欧州関連

ドイツは宇宙安全保障にも大規模投資、5年間で6.1兆円を投資すると発表

ドイツのピストリウス国防相は25日「宇宙能力は陸海空の戦場を決定付ける重要な要素だ」「ドイツは宇宙分野においても大きな責任を担う覚悟がある」「サイバーセキュリティを含む宇宙安全保障に5年間で350億ユーロ=約6.1兆円を投資する」と発表した。

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参考:German military to invest $41B in space capabilities
参考:Germany unveils $40bn military-space investment, citing new threats
参考:Pistorius: Bis 2030 fließen 35 Milliarden Euro in Weltraumsicherheit

宇宙には国境がなくドイツは宇宙空間においてロシアと中国の隣国、我々は宇宙でも自衛できるようにならなければならない

欧州の宇宙開発は23ヶ国が参加する欧州宇宙機関=ESAが中心的役割を、その中でもフランスは宇宙分野の研究開発、ESAへの出資、宇宙の軍事利用に年間30億ユーロ以上を投資しており、Quilty Spaceのヘンリー氏は欧州宇宙産業の現状について「欧州で誰に電話すればいいかという問いに例えるなら、これまで宇宙産業についてはフランスが中心だった」と述べたが、ドイツのピストリウス国防相は25日「宇宙能力は陸海空の戦場を決定付ける重要な要素だ」「ドイツは宇宙分野においても大きな責任を担う覚悟がある」「サイバーセキュリティを含む宇宙安全保障に大規模投資を行う」と発表。

ドイツは宇宙能力への妨害や攻撃に対するシステム強化、宇宙ベースのレーダー、光学センサー、次世代監視衛星を活用した状況認識力の拡張、ネットワーク化され衛星群による冗長性の確保、宇宙への確実な輸送能力の確保、宇宙軍司令部内への軍事衛星運用センター設置などに5年で350億ユーロ=約6.1兆円を投資する予定で、ヘンリー氏は「ドイツの大規模投資でフランスは欧州唯一の宇宙大国でいられなくなるかもしれない」「宇宙産業の中心がフランスからドイツに傾き始めている」「今回の投資はドイツの宇宙分野における自主性拡大に対する願望の集大成で、必要ならば単独でもそれを追求する意思の現れだ」と指摘した。

ピストリウス国防相が発表した宇宙安全保障への大規模投資には海外のディフェンスメディアも大きく注目しており、特にピストリウス国防相が「宇宙空間で信頼できる抑止力を維持するためには攻撃能力の開発を検討しなければならない」と言及したため「防御的だったドイツの宇宙政策にとって転換点だ」と報じ、ドイツのOHB、Isar Aerospace、RFAなどが今回の投資で最も恩恵を受けるのではないかと予想されている。

出典:Isar Aerospace

因みにピストリウス国防相は宇宙能力の獲得にスタートアップ企業のイノベーションを取り込むため「大企業をシステムインテグレーターとして活用し、スタートアップ企業の統合を官僚主義を排除して加速させる」「同時に短期的な能力獲得のため市場で入手可能なソリューションも検討していく」と述べており、年1.2兆円を超える投資に世界中の宇宙企業が関心を示すだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Isar Aerospace

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コメント

  • コメント (22)

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    • Authentic
    • 2025年 9月 26日

    すごい
    完全に瓶の蓋が開いたな

    19
      • Fッカス
      • 2025年 9月 26日

      あるいは「底が抜けた」のか.

      10
    • おさんぽ侍
    • 2025年 9月 26日

    この国は0か100しか無いんですかね…

    40
      • クルーズ
      • 2025年 9月 26日

      5年で宇宙アセットに6兆円投入するの気が狂ったのかと思いますが、目標は米軍のDSP衛星の後継のSBIRSや通信衛星みたいのを配備するのですかね?

