ポーランドの運送業者によるウクライナ国境の封鎖は47日目に突入、封鎖が解除されていたドロフスク(ヤゴディン検問所)での抗議活動が再開され、ウクライナメディアは「5,000台近いトラックがウクライナに入国するため列を作っている」と報じている。
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ポーランド人の抗議活動が解消する目処は立っておらず、当局に申請した抗議活動の期間が切れるのは来年の2月以降
EUはウクライナ支援の一環として「道路による貨物輸送の自由化協定」を昨年6月に締結、これによりウクライナの運送業者は「EU域内でのトラック輸送」に許可を取得する必要がなくなり、国境を越える取り扱い貨物量も2021年と比較して53%も増加、この結果を受けてEUとウクライナは今年3月に「自由化協定の1年延長」で合意したのだが、ポーランドの運送業者は「自由化協定」の影響で自分達のビジネスが不利益を被ったと主張。
ポーランドの運送業者は「自由化協定の取り消し」と「ウクライナ運送業者に対する許可取得の復活」をEUに訴えるため、ポーランドとウクライナの国境にあるヤゴディン検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問所、クラコヴェッツ検問所を11月3日から封鎖(検問所を通過できるトラックの数を1時間あたり1台か2台に制限)、抗議活動に合流したポーランドの農民達も「ウクライナ産穀物の流入で被った被害を軽減させる補助金の増額」などを求めてシェギーニ検問所を封鎖。
これにより7.5トン以上のトラックを通過させる全検問所が封鎖された格好だが、ポーランド南部のヴォイチェフ・サワ市長は12月11日「ドロフスク(ヤゴディン検問所)の抗議者に解散を命令した」と発表、ウクライナ国家国境庁も「11日午後2時にドロフスクでの抗議活動が終了してヤゴディン検問所の封鎖が解除された」と明かしたが、ルブリン地方裁判所は15日「抗議者らはドロフスクで抗議を続けることができる」と判決を下したため、抗議活動を主導するパヴェル・オジガラ氏は「18日午後2時からドロフスクでの抗議を再開する」と表明。
ウクライナ国家国境庁は20日「朝の時点でポーランドからウクライナに向かうトラック3,600台(ヤゴディン1,000台、ラーヴァ・ルーシカ600台、クラコヴェッツ500台、シェギーニ1,500台)が列を作っている。スロバキアのウジホロド検問所でも700台待ち、ハンガリーのチョープ検問所でも250台待ち、ハンガリーのポルブノエ検問所でも250台待ちが発生している」と明かし、ウクライナメディアは「5,000台近いトラックがウクライナに入国するため列を作っている」と報じている。
この国境封鎖で被ったウクライナの被害総額については「11月24日時点で4億ユーロ以上」と見積もられていたが、ウクライナ国立銀行は20日「12月17日時点での被害額は15億ドル(11月8.6億ドル/12月6.2億ドル)に達する」と明かし、ウクライナ税関の說明によると2023年の輸出額に占める道路輸送の割合は約35%だが輸入額に占める割合は約70%と高く、鉄道輸送に振り替えているものの部分的にしかカバー出来ていないらしい。
因みにポーランド人の抗議活動が解消する目処は立っておらず、当局に申請した抗議活動の期間が切れるのは来年の2月以降で、要求が満たされなければ「抗議活動の期間延長」を何度でも申請する可能性もある。
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ウクライナがこのまま補給不足で苦しむことになり敗戦や不利な講和に追い込まれたら
米国政治やECの責任ではなくポーランドのこの行動のせいにされそう。
戦争中の隣国をあまり追い詰めるのは後々に禍根を残すかと思うのだが
ポーランド側はそこまで考えているのだろうか?
ポーランド政府のコントロールになく、むしろ沈静化させたいみたいですし、ハイブリッド戦争の一部だと思います
実際確実に継戦能力に影響は与えてる経済封鎖ですね。
とはいえ市民からの要求からの行動で、むしろ親EU政権にもどうすることもできないというのがこの抗議活動の最大の問題化と。民主主義を標榜する西側がそれを責めるわけにはいかないのです。もし現政権が司法に介入したら、EUが前政権に苦言していた司法の軽視を強化してしまうので。
親EUに舵を切ってる以上、ウクライナも戦後もそれを責めていてはEUに入ることができません。泣き寝入りするか180度転換しかないでしょうね。
単純にEU加盟国であるポーランドを優先して、ウクライナのための「道路による貨物輸送の自由化協定」を廃止するか、内容を修正するかすればば丸く収まる話ではあるんですよね。
支援することが自体に不満があるんじゃなくて、支援する方法として前述した協定がポーランドの一部労働者にデメリットを発生させている訳ですし、固執し過ぎな気もします。EU自体は支援を継続していくという方針なら、今のようなウクライナ周辺国との関係悪化を放置している方が長期的には問題です。
EU自体が欧州の寄り合い所、悪く言えば寄せ集め組織である以上、既に加盟国であるポーランドの顔を立てた方が無難でしょうし、そもそも示しがつかないでしょう。理念や主義は大事ですが、加盟国と非加盟国とで優先順位をつけるのが現実的な落とし所だとは思います。
考えてみると、最近、ウクライナが外交的に折れた事例って何かありますかねえ。
物乞いですら高圧的な感じがするし。
この戦争だって、倍プッシュしていた結果のようなものですし。
>米国政治やECの責任ではなくポーランドのこの行動のせいにされそう。
海の向こうの外野のノイズなんかより、国内の有権者の方が超超超重要ですし、万が一、外野が変なこと言ってきたら、
国内の軍事支援拠点について、ポーランド式の年末大掃除を行うので、ちょっと国外へ出ていってもらえませんかね。。。とかチラつかせるだけで、なんも言えなくなるでしょう。
>戦争中の隣国をあまり追い詰めるのは後々に禍根を残すかと思うのだが
禍根を言い出せば、ドイツがポーランド国内に作ったアウシュヴィッツなどは比較にならず、永遠に戦争を続けるしかなくなります。無論、禍根が残るのは事実でしょうが、猛毒の沼地に一滴のヒ素を継ぎ足す程度のものかと。
>米国政治やECの責任ではなくポーランドのこの行動のせいにされそう。
もしそうなれば、今度はポーランドとドイツなどの関係が悪化し、EU内部、NATO内部に深刻な亀裂が入ることに。
>ポーランド側はそこまで考えているのだろうか?
