米国関連

また米強襲揚陸艦ボクサーが故障、予定されていた作戦や演習が台無し

ワスプ級強襲揚陸艦「ボクサー」はオーバーホール後も故障に悩まされていたが4月1日に出港、インド太平洋地域に展開するためカリフォルニア沖でMV-22Bの受け入れを行っていたものの、今度は舵が故障して再びサンディエゴでメンテナンスに入った。

参考:USS Boxer Headed to San Diego for Repairs, Pacific Deployment Stalled
参考:Amphibious Warship USS Wasp May Deploy Late

またボクサーが故障して港に逆戻り、予定されていた作戦や演習が台無し

オーバーホールを終えたワスプ級強襲揚陸艦4番艦「ボクサー」についてMilitary.comは先月19日「3つの異なる工学的故障、手続き厳守の欠如、監督不十分、乗組員の怠慢でボクサーは運用できない状況にある」と報じて注目を集めた。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Roland Ardon

海軍海洋システムコマンドはオーバーホールのスケジュールとコストを圧縮するため「請負業者の作業チェック」を省略し、取り付け位置を間違った蒸気タービンエンジンの強制通風ファンが2022年11月8日に故障、乗組員が定められた手順を厳守しなかったため2023年5月14日にボイラーが故障、2023年7月11日には潤滑油がないまま作動させた減速機が故障、さらに海上試験を行うため8月11日に出港した直後「何らかの工学的な故障が発生した」と宣言して港に戻ることになった。

この件を調査した報告書は「機関部の上級士官は減速機の事故を24時間以上も艦長に報告せず、全ての事故に立ち会っていた勤続27年以上の技術士官も何も出来ず、技術部門を取りまとめる下士官も配属されておらず、機関部では下士官が関与した暴行事件も発生していた」と指摘していたが、何らかの改善を経てボクサーは展開準備のため4月1日に出港し、カリフォルニア沖でMV-22Bの受け入れを行っていた。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class James Finney

しかしUSNI Newsの取材に海軍は「ボクサーは追加のメンテナンスを受けるためサンディエゴに戻った」と明かし、USNI Newsは「ボクサーの故障は舵に関連したものだ」と報じている。

匿名の国防当局者も「(ボクサー配備が遅れているため)予定されていた作戦や演習が台無しになり、インド太平洋地域の作戦担当者はフラストレーションが溜まっている。国防総省の誰かがクビになるまで壊滅的な保守管理を海軍は受け入れ続けるのだろうか?」と述べているのが興味深い。

因みに1番艦「ワスプ」もオーバーホールを終えてノーフォーク海軍基地を出港した直後にドライブシャフトを損傷、現在はバージニア州沖で海上試験を行っているものの、リサ・フランケッティ海軍作戦部長は8日「ワスプの配備に遅れが生じるかもしれない」と明かし、USNI Newsも「ワスプはメンテンスの遅れに直面している」と報じている。

関連記事:オーバーホールが完了した米強襲揚陸艦、相次ぐ故障で海に戻れず
関連記事:米海軍長官、コロンビア級原潜の遅れはノースロップ・グラマンに原因がある
関連記事:何もかも遅れる米海軍の計画、コンステレーション級は最大3年遅れる可能性
関連記事:フォード級空母3番艦の引き渡しは18ヶ月遅れ、調達とサプライチェーンに問題
関連記事:予算不足の米海軍、バージニア級の後継艦建造を2040年代初頭まで延期
関連記事:米海軍は資金不足、中国海軍とのギャップが287隻対395隻に拡大する可能性
関連記事:米海軍の不満が爆発、発注したバージニア級原潜は何処に消えたのか?
関連記事:米海軍が直面する厳しい現実、造船業界に攻撃型原潜を増産する余裕はない
関連記事:余裕のない米造船業界、海軍はメンテ作業遅延で約7.5隻分相当する原潜を失う
関連記事:自滅する米海軍、1年あたり12万9,600時間をメンテンナス遅延で浪費

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy Petty Officer 2nd Class Connor Burns

BILD記者、ウクライナはパトリオットの迎撃弾とIRIS-Tを使い果たした前のページ

ウクライナメディア、約2週間の攻撃で原発6基分相当の発電能力を失った次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    またF-2と同じ運命? 米国、日本の次期戦闘機「F-3」開発は日米同盟の象徴となる

