バイデン政権時代のケンドール元空軍長官とハンター元空軍次官補はNGAD=F-47契約がBoeingに決まるまでの舞台裏について言及し、NGADはF-22Aの正統な後継機して計画されたが「無人戦闘機の登場によってCCAを制御するクォータバックの役割が重視されるようになった」と明かした。
参考:Defense & Aerospace Air Power Podcast [Mar 27, 25] Season 3 E12: The Secret History
無人機戦闘機の登場でF-47は純粋な制空戦闘機からCCA制御に重点を映した管制戦闘機に変化
今のところF/A-XX契約の勝者発表について何も動きはないが、Defense&Aerospace Reportのポッドキャストにケンドール元空軍長官とハンター元空軍次官補が登場し、トランプ大統領が21日に発表したF-47(NGADの有人機部分)に関する興味深い話を披露した。この話を要約すると以下のようになる。
“2015年に始まったDARPA主導のXプレーンプログラム(約10億ドル規模)には空軍と海軍が参加し、このXプレーンは(NGADで想定していたよりも)リスクが高く、重要な技術=第6世代の制空権確保を前提にしたプラットフォームの特性を証明するため設計された。Xプレーンプログラムを立ち上げた最大の理由は産業基盤に関する問題で、米空軍はLockheed Martinが独占する戦闘機市場に再び競争の原理を導入したかった”
“Xプレーンは2017年以降にBoeingとLockheed Martinが1機づつ製造し、2109年と2022年に初飛行したが戦術的要件や量産を考慮したものではなく完全な技術実証機だった。F-47に繋がるNGADの戦術的要件は第1期トランプ政権時代の空軍によって策定され、当時のNGADはF-22Aの正統な後継機して「高度に防衛された空域に侵入し、少なくとも一時的に敵空域内で航空優勢を確立する」という考え方に集中していたが、戦闘機に随伴可能な無人戦闘機(協調戦闘機=CCA)の登場で要件は変化し、NGADは「CCAを制御するクォータバックの役割」が重視されるようになった”

出典:General David Allvin
“空軍は「買収上の悪習慣=F-35システム全体の権利は国防総省に帰属するものの、機体の設計やデータはLockheed Martinに権利がある状態のこと」を排除するためNGADの設計や知的財産権についてかなりの権限を確保する予定だ。基本的に機体のアップグレード、消耗品の交換、追加モジュールを巡る競争についてプライムの囚人=言いなりにはならない。F-35プログラムにおけるLockheed Martinの優位性は「調達上の不正行為」に相当する”
“NGADプログラムを一時的に停止したのは純粋な資金不足、CCA登場によるステルスを活かしたスタンドインへの疑問、機会費用に関する問題が関係しており、数ヶ月間に渡る見直しで「NGADへの投資こそが最も低リスクで制空権を確保する重要な要素になる」と判明したが、NGADプログラムは非常に高価なため空軍の他のプログラムを阻害する恐れがあり、実質的にNGADは対宇宙能力と基地防衛改善への投資とトレードオフの関係にある”
“中国は統合軍への長距離攻撃を可能にするため数十~数百の衛星を宇宙に配備し、後方基地を攻撃するため巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイルなどを文字通り何千発も保有しているため、我々は費用対効果に優れる対宇宙能力と基地防衛改善を確保することが重要だ。これらの投資を怠って中国の攻撃に無防備なままならF-22、F-35、F-47は決して離陸することが出来ないだろう。但し、トランプ政権がF-47の開発・製造に関してどのようなトレードオフを行ったかは不明だ”
“戦闘機市場に再び競争の原理を導入したかったものの、F-47を巡る競争自体は非常に真剣なものでBoeingとLockheed Martinは全く異なる創造的な設計を提示した。一方は比較的早く主要目標を達成したが、最終的に両社の設計は空軍の要求要件を満たした。F-47の機体価格はF-35の2倍以上=1億6,000万ドル~1億8,000万ドルの範囲になるだろう”

出典:U.S. Air Force
ケンドール元空軍長官とハンター元空軍次官補の言及は「過去に登場した話をまとめたもの」とも言えなくはないが、Xプレーンの技術実証機が2機製造されていたこと、BoeingとLockheed Martinは「創造的」と言うほど「大きく異なる設計案」を提示したこと、NGADに求められる能力がCCAの実用化で相当変化(純粋な制空戦闘機からCCA制御に重点を移した管制戦闘機?)したこと、NGADへの投資は対宇宙能力と基地防衛改善を犠牲するものなどは新しい情報で非常に興味深い。
因みにケンドール元空軍長官は「現時点で無人機に全てを賭けるほどの準備や信頼はない」と述べており、有人機のF-47と無人機のCCAの組み合わせが「無難な選択だ」と言いたいのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force
予想通りと言えば予想通りですが
やはりそうなってくるとF47の初飛行は2,3年以内に達成できて当たり前という感じですよね
無人機がないと半ちくなわけですから
プラットフォームとなるF47はさっさと完成させる必要があります
今のボーイングにそれが出来るかは謎ではある
>無人機がないと半ちくなわけですから
P-8の時も似たような話があったような?