ポーランドはかつて、プロイセン・オーストリア・ロシアに三分割され、後にナチスドイツとソ連に分割占領され、その後は長くソ連衛星国の一つという苦難の歴史でした。つまり、東ドイツと同等かそれ以上の数の、経済的には貧しくとも“親ロシア派”の人口も抱えています。そして、極右的主張は民族や国家規模の全体主義ですが、分離独立主義にも繋がる側面を持ちます。
その国がウクライナ敗北の責任を押し付けられる形になれば、ロシア飛び地カリーニングラードへ繋がるスバウキ回廊で、“ロシアへの併合”を求める民衆運動などが始まっても驚きません。EUに懐疑的で過激な者達は、「そこまで考えている」と思います。(ソ連憎し勢は親EU、ドイツ憎し勢は反EU、ポーランドも分裂状態に)
欧州とは、国境を跨いだ民族分布問題が日本と比較にならないほど複雑かつ深刻ですから。バルカン半島に限らず、“火薬庫”同然と見るべきかと。特に景気後退中はその傾向が強まります。
ウクライナの西側隣国は、そもそも領土や少数民族、歴史問題で禍根だらけなんですよね。
ポーランド=ウクライナ、ハンガリー=ウクライナ、ルーマニア=ウクライナ、スロバキア=ウクライナも少数民族問題がそれぞれあります。
むしろ逆で、彼ら(ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキア)が、ここまでよく支援してきた方が意外なんですよね(打算も善意もあるのでしょうが)。
ウクライナが大国のように当然と考える・甘えるというのが、衰弱している国なのに不思議な事をやっているわけです。
なんでポーランド一国の責任にされなきゃならんのか。それならEU加盟国で別ルートが提供出来る反ウクライナのハンガリーやスロバキアの方を真っ先に批判するのが筋だろう。
皆様 解説ありがとうございます。
結果的にはロシアどころか援助から手を引き始めた欧米諸国ですらなく、ポーランドの陸運・農業労働者達の手によってウクライナは敗北を迎えそうですな…
>ウクライナへの入国を待つトラックは5,000台以上
ポーランド側の運転手もダメージ受けてるように見えますけど。
逆に言えば、ダメージを受けてでも反対するメリットや必要性があると判断してるんでしょうね。欧米ではストライキに代表されるように、労働者の主張を示すために行動するのは一般的ですし。
仰る通りです。
ロックダウンな訳ですから。
環境保護団体が、道端に寝そべってるよりも、抗議活動として歴史は長いです。
この抗議行動の損害は当然ポーランドの運送業者にもあるかと。自分達に損害がない程度の軽い抗議ならとうの昔にやっているでしょうし。むしろ、覚悟の上での抗議であるからこそ根が深い。
要点は、ウクライナ入国待ちトラックのうち、何割くらいが“EU側へ行ったが、戻って来れないウクライナ運転手”であるか。そこでトラックが止まっていれば、次にウクライナから輸出品を載せるトラックも不足していき循環は更に悪くなる。
当然にして最大の問題は、東と南のロシアや北のベラルーシに代わりに輸出するわけにもいかないことですね。西側しか“貿易窓口”はなかったというのに、ポーランドを提訴したりした傲慢外交の失敗がこうして跳ね返ってきました。
熱心に支援してくれていた国にウクライナが喧嘩を売りまくったのがつくづく謎ですね
元から仲が良くないとはいえ
ウクライナの対策としてはひたすらポーランドに謝り倒す(協定の改定も含めて)くらいでしょうか
ポーランド・ウクライナ二国間の輸送におけるポーランド勢のシェアは戦前の四割弱から一割以下にまで落ちて今なお下落中なので大半のポーランド輸送業者には関係のないことかと。
ウクライナ発、もしくはポーランド国内で事業展開したウクライナ勢がメインだと思います。
具体的な数字、情報ありがとうございます。
背景をより細かく理解できました、ダンピングに近いのでしょうね。
モルドバ経由なら抗議デモ隊がいないから簡単に通過できそうだが。かなり遠回りになる上にルーマニア・モルドバ間で抗議デモをやられたらどうしようもない。モルドバ自体も非常に貧しい国なので大型車両が通れる道は限られるだろう。
モルドバは既に農産物問題においてウクライナ企業によるモルドバ産への偽装(と規制回避)に使われた結果、巻き込み規制を受けて被害が出ています。
ただでさえ国家が傾いている中で、経済的な打撃を他の分野にまで波及させることを許すかは怪しいところかなと。
