ウクライナ戦況

アウディーイウカ市街戦、市内北東部に侵入したロシア軍が足場を拡大

タブリア作戦軍のリホワ報道官は8日「戦闘はアウディーイウカ北部の民間エリアだけでなく市内でも発生している」「敵はコークス工場と採石場の間に侵入してウクライナ軍の分断を狙っている」と述べ、DEEP STATEも「ロシア軍が市内北東部の支配地域を広げた」と報告した。

参考:В ОСУВ “Таврія” підтвердили, що в Авдіївці бойові зіткнення відбуваються в межах міської забудови
参考:Ворог продовжує штурмові дії у приватній забудові Авдіївки

線路を越えて西に向かうロシア軍は前進出来ていない

ウクライナ人が運営するDEEP STATEは7日、危機的な状況のアウディーイウカ方面について「敵は市内北東の住宅エリアで攻撃を続けている」「敵は6日に鉄道橋を渡った」「今日は住宅エリアを通り抜けて車輌倉庫と街の入口にあるモニュメントに向かおうとしている」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

北東部から北西部に抜けのに必ずしも鉄道橋を渡る必要はないため「鉄道橋を渡った」という表現は「北東部から線路を北西部に入った」と、車輌倉庫とは「運送会社」のことを指している可能性が高く、ロシア軍は鉄道橋付近の住宅エリアを抜けて「運送会社」や「街の入口にあるモニュメント」に向かい、アウディーイウカに繋がる唯一の鋪装道路=O-0542へのアクセス遮断を狙っているのだろう。

タブリア作戦軍のリホワ報道官も8日「ジャーナリストが問い合わせてくる内容が事実であると確認できる。戦闘はアウディーイウカ北部の民間エリア(ダーチャ)だけでなく市内でも発生している。敵の意図は明確でコークス工場と採石場(ピソチヌイ・カールヤー湖)の間に侵入してウクライナ軍を分断しようとしている」と述べ、ウクライナ軍はアウディーイウカ市内の北東部にロシア軍が侵入したと認めた。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEも9日「アウディーイウカ北東部の敵が攻撃を続けている」と報告、ロシア軍はネザレジノスティ通り、サプロノバ通り、レジ・ウクライナキー通りで300mほど市内中心部に向けて前進しているが、線路を越えて西に向かうロシア軍は前進出来ていない。

因みにロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「ロシア軍が市内の物流ルートであるインダストリアル・プロスペクト通りに到達するとウクライナ軍の状況は急速に悪化するだろう」と指摘している。

関連記事:アウディーイウカの戦い、兵站ルート遮断まであと1kmの位置にロシア軍が前進
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • 絶対防御将軍
    • 2024年 2月 09日

    ロシアは完全に攻勢限界に達したね。峠は越えた。更にシルスキーが大規模な予備戦力を投入すると報じられているので余裕のないロシアはもうお終いです。多大なる犠牲を払いながら結局アウディーイウカでは何も得ることは出来ませんでしたあ!

    8
      • Whiskey Dick
      • 2024年 2月 09日

      シルスキーがザルジニーより優秀なら良いんだけどなあ。とりあえずクリンキーから撤退し、まだ安全な西部から兵士を引き抜いてアウディーイウカに増援することを期待したい。

      5
      • 名無し
      • 2024年 2月 09日

      政治士官殿!おっしゃるとおりです!
      同志の力強く高らかな宣言で、ブルジョワジー共を打ち倒す革命に向けて兵が奮い立ちますぞ!

      53
      •  
      • 2024年 2月 09日

      今撤退したらキルレ有利のまま逃げ切れたのに弾薬不足の問題も解決しないまま新たに肉弾だけキルゾーンに投入とか愚策すぎるだろ。

      8
        •  
        • 2024年 2月 09日

        包囲下で戦車相手に機関砲で立ち向かわなきゃならないような状態でキルレ有利なんてあるわけないじゃん

        29
    • シロクマ
    • 2024年 2月 09日

    アウディーウカ陥落は時間の問題でしょうが、今のところはまだロシア軍の戦線突破というよりは、アウディーウカ守備隊(第110独立機械化旅団)が撤退する動きに入ったような雰囲気ですね
    線路の西側への進出はキッチリ防いでいるあたり、完全にロシア軍に押し負けるほどの戦力差はまだついていないようですから、撤退ルートは確保しつつ線路東側の前線を遅滞戦術的に少しずつ下げている感じでしょうか
    街の南部にはまだ多くの部隊が残っているでしょうから、街北部の戦線を何とかここで食い止めて、一人でも多くの将兵を脱出させることができればよいのですが

