Saabのヨハンソン最高経営者は5日「カナダはF-35とグリペンの両方を保有する二重艦隊を構築することで米国に依存しすぎない方法を検討している」と、Capital Alpha Partnersも投資家向けの説明で「カナダがF-35A調達を縮小するかもしれない」と言及した。
参考:Saab floats Gripen production hub in Canada, if Ottawa were willing
参考:Saab shares ‘detailed information’ on Gripen with Canada as part of ‘dual fleet’ pitch
カナダの決断は欧州諸国(もしくは世界)の武器調達における脱米国への動きを加速させるかもしれない
トランプ政権のカナダ併合発言や関税問題の影響を受けて加米関係は大幅に悪化し、カーニー首相は「防衛と安全保障上の優先事項」に関する演説の中で「米国の優位性は過去のもの」「現在の米国は覇権的地位を金銭獲得のため利用している」「安全保障分野への追加投資は国内産業を強化して米防衛産業への支払いを削減するためのものだ」「カナダは欧州再軍備計画に参加する」と発言し、F-35A導入見直しを指示した。

出典:Public Domain CF-18A/B
カナダ政府は2022年3月「CF-18A/B後継機プログラムの優先交渉者にLockheed Martinを選択した」と発表し、Lockheed MartinとF-35A取得に関する契約を2023年1月に締結したが、これは88機分の一括契約ではなく「16機分」のみで、カーニー首相が指示したF-35A導入見直しとは「このままF-35A導入を予定通り継続するのか」「それとも残り72機調達を中止して別の戦闘機に切り替えるのか」で、後者の選択肢に浮上しているのはグリペンEだ。
スウェーデンはグリペンEを含む防衛装備品をカナダに売り込むため国王夫妻、政府関係者、企業関係者で構成した代表団を昨年11月に派遣、Saabのヨハンソン最高経営者は加国営放送=CBCに対して「カナダ政府が戦闘機2機種の並行調達を選択すれば、グリペン初号機はF-35Aがカナダ国内の基地に到着する2028年頃までに取得できるだろう」「生産状況に左右されるもののグリペン初号機は概ね3年~5年で出荷できる」「グリペン生産の拡大に伴ってカナダ国内でも最大9,000人~10,000人の雇用が創出される」と言及。
ジョンソン国防相も「グリペンに対する急激な需要増にスウェーデン単独では対応できない」「我々はウクライナへの大規模なグリペン移転に備えて新たなパートナーを探している」「カナダの航空電子産業が擁する熟練した労働力はグリペンの生産拡大にとって最適なパートナーだ」と語り、カナダのジョリー産業相はSaabとスウェーデン政府が提案する優遇措置(カナダ国内で雇用創出、Bombardierを含むカナダ企業との提携拡大、完全な技術移転)について「本当に興味深い」と評価した。
さらにカナダ空軍のジェフ・スミス司令官は「我が国の規模を考えれば(戦闘機の調達数が)88機というのは決して多くない。政府が将来的な追加調達を決定するのであれば、我々および同盟国にとって有益なものとなるだろう」と言及、ヨハンソン最高経営者も投資家向けの説明で「カナダはF-35とグリペンの両方を保有する二重艦隊を構築することで米国に依存しすぎない方法を検討している」「我々は技術移転のスピードや現地生産の拠点を立ち上げるのにかかる時間について詳細を提供した」「契約が締結されればカナダの拠点が将来的なグリペン輸出の拠点としての役割も果たすことになる」と言及。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Zeeshan Naeem
この問題はF-35AとグリペンEの「どちらが優れているか」というカタログスペックの優劣ではなく「カナダの対米関係見直し」に直結しているため、ヨハンソン最高経営者も「カナダが最終的にグリペンを取得するかどうかは高度な政治的決断に左右される」「契約がいつになるかはわからないが、これについては集中的な議論を行っている」と指摘し、Capital Alpha Partnersも投資家向けの説明で「カナダがF-35A調達を縮小するかもしれない」と、駐カナダ米国大使も「トランプ大統領の脅しが原因だ」と言及。
Capital Alpha Partnersは「カナダがF-35A調達を縮小すればF-35向け部品製造がカナダ企業から引き揚げられるかもしれない」「グリペンEはGEが供給するF414Gに依存しているため、F-35AからグリペンEに調達機種を変更しても米国が依然として影響力を保持できるかもしれない」「それでも隣国の主権に対するトランプ大統領の脅しを考慮すれば、カナダが防衛サプライチェーンを多様化させようとする動きは賢明な措置だ」と指摘し、ここでも高度な政治的駆け引きがあることを示唆した。