    米国のシンクタンク「大西洋評議会」は17日、日本の次期戦闘機「NGF(…

  2. 米国関連

    ウクライナの反攻作戦、ハルキウやヘルソンほどの成功は見込めない

    ワシントン・ポスト紙は11日「流出した機密文書の内容とバイデン政権の発…

  3. 米国関連

    米国、スクラムジェットを使用した極超音速巡航ミサイル「HAWC」の試射に初成功

    米国防高等研究計画局(DARPA)は27日、吸入空気式のスクラムジェッ…

  4. 米国関連

    米下院がイスラエル支援法のみを可決、ウクライナ支援継続は不透明

    米下院は143億ドルのイスラエル支援法案を226(民主党議員12名が賛…

  5. 米国関連

    DF-17開発に携わった中国人技術者の米国亡命、中国の実力を推し量るチャンス

    亡命した中国人技術者が米国の極超音速兵器開発に大きなブレークスルーをも…

  6. 米国関連

    米海軍、次世代戦闘機「F/A-XX」開発費捻出のため「F/A-18E/F」調達中止を発表

    米海軍は次世代戦闘機「F/A-XX」開発プログラムに資金を回すため、F…

コメント

    • もへもへ
    • 2024年 4月 12日

    もともと西側の兵器って性能高いが値段高くて多数の配備は出来ない。
    それを補う為に高稼働率って感じだと思ったんだけど、もはや稼働率何それ状態ですね。

    アメリカはxxと違って後方支援に力を入れてるっていう言説は既に完全に神話とかしましたね。
    まともに開発出来ない、作れない、整備できない。
    じゃぁ何が出来ると。

    38
      • kitty
      • 2024年 4月 12日

      前線にアイスクリームを配達する能力とか。

      14
      • REX
      • 2024年 4月 12日

      まぁ、、でも戦争になれば今ある資源リソースを全振りしてきそうな底力は感じるんだよなぁ。
      頭脳も労働者もいるし(ただし金融業や保険業)
      普段ダラダラしてるけど夏休み終わる2日前に全力出して間に合わせる頭のいい鈴木君おもいだしたわ

        • 匿名
        • 2024年 4月 13日

        >今ある資源リソース

        それ、実は全部中国大陸にあるんじゃないですかね…🤔

        8
    • 匿名
    • 2024年 4月 12日

    かつてのオスマン海軍みたいになってきたな、見かけは立派だけど使い物にならないって…
    盛者必衰ですね。

    27
    • AH-X
    • 2024年 4月 12日

    今回は舵の問題ですけど、蒸気タービン艦って運用がやっぱり面倒なんですね。

    4
      • 無印
      • 2024年 4月 12日

      ガスタービンやディーゼルの艦が増えてきて、蒸気タービンを扱える技術者が減ってる、って話を聞いたことがあります

      19
        • 名無し三等兵
        • 2024年 4月 12日

        ディーゼル/ガスタービン主機では自動化が進んで機関室の無人化も達成してますからね
        米海軍の場合、原子力空母も突き詰めれば蒸気タービン艦です、減ってるとは言え今後も
        蒸気タービンを扱える技術者がいなくなるわけでもないんですが、通常動力では
        ボイラー+タービンで、ボイラーの温度や蒸気圧管理とか原子力艦とはまた違った
        アナログ的要素があって運転や保守に経験が必要なのがネックなんですよね
        船舶用蒸気タービン主機の省人化や自動化はやってやれなくはないでしょうが、もはや
        ディーゼル/ガスタービン全盛時代に、今さら絶滅危惧種な通常動力の蒸気タービン艦に
        大金かけて自動化するのも無駄なんで、後継のアメリカ級はCODLOG方式で蒸気タービン
        とはおさらばです。アメリカ級に置き換わるまで騙し騙し運用するしか無いでしょうか

        7
    • あのん
    • 2024年 4月 12日

    >取り付け位置を間違った蒸気タービンエンジンの強制通風ファンが2022年11月8日に故障、
    >乗組員が定められた手順を厳守しなかったため2023年5月14日にボイラーが故障、
    >2023年7月11日には潤滑油がないまま作動させた減速機が故障

    これはひどいwww
    ・・・いや、笑い事じゃないけどさ。

    32
      • kitty
      • 2024年 4月 12日

      配線逆に繋いで虎の子の国産機を墜落させた国もあるんですよ。

      8
        • ボブ3
        • 2024年 4月 12日

        ここのコメント欄もすっかり嫌味ったらしい連中の巣窟と化してしまいましたね。

        45
        • ザバ
        • 2024年 4月 12日

        バカの一つ覚えって言葉知ってる?