      7
    • m
    • 2025年 9月 26日

    ドイツは徴兵制をどうにか出来たら装備・インフラ・人的資源で圧倒的になりますね。予算を増やしても徴兵制に対する忌避感が根強く人的資源が現状どうにもできない日本とは違って、継戦能力も高いレベルになりそうですね。今回はフランスもポーランドも含め周辺みんなお友達になってるので、ロシアにとってはWWIIや冷戦期よりもタチ悪い対戦相手では?

    14
      • hoge
      • 2025年 9月 26日

      FCASもそうだけどフランスはロシアの凍結資産没収に反対してたり
      「NATOにロシア軍機が入ってきたら即座に撃墜する、なんて判断はあまりにも短慮」という見解を示していたり
      フランスとドイツの間には隙間風が吹きだしてるね

      ドイツは相変わらずAfDの政策を一顧だにしないという民主主義に敵対的な姿勢をとっているが
      (ウクライナ支援の名目は民主主義を守るための戦いだったのでは?)
      フランスはそろそろ現実見るようになった感

      8
    • 電話猫
    • 2025年 9月 26日

    宇宙分野ってごく一部の例外を除けばすごく保守的な世界なんだがなぁ…
    どんなに性能が良くてコスパ良くても使用実績がなければ見向きもされない世界で、フランスは専門のテスト機関とかが揃ってるからそういう実績がめっちゃ積み上がってるわけだけど
    単に金を積むだけじゃあ成果が上がってくれる世界ではないのはドイツわかってんのかなぁ…
    それとも耐久ガン無視の使い捨て衛星とかそういう方向でやるのか?

    16
      • kitty
      • 2025年 9月 26日

      我が国は、予算規模こそ小さいですが、ずっと継続していたからこそ、まだ開発企業が残っているわけですが、急に1.2兆円をぶち込んで、ドイツ国内でまともに消費できるんですかね。
      ESAとの案分もどうなるのやら。

      22
        • 山田さん
        • 2025年 9月 26日

        日本の宇宙開発予算は少なくないですよ。
        米中の次で、世界3位です。
        JAXAだけ見ると少なく感じますが、防衛省や内閣衛星情報センターの予算を合わせると、年間5000億近くなりますし、民間市場だってあります。
        米中と比べると物足りないところはありますが、ロシアや欧州各国とは、比べ物にならないですよ。

        23
      • nednir
      • 2025年 9月 26日

      打ち上げロケットはともかく衛星なら要素技術はドイツにもあるでしょうし、金出せば官需は作れるのでキャッチアップは比較的マシかも。補完的な部分があるならうまい感じに日本も関われればいいですね。

      しかし日本はお国との付き合いのために中小企業が職人芸の激安製造してるというけど、欧州はどうなんですかねえ。案外似たようなもんなのかもしれませんが。あるいは欧州全体をサプライチェーンとして使えるからチェコあたりが部品作ってたりするのかなあ。

      6
    • nk
    • 2025年 9月 26日

    神聖ローマ帝国崩壊で終焉ドイツ第一帝国、第一次大戦敗北で終焉ドイツ第二帝国、第二次大戦敗北で終焉ドイツ第三帝国、現EU体制も経済に関してドイツいないとお話にならないレベルである意味すでにフランスと並び寡頭制の様なものですがさらに過去の因縁振り切って本格的に軍備増強に入り今回は周辺国の理解もそれなりには得れそうということで、ドイツ完全復活に向けて急速始動してますが国内政治基盤の弱さに経済と移民問題をどう切り抜けるのかお手並み拝見でしょうか。

    8
    • DEEPBLUE
    • 2025年 9月 26日

    ドイツが中国と本気で対峙するのかねえ。過去が過去なので疑わしい

    10
      • とある帝國臣民
      • 2025年 9月 27日

      AfDが政権取れば反中親日に成るかな?

