ロシア軍の夏季攻勢は比較的静かだった前線の戦闘も活発化させており、DEEP STATEとRYBARは1日までに「ロシア軍がハルキウ方面ボルチャンスク方向、シヴェルシク方面、コンスタンチノフカ方面チャシブ・ヤール、ザポリージャ方面ドニエプル川沿いで前進した」と報告した。
参考:Успехи в Волчанске
参考:У ворот Северска освобождение Верхнекаменского и наступление ВС РФ на запад
参考:Минобороны России
参考:Мапу оновлено
参考:Окупація населеного пункту Кам’янське Запорізької області
ハルキウ方面ボルチャンスク方向
DEEP STATEはハルキウ方面ボルチャンスク方向について7月17日「ロシア軍がハティシチェを占領した」「ロシア軍がボルチャンスク北西郊外でヴォヴチャ川を渡河して前進した」「ロシア軍がボルチャンスク南岸市内の工業地区に迫っている」と、27日「ロシア軍がティケ方向で前進した」と報告していたが、RYBARも8月1日「ロシア軍は7月中旬から下旬にかけてボルチャンスク方向で活動を強化し、現在はボルチャンスク北岸地域を完全な支配下に置いている」と報告。
“ボルチャンスク周辺地域では第6諸兵科連合軍の第68親衛自動車化狙撃師団と第69親衛自動車化狙撃師団が順調に前進している。ボルチャンスク市内でも第44軍団の第128独立自動車化狙撃旅団が敵の抵抗を打ち破ることに成功した。市内の北岸地域では領土防衛隊、国境警備隊、複数の機械化旅団から抽出された「寄せ集め部隊」は持ちこたえることが出来ず、ロシア軍がヴォヴチャ川までの市内を完全な支配下に置いている”
“ロシア軍は南岸地域の消防署付近に定着して足場を固めた。ヴォヴチャ川に架かる複数の橋を確保して南岸地域の支配地域を広げれば、ここを守るウクライナ軍はシネルニコヴェとツェヘルネを経由する道路=T-2104から切り離され、既にビリィ・コロディアズ経由の道路もドローンオペレーターと砲兵の攻撃を受けているため、ボルチャンスク南岸地域への補給はドローンに依存することになるだろう”
ロシア軍の夏季攻勢においてボルチャンスク方向の優先順位は高くないと思われるものの、この方向におけるDEEP STATEとRYBARの評価は概ね一致しており、ボルチャンスクの状況は香ばしくなってきた。
シヴェルシク方面
DEEP STATEはシヴェルシク方面について31日「ロシア軍がヴェルフノカミャンスケをほぼ占領した」「ロシア軍がイヴァノ・ダリウカをほぼ占領した」と報告、これを受けてRYBARも1日「敵がヴェルフノカミャンスケ周辺で領土を失ったと認めた」「ロシア軍は7月中旬までヴェルフノカミャンスケを解放してノヴォセリフカ(恐らく廃村になった何も存在しない荒野)への進入路に接近した」「さらにロシア軍がシヴェルシクへの進入路の1つ=Ⓐを攻撃する映像も登場した」「この方向でロシア軍が成功した要因の1つにウクライナ軍司令部が状況認識力を喪失したことが挙げられる」と報告。
“嘘報告はウクライナ軍全体で広く見られるが、シヴェルシク方面でも珍しく嘘報告が行われロシア軍にとって有利に働いた。ウクライナ軍司令部は重要な拠点=ヴェルフノカミャンスケの喪失を把握していなかった可能性がある。現地部隊はヴェルフノカミャンスケの喪失を長い間隠すことに成功したため、これを巧みに利用したロシア軍は防衛ラインを大きく突破して足場を築くことに成功した。まだシヴェルシクに対する攻撃は開始されていないものの、現在の状況を加味するとさらなる成功に期待できる。ウクライナ軍は増援を派遣中でセレブリャンカに対する攻撃を阻止してくるだろう。この拠点はシヴェルシク攻略において重要な意味をもつ”
RYBARの報告は数日前の報告と内容が真逆で、ウクライナ人がウクライナ軍の嘘報告を、ロシア人がロシア軍の嘘報告を指摘すれば「本当かな」と思うが、ロシア人が「嘘報告はウクライナ軍全体で広く見られる」と書くと「ロシア軍の成功」が嘘くさく感じられ、これはウクライナ人が「嘘報告はロシア軍全体で広く見られる」と書いても同じだ。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
どちらにしてもDEEP STATEとRYBARは「ロシア軍がヴェルフノカミャンスケを占領した」「この方向のグレーゾーンのセレブリャンカ西郊外に達している」という評価で一致し、ロシア軍兵士がセレブリャンカから1km以内にある陣地の掃討を行っている様子も登場したため、もうシヴェルシク方面はウクライナ軍にとってのボーナスステージではなくなっている可能性が高い。
