米国関連

米空軍が量産する無人戦闘機を年内に決定、頭脳はシールドAIかコリンズか

米空軍は約1,000機のCCA=無人戦闘機調達を予定しており、現在はCCA Increment1に選定されたジェネラル・アトミックスのYFQ-42AとアンドゥリルのYFQ-44Aがテスト中で、ティモシー・ヘルフリッチ大佐は25日「(予定通り)年末までに生産を決定する」と述べた。

参考:US Air Force confirms autonomous fighter decision coming this year as Shield AI, Collins battle for mission software contract

第一弾調達は「ハードウェア=機体」と「ソフトウェア=頭脳」を巡る戦いが独立している

米国が開発を進めている無人戦闘機や自律型無人機は米空軍主導、米海軍主導、米海兵隊主導、米空軍研究所主導、国防高等研究計画局主導、防衛企業主導の6つに分かれ、米空軍は協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraftプログラムの下で約1,000機のCCA調達を予定しており、2024年5月にジェネラル・アトミックスのYFQ-42A ダーク・メルリン、アンドゥリルのYFQ-44A フューリーをCCA Increment1に選定、YFQ-42Aは2025年8月に、YFQ-44Aは2025年10月に初飛行を果たした。

ただし、CCA Increment1への選定は正式採用を約束したものではなく、第一弾調達としてYFQ-44AとYFQ-42Aの両方を採用するのか、どちらか一方だけを採用するのかは不明で、これまで「Increment1の生産決定は2026年中に下される」と説明していたが、米空軍のティモシー・ヘルフリッチ大佐は25日「年末までに決定を下す」「その後の生産についても迅速に進めていく予定だ」と述べて「CCA Increment1のテストと評価が予定通りに進んでいる」と示唆し、第一弾調達に向けた取り組みは順調に進んでいるように見える。

この第一弾調達を巡る戦いはYFQ-42AとYFQ-44Aの争いに見えるものの、実際には「ハードウェア=機体」と「ソフトウェア=頭脳」を巡る戦いが独立しており、CCAに搭載する自律型ミッションソフトウェアは「シールドAI提案のHivemind」と「コリンズ・エアロスペース提案のSidekick」が争っている状況で、HivemindもSidekickも特定の機体設計に依存していないためYFQ-42AとYFQ-44Aの両方で機能し、YFQ-42AにはSidekickが、YFQ-44AにはHivemindが統合されている。

シールドAIのHivemindは採用実績が圧倒的(X-62A、MQ-20、XQ-58、V-BAT、MQM-178、BQM-177A、DT25が採用、自社開発を進めているX-BAT、IHIが米海軍向けに開発中の無人水上艇でも採用予定、FPVドローンサイズのクアッドコプターでも採用例がある)で、特にHivemind搭載のX-62Aは人間に不可能なスピードでセンサー情報を処理し、最適な機動を選択することでパイロットが操縦するF-16相手のドッグファイトで極めて高い勝率を記録したことがある。

さらにHivemindはオンボードコンピュータのみで動作が完結するため、GPSや外部通信が妨害されても自律的に周囲の状況を認識し、任務を継続して基地に帰還することが可能で、この能力はHivemind搭載のV-BATがロシア軍の強力な電子妨害下でも機能し続けたことで証明済みだ。

出典:Shield AI

Hivemindは分散型意思決定にも対応し、有人の指揮官機が不在でもHivemind搭載機は互いの意図を察し合い、役割を分担(一方がデコイになり、もう一方が攻撃するなど)して複雑な任務を完遂することができるため、Hivemindは「極限環境での機敏な判断力」や「複雑な環境下での単独・集団による高度な戦術行動」が優れていると言えるが、コリンズ・エアロスペースのSidekickは「パイロットとの協調性」に焦点を当てており、ここまで設計思想が大きく異なると「どちらがCCAの自律型ミッションソフトウェアに適しているのか」は判断がつかない。

SidekickもMQ-20に搭載してアルゴリズムの実証を行い、F-22Aのパイロットはタブレットを使用してSidekickを搭載したMQ-20を操作しており、コリンズ・エアロスペースも「過去10年間の開発期間中に3〜4種類の異なる航空システムに搭載して飛行試験を行ってきた」と説明しているため、長期間の開発とテストによって技術的成熟度を高めてきたのだろう。

