米陸軍で無人機能力の開発を担当しているライアン大佐は「今後調達する消耗型ドローンの要件を確立した」と明かし、スペインでは国産UCAV向けの滑空攻撃兵器を、ポーランド軍は国産徘徊弾薬を1万発調達すると発表、英海軍は新型XLUUV=エクスカリバーを公開した。
参考:Army zeroes in on expendable drone needs for future buys
参考:Así es BAT, la bomba inteligente de Aertec diseñada para el dron español Sirtap
参考:Grand Polish Military Dronization Contract Becomes a Reality
参考:Britain unveils new large, uncrewed submarine
この分野の発展や進化は日本メディアが殆ど取り上げないだけで、本当にものすごい勢いで前に前進している
MQ-1、MQ-9、TB2といったMALE UAV(中高度・長時間滞空型無人航空機)は情報収集、監視、偵察、ターゲティング、対地攻撃など多目的任務に使用できるプラットホームで、MQ-1とMQ-9がユーゴスラビア紛争
、アフガニスタン侵攻、イラク侵攻で、TB2がシリア内戦、リビア内戦、ナゴルノ・カラバフ戦争で大きな役割を果たし、ウクライナでもロシア軍相手に活躍したため「無人攻撃機」としてのイメージが強くなったが、前線が固定され防空システムの運用が安定するとTB2を対地攻撃任務で使用するのが困難になり、運用が基本的なISRT任務に限定されることなった。

出典:117 окрема механізована бригада
さらに言えばウクライナとロシアの戦争で「真のゲームチェンジャー」と呼べるのは対戦車ミサイル、西側製戦車、155mm榴弾砲、HIMARS、ATACMS、Storm Shadow、F-16ではなく、Starlink、自爆型無人機、徘徊型弾薬、DJI製のMavic(特に赤外線カメラ)、FPVドローン、光ファイバー制御に対応したドローン、電子戦システムで、特に地上戦の形を根本的に変えてしまった小型ドローンは兵士の交戦距離をmからkmに拡張し、戦術レベルの戦場認識力を格段に拡張し、この2つが組み合わさることで機械化部隊による集団攻撃がほぼ通用しなくなっている。
これがウクライナ戦争における特有の傾向なのか、どの国にとっても共通する傾向なのか議論が続いたものの、米陸軍は「どの戦場でも直面する新たな脅威」と認識してドローン導入を本格化させており、American Enterprise Instituteで上級研究員を務めるフェラーリ元陸軍少将も「ヘグセス国防長官が命じた陸軍改革は伝統的な武器システムからドローンとAIに軸足を移している」と指摘するほどで、米陸軍も今後調達する消耗型ドローンの要件を確立したらしい。
米陸軍で無人機能力の開発を担当しているライアン大佐は「ウクライナで名を馳せたのはFPVドローンだが、我々が必要とするドローンはもっと多機能になる。コントローラーによるステック制御にも、最小の操作で自律的に飛行することも、光ファイバーを接続することも、事前プログラムに従って飛行することも、AH-64のような有人ヘリコプターと協調することも、地上目標だけでなく飛行中の敵ドローンを攻撃することも出来るものになる」と述べ、地上戦の形を変えてしまった小型ドローンの能力拡張は既に始まっている格好だ。
因みにTB2はウクライナ戦争で「防空システムが機能している戦場空域において滑空式精密誘導兵器による対地攻撃は通用しない」と証明されてしまったが、BAYKARはジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬=KEMANKEŞ(滞空時間は約1時間=射程距離に換算すると200km以上)開発を進めており、スペインでも国産UCAV=Sirtap向けの滑空攻撃兵器が発表されて注目を集めている。
スペイン企業=Aertecが開発したBATは折りたたみ式の主翼をもつ誘導式滑空爆弾で、到達距離はTB2で使用されるMAM-Lよりも少し大きい(約25km)程度だが、ロケットモーターを追加して到達距離を拡張できることを示唆しているため、BAYKARと同じく「前線上空をカバーする近距離防空システムの射程圏外から攻撃可能な能力」を目指しているのは明らかで、AIによる自律的なターゲティング能力と組み合わさるとMALE UAVによる対地攻撃が復権してくるかもしれない。
GA-ASIもMQ-9がイエメン上空で手痛い損失を被り、今後の生き残りや可能性を拡張するため空中発射式の小型ドローンやJSMの統合を盛んにアピールし、米空軍も開発を進めている低コスト巡航ミサイルの発射プラットホームとしてMQ-9の利用を検討している。
追記:ポーランド軍はWB GROUPと国産徘徊弾薬=Warmate購入の枠組み協定に署名、この枠組みは約1万発のWarmate購入を対象としており、ポーランドのディフェンスメディア=Defence24は「ポーランド軍のドローン導入に関する大型契約が現実のものになろうとしている」と、ポーランドメディアも「無人攻撃能力においてポーランドは欧州のリーダーになるだろう」と報じている。
