インド太平洋関連

韓国軍、MQ-9に相当する国産UCAVの量産化に約1,000億円を投資

韓国軍は開発が完了したMQ-9に相当するUCAV「MUAV」の量産化を決定、9,800億ウォン(1,060億円)を投じて2028年までに独自のUCAVを韓国軍の装備に追加する予定で、MALEタイプのUCAV開発と需要はますます盛り上がっている。

参考:말도 많고 탈도 많았던 MUAV ‘한국형 리퍼’, 양산 절차 돌입

もしMALEタイプのUCAVを「対地攻撃のみ」で評価していなら導入国が急激に増加している状況と辻褄が合わない

韓国の盧武鉉政権は2006年、米国製UCAV「MQ-1」の成功を見て独自にMALE(中高度を長時間飛行できる無人機を指すカテゴリー)タイプの無人航空機(UAV)開発に乗り出し、大韓航空が開発したMUAV(別名KUS-15)を2015年までに戦力化する予定だったのだが、李明博政権が乱立したUAV開発計画を問題視したのとRQ-4導入を推進したため2011年に導入中止を決定。

出典:Chargé d’Affaires Chris Del Corso

しかしRQ-4の調達価格が2倍に高騰したためMUAV計画が復活、2020年に「MUAVの量産化を2021年から開始する」と報じられたが、通信システムの不具合と主翼の特定部分に氷結が発生して飛行性能が低下する不具合が見つかり、テスト中にプロトタイプが墜落する事故も発生したため量産化が遅れていたたものの、2022年に全ての問題修正が完了して量産に入ると報じられていた。

韓国防衛事業庁も18日に開催された防衛事業推進委員会で「MUAV量産事業に9,800億ウォン(1,060億円)を投資する」と決定したため、MUAVは韓国軍の主要装備に追加(量産完了は2028年で何機調達するのかは不明)される見込みだ。

大韓航空が開発したMUAVの基本スペックは全長13.3m、主翼幅25.3m、エンジン出力1200hp、最高高度13,700m、滞空時間24時間以上、国産のEO/IRセンサー、SARレーダー、SATCOM(衛星通信)を搭載しているため見通し通信による運用範囲の制限はなく、左右の主翼下にはハードポイントが設けられているためヘルファイアや天剣(韓国製の対戦車ミサイル)を携行することができ、MUAVは情報・監視・偵察(ISR)向けのUAVではなく、武装可能なUCAV=MQ-9やTB2と同じカテゴリーに属する。

MALEタイプのUCAVを大きさ順で並べるとTB2→MQ-1=ヘロン→Anka→MQ-9→MUAV=Akinciとなり、MUAVは比較的大型の部類に属すると言えるが、この手のUCAVが「戦場で役に立つのか?」については批判的な意見も存在し、その最たる例に挙げられるのは侵攻初期の活躍=対地攻撃が鳴りを潜めているウクライナ軍のTB2だろう。

出典:President.gov.ua / CC BY 4.0

しかしTB2の導入国は30ヶ国(ポーランドやルーマニアなどのNATO加盟国を含む)に増え、より大型のAkinciには潜在的な顧客(導入国は1年で7ヶ国に拡大)が殺到、Ankaもアフリカ諸国やアジアで受注を増やしており、ヘロンやMQ-9の導入国も増加傾向で、もしMALEタイプのUCAVを「対地攻撃のみ」で評価していなら辻褄が合わない。

根本的にUCAVは有人戦闘機の代わりを務める存在ではなく、武器を携行して目標を攻撃する能力はUCAVが実行可能な任務の1つに過ぎず、24時間を超える連続作戦時間、圧倒的な滞空時間を生かしたEO/IRセンサーによる戦場監視、ハードポイントを活かして電子戦装置やSIGINT装置を使用した任務、戦場のネットワーク化に不可欠な戦術通信の中継など有人機よりもUCAVに分がある用途は沢山ある。

出典:GA-ASI ソノブイ・ディスペンサーポッドを搭載したMQ-9B

さらにUCAVの任務はSARレーダーによる機雷監視、ソノブイ・ディスペンサーポッドや軽魚雷による対潜戦への参加などに拡張されることが示唆されており、特に米国、トルコ、中国はUCAV向けのソノブイ・ディスペンサーポッドの装備化を発表済みで、限定的だった対地攻撃能力についても攻撃範囲を拡張するため小型の巡航ミサイルや空中発射型の徘徊型弾薬の開発や統合が進んでいるため、UCAVは「武装可能な無人機」ではなく「圧倒的な滞空時間をもつ多用途性を備えた空中プラットホーム」と定義するのだが妥当だろう。

