ウクライナ戦況

ロシアはクレミンナで攻勢、ウクライナはバフムートと南ドネツクで前進

ロシア軍がクレミンナ方面で開始した攻勢はゼレベツ川沿いのトルスケに達して両軍が激しく交戦中、ウクライナ軍はバフムート方面のロズドリフカからソレダル方向に、南ドネツク方面でもプリユトネ方向に前進した。

全線において決定的な動きはないもののロシア軍が久々に攻勢を開始、トルスケを守りきれるかが焦点

クレミンナ方面の状況はウクライナ軍の攻勢が頓挫後、ポジションの改善のため両軍が「ゼレベツ川」から「P66」の間の土地を奪い合う戦いに終始し、クレミンナの南に広がる森林地帯の状況はほぼ膠着状態で、クレミンナとトルスケを結ぶ道路に沿ってロシア軍が徐々に西に前進していたが、ここ数日の攻勢でロシア軍が大きな前進を見せている。

出典:GoogleMap クレミンナ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ロシア軍はディブロバ周辺のグレーゾーンを支配領域に加え、ロシア軍部隊の先端はトルスケに達しており、ウクライナ軍がロシア軍の前進を阻止するため必死の防戦を続けているらしいが、昨年秋の敗走後にロシア軍がここまで前進を見せたのは初めてのことで、もうクレミンナ攻略どころではなくなってきた。

さらにロシア軍がT1302沿いのスピルネ方面でも攻勢に出ており、同拠点の北に位置する重要な高台を制圧、さらに南側でも前進を見せているためスピルネを守るウクライナ軍部隊は敵に包囲される可能性がある。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

バフムート方面ではウクライナ軍がロズドリフカからソレダル方向に前進して領土を奪還したが、この先にはロシア軍が事前準備している防衛ラインがあるため、このままソレダルに向けてウクライナ軍が前進できるのかは謎で、ゴルロフカ周辺の水路側に食い込んだウクライナ軍支配地域に対してロシア軍が反撃を行い「大規模な戦闘に発展している」という報告がある。

ベルヒフカとクリシェイフカについては新たな動きはなく、ウクライナ軍は「クリシェイフカの重要な高台を制圧した」と主張しているが、これを裏付ける視覚的証拠は登場していない。

出典:GoogleMap 南ドネツクの戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

南ドネツク方面ではウクライナ軍がプリユトネの北にある森林地帯を制圧、さらにリヴノピリ方向に伸びていたロシア軍の突出部も潰すことに成功しており、ザポリージャ方面でもオレホボ周辺でも小さな前進が確認されている。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • 理想はこの翼では届かない
    • 2023年 7月 12日

    いつの間にかよくわからない展開に…!?
    クリシェイフカをウクライナ軍が抑えたと思っていましたが、まだ怪しいんですかね
    ロシア軍側はバフムトを現状戦力と予備で守りきれると判断してクレミンナ方面で反攻に出たのか、それとも各方面での意思疎通ができていないのか

    トルスケ→リマンへの打通を狙うにしてもそう簡単に突破できるとも思えないのですが、何がどうなってるのかさっぱりわかりません

    4
      • akgjm
      • 2023年 7月 12日

      ロシア軍部隊の先端はトルスケに到達していないという情報もありますな。
      トルスケがロシア軍に砲撃されているのは事実みたいですが。

      4
      • ポンポコ
      • 2023年 7月 12日

      そうなんですよ。

      このバフムト南方のクリシエイフカですが、実態がよく分からない。

      ウクライナ軍の報道官?の女性が「クリシエイフカの高地も押さえて、バフムトの補給道を管制下においた」とか述べていました。

      しかし、ロシア軍のバフムトの補給道が阻害されたり、バフムトがウクライナ軍の砲撃の下にある兆候はどうも見られない?。流れ弾程度はあっても。

      また、毎日の戦況報告をやってくださる日本のユーチュバーの方とかも、「クリシエイフカで市街戦が行われている」とか言っていました。

      クリシエイフカは市街というほどでなく、小さな集落ですが、しかし、そこで激しい直接戦闘が行われている感じもない?のです。

      とにかく、ウクライナ軍は南部の総攻撃の進展が今一つなので再びバフムトに力をいれはじめていると思います。

      そして、クリシエイフカは、第3突撃旅団など毎日のやうに動画をあげているし、従来の旅団らに加えて、ごく最近、第22旅団が新たに加わったりもしている。

      そして第3突撃旅団の動画とかを信じたら、上のユーチュバーの方のような判断になって不思議ではありません。

      しかし、ウクライナ側の宣伝が先行しているのかもしれません。

      つまり、ロシア軍は一端下がって、クリシエイフカに入ってきたウクライナ歩兵を砲撃で叩くような戦法をよくとります。そして、それにウクライナ軍はどう対応するです。

      しかし、クリシエイフカの実態は、まだ、そこまでもいっていないのでは?