        15
        •     
        • 2024年 4月 12日

        知らなかったので調べてみたら定期整備中の事故とは…
        試験飛行でもダブルチェックは必須ということですね。

        2
        • VRTG
        • 2024年 4月 12日

        F-2のジャイロの件なら、意図的な工作でしょう。
        あの手の、誤配線が致命的になる接続は、ケーブルやコネクタの色・形状で誤接続不可、かつ万が一にも一目で判るようにするものです。
        なので、問題は誰がやったのかを特定できない管理体制でしょう(もっと深刻とも言う)。

        11
      • イーロンマスク
      • 2024年 4月 12日

      現場Tom猫A「おれじゃない」
      現場Tom猫B「あいつがやった」
      現場Tom猫C「しらない」
      現場Tom猫D「すんだこと」

      20
    • ななし
    • 2024年 4月 12日

    ここまでくると共産圏の工作員によるサボタージュの疑いがあるんじゃないかと思うようになってきた

    10
      • 朴秀
      • 2024年 4月 13日

      上層部はいっそ中国の工作であって欲しいと思っているでしょうね

      中国「何もしていないのに勝手に敵が弱っていくんだが」

      5
    • 辻政信
    • 2024年 4月 12日

    米軍も張子の虎か

    9
    • 名無し
    • 2024年 4月 12日

    ワスプ級は同型艦はいなかったはずでは?
    (脳ミソ第二次大戦で止まってる)

    8
    • 土台の腐りかけた納屋
    • 2024年 4月 12日

    大きな敗戦をしたわけでもないのに軍の維持が怪しくなっていくところ、いかにも帝国の末期感が。

    新兵器の開発ができない、保守ができず実態を伴わない、傭兵化(兵器の製造等を海外に依存するようになる)。

    そしてどれも原因は分かっているのに、どうにもならないし改善する気もあまりない。戦史でたまに見る、陣容はあるのに何故か不活発な軍隊ってこんな感じだったんですかね。

    28
      • 阿呆
      • 2024年 5月 30日

      F-35が欠陥品だったのでその運用艦が使えなくても問題無いでしょ?

      1
    • まめ
    • 2024年 4月 12日

    アメリカの国力の低下を感じるな

    9
    • 金平糖
    • 2024年 4月 12日

    米軍周りではもうモノづくりメンテナンス運用系を丁寧にきちんとやり続ける風土が維持できないんだろうな。
    これだけ(トライアンドエラーが許され信頼度の許容幅が広い)AIやICTへの感心が高い時代になると、(1つの失敗で壊れ信頼度の高さを必要とする)モノを扱う風土の維持って本当に難しいと思う。

    特に米軍って戦う軍隊で着実系指向の人材重視じゃないだろうし…
    これも米国が韓国とか日本企業にサプライチェーンに加わって欲しい理由と思う。

    2
    • たむごん
    • 2024年 4月 12日

    海軍が、F35(艦載機)に予算を割いても、船がポンコツではどうしようもないでしょうからね…。

    6
      • 戦略眼
      • 2024年 4月 12日

      F-35も引き渡しが遅れているし、ドッコイかな。

      4
    • Bak.
    • 2024年 4月 12日

    現場をケチりすぎ。
    金融やITの爆発的な利益率と比べると現場に金を掛けれないのはわかるけど、それでボクサー級全滅とか、ケチるところを間違えてる。…のだけど、アメリカの何をどう変えたら直せるのかわかんねえのよな…

    7
    • 折口
    • 2024年 4月 12日

    こう続くと流石に不安になりますね。米国の強襲揚陸艦については全然分からないのですが、ワスプ級はタラワ級をベースに作られたということなので、基礎設計が古いのかもしれませんね。レガシー技術の活用といえば聞こえは良いですが、例えばタイプライターを整備できる人間を探して雇うのに1924年と2024年では難易度が全然異なるのと同じような事が海軍でも起こっているのでは。

    7
    •  
    • 2024年 4月 12日

    西側の大黒柱がこれじゃあ本当に不味い…海軍は海洋国家の土台なのに腐り落ちてしまったら誰が海を超えて繋ぎ止めてくれるんだ

    3
    • 暇な人
    • 2024年 4月 12日

    アメリカの保守派が米国は工業国に戻らなければならないって言っているのがよくわかる。
    日本も工場がどんどんなくなっていくからなあ・・・

    5
      • 匿名
      • 2024年 4月 13日

      米国民:「誰もブルーカラーには就きたくないのである!」

      3
        • ヒュー
        • 2024年 4月 13日

        空調の効いた綺麗なオフィスでデスクワークしたいは世界共通ですからね…
        日本も「職人すごい」だの「ライフライン支えてありがとう」的な綺麗事がたまにトレンド入りしますが
        じゃあ貴方がやればとか我が子にそれをやらせたいかと言われればノーですからね。

        5
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP