アルメニア系住民を乗せた最後のバスが到着したため「ナゴルノ・カラバフ地域からの組織的な脱出」は終わったものの、オスカニャン元外相は「まだ祖国を救える可能性が残っており、我々はアルツァフを失うわけにはいかない」とパシニャン首相に訴えた。
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参考:Չենք կարող մենք Արցախ կորցնենք, սա մեր հողն է, մեր պատմական հողն է. սթափվի΄ր. Օսկանյանի նոր առաջարկը՝ Փաշինյանին
この手の理屈は「永遠に火種」となるため本当にため息しか出てこない
アルメニアメディアは1日「最後のバスがナゴルノ・カラバフ地域から到着した」と、アルメニア政府も「1日午後8時時点で10万514人(30日発表から77人増)の住民がアルメニアに入国した」と明かし、同地域からの「組織的な脱出」が終わったと示唆、住民が逃げ出したステパナケルトやアスケランの様子もメディアやSNSに登場しているため、もうアルツァフ共和国は空っぽになったと表現しても差し支えない。
latest footage from Stepanakert’s central square pic.twitter.com/x8CKf366HJ
— Hov Nazaretyan (@HovhanNaz) October 1, 2023
Azerbaijan Forces in Asgaran. pic.twitter.com/XSlfkP9V5q
— Aldin 🇧🇦 (@aldin_aba) September 30, 2023
Stepanakert / Khankendi Airport. pic.twitter.com/bA8aUvC6Jc
— Aldin 🇧🇦 (@aldin_aba) October 1, 2023
ただアルツァフ共和国のシャフラマニャン大統領を始めとする政府関係者や警察関係者は現在も現地に留まっており、戦闘で行方不明になった兵士や逃げ遅れた住民の捜査を続けているものの、アゼルバイジャン当局は国境の検問でアルツァフ共和国の閣僚経験者や軍関係者を逮捕しているため、現地に残る関係者がアルメニアに脱出できるのか、それとも拘束されバクーに送られるのかはわかっていない。
因みにアルメニアのオスカニャン元外相(1998年~2008年)は1日「国際社会がアルツァフの状況に声を上げないのはアルメニア当局の誤った政策が原因で、パシニャン首相は外交的・戦略的な助言を聞き入れず、間違ったタイミングと方向性でナゴルノ・カラバフ問題の交渉を開始してしまった。そのため我々は全ての友人を失い誰もアルメニアの味方をしなくなった。パシニャン首相が助言を聞き入れないのは身の安全を危惧しているためで、野党は彼に一生涯の安全を保証すべきだ」と訴えた。
さらにオスカニャン元外相は「まだ祖国を救える可能性は残っているが、パシニャン首相は話をするのを嫌がっているため私自身は何も出来ない。この重要な局面で(彼が)正気を取り戻し、周囲の意見に耳を傾け、現状を打開する変化を決断できるようにしてほしい。我々はアルツァフを失うわけにはいかない。あの土地は歴史的にも我々のもので、アゼルバイジャンはアルツァフに対して如何なる野心も抱くことは許されない」と述べ注目を集めている。
この問題の加害者と被害者は歴史をどこで切り取るかで入れ替わるため「ナゴルノ・カラバフ地域が歴史的に誰のものか」は不明だが、この手の理屈は「永遠の火種」となるため本当にため息しか出てこない。
追記:総選挙が迫るポーランドでは「ウクライナに対する政治的攻撃」が鋭さを増しており、選挙後に傷ついた両国関係が元に戻るのか非常に心配だ。
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※アイキャッチ画像の出典:The Prime Minister of the Republic of Armenia
管理人様の仰る通りですね。
アルメニア、元外相レベルのエリート層がこの程度の主張ならば(現状認識できない)、内紛が続いてガタガタになるかもしれません。
個人的な考えなのですが。
アゼルバイジャンが、停戦協定の未達に痺れを切らして、再度戦争になれば、アルメニア南部(ザンゲズル回廊よりも広い範囲)を割譲(もしくは駐留)させる事もあり得そうです。
>>>この問題の加害者と被害者は歴史をどこで切り取るかで入れ替わるため「ナゴルノ・カラバフ地域が歴史的に誰のものか」は不明だが、この手の理屈は「永遠に火種」となるため本当にため息しか出てこない。
明らかに被害者だったアジアやアフリカの欧州植民地は武力による独立を許されましたが、第二次世界大戦以降の国境の変更は両者の平和的な同意がなければ基本的に違法として扱われてますね
関係各国の同意の上で
アルメニアはアルメニア・ソビエト社会主義共和国が独立
アゼルバイジャンはアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国が独立
ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国だったので独立時にそのままアゼルバイジャンの領土となりアルメニアの侵略として扱われてますね
クリミアは平和的にロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国に委譲されたので独立後もウクライナの領土となり奪おうとするのは本来ロシアのものであっても侵略として扱われる
ソ連時代は指導者の都合で勝手な領土委譲や強制移住があったので理不尽ではありますが仕方ない
ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国だった地域をアルメニア人が不法占拠していたので武力で奪い返すのを許されましたが
アルメニア・ソビエト社会主義共和国だった地域までアゼルバイジャンが攻め込むと侵略になりCSTOの対象となりますね
竹島奪還するのと済州島などに駐留したり割譲を迫るのでは例え武力に頼ったとしても全然違うでしょう
領土保全は、外交的に勝ちながら軍事的に勝つかしかない。
バシニャンも元は強硬派とのことだが、外交的に勝てず、味方もいない状況で、隣国との軍事力の差と現実を優先せざるを得なくなった。
アルメニアの政治家がすべきは、安全な場所から自分の理想を語って内紛嗾けることじゃなくて、自国民や同胞の権利と安全、財産を守ることだろ。
そういう意味ではバシニャンはまともな政治家だよ。
仰る通りと思います。
外交はリアリズムを優先して、理想論は捨てなければなりません。
パシニャンがまともな政治家なら、アルメニア系住人の大脱出を「アゼルとロシア軍の責任によってもたらされた民族浄化である」などと言い出して
(国内からナゴルノ=カラバフを見捨てた事への批判が止まないことへの弁明として捻り出したと思われる)
余計な火種を作ったりなどしませんけどね
西も東も戦線はウクライナだけで限界なのに、一体どこの国に助けを求められようか。
地域大国トルコ、イランあたりだろうか? 軍事力を使用しないで解決できる問題ではないだろうし、この2カ国が自分たちの庭のすぐそばで戦端を開くとも思えない。一度大敗した国に支援する理由もない。
負けは負け、過去の政策が間違っていたからパシニャン首相は口を閉ざしているだけのように思える。
・・・日本も明日は我が身と思って軍備拡張、弾薬備蓄、兵力確保をがんばろう。
アルメニアの強硬派が暴走すればそれこそ亡国だと思いますが・・・
歴史が絡む問題は根が深く一筋縄ではいかないですね
近代を境目に設定したところで、その前から争ってるのがザラにありますからね。数年前に物議を醸したカタルーニャの独立運動は、スペイン継承戦争が発端だとされていますが、登場人物がルイ14世とかプリンツ・オイゲンとかの時代なのにどうしろと。
法的にも戦力的にも解決が難しい竹島と北方四島はどうなるのやら。
亡国なら併合後の管理をアゼルバイジャンがするからまだ良い方で、最悪の場合復興支援のない戦後日本とかいう絶望的な状況になりかねませんね。
アゼルバイジャンも徒に領土欲だして地域大国を呼び込むリスクは取らないだろうし、それなら喧嘩ふっかけてくる相手をどうするかというと侵略しないけど都市を焦土にして牙を折る方策に出るんじゃないですかね?
おそらく元外相の考えているそれとは違いますが、確かにタイミングは間違っていましたね。
二国間の国力差も国際社会の態度も明確になっていた頃、パシニャン首相はOSCEミンスク・グループの会合にアルツァフ共和国の代表参加を要求しました。過去に合意した内容の引き伸ばしどころか対話の意思すら無いことを明確にしたのは、首相が行った致命的な外交の中でも上位に挙げられるでしょうし。
現在の有力野党の殆どは与党(やその協力政党)であった時代に国民の信を失った勢力です。市民契約党が旧権力に対する在野連合であり、同じ立ち位置の勢力が生まれる余地はまだ少ないことも考慮すると、(敗戦が重なって苦しい時期でもありますし)いま荒々しい政権交代が起きない点だけを見て強硬論が広い支持を失ったとしていいのかはわかりません。
かつて融和派のテル=ペトロシャン元大統領が提示した実効支配地域についての5つの選択肢(と選ぶべき道)は受け入れられず、その後の国家元首はパシニャン首相も含めた全員が元大統領と何らかの形で袂を分かって(短期的に融和路線を選ぶことはあれど)強硬派として活動した人々です。
戦後の首相は”実効支配地域からのアルメニア人難民の発生はアゼルバイジャンの民族浄化政策のせい”、”紛争に負けたのはロシアの兵器や外交が悪かったのも大きな要因”、”トルコとの外交は過去の虐殺を謝罪するまで前進しない”などと融和路線に転換しましたが、テル=ペトロシャン元大統領の懸念通りになった今でも元大統領や近い思想の政治家への支持がそう増えないところを見ると、アルメニアで長期的な融和路線を行うための材料が敗戦と実効支配地域の喪失だけで足りるのかは怪しい気がします。
パシニャンです。航空万能論GFさん、ぼくの国の問題を取り上げてくださってありがとうございます。
アルメニアの情報、これからも読者さんにいっぱい紹介してほしいです。よろしくおねがいしますにゃん
あそこら辺はイランが近いからペルシャ猫が沢山居るんでしょうか
PSNYN兄貴が猫好きだったらギャップ萌えしますね
ウクライナやジョージアやアルメニアなど全てにいえることは西側に鞍替えしようとするのが遅すぎました
ワルシャワ条約機構やソ連だった国でNATOに加盟できたのは
1999年 ポーランド チェコ ハンガリー
2004年 ルーマニア ブルガリア スロヴァキア スロベニア エストニア ラトビア リトアニア
クリントンやブッシュなどロシアに対する敵意があり世界の警察してた頃のアメリカ
ロシアをプーチンが復活させる前であれば他の東欧諸国などのように加盟できる可能性はあった
余命宣告されるような末期の状況になってから保険を探し出したのがウクライナやジョージア
アルメニアは白骨化してから保険探し出したような状態
ウクライナやジョージアのようにロシアに侵略されてるっていうならまだわかりますがCSTOのロシアが役立たずだから乗り換えたいといわれてもね
入れる保険はありませんと断るしかない
バルト三国はソビエト連邦構成共和国だったからウクライナジョージアアルメニアなどが西側になるならバルト三国と同時しかなかったでしょうね
ウクライナは2014年までは半分ロシアみたいなもんで、ソビエトしぐさは今でもちらほら見られる。欧州に接近自体はやってたから、まあ同情の余地はある。流石に兄弟民族に戦争なんてしかけてこんやろ。という一種の甘えみたいなものは親露反露問わずあった。ガスも滞納してたし、バランス外交をやりつつ欧州に接近てのが当時はそんなにおかしいことではないように思えた。ロシアがイデオロギー国家と化す速度を見誤っていたという感じ。ジョージアは反露感情は一番高かったが西側がイモ引いた。アルメニアに関しては同情の余地なし、ロシアに接してるわけじゃなく、ディアスポラが欧米に多いので西側のケツ舐めは一番やりやすかったはずだが、蝙蝠外交をやらかして今このざま。
パシニャン首相「西陣営に加わるため、
2018年元首相セルジ・サルキシャン氏と対談番組の収録途中退場するまで反ロ演出もしたのに、
第2次ナゴルノ・カラバフ戦争無人機にボコボコされでも意地でもロシアから対空システム導入しなかったのに、
イランからのナゴルノ・カラバフ南部で遊撃隊育成提案も無視したのに、
ウクライナ戦争責任についてプーチン批判と逮捕宣言までもしたのに、
今回の第3次紛争発生した当日まだ米軍と合同演習していたのに、
なぜ誰も助けてくれないの?」
(´・ω・`)
アルツァフを国家承認していないから助ける義理も無いし、支援したところでトルコがヘソを曲げるだけでメリットがない(マジレス)
ほならね元外相さん、次の選挙で勝って首相就任してからアゼルバイジャンに戦争仕掛けて取り戻せばいいんですよ。個人的にオススメしないけど。
こういう物言いって「いつか国力と軍事力がアゼルバイジャンを凌駕したら再度侵攻して取り返してやるぞ!」って言ってる様にしか聞こえないな
まさにため息
武力による現状変更を許さない侍が大勢いますから、今度こそきっとアルメニアの暴行を止めてくれるさぁ!
拙者さすればその候同意致しす所存にございまするが、
アルメニアによる入寇が一度でも御座いますれば、アゼルバイジャンがアルメニア全土を併呑するのみと考えまして候
アルメニアが行く末後ろ盾を得る見込は薄弱と思い候
日本のすぐそばにも同じ考え方の国はありますしね
洋の東西問わず、あたり仲良くしたくなくなるマインドですね
反対意見は各所から噴出していますがパシニャン首相以外にアゼルバイジャンとの和平を押し進めてる人が目に付きませんね。
反発の強さに不信任なりクーデターなり発生しても不思議じゃないと思っていましたがその動きも見えませんしアルツァフ共和国からの住民避難も非常にスムーズと言えましょう(アメリカのアフガン撤退比)。
政権中枢部はアルツァフからの撤退でアゼルバイジャンとの和平が必須と理解して遂行を続けて、それでも不満に思う層に向けて与党内野党の重鎮に反対意見を出して貰いガス抜きさせているようにも見えますね。
与党にも野党にも戦前からの融和及び和平推進派がいますが勢力としては大きくないですからね。
与党内では戦前から非主流派かつ第二次紛争以降に重用された訳でもないので表に出る機会も少ないです。
野党の融和派もやはり非主流派であり、筆頭格のテル=ペトロシャン元大統領などは第二次紛争後もパシニャン首相から批判と各種提案や協力の申し出を拒絶されているので目立つようなことはありません。
そう、党内でも議会内でも世論でも少数派ですよね。
でもそんな政策を推し進めるパシニャン政権が倒れないのは何故か。
そこが気になるのです。
主要野党が国民の信を得られていないこと、新たに勢力が興る余地がまだ少ないこと、軍が野党の扇動は受け流して穏健な抗議のみで済ませクーデター扱いで解任等されようと静かなこと、なんだかんだで負けたばかりなので元気も余裕もない、あたりかと。
民族主義的な強硬論が実際にはどの程度支持されているのかは短期間では判別がつきません。
実効支配地域のアルメニア人が本国入り、あるいは今後の停戦合意次第では状況が変わる可能性もあるとされていますが、現在のアルメニア政界の勢力図なら余程のことをしない限りは与党が(街頭での活動で)崩れるようなことはないと思っています。
現在においてはもう維持不可能だったとしても、戦勝の対価を手放せというのは難しい話なんでしょうね
日本に引き寄せて言えば、満州国を維持しようとした国内世論てこんな感じだったのかなって