米国関連

中国のPL-15に対抗可能なAIM-260、米海軍が2026年から調達開始

ロシア空軍の長射程空対空ミサイル=R-37Mは「ウクライナ空軍機の運用を制限できる」と実戦で証明、中国もAIM-120の射程を上回るPL-15の実用化に成功し、米国もPL-15に対抗可能なAIM-260の開発を進めていたが、米海軍は2026会計年度予算でAIM-260Aの調達を開始すると判明した。

参考:U.S. Navy Begins AIM-260 JATM Procurement in FY2026 Budget

AIM-260Aを調達するということは「最低でもF/A-18E/Fへの統合が完了している」と強く示唆している

ソ連は1980年代にR-33をベースとした長射程空対空ミサイル=R-37の開発を開始し、ソ連崩壊後の1992年にMiG-31に搭載されたR-37が披露され、エリツィン大統領も1994年「R-37が304km先の空中目標を破壊に成功したこと」を祝福したが、R-37の誘導システムには独立したウクライナ製部品が多数使用されていたため「ロシア製部品のみで構成された誘導システムの開発」に着手、経済状況の停滞で開発は遅延したものの2018年にR-37Mの運用検証テストを完了して実戦配備され、この長射程空対空ミサイルはウクライナとの戦いで実戦を経験している。

出典:Andrei Shmatko/CC BY-SA 4.0

R-37Mは価値の高い空中目標=空中給油機、早期警戒管制機、指揮統制機を遠距離攻撃するためのものだが、英国王立防衛安全保障研究所は「ロシアはR-37M(飛行プロファイルによって射程は150km~398kmの間で変動する)を搭載した戦闘機をクリミアやロシア領の上空に飛ばし、ウクライナにおける8つの作戦地域をカバーしている」「この戦術は非常に効果的でR-37Mに狙われると回避するのが難しい」「MiG-31BMとR-37Mの組み合わせは遠距離から低空を飛行する目標と交戦できる」「実際に低空を飛行していたウクライナ空軍のSu-25(2022年7月)やSu-24(2022年10月)が撃墜されている」と報告。

ウクライナ空軍の戦闘機は高高度を高速飛行するMiG-31MBに対して射程、高度、速度の全てが欠けており、R-27でMiG-31MBに対抗すると命中まで目標をレーダーで照射しなければならず、ウクライナ人パイロットも「R-37Mによって友軍機が撃墜された例は多くないものの、MiG-31MBによるR-37Mの発射はパイロットに任務放棄と回避行動を強制する」と述べており、長射程空対空ミサイルは目標に命中するかどうかに関わらず「敵戦闘機の運用を制限できる」と証明した格好だ。

出典:中国航空工業集団

中国もAIM-120の射程を大きく上回るPL-15(推定射程200km)の実用化に成功し、より大型のPL-17やラムジェット推進を採用したPL-21の開発も確認され、米国もPL-15の脅威が「本物」と認識して2017年頃から対抗策を検討、米空軍は2019年「Lockheed MartinがAIM-120の射程を上回るAIM-260を開発中だ」と明かしたが、このプログラムは極度の秘密主義で進められているため「AIM-260はAIM-120と同寸法」「AIM-120を上回る射程」「AIM-260は空軍と海軍との共同プログラム」「2022年までに初期作戦能力を獲得」ぐらいしか情報がない。

War Zoneは2021年「米空軍はQF-16を使用したAIM-260のテストを2020年に30回以上実施している」「これだけテストしても『AIM-260を搭載した機体』の目撃談や写真が一切出回らないのはAIM-260の外観がAIM-120と似ていて区別がつかないからだろう」「AIM-260はAIM-120の寸法を維持するためPL-15と同じデュアルパルスロケットモーターを採用している可能性が高い」「誘導装置や弾頭など推進部以外の部分を小型することで推進剤の容量も拡張しているはずだ」と指摘していたが、米海軍が2026会計年度予算でAIM-260Aの調達を開始することが判明した。

出典:NAVAIR

米海軍は2025年2月にAIM-260のレンダリング画像を公開、War Zoneの取材に応じた米空軍は「このレンダリング画像は本物だ」「まだ高解像のレンダリング画像は公開できない」と述べ、米海軍は今週発表された2026会計年度予算案の中でAIM-260調達に3億900万ドル(調達数は不明)を要求、この動きとリンクしているかどうかは不明だがAIM-120の調達には5,900万ドル(51発分)しか割り当てられておらず、2025年の調達量と比べると1/3以下だ。