      2
    • 山田さん
    • 2025年 9月 26日

    宇宙開発って、金だけでなく膨大なニッチノウハウを要求してくるので、そんな短期間で成果出ないですけどね。
    日本の衛星開発も、要素研究や実証実験に五年、フライトモデルの製造に五年、合わせて十年くらいは普通にかけてますし。
    日本の宇宙安全保障は世界トップクラスだと私は思っていますが、これは北朝鮮の弾道ミサイル発射に端を発する、三十年もの歴史の積み重ねによるものですし、そうそうキャッチアップ出来るものではないと思いますね。

    11
    • PAC3
    • 2025年 9月 26日

    フランスは南米の海外県ギアナからロケットを打ち上げていますが、打ち上げは欧州外へ委託なのでしょうかね?

    5
    • たむごん
    • 2025年 9月 26日

    ドイツを抑え込むことが、NATOの目的でもあり、東西ドイツ統一も東西両陣営が警戒してたんですよね。

    ウクライナ戦争をきっかけに、賽は投げられたということで、この帰結がどうなるのか見守りたいと思います。

    9
    • あうあうあー
    • 2025年 9月 26日

    自由主義陣営と中露枢軸のデカップリングによって既存の経済モデルが行き詰まったために経済停滞中のドイツですが、
    中長期的に見れば「欧州随一の経済大国にして先進工業国」という地位はむしろ強化されていくでしょうから、
    これだけ様々な分野に大規模な投資をしていれば、民生技術への派生も起きることでしょうし、ドイツの経済と技術の未来はけっこう明るいのではないでしょうか。

    そのような強すぎるドイツをヨーロッパは受け止めることができるのか?という政治的な問題は浮上するでしょうけども。

    9
    • 反革命分子
    • 2025年 9月 27日

    ロシアが宣言通りウクライナ(の一部または全部)で止まって、20年くらいもすれば過去の話となりなあなあになって交流も欧露関係も改善してくると思います。

    当然そうなれば「疲弊したロシア相手に軍備が過大」「直接戦争になる可能性は低く過剰な軍備である」とか言われて軍縮の機運になってくるでしょうが、過渡期には周辺国を圧迫しうるドイツ軍が現れるわけで・・・

    ポーランドのおかげで独走状態にはならないでしょうが、将来的な不安定要素になるんじゃないかと思います。

    4
      • 匿名11号
      • 2025年 9月 27日

      >ロシアが宣言通りウクライナ(の一部または全部)で止まって、20年くらいもすれば過去の話となりなあなあになって交流も欧露関係も改善してくる

      そりゃあ可能性は何事にも存在しますがね。

      肝心の欧州各国が現在その可能性を信じられなければどうにもなりますまい。まあ過去20年のロシアの振舞いを見てればねえ。

      4
    • elmoelmo
    • 2025年 9月 27日

    ドイツはかつて、「我々は先の大戦の後遺症が大きすぎて
    独自の宇宙ロケットを保有できない。H2ロケットを持つ日本が羨ましい」というようなことを言っていた記憶があります。
    安全保障環境の変化をきっかけに、その鬱憤を一気に晴らすつもりでしょうか…?

    2
      • タルト
      • 2025年 9月 27日

      「我々は先の大戦の後遺症が大きすぎて軍隊を持つことができない。軍隊を持つドイツが羨ましい。」
      (実際には大戦云々ではなく、憲法ができた年なんですけどね。戦後すぐ憲法が作られた日本は軍隊不所持となりましたが、ドイツの憲法ができた時には冷戦が顕在化していたため、軍隊を許された。)

      5
    • 航空太郎
    • 2025年 9月 27日

    予定はご立派ですけど、連立政権で足元ぐらぐら、経済不調、不法移民問題で国内は大荒れ、自動車産業も疲弊してますし、予定通り、今後5年間、継続した予算確保ができるかどうかさえ怪しい話でしょうね。あとドイツ、ほんと0か100しかないのかって思いますよね。中庸という概念は存在しないんでしょうか。

    5

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