今回の方が、無人機などのハードル高いでしょうが。
管制戦闘機にするなら複座の方が良いと思うがAIにサポートさせるからいらないのかな
逆に飛行をAIに任せて、搭乗者は無人機の管制に注力
自機の戦闘機動への関与も、AIへの指示といった間接的なもの
といった感じだと面白いのですけどね。
実際そうなるんじゃないですかね。
自機は警戒対象やら行き先やら滞空範囲やら速度やら高度やら指示してほぼ自動操縦。
その間にCCAに作戦指示してCCAは基本的には自律行動、新情報やら要判断な事項があれば通知してくる、とかで普通に回りそうな気がします。
無人機はどうやって通信するんだろう? ミサイルと違うからな。
スターリンクとか人工衛星通信なのか、通信なしのAIなのか。両方なのか。
ゲームですら、地上攻撃と操縦を同時にするのが苦手な私にとって、一人で同時にこなすパイロットは天才に見える。
福座敷への拡張性は欲しいな。
無人機の制御はどうするのかな。
AWACSでさえ、有人戦闘機の管制に8人くらい掛かっているのに、無人戦闘機の群れを一人でどう制御するのか?
機械が指定した目標にOK出すだけなんじゃな無いのか。
機体制御はAI任せで、作戦行動をタッチパネル式するとか、音声入力式にして戦闘機の目標を設定するとかの意見はありますね。
衛星を使った戦闘機動は2秒以上かかるラグと、アメリカのRQ-170が鹵獲された経験から避けるでしょうし。
戦闘支援用AIの開発が鍵を握っています。
防衛装備庁資料「戦闘支援無人機を目指して」の説明によるとですが
戦闘支援無人機側AIは刻々と変化する状況下で自律的に「知覚・理解・決定・行動」のルーチンを連続的に実行し指揮による行動目的を達成するとしています。
一方で有人機搭載AIはパイロットないしオペレーターの意思決定を支援するとしています。
双方を結ぶ機材としてマン-マシンインターフェイスも重要で、状況や無人機の行動を直感的に把握できるヘッドマウントディスプレイの開発が必要になると思います。
恐らくですが「無人航空機へ適用するAI技術に係る日米共同研究」も同様の方針で進められると推測されます。
>無人機はどうやって通信するんだろう?
主に直接通信では?
高度10000mの母機なら見通し距離で6000mの無人機なら600km以上、3000mの無人機なら500km以上通信できるので大抵の作戦行動には十分でしょう(個人的にはF-47はもっと高高度での運用を想定してると思うので更に見通し距離が伸びます)。
無人機のコントロールがメインですか
役割は中国のJ-20に近い感じですかね
向こうみたいに複座型も作るんでしょうか
F-47は
・機体の自衛装備(中距離ミサイル含む?)
・CCAへの指示、情報収集を行うミッションシステム
・クォーターバックとして無人機に指示を出してもレーダーに検知されないステルス性
に留めて無人機に兵器システムのほとんどを委譲する、という事でしょうか
武装統合は不要でもセンサーフュージョンやミッションシステムは依然として必要なので、そのソースコードをどこから持って来るのか気になります。
LMのガメツさに軍が嫌気を出したというのは面白い。
ボーイングの適当さと良い勝負。
ならノースロップがもっと評価されて良いような
ボーイングもそうだけど要は企業に対する国防総省のガバナンスの低下ですよね
統廃合で寡占にしてしまった代償だったり
天下りに紐付く官民の癒着体質だったり色々と理由はあるんでしょうが
T-7Aなんかは技術的に難しいことはほぼなかったはずで(遅延の理由を見る限り)
ボーイングのモノづくりに対するいい加減な姿勢へツッコミを入れられなかった
国防総省の無能の方が責められるべきと思っています
がめつさもですがF-35の開発も延長続きで成功と言い難くてフラストレーション溜まっているのでしょうね
まぁ五年前に実証機を飛ばしてきたと言うのはボーイングの気概を感じる所はあるが、他のプロジェクトに割くべきマンパワー全部投入してないかそれ…
今回の記事と関係ないけど、経済制裁って大打撃を与えられなかったら敵の内需の強化と更なる対抗意識を増長させる最悪な兵器なんじゃないかって思ったんだけど有識者の方居られますか?
スクランブルなんかは、有人が続くと思うんですよね。
目視確認・警告射撃なんかは、人間が必要と思うのですが、技術の進歩で無人化されるのでしょうか?
無人機が高価だったとしても、パイロットの育成コスト・飛行訓練による期待損耗が不要になるわけですから、どこまでの上昇ならば許容できるのかも興味深く感じます。
逆に言えば、パイロットのプールが足りないような国々でも、優秀な無人戦闘機が手に入れば、急激に空軍力を高めることができるとも言えそうですね。
ただ原則2機体制の迎撃を有人1機に無人機というパターンはあるかも。
警告の通信もAIが自動応答したりして。
したら東京急行してくる偵察機も無人化していてAI同士がやりとりしてたり。
P-1の護衛とか給油機の護衛には無人機でもいいかと。
どちらも長時間飛行するから、護衛する戦闘機が大変なので
中国空母が太平洋側に出てくるときなんかには護衛が必要かと。
将来的に有事においては有人機は基本的にスタンドオフでの運用になるのだと思います。つまり有事には敵防空圏内には踏み込まない。非ステルス機なら尚更。
その代替手段として「長期運用型UUV」による監視・索敵と「戦闘支援型多目的USV」による前進偵察・攻撃能力を構築しようとしています。
加えて「HAPSによる海洋状況把握()」もありますね。
こちらは高度30000mとしても600km以上後方から監視できますので露見しても攻撃手段がなかなかないのが強みでしょう。