出典:SAAB
要するに「グリペンEもエンジン供給に依存しているなら、米国の影響を受けるという点でF-35Aと代わりがないではないか」という意味ではなく、重要なのは「カナダ産業界がF-35向け部品製造からグリペン製造に転換すれば、それだけ米国の影響力が低下する」という点だ。
装備調達先の多様化は「極端な米国依存からの脱却」を意味し、F-35A調達を縮小(もしくは残り72機の調達中止)に踏み切れば「もはや米国は信用できないと西側の主要国が判断した」という強力な政治的メッセージとなる。これが同じようにトランプ大統領の脅しに直面している欧州諸国の「脱米国」に拍車をかけるかもしれない。

出典:左 WHITE HOUSE / 右 Taylor Budowich
当然、何らかの決断が下されても米国からの自立が直ぐに達成できるわけではないが、カナダの決断は欧州諸国(もしくは世界)の武器調達における脱米国への動きを加速させる可能性があり、さらにゴールデンドームの兼ね合いもあるため、カナダと米国にとってF-35A導入見直し結果は政治的に大きな影響を及ぼすだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB





















NORADの観点から、カナダのグリペン導入のメリットデメリットについて、触れていたのが興味深かったんですよね。
(5:30~)アメリカが北米防衛のために、より多くの自国戦闘機を投入する必要がでるかもしれないという示唆があり、米軍関与がより深まるかもしれないという点です。
(玉突きで)日本目線で見れば、極東への戦力配置が薄くならない事を願いつつ、欧州・中東など他方面にも何らかの影響がでることになるのかも見守りたいと思っています。
(2026/01/31 F-35中止で北米防空崩壊? 米国が示唆した『NORAD見直し』の正体 ミリレポ Youtube)
政治的メッセージだけでなく、F-35の部品生産国の減少は直接的にサプライチェーンへの大きな打撃になりますからね…(だから本邦も他人事じゃない)
グリペンやK9など『自国製造してもOK』な兵器を作って、自力で防衛力を高めるのは良いんだけど「米国の優位性は過去のもの」ってのはカナダの軍事力的にどうよ。中国が言うならともかく。
カナダは先日「中国のがましだ」みたいな事を言ってたので比較対象は中国では…
カーニー首相の「米国の優位性は過去のもの」発言は「防衛と安全保障上の優先事項」に関する演説の中で言及されたもので、私は「防衛と安全保障においてカナダが配慮してきた米国の優先性は過去のもの」の趣旨と解釈してました。
F414を人質にした横槍についてはコロンビアの時にSaabが否定してたし、
30年前ならともかく現代においてF414なんて「よく出来た小型高推力エンジン」でしかない訳で、「売らないぞ」といえば「ほな換装するか」となるだけじゃないかなぁ。
全く同等やそれ以上ではなくとも代わりになるエンジンなら複数あるし、換装の開発や試験が多少高くついて仮に多少性能が落ちてもそれでアメリカの首輪が1つ外れるなら喜ぶ顧客は少なくないでしょうし。
ただでさえアンダーパワー気味なのにF414より低性能なエンジンに換装するのはナンセンスかと…
さらに言うとエンジンだけでなくアビオニクスの主要部品にもアメリカがガッツリ関わってますし。
私は「だからGEはF414を売らないぞ、なんて言わない(言えない)」と言ってるんですが。
とはいえ別にEJ200やM88に換装したところでコストや納期はともかく性能面で致命的に破綻するとも思いませんけどね。
話のハードル下げるために「それ以上ではなくとも」とは言ったけどEJ230のカタログ値は提案時でもF414より上だった訳で、今ならそれ以上の物もできるでしょう。
もちろんそれだけでITAR-freeになるとは言わないけど1番大きな枷が1つ外れるのは大きい(だからこそ「首輪が『1つ』外れる」という言葉を選んでます)。
元々欧州の武器システムのITAR-free化が進んでるのはここの過去記事でも取り上げられる話でこの話もその一環でしかありませんし。
最初からロシア戦況とか足突っ込むなよw3流ミリオタ風情が
オタ同士の慰めブログで今後もよろしくお願いしとけや
わざわざ見に来てまで誹謗中傷を書き込むとかよっぽど暇なんだなw
ミリオタ馬鹿にする奴がなんで軍事情報ブログ見に来てんだよ
ここより良質の軍事メディア日本で探すのは難しいと思うけど頑張れww
おまえの知能ではここに書いてあることの1割も理解できんだろうな