Warmateは徘徊型弾薬という言葉すら存在していなかった2010年代にWB GROUPが開発したシステムで、ウクライナ侵攻が始まるから海外輸出に成功していたものの、ロシア製徘徊型弾薬=Lancetの成功を受けて評価が高まり、アラブ首長国連邦、インド、韓国などが運用国に加わり、計11ヶ国で使用される徘徊型弾薬(ウクライナとロシアの戦争とインドとパキスタンの紛争で実戦を経験)だ。

出典:WB GROUP
日本の新明和工業とWB GROUPは有人・無人航空プラットフォームの開発協力協定を今年3月に締結しており、ポーランドのディフェンスメディア=ZBiAMは「ポーランドは本格的な戦争で実証された装備の開発経験、実際の戦場で直面した課題や経験を日本の防衛産業や防衛システムに反映させることができる」と、Defence24も「日本人がポーランドとの協力に熱心なのは現在の国際情勢だけではなく『ウクライナでの全面戦争においてポーランドの防衛産業が優れた成果を上げた』という点が大きい」「新明和工業はWB GROUPの通信、射撃管制、無人技術分野におけるソリューションに興味を持っている」と報じたことがある。
WB GROUPはC4Iシステム、無人システム、射撃管制システム、訓練用シミュレーションシステムで成功を収めているポーランド最大の防衛産業企業で、特に戦術用途の無人機=偵察向けのFlyEye、FT5、X-FRONTER、Warmate-R、徘徊型弾薬のWARMATEや、これを活用するための情報統合技術が日本にとって魅力的に映るだろう。
空中、地上、海上、海中の無人機・ドローン分野の発表は頭がおかしくなるぐらい数が多すぎて、もう全てを把握するもの情報をまとめるのも不可能だが、この分野の発展や進化は日本メディアが殆ど取り上げないだけで、本当にものすごい勢いで前に前進している。
AIを搭載した新型のTB2、ウクライナでの教訓を反映した新型のSwitchblade300/600、Switchbladeを製造するAeroVironmentが発表した新型徘徊型弾薬=Red Dragon、Northrop Grummaが発表した自爆型無人機=Lumberjack、降着装置を搭載した新しいXQ-58の登場、聖杯の力で召喚したかもしれない英海軍の新型XLUUV=エクスカリバーなど挙げ始めれきりがない。
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※アイキャッチ画像の出典:Aertec
>我々が必要とするドローンはもっと多機能になる。コントローラーによるステック制御にも、最小の操作で自律的に飛行することも、光ファイバーを接続することも、事前プログラムに従って飛行することも、AH-64のような有人ヘリコプターと協調することも、地上目標だけでなく飛行中の敵ドローンを攻撃することも出来るものになる
これは高コスト化、計画の遅延による死亡フラグなのでは…
普通に考えると、機能モジュール化されたドローンシステムで構想してるんじゃないですかねえ。
オールインワンのドローンが欲しいというなら、おっしゃる通りの結果になる可能性Max.に思います。
本文を読んでまず心配したのがそれです
どうにも節々からアメリカらしい「全部盛り」の気配がしてしょうがない
物事は割り切らないと
ロシアや中国など大国なら問題ですが、リビアやガザ程度ならコストの問題は小さいかな。
軍を派遣するのに大衆の抵抗は大きいけど。
空爆や、ミサイル攻撃に対する抵抗感は意外な程小さい。
ドローンの派遣と攻撃なら、どうだろう。
ドローンを派遣して、自動的にテロリストとその予備群を排除する日も近いな。
ロシアや中国など大国なら問題ですが、リビアやガザ程度ならコストの問題は小さいかな。
軍を派遣するのに大衆の抵抗は大きいけど。
空爆や、ミサイル攻撃に対する抵抗感は小さい。
ドローンの覇権と攻撃なら、なおさらだろう。
ドローンを派遣して、自動的にテロリストとその予備群を排除する日も近いな。
汎用機を作るか、専用機を作るかは悩ましいけど。
シャーマン戦車を作ったアメリカはどこに行った?
流石に全部のせだと相反する機能があってコストが無駄になる感じがする。AH-64Eとのチーミングだとヘリ以上の航続距離を持つUAVが適切で小型の方でシャヘド136、大型の方で1t超えて高性能なセンサーとか搭載するMQ-1C グレイイーグルクラス。小型の方は60kg未満のV-BATもありかもしれない。
電子妨害対策でプリプログラムで飛行するなら光ファイバーの長所を生かし切れない感じはするし20km以上複雑に飛行するような機体に光ファイバーは相性が悪い。
飛行中のドローンにしてもピンキリで小型のFPVドローンを攻撃するのに人間の大人ぐらいあるサイズのドローンをぶつけるのは微妙。
AI「問おう。貴方が私のマスターか」
「令呪を以て命じる。自害しろ。」
あれ?