多くの国がMALEタイプのUCAVに乗り出すのは「サブシステムの拡張」に対する自由度を獲得するという側面もあり、今後も多くの国がUCAVを独自に開発したり、技術移転や共同生産に積極的なトルコと手を組んでUCAVの生産する可能性が高く、海外市場のUCAVに対する需要は消えて無くなることはないはずだ。

出典:BAYKAR 徘徊型弾薬KEMANKEŞ

因みにロシア人は「今でもウクライナ軍がドニエプル川沿いにTB2を飛ばしている」と報告しており、恐らくウクライナ軍は最大75km(推定)先の目標を識別可能なEO/IRセンサーを活用して「左岸のロシア軍監視」にTB2を使用しているのだろう。

関連記事:国産UCAVの開発が完了した韓国、量産を開始して2025年までに実戦投入
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※アイキャッチ画像の出典:KOREANAIR

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コメント

    • のののの
    • 2023年 8月 21日

    まあ戦闘機自前で造ろうって国だからそんなに苦労無く造れるだろうな。
    ただ、対北朝鮮ならTB2クラス以下の損耗に堪えられる機体を沢山配備した方が良いと思う。

    12
    • 58式素人
    • 2023年 8月 21日

    日本が導入したグローバルホークの現在の運用状況はどうなのでしょう。
    シーガーディアンと一緒の運用をしているのでしょうか。
    運用目的は一緒と思うのですが。
    基地は八戸と三沢と別々であるのは承知はしていますが。

    4
      • ブルーピーコック
      • 2023年 8月 21日

      海上自衛隊は4月にシーガーディアンの運用開始。海保は今年中に3機による24時間365日の連続監視体制にする予定。
      グローバルホークは3機目が6月末に来たため24時間365日の連続監視が可能になっています。

      4
        • 58式素人
        • 2023年 8月 21日

        ご教授ありがとうございます。
        多分、空自と海自/海保チームとの二つの組織が重なっているのでしょうね。
        エンジンが一方がジェット、もう片方はターボプロップですから。

      • nachteule
      • 2023年 8月 21日

      シーガーディアンはCO-CO(Company owned Company Operated)方式運用で、運航するのは民間GA社のスタッフで自衛隊や海保は指示するぐらいだし、規模が大きいグロホは偵察航空隊作ったからほぼ自衛隊運用で同じには出来ないと思うが。

        • 58式素人
        • 2023年 8月 21日

        “CO-CO(Company owned Company Operated)”、
        直訳すると”自社所有、自社運用”でしょうか。
        運用と支援込みのリースということでしょうか。サービスを買っているのかな。
        であれば、乱暴に言えば、グロホとは、平時と戦時を分けることでしょうか。
        リースなので、サービスには戦闘行為は含まない、危険場所には近寄らない、みたいな。
        機材の更新する時は楽でしょうが、実際の運用はどんなものでしょう。
        例えば、中共の漁船団には近寄らない、ということでしょうか。
        アレは民兵だしSAMを撃たれる可能性があるから、みたいな。

    • 無能
    • 2023年 8月 21日

    対潜哨戒を長時間滞空して行えるのは日本にとっても魅力よねぇ
    今後はハードポイント付きの無人機導入しないんかな?

    4
    • 2023年 8月 21日

    >RQ-4の調達価格が2倍に高騰したためMUAV計画が復活

    本邦が国産にこだわる理由もこれだよなぁ。
    国産化してないと結局は高く付く。

    11
    • ブルーピーコック
    • 2023年 8月 21日

    軍事兵器はどうしても『攻撃力』に目が行きがちだからな。平時に評価されるとしたら災害時の貢献度ぐらいだし。

      • バーナーキング
      • 2023年 8月 21日

      いやいや紀元前の楚漢戦争の昔から戦の勝敗を分けるのは偵知ですよ。
      分かりやすく軍が動く訳ではない平時なら尚更です。
      現代なら警戒監視偵察哨戒索敵や電子情報収集、そしてそれらの情報共有ですね。
      一応本邦も警戒、監視、偵察等と銘打った運用実証中の無人機プログラムがいくつか(グロホやリーパーとは別に)進行中の様ですので何とかモノにして欲しいところです。

    • ウルフリック
    • 2023年 8月 23日

    衛星通信機能付とあるが普通に考えれば先日打ち上げに成功した人工衛星打ち上げ事業とリンクしているのだろう
    つまり人工衛星の開発・製造・打ち上げ・運用~UCAVの開発・製造・運用までをセットで自前で出来ると言う事になる
    要は軍事システムの独自構築力を持ちつつあるということだな

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