院議長が決まらない間は全ての審議が停止する。政府閉鎖直前で可決したつなぎ予算は11/17までで、下院議長決めが難航すれば再び政府閉鎖の危機。
強硬派を宥めてウクライナ支援をまとめるだけの時間は残っているのだろうか。
CNNテレビの9月の世論調査によると、アメリカのウクライナ支援について「もう十分」と答えた人は51%、「さらに必要」と答えた人は48%。
民主党支持者は「もう十分」が39%、「さらに必要」が61%。共和党支持者はこれのほぼ真逆。
国内問題にも注力してくれって声も無視できんと思うのよな。ニューヨークの件を受けてか、しれっと不法移民の取り締まり強化してるし。
アメリカはWW2の頃は、世界のGDPの半分を占めていましたが、現在は4分の1程度まで減少しています。
貧富の格差が拡大する中で、インフレが続いたため、今のアメリカに余裕はないです。
外交の為に、内政を疎かにしていては、支持は得られません。
ヨーロッパ(特に独仏)は、アメリカを排除(EU拡大・ユーロ創設)しようとしてきましたが、この局面で何ができるのかということでしょう。
日本の防衛が、他国(アメリカ)を当てにし過ぎるのは危険です。
南西諸島の防衛力強化は、その事も理解して、動き出しているのは重要と思います。
現在の体制下では限界なんでしょうね
過去の戦時体制よろしく累進強化すれば良い話なので、底力という意味では余裕ありまくりですが
所得税累進最大94%とかやってたのが50年代アメリカなので
そのくらい富裕層が負担するなら、アメリカ有権者も本当に必要な事なんだなと納得してくれるかもしれませんね
中間層が、年金減って(株価暴落)、返り血を浴びるだけだと思うんですよね。
超富裕層は、株式の方がキャッシュよりも割合多いですから。
まあ財団作るか国籍移して、租税回避するだけですかね。
フラットタックスの方が、税収増えると言われる理由です。
つまり超富裕層すら自分ではカネ出したくない、出さなくても大丈夫と思ってる訳ですか
それじゃ中間層以下が税金の使い途として納得しないのも必然ですね…
仰る通りです。
超富裕層は大胆な税金対策できますが、中間層以下は基本的に丸腰で抵抗ができません…。
もちろん、超富裕層でも金を出したい人は出すと思いますが、基本的に自分の裁量で関心のある分野だと思います。
アメリカが減ったんじゃない
他の国が成長し割合が増えただけ
たむごんさんて近視眼的な視野だよね
アメリカのインフレも別に経済状態が悪いわけではなんだよなあ
逆に景気が加熱してるだけ
色々履き違えてますね
ここの住民は近視眼的に予算は全部軍事関連と思っていますが。
ウクライナは超絶赤字国家なので、公務員の給料やらその他の国で同様の税金で賄われるべき物のお金も当然入っています。
戦争しておらず軍事費は僅かな日本ですら赤字でお金足りないと騒いで増税を乱発している眼鏡がいるでしょう。
戦争以外のお金も足りなくなるとどうなるか考えましょう。
ウクライナの国民自身の為にも一度ウクライナ(政府)は潰れた方が良いのかもしれませんね
そのためにもロシアは頑張ってもらわないと
一番可哀想なのは、政府の要請に応じて砲弾等の増産用に設備投資した企業じゃないか
はしごを外されたらそれらの企業は大損じゃないか?
結局一時的な需要なんて無視するのが正解ってなりそう
これは仰る通りです。
アメリカの防衛産業が、政府の協力に消極的だったのは、合理性があります。
日本でも、過去に似たような事例があり、日本企業はボランティアを止めて防衛装備生産のリストラを進めました。
これでウクライナが立ち往生すれば、全て丸く収まりますな
あとはわーくにが支援の撤退時期さえ見誤らなければ何も言う事はない
> バイデン大統領は「ウクライナ支援資金を調達する別の方法もある」と述べたが、その方法について詳細は明かさなかった。
バイデン「フミオ、5兆円ほど用意してくれないか?」
岸田「いいですとも!」