自衛隊は?って言いたそうなツラしてる奴がいそうな気がするから報告させてもらうがよォ、2025年度予算で陸上自衛隊向けに自爆型ドローン310機を導入予定だ。
数が少な過ぎるって?オペレーターや運用方法確立する必要があるのでこの数らしい。使える奴は少ないし、もしかしたら運用に合わない機種もあるかもしれないので、初年度でこの数ならまあ仕方ないかなと。
追記:
導入予定なのはイスラエル製5機(スカイストライカー・HERO-120・ROTEM L・ポイントブランク・Heron MK II)、オーストラリア製1機(DRONE40)、スペイン製1機(Q-SLAM-40)の7機種。代理店として丸紅など商社を間に入れてます。去年に国内企業のACSLから導入したのは空撮用。
自衛隊のドローン導入はちょっとは報じられてはいるけど、産経や読売以外は大抵「イスラエルの機体がーッ!ガザで!コノヤローッ!」なので、色々とどうしようもねえ
いろいろ買ってみてどれがいいかお試しって感じですな。
全部に備品番号を振って、訓練で壊したら始末書を書かされる未来まで見た
弾薬扱いだから使ったら他の弾薬と同様に書類手続きして終わりだぞ
思うのですが。攻撃手段だけでなく、防御手段も必要では。
イエメンなどの例を見ていると、グレイイーグル?などは、上昇限度の約9,000m
まで上昇しても、フーシ派の機材358に撃墜されているようだし。
偵察用の大型?UAVは高空(高度15,000mくらい?)を飛ぶべきとは思います。
MANPADSや機材358等を避けるためです。すると、脅威は戦闘機/SAMとなります。
戦闘機が出てきたら仕方ない(笑)として、SAMの発射を熱探知したら、
UAVは変針し、発車地点に正対し、有翼の対空爆弾?を投下しては?、などと思います。
飛んでくるSAMを画像でロックして、その未来位置に滑空し、VT信管で起爆する形で?。
大きさは75mm対空砲弾くらいで、前後に翼を付けて、などと妄想(笑)をします。
大型のUAVならば、それなりの高価であるだろうし、簡単に失うのは惜しいですし。
ステルスや高度による回避が難しくなってくると機動による回避が可能性として出てくるのかなと
人間だとせいぜい10Gくらいが制限でしょうけど、無人なら構造上の限界までいけますから
複葉機型なんて旋回性能が高くていいかもしんない(ナイトレーベンみたいな
ま、一回躱したところで位置エネルギーか運動エネルギーを失ってそうですから何発も躱し続けるのは難しいかもしれませんが
よその記事を見ると。
ロシアのUAVは、背中側にカメラを付けて、
ウクライナ側のFPVドローンが迫ってくると
急機動して避けている動画がありますね。
ウクライナ側は”それでも逃さない”としていますが。
AIいわくX-49 ナイトレーベンのようなボックスウィング+複葉レイアウト機は…
①低速でも高速でも”非常に高い旋回性能を一貫して維持しやすく失速にも強い
②翼の曲げモーメント低減、ねじり剛性の確保から高いG耐性をもつ
③ボックスウィング構造による誘導抗力低減で巡行性能の向上
ただのSFかと思いきや物理的な裏付けがあった事に驚愕してる
高Gに耐える機体構造はコストも重量もかさむので…
グローバルホーク・・・(最大高度18000メートル)
フーシ派が相手でも、それくらいの高度は必要、
と勝手に思っています。
防空軍が装備するようなSAMがなければ、
OKな気がします。(S-75とか、S-125とか)
〉聖杯の力で召喚したかもしれない英海軍の新型XLUUV=エクスカリバー
情報過多で管理人さんがついにおかしくなった…
ホント、今週の更新スピードほ凄いですからね。
有難いけど、同時に「無理なさらずご自愛ください」とも思っています。
ウクライナでまたもF-16が墜落したとか。
今度はドローンの迎撃中に破壊したドローンの破片に巻き込まれたんじゃないかとのこと。
推定が正しいとするとおそらく最新鋭機であろうと不可避的な事故であり、こんなんでF-35を失ったらたまったもんじゃないですね。
米軍はフーシ派の攻撃から空母を守るために同様の任務に就かせていましたが、やはり色々と薄氷だったのでは。
黒海では海上のドローンを破壊しようとしてロシアがSu-30を喪失したばかりですが、既存の有効とされていた戦力はシリアスに価値の見直しを迫られていますな……。
案外レシプロ機が都市防衛に必須って時代が来たりして
普通のレシプロ戦闘機だと機銃は前にしか撃てないので
今回のようにドローンの爆発に巻き込まれるリスクは残るかと。
やはり複座で旋回銃塔を配備したボールトンポール デファイアントを復活させるべき
最近のSRAAMの様にHMDと連動させたら、単座でも旋回機銃を使えるのでは?
列挙された技術分野でアメリカが中国を凌駕できる気がしないな