      7
      • 名無し
      • 2023年 7月 12日

      いろんな戦線で前進したり後退したりしてるけど
      はたしてウクライナが攻勢失敗で戦力が溶けてまずい状況にあるのか、
      ロシアが日に日に戦力が削られてこのままだといずれ防衛線が瓦解するのか、
      全体としてどうなのかがよくわからない。

      5
      •  
      • 2023年 7月 12日

      よく言われるクリシェイフカの高地はクリシェイフカ南西の標高200mちょっとの小山で、この陣地は現状おそらくウクライナが保持してるのかなと思う
      ウクライナのバフムト右翼はクリシェイフカを南北から迂回して包囲する攻勢を続けていたところに数日前ロシアの反撃があって後退して予備戦力の投入があって安定化したところで、現状は両軍共に限界を迎えて小康状態にあるんだろう
      ただ中期的に見ればクリシェイフカ南西の陣地を(おそらく)保持しているウクライナがクリシェイフカ周辺の戦いでは有利になると思う
      問題はバフムト左翼で、こちらは数日前のロシアの反撃でかなりの損害を受けてしまっていて危機的な状況にある
      だからバフムト市街やクリシェイフカに砲撃している余裕はないし、ロシア軍に対応を迫るためにロズドリフカ方面の攻撃が開始されたんだと思う
      ただそれはロズドリフカ方面の消耗と等価交換であってクレミンナやシベルスク正面の推移如何によっては後々響くかもしれないね

      クレミンナ方面は状況が錯綜してて大勢の判明待ちなところはあるけどどうなんでしょ

      5
    • 名無しさん
    • 2023年 7月 12日

    シンプルに「ロシアに近い地域は補給が比較的容易」であるという事実が、その通りに結果に反映されてるのではないですかね。
    ロシアが6月以降、この地域に大規模に新設部隊を配備していたと言われていますし、ウクライナと言えど、すべての前線で攻勢を維持するなど不可能な話でしょう。

    17
    • 58式素人
    • 2023年 7月 12日

    南のザポリージャとヘルソンで、ウクライナの攻勢を凌げると判断をしたのかしら。
    地雷を大量に撒いておけば、ウクライナ軍の突撃を止められると判断をしたのかな。
    少しずつ下がりながら、新たに地雷原を作っているのかな。きっと時間稼ぎですね。
    そして、前から言われていた、クピャンスク付近の予備を動かし始めたのかな。
    これをどうにかしようと思ったら、ロシア領内の兵站線を叩かないと無理かな。
    前にも書いたけれども、ベルゴロド州を通過して、防御線の背後に回り込む
    必要がありそうな気がします。もちろん、東側装備で。しかし空軍が全く足りない。
    ウクライナ側も地雷作戦(?)が必要なのでは。除去機材も不足しているように思えます。
    今のままでは、予備の旅団の使い途がないような気がしてきました。

    1
      •  
      • 2023年 7月 13日

      PT-91装備の部隊の投入も確認されてるしもう攻勢のために用意した戦力はだいたい投入済みだと思う

      1
    • 2023年 7月 12日

    わずかな領土のとった取り返したの膠着所帯に陥っちゃったな、あと何年来れ続ける気なんだろ・・・

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    • panda
    • 2023年 7月 12日

    戦力集中が確認されていたので逆襲自体は予想通りですね
    突破されれば一大事ですが抑えきることが出来ればロシア軍に残された数少ない攻勢に耐えうる戦力を削る事が出来ます

    12
    • gepard
    • 2023年 7月 12日

    小泉悠氏が指摘していたクレミンナ方面でのロシアのカウンター攻勢が始まった模様だ。ロシアの先鋒がトルスケ東半分を制圧したというソースもあれば町郊外の森林地帯にとどまっているという報告もある。しかし視覚的証拠からトルスケの住宅地をウクライナ軍が多連装ロケットで攻撃する様子が登場したことから、ロシア軍が僅か数日で大きく前進したことは確実だ。
    スバトボ正面でもロシアの攻勢がありいくつかの陣地を占領されたとの報告もあることから、かなり広範なカウンター攻勢の始まりとなる可能性がある。
    現地で攻勢を担っているのは空挺部隊で第111地域防衛隊を中心にしたウクライナ軍守備隊は装備・練度共に大きく劣勢とのこと。ザポリージャ方面とバフムト方面に予備隊を投じた結果発生した戦力の空白を突かれたと思われる。
    反撃を行うには予備兵力を呼び戻す必要があり、シベルス川を盾に立て直しを図ると大きく領土を削られロシアはリマンを伺う位置に腰を落ち着けられる。

    オレホボ=トクマク軸で再び第47旅団が攻勢に転じ、わずかなグレーゾーンを占領したが10両以上のブラッドレーと少なくても1両のレオパルト戦車を失ったとロシア側情報源が主張した。
    この損失に関連してかは不明だが、第47旅団のヴァレリー・マルクス上級曹長(ゼレンスキーと会談した経験もある第47旅団の中心的人物)は「旅団創設当初に宣言した価値観に従って軍隊を建設することを許されなかった」と旅団上層部を批判しポストを捨てて一兵卒待遇へ移ると自身のTwitterに投稿、ウクライナ軍事共同記者エヴヘニヤ・キタイヴァ氏は、マルクス氏が前線にいる指揮官らに公の場で呼びかけて一線を越えたため、応じることができないと非難した。(ソース:MilitaryLand)

    15
      • 匿名
      • 2023年 7月 12日

      その「トルスケの住宅地をウクライナ軍が多連装ロケットで攻撃する様子」とされる映像について、
      「ロシア軍がウクライナ軍を攻撃する様子」の映像が誤って伝えられた結果生まれた誤報ではないか?との指摘もあるため要注意です

      7
        • gepard
        • 2023年 7月 13日

        ISWはトルスケをロシアが支配とジャッジしているんですよね…
        西側メディアのISWすらそうなので今のところトルスケはロシア軍が侵入しつつあるという認識です。

        14
          •  
          • 2023年 7月 13日

          さすがに今までと比べて戦線の移動が速すぎるから推移を見守るべきだと思ってたけど、割と西側寄りの情報源でもそれを認めるところが増えてきたね
          現在の進軍速度が正しいならクレミンナ正面に幅数キロのかなり大きな突破口が形成されつつあるかもしれない
          クピャンスク方面の動きも気になるところだね

          4
          • 匿名
          • 2023年 7月 13日

          まあ良し悪しではなく方向性の話として
          ISWは確かに情報分析の面では西側寄りですが、主要な情報源が主張していれば
          「情報筋によればこのような情報がある」とだけ明示してあまり深く情報の信憑性には立ち入らない傾向があるような気がしますね
          トルスケの状況に関しては、数日様子を見なければ実態は掴めないように思います

          3
    • たむごん
    • 2023年 7月 12日

    回復攻撃に、お互い耐える必要があるため、塹壕戦・歩兵戦の前進は本当に過酷だと思います。
    わずかな領土を獲得して、最前線の兵士が生き残ったとしてもPTSDなどを患っている可能性が高く、少数精鋭で現場を回すには限界があるのでしょうね。

    両軍の前線部隊、休養などのローテーションをどのように行っているのか素朴な疑問があります。(情報が出ていないという事は、休養なしに近い使い捨てと推測しています)
    権力層や軍高官は、安全な後方から勇ましい事を言い続けていますが、前線の兵士は過酷でありなりたくないですね。

    両軍ともに、富裕層は子供達を最前線に送らずに、バカンスに出ている報道が出ている事は嘆かわしいですね。

    5
      •  
      • 2023年 7月 13日

      総力戦体制で総動員下にあるウクライナでそういう動きがあるのは酷いなと思うけど、ロシアは何を考えてるんだかこんなになっても予備役の部分招集しかやってないんだから対象じゃない連中がバカンスに行こうが個人の自由で文句言われる筋合いないのでは

      5
    • REM
    • 2023年 7月 12日

    ロシアが攻撃を始めた事とゲラシモフの解任の噂が結びついてるように思う。
    本当はロシアも今の段階で攻撃を始めたく無かったのではないか?

    • TKT
    • 2023年 7月 12日

    単純に考えれば、ロシア軍はNATO各国から供与された西側戦車を使ったウクライナ軍のザポロジェ州での反攻作戦は、だいたい終わったと判断し、バフムト周辺でのウクライナ軍の歩兵を使った攻撃もおおむね阻止できたと判断し、いよいよゼレベツ川東岸地区の完全制圧作戦を始めるのでしょう。

    リマンまで行くかはともかく、とりあえず空挺軍の精鋭を主力に使ってゼレベツ川東岸地区を完全制圧すれば、ゼレベツ川がウクライナ軍の反撃を阻止するためのわかりやすい地形的障害になります。

    厄介者であったプリゴジンの追放とワグネル部隊の編入、あるいは武装解除も完了し、ショイグ国防相と、ゲラシモフ参謀総長も健在のようですし、後顧の憂いみたいなのもなくなって、作戦をやりやすくなったのかもしれません。

    11
      • ミリオタの猫
      • 2023年 7月 12日

      只、セレベツ川沿いのトルスケにロシア軍が辿り着けていないと言う情報が有るので、当面の戦況はあと1週間ほど様子を見ないと分からない様な気がします
      これまでのロシア軍の能力を考えると、幾ら予備部隊を注ぎ込んだからと言ってもトルスケ方面のロシア軍の進撃が急過ぎて怪しい気もしますし
      それと今回のセレベツ川方面へのロシア軍の攻勢ですが、実はプリゴジンの乱の収拾が出来たからと言うよりも前日からリトアニアで開催されているNATO首脳会談に対する政治的なカウンターではないでしょうか?

      16
    • XYZ
    • 2023年 7月 12日

    NATO首脳会談に合わせた攻勢と思われます。
    ロシアも余裕は無いはずですので、この攻勢は賭けに近いのではないでしょうか?

    見方を変えると塹壕や奥に引っ込んでいるロシア軍が自ら出て来てくれる訳ですから、殲滅するチャンスでもあります。
    ウクライナ軍には増援が来るまで耐えて反撃して欲しいものです。

    10
      •  
      • 2023年 7月 13日

      そういう政治や記念日の日程がどうのって予想は当たった試しがない
      ルハンスクの攻勢準備は前々から判明していたし賭けに出たという印象はない

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