ウクライナ政府の外交能力が低い以外に、言う事が何もないですね。
戦時中、本土決戦中な訳ですから全てに優先すべきで、ウクライナ国内を押さえ込めないのであれば、そもそも継戦など無理な訳です(政治基盤が弱すぎる・政治指導力が低すぎるわけです)。
トラック・貨車・航空機など、一般的に空荷を嫌います。
西側国境(ポーランドなど)→ウクライナに支援物資を運ぶという事は、ウクライナ→西側国境に何か荷物を入れるインセンティブが必ず働きます。
運送業の常識レベルの話ですから、ポーランドなど東欧諸国の言い分も、充分に理解できます。
ウクライナって支離滅裂だなあ
戦争中に隣国と関係悪化とか
国内のウクライナ人見ても、トランプ信者だったりイスラエル支持だったり
トランプは親ロシア派でウクライナなんて屁とも思ってないだろうし、イスラエルは軍事支援は断ってきたんじゃない?
支援受けるサイドとしても競合なのに
ロシアがNATOに攻め込む意思が無いと分かった以上、ポーランド人にとっての潜在的脅威がロシアからウクライナへ移ったんじゃ無いかと。
このまま軍事援助を続けて大量の兵器を抱えたまま停戦した場合、元々ポーランドと不仲なウクライナが上手く付き合えるワケが有りません。武器の横流しや武力を背景にした高圧的な外交交渉など絶対によくない事が起こります。
昨日の友は今日の敵、お互いに利用していたにすぎないってコトなんじゃないでしょうか…。
韓国や中国の過激な反日運動や、日本の過激な嫌韓などもそうですが、過激な民族主義が国際外交的にすぐに破綻するのは当然と言えます。
日本も、北朝鮮という共通の仮想敵国がある状態でありながら、韓国大統領が過激に反日的な態度である時期には、韓国に対する経済的な制裁、輸出の規制を行っていたわけです。
共産主義の独裁国家である北朝鮮の脅威よりも、同じアメリカの同盟国家である韓国の反日的政策の方が、日本の国益に反すると当時の日本政府が判断しためです。
また韓国大統領が変るとそういう政策もまたすぐに変わるわけで、まさにそのへんは外交次第ということです。日本は自民党安倍派の勢力も弱まりそうで、そのへんもこれからいろいろと影響するかもしれません。
しれっと韓国持ち出して「日本が経済制裁した、輸出規制した」ですか。
日本は経済制裁も輸出規制もしていません、韓国が戦略物資を違法的に取り扱ったため管理を強化しただけです。
ここはウクライナとポーランドが話題のスレですよね、関係ない話持ち出して「日本が悪いことをした」と話を持って行きたいという貴方の魂胆見え見えですよ。
こんなことして恥ずかしくないんですかね。
あまりに不自然かつ大規模過ぎる上に、英米を含む関係諸国が一切なんの仲介の動きも見せないのが不気味でして。
ウクライナを支援してる国からすれば,支援の内容をスポイルされてしまうのですからなんらかのアクションがあって然るべきです。
が、ほぼ全周辺国家が「見殺し」のアクションを取っていることから,もはやこれは「ウクライナを負けさせて終わらせてしまえ」という方向で西側が結託していると見るべきかと思いますね。
このままウクライナの戦争を支援して、さらに復興とEU加盟まで面倒を見るとなると費用は100兆円を大きく超えるのは確実です。
だったら、ウクライナ政府にはこのまま瓦解してもらって、「支援すると約束はしていたが、相手が消滅してしまったからあの話はナシで!」と踏み倒したほうがコスパが良いわけです。
アメリカはこの手でアフガン復興の約束を全部カルザイ政権ごと水に流してますから、またか、という感じではありますね。
イスラエルの方も貿易方面にも影響広がってますね
イエメンのフーシ派による紅海締め出しの次はマレーシアが国際法違反の制裁としてイスラエル関連船舶の入港禁止
これ自体はイスラエルは民間人殺し過ぎなので制裁歓迎なのですが、利益得るのは誰かと考えると一路一帯を推進する中国なのが…
西側がちゃんとイスラエルに制裁科していればこんな事態にならなかったので身から出た錆ではあるのですが
民意の力が終戦に追い込む
ベトナムと同じになるか?
これは、ポーランド政府のウクライナ支援の方法の手落ちですね。 ウクライナのトラック業者に仕事の一部を譲ることになる自国内業者に対しても、何らかの補助金を出さないと成り立たないですね。 それだけのことでしょう!?