    14
      • Easy
      • 2024年 2月 09日

      しかし、ここのタイミングで、部隊を撤退させずに最後の1人までミンチにすることで有名なシルスキー将軍が総指揮官に着任です。
      なんかアウディーウカ守備隊に巨大な死亡フラグが立ったような気がしなくもなく。
      ゼレンスキーが来ると街が陥落するジンクスと合わせて、ウクライナ側には縁起の悪い話が続きますね。

      54
      •  
      • 2024年 2月 09日

      いや突破されたからこんな市街奥深くまで急に侵入されてるんだけど
      ヒステリックな予備戦力の投入でなんとかモニュメントあたりは確保出来てるけどジリ貧っす

      45
    • Easy
    • 2024年 2月 09日

    ロシア式のダーチャにはたいてい食料の冬季保存用の地下室があり。
    寒さを凌げる上にドローンから身を隠す格好の睡眠休息拠点になるので、ダーチャ地域を確保するとそこで兵士が体力回復出来るようになるそうで。
    運がいいとさらにそこには砂糖漬けのフルーツ類や茶葉やウォッカもふんだんに蓄積されているので、ウクライナ軍が籠城継戦出来る理由の一つでもあり。逆に奪われてここに拠点を作られるとなかなか追い出せなくなる理由の一つでもあるそうな。

    40
    • 名無し
    • 2024年 2月 09日

    希望的観測のオンパレード、、、
    ウクライナを応援するのと事実から目を背けるのは別でしょう。

    41
    • 黒丸
    • 2024年 2月 09日

    真面目に作られたダーチャの地下室結構すごいですね。
    生野菜や瓶詰めを通年保管するため、深さは地下室天井部で地表から3m程まで掘って
    コンクリで囲った上に防水処理をしてさらに断熱をして、換気口を取り付け貯蔵品の腐敗や凍結防止を図る。
    しかもこのような食品保存用の地下室が都市部のアパートにも設けられている。

    こういうところを利用して防御されたら、簡単には奪えないし少数の兵力で守備できる。
    ロシアの陣地をウクライナが攻めあぐねたのも、ウクライナがなかなか撤退しないのもちょっと理解できました。

    32
      • Easy
      • 2024年 2月 09日

      俗に世界が滅びてもロシア人は生き残ると言われる由縁ですね。
      ダーチャの地下室自体は小さくて横につながってはおらず、平地に作られるので頭を出しても視界が狭く、戦術的戦闘拠点としては今ひとつなのですが。地獄の東部戦線の冬将軍から身を守るための兵士の休息場所としては格好でして、地上部の工場や崩壊したマンション跡よりもはるかに快適なんですね。
      本文地図中の、右上のダーチャ地域がロシア側の現在の拠点となっているだろうことが見て取れます。逆にウクライナ側が使っている中央上のダーチャ地域は最前線になってしまい、休息拠点としてはもう使えないだろうことも見て取れます。
      こうなってくると、暖かい地下室で睡眠をしっかりとって元気いっぱいのロシア軍兵士と、吹きさらしの廃墟の陰で震えながら夜を過ごした疲れ切ったウクライナ兵士という対比になってしまうので、兵士たちの交戦能力に大きな差がついてしまうかもしれません。

      32
      • paxai
      • 2024年 2月 09日

      地下3mぐらいだと152mmでは威力不足でFAB500は過剰過ぎる
      2S7ピオンや2S4チュリパンといった大口径砲部隊を投入してたがそれがちょうどいい威力なんだろうか。

      6
        •  
        • 2024年 2月 09日

        コンデンサートルとオカーも墓場から掘り返されて使われたりしないかな…

        1
    • らっく
    • 2024年 2月 09日

    撤退すると言っても、アウジーウカ最南部までウクライナの砲火力は届くんか?
    聞いた話では部隊はその移動中がもっとも脆弱であって、拠点に砲爆撃を受けている間はそこから部隊を移動させられない。だからこそソ連軍は前線を攻撃すると同時に後方の拠点も砲爆撃することで予備部隊の前線への移動を防いでいたのだ、
    ということでしたが、南部のロシア軍に猛砲撃を浴びせて一時的にでも釘付けにしなければ逆に砲撃で足止めされてその場で歩兵と戦車に殲滅されるか、砲撃下の撤退で大きな損害を出すのではないでしょうか?