コリンズ・エアロスペースのライアン・バンジェ氏はSidekickについて「米空軍向けの機密性が高い開発と並行し、同盟国やパートナー国への提供を念頭に置いた輸出可能なバージョンを用意する」と明言しており、これは「無人戦闘機計画が初期段階の同盟国やパートナー国に自律型ミッションソフトウェアを供給することでデファクトスタンダードを握る」という意味で、仮にCCA Increment1の自律型ミッションソフトウェアに採用されなくても「海外市場にもチャンスがある」と言いたいのかもしれない。

どちらにせよ、米空軍のCCA量産機は「2027年末」か「2028年初頭」に登場する可能性が高く、第一弾調達の生産準備と平行してCCA Increment2の選定作業が始まるため、2030年末までにCCAの種類と数はどんどん増えていくはずだ。そしてCCAが登場した未来の航空戦(特に航空戦術)は現在のものと大きく様変わりするだろう。

因みにシールドAIは垂直離着陸が可能な無人戦闘機=X-BATについて24日「年内にカンザス州ニュートン近郊で飛行試験を開始する予定だ」「垂直離陸と垂直着陸能力が初期飛行試験の中心的な焦点になる」と明かした。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force

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コメント

  • コメント (8)

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    • たむごん
    • 2026年 2月 26日

    ドッグファイトほぼ不要でしょうが、ドッグファイトに勝てる水準になっているのは凄いですね。

    ウクライナ戦争でも、通信妨害・GPS妨害・AWACS撃墜といった戦訓がありますから、オンボードコンピュータのみで完結するのであれば頼もしいですね(無人機に不可欠でしょう)。

    16
      • のー
      • 2026年 2月 27日

      近年は大量に飛来するドローンや巡航ミサイルの、効率的な迎撃が最大の課題だったりしますので。
      今後は、安価な機関砲で迎撃するための、戦闘機のドッグファイトの重要性は大きくなる気がしております。

      1
        • たむごん
        • 2026年 2月 27日

        たしかに、仰る通りですね。

        地上からの迎撃だけでは、機関砲の射程・量・配置に限界があるでしょうし…

        1
        • バーナーキング
        • 2026年 2月 28日

        「戦闘機の機関砲でドッグファイト」ってのは有人機で乗員のリスクを考えたらもちろん、無人機ですらそのために必要な機体のスペックとそのコスト考えたら全然安くないでしょう。
        喫緊の脅威であるUAVやCMに手持ちの戦力で対処するためにやむを得ずやるのは分かりますが、「それを前提に5年後10年後の新戦力を設計する」のは如何なものかと。
        その頃には当然敵だってUAVに反撃機能くらいは用意してくるでしょう。攻撃側UAVはさしたるコスト掛けなくてもズーム上昇しながらチャフかなんか撒くだけで迎撃側は結構なリスクですし、それでダメなら自爆特攻仕掛ければ、成功すればボロ儲け、失敗しても迎撃側は躊躇する様になるでしょう。何なら後ろ向きに固定銃とか鉄製ロケット花火みたいな超格安AAMとか積んだっていい。
        問題は攻撃側はいくらでもやりようがあって、そういうのが一部に混ざってるだけでドッグファイトを試みる迎撃側にとっては致命的なリスクになる非対称性です。
        「無抵抗なCMを七面鳥撃ち対処」ならともかく「攻撃UAVとドッグファイト」はあまりにも高リスク高コストでしょう。
        いやその頃にはCMだって当たり前の様にスマホカメラ程度の後方警戒装置は積んでバレルロール(からの特攻)くらいしてきたりする可能性も十分ある訳ですが。

        2
    • YF
    • 2026年 2月 26日

    最近なにかと迷走かつ問題出てるアメリカの兵器開発ですけど、久し振りに本気を見たような気がします。
    やっぱりシステム開発はアメリカ強いですね。CCAの実戦配備も思ってるより早そうです。

    19
    • イーロンマスク
    • 2026年 2月 26日

    空に飛ぶハードウェアとネットワークを形成するソフトウェアAI

    Ω「つまりスカイネットにより人類は滅亡する」
    ΩΩΩ「な、なんだってー」

    5
    • kitty
    • 2026年 2月 26日

    SidekickはF-15J Pre-MSIPでもポン付けで操作できるんじゃないのかな。日本向けかも。

    2
    • nachteule
    • 2026年 2月 27日

    > IHIが米海軍向けに開発中の無人水上艇でも採用予定
     これHIIの間違いでは?

    4

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