米海軍の航空試験評価飛行隊=VX-31がAIM-260のテストを2024年に行っていたことが確認されているため、AIM-260Aを調達するということは「最低でもF/A-18E/Fへの統合が完了している」と強く示唆しているが、F-35は他の搭載品の統合が信じられないほど遅れているため「AIM-260A統合」も時間がかかるかもしれない。

出典:U.S. Navy photo by Lt. Cmdr. Kory Hughs

因みにNaval Newsも「AIM-260AはAIM-120を上回る射程距離を提供する」「特に最近配備されたAIM-174B=SM-6の空中発射バージョンと組み合わせることで空母航空団の威力も飛躍的に高まる」「AIM-260Aは太平洋艦隊に所属する第1空母航空団と第5空母航空団に配備される可能性が高い」と述べている。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Carson Croom

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コメント

  • コメント (22)

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    • 戦車
    • 2025年 7月 04日

    現在の兵器開発の多くがステルス機に合わせて開発が進んでいるので、やはり更なる大型の機体を開発するか、独立した大型兵器の開発も必須ですよねー。

    1
    • 航空太郎
    • 2025年 7月 04日

    記事の「ロシア空軍の長射程空対空ミサイル=R-37Mは「ウクライナ空軍機の運用を制限できる」と実戦で証明」という部分なんですが、ウクライナ侵攻が3年経過した今も、爆装したウクライナ軍のMig-29が国境を越えたロシア領への攻撃をしていたり、F-16がJDAM-ERやSDBを用いた前線での遠距離CAS任務を行えているという事実を見ると、運用を制限できるはずのロシア空軍が前線で活動していないという事実があるかと思います。なので、長射程空対空ミサイルは使えれば確かに効果的なのでしょうけど、それを使うための前提がいろいろと必要で、それをロシア空軍レベルでは維持できないということなのでしょうね。

    24
    • 伊怜
    • 2025年 7月 04日

    別にウクライナ空軍の活動が不可能なほど圧倒的優勢ってわけでは無いと思うけど、この程度の活動しかできていないのは「制限されている」結果では?
    ウクライナもある程度の損失は覚悟の上で作戦を行なっているので(S-400またはR-37Mによると思われるF-16撃墜もあったし)

    16
      • 拓也
      • 2025年 7月 04日

      誤射やドローン迎撃の際の墜落以外の要因でF-16が撃墜されたケースはあったか?

      8
        • かませ
        • 2025年 7月 05日

        損失確認三機目
        スームィ付近でロシア軍により撃墜

        2
    • そら
    • 2025年 7月 04日

    AIM-260が本当にAIM-120と同寸法なら、F-35のウェポンベイに収まるな
    さすがにこの分野の最適化は急ぐと思いたい
    F-35が間に合わなくても、F-15Jに積めるようになるだけでも、日本近海から台湾位までの抑止力はかなりの物になるし、ここは日本も資金を惜しまず導入して欲しいところ
    AIM-174だけじゃデカ過ぎるし
    日本で同等の物を開発できるのが一番だけど、時間も余裕も無いからなぁ

    21
      •  
      • 2025年 7月 10日

      AAM-4の弾頭をAIM-120クラスまで小型化し、その分ロケットモーター大きくすれば
      PL-15に対抗可能な射程にならん?

    • p-tra
    • 2025年 7月 04日

    現代の航空戦っていうのは空中で敵を撃滅するのはほとんど不可能なんじゃないか?
    戦闘機同士の空中戦というとWW2のようにドッグファイトをして戦闘機がバリバリ
    落ちる消耗戦になる、とイメージしがちだし、現代はミサイルによるBVRでそうなる
    んだと考えられている気がするが…
    実際のウクライナ、インパの空中戦を見ると優秀な空対空ミサイルを持つと敵機をより
    遠ざけることはできるが、単に先に回避を強いるだけで撃墜には至らない。
    撃墜されるのは回避をしそこなったミスでたまにしか起きない、という感じに見える。
    空対空ミサイルの仕事は相手を遠ざけてその空域を確保すること、射程が長いと確保
    できる空間が広いのがメリットになる、ということだろう。
    しかし一発5億する超長射程対空ミサイルで一瞬確保できる空域というのは
    コストに見合う価値があるのかという疑問は感じるわ。

    4
      • のー
      • 2025年 7月 04日

      長射程ミサイルが無ければ、敵は遠慮なく空爆してくることになります。
      撃ちまくれるほどでなくても、時々、牽制に撃つ程度でも敵の行動を制限できますよ。
      それに1回の空爆作戦を中止させることが出来たなら、5億円は全く高くないと思います。

      26
      • SB
      • 2025年 7月 04日

      不可能と言うか、ゲームと違って現実は一回落とされたら二度と出撃ができないので当たらないように逃げるんです

      まさにAAMの役割は相手を遠ざけて空域を確保することなので、AMRAAMみたいな軽量で6発搭載できるAAMは、4発しか積めない従来のAAMに対して実質2倍の戦力になると言われていますね(お互い4発撃ってもAMRAAM側はまだ2発残る計算になるので自由度が大幅に増える)

      まあ対航空作戦するのはだいたい効果値目標を爆撃しに来る時(しに行く時)なので、少々高くても作戦が成功すれば元は取れます

      16
    • 名無し
    • 2025年 7月 04日

    やっぱりアナログ時代の戦闘機の方がインテグレーション簡単なんやなって

      • かず
      • 2025年 7月 04日

      SM-6ベースなんだっけ、おかげで超高額なのが難点か
      またSM-6自体が生産数少ないのに生産リソースを食いあっての量産は大丈夫なんかな

      5
        • 名無し
        • 2025年 7月 04日

        いやAIM-260と空中発射型SM-6は全く別物です
        AMRAAMの後継扱いっすからね>AIM-260

        AIM-260にしろ空中発射型SM-6にしろ、こうも簡単に統合?に成功して実際に実弾発射試験ができる運用柔軟性がある分、F/A-18EFは優秀なんじゃないかと思うんだよね
        F-35は既存のミサイルでグダグダしてる以上絶対にこうはいかないだろうし

        7
    • kitty
    • 2025年 7月 04日

    QF-16を使用した30回以上のテストって、QF-16を30機も墜としたんですかね。
    ミサイルの開発にはコストが掛かるわけだ。
    ていうか、我が国独自開発のAAM系はあの開発予算でちゃんとテストできているのだろうか。

    F-15Jが誤操作で、僚機を撃墜した事件ではミサイル生産担当者が「わしらの作ったミサイルがちゃんと当たったんだなあ」と言ったとかいう伝説がありますが、AIM-9のライ国だから実射テストは少なかったんだろうし。

    3
    • 神田明(仮名)
    • 2025年 7月 04日

    AIM-260というのは、あくまで米軍の話であって、西側諸国の長射程ミサイルならミーティアが既にあるのでは?
    使える国に限った話しではありますけどね!

    1
      • SB
      • 2025年 7月 04日

      ミーティアのダクテッドロケットはAIM-260とかPL-15みたいなデュアルスラストロケットモーターと比較して射程に優れる代わりに遅いから、ヨーイドンで同時に撃つと基本的に不利なんですわ(中間誘導や前線の押上が必要だからできる限り回避は送らせたい)
      日英協同のJNAAMもそれが理由でポシャったともっぱらの噂

      14
    • 中村
    • 2025年 7月 04日

     最早、戦闘機に積まなければ成らない必然性が理解出来ない。地上配備と滞空型の大型機ではいけないのだろうか?

    1
      • そら
      • 2025年 7月 04日

      地上型は大型高コスト化せざるを得ないし、大型機に乗せても敵が自分たちより射程長いミサイル持ってくれば終わり
      何よりどちらも守りにしか使えないから、まともに機能してもいずれジリ貧は必至
      専守防衛なんて幻想に酔えるほど現実は甘くない

      1
    • PAC3
    • 2025年 7月 04日

    米空軍ですとAIM-120系が運用できる機体であればプログラムの修正程度で運用できるものなのでしょうか?

    1
      • そら
      • 2025年 7月 04日

      寸法が同等なら、接続部も同じだろうし、基本的には使えるようになると思う
      AIM-120はアクティブレーダー式で、発射形式もたぶん同じだろうし
      まあ衛星やAEW&Cとのリンク前提だろうから、新しめのアビオニクス積んでる機体である必要はあると思うけど

      • 名無し
      • 2025年 7月 05日

      どうかしらね
      現状AIM-120でもCを運用できるからと言ってDも運用できるというわけではないようだし、例えばF-35はAIM-120Dの運用能力持ってないけど、そんな簡単にチョチョイと統合できるならF-35は既にAIM-120Dの運用能力獲得しててもおかしくないけど現状そうはなっていないわけですからね
      そんな簡単な話でもないんじゃないかな

    • 小惑星
    • 2025年 7月 05日

    日本の次期中距離空対空誘導弾の開発研究は令和6年(2024年)開始からの令和12年(2030年)完了予定だからまだしばらくかかるな
    まぁ当面99式B型でそう不利という事もないのだろうけど

    2

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