    14
    • もへもへ
    • 2024年 2月 09日

    一時的にウクライナが苦しくなっています。
    こんなときこそ日本は義勇兵の自由な出国を認めるべきでしょう。
    国内にはウクライナ絶対防衛、現代のナチスであるロシア打倒を叫ぶ熱意ある者が溢れております。

    政府が認めればたちどころに数個師団に匹敵する人数が馳せ参じることでしょう。
    身体的に義勇兵になれないものはウクライナ国債を借金してでも購入し、正義の戦争を支えるべきです!!
    また下士官の不足にも対応し、諸葛孔明に匹敵する戦術家が多数おりますので、そのもの達に率いられた援宇抗露義勇軍の圧倒的戦果にご期待ください。

    21
      • らっく
      • 2024年 2月 09日

      この戦争のおかげで、大戦中の本邦のジャーナリストの人々もまた、狂信していたわけでも無知なわけでも、体制に迎合してわけですらなく、それが現状では正しいことなんだと事実との齟齬を飲み込んで勇ましいことを書いていたんだなぁということをわからされました。

      33
        • たむごん
        • 2024年 2月 10日

        マスメディアの報道方針に従わないと、そのジャーナリストに、次の仕事は来ないですからね。

        彼らは干されるのを怖がっただけで、特別視することなく、生暖かく見守っています。

        人間ですから、自分の保身・生活は大事ですからね。

        なんだか、政治家や官僚と変わらないなと…。

        2
      • 名無し
      • 2024年 2月 09日

      全員が全員軍師を希望して歩兵は誰もやらないってオチ

      48
        • Whiskey Dick
        • 2024年 2月 09日

        文谷氏によると自衛隊では後方部門(兵站、整備士など)が圧倒的に足りないとのこと。もし日本に徴兵制度があればトラックや重機の運転手をやらされるのが大半ではないかと。
        私でも捕虜収容所の看守ぐらいならできます。前科持ちでも務まる簡単なお仕事(大嘘)みたいです。

        4
          • Easy
          • 2024年 2月 09日

          そして輜重兵は兵隊扱いされずに護衛も防護も無しに敵ドローンの活動範囲を走らされて次々にやられてしまうパターンですね。どうせ日本ですから、同じことを何度でもやりますよ。
          ♪この道はーいつか来たみーちー

          4
        • ヒュー
        • 2024年 2月 09日

        まあ今の日本もみんな空調の効いたオフィスでデスクワークを志望して
        汗水垂らして働く現業や営業はヤダヤダヤダですからね。
        現業でも実入りのいいものは東南アジア人なんかが来てくれますが。

        5
    • たむごん
    • 2024年 2月 09日

    アウディーイウカ10年近い、最前線の要塞でしたが、ロシア軍が徐々に浸透していってますね。
    管理人様、分かりやすい図表ありがとうございます。

    アウディーイウカ防衛線が浸食された要因について、彼我の戦力差・補給・予備部隊の消耗など、様々な観点から分析されると思います。
    ロシア軍の戦車・歩兵突撃など、Youtubeなどで撃破された事が宣伝されていましたが、要塞攻略戦におけるステップバイステップだったのかもしれませんね。

    14
    •  
    • 2024年 2月 09日

    決定打となったのはビソチヌイカールヤー湖北の突破ですね
    この前面に展開していた部隊は湖を背にして南東方向に押しやられており、湖西側を突破するロシア軍部隊の正面には一時的に敵部隊がいなくなりました
    既に市内の部隊の予備は南のツァルスカオホタ周辺に投入されていたために突破口の封鎖に時間がかかり、市外からの予備がモニュメント周辺をなんとか確保している状態でしょうね

    8
    • 名無し
    • 2024年 2月 09日

    このサイトでは久しく見てなかった香ばしい方々が来てますね

    10
    • ななしびと
    • 2024年 2月 09日

    北東部の進出を防げない時点でもう終わったね。
    後は包囲して残ったウクライナ軍を締め上げていくだけの掃討戦。

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