シヴェルシク方面のロシア軍についても「2024年末までの認識」を改める必要があり、ビロホリウカやヴェルフノカミャンスケの占領は「ロシア人ミルブロガーらが酷評してた状況からの脱却」を強く示唆している。
コンスタンチノフカ方面チャシブ・ヤール
ロシア国防省は31日「チャシブ・ヤールを解放した」「ベロウソフ国防相はチャシブ・ヤールを解放した空挺軍の親衛隊部隊を祝福した」と発表、RYBARを含むロシア人ミルブロガーらも「ロシア軍がチャシブ・ヤールを占領した」と報告したが、ゼレンスキー大統領、ウクライナ軍、DEEP STATEはロシア国防省の発表を否定。
DEEP STATEはコンスタンチノフカ方面チャシブ・ヤールについて1日「ロシア軍がチャシブ・ヤール市中心部を占領した」「ロシア軍がチャシブ・ヤール市内のダーチャ付近まで前進した」と報告し、シェフチェンコ地区、ツェーフ2地区、ユージネ地区についてはグレーゾーンにすら収まってないものの、ロシア軍の支配地域はドニプロフスキー湖の南に広がる森林地帯に伸びている。
さらにロシア人ミルブロガーのДва майораは「チャシブ・ヤール郊外での戦闘は最近報告されたばかりだが、ロシア国防省はチャシブ・ヤール全体の解放を発表した。これはトランプの政治的駆け引き対するロシアの反撃だ」と指摘、RYBARもДва майораの投稿を引用しているため、ロシア人ミルブロガーらも「チャシブ・ヤール解放は軍事的なものではなく政治的なもの」と受け止めているのかもしれない。
ザポリージャ方面ドニエプル川沿い
DEEP STATEはザポリージャ方面ドニエプル川沿いについて31日「ロシア軍がカミアンスケ集落を完全に占領した」「ロシア軍がプラヴニ集落の約半分を占領している」「ステプノヒルスク郊外の高層区画までグレーゾーンが伸びた」と報告、視覚的にもウクライナ軍がステプノヒルスク郊外の高層区画=Ⓐでロシア軍兵士が隠れている地下室を攻撃する様子が登場し、ロシア軍が早くもステプノヒルスクに取り付き始めている。
DEEP STATEはドニエプル川沿いの状況や現地部隊の対応について「戦闘を継続していると表明するため「新たな部隊」をカミアンスケ郊外に配置しなことを心から願っているが、残念ながら現実の状況は願いの逆になっており、我々は再び同じミスを犯そうとしている」と指摘しており、これは「喪失した集落の郊外=十分な防衛拠点がない荒野で戦うのは不利だ」「戦闘が続いているかのように見せかけるのではなくステプノヒルスクまで引いた方がいい」という意味だろう。
ロシア軍がステプノヒルスクやプリモルスキーを確保するとザポリージャが見えてくるが、70万人近い大都市をドニエプル川沿いの一方向だけで落とすのは到底不可能なので、どれだ早くてもザポリージャ攻略について語るのは2026年以降になるはずだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

























シヴェルスク方面マジですか
ヴェルフノカミアンスケは廃村も同然だったので陥落は理解できるのですが……
あんなに堅固だったのに、一気に進んでいるのは気になりますよね。
結局「ビロホリウカ周辺の高台をとられたらシヴェルスク方面は終わり」という、かねてよりの分析に従って物事が展開しているように見えますな
規模感こそ異なりますがチャシブヤールとコンスタンチノフカでも、事態は相似的に推移するものと考えられます
ビロホリウカ周辺とんでもない粘りだったので、それだけ重要視されてきたのかもしれませんね。
アウディーイウカ~プロレス~ポクロウシク前面、ヴェリカノボシルカ東~ヴェリカノボシルカ南西~ヴェリカノボシルカ南・西・北~ヴェルカノボシルカなど。
高台沿い・高台からの展開がありましたので、仰る点で動きがでてくるのか注目ですね。
リマンを失ってから久しいので、ハリコフからアウディウカまでの鉄路をつなぐという意味ではシベルシクを今更落としてもそれ程の価値はなさそうですが、ルガンスクの資源を鉄道で南部最前線に移動できるところはプラスでしょうね。
ボルチャンスク・チャシブヤールなど、世界遺産の遺跡のようになっていて、日本で言えば大震災の後みたいに感じます。
ロシア軍による砲爆撃の火力を感じると同時に、戦争4年目でもロジスティクスが継続しており、何とも言えない驚きを感じますね。
ウクライナ前線歩兵は、過酷な環境の中で敢闘してきたわけですが、ゼレンスキーライン・掩蓋付きの防衛陣地整備が追い付いているのかは少し気になっています。
今回はウクライナ側の嘘報告らしいですがもう何が真実か嘘報告に情報戦も相まって毎度のことですが判断難しいですね。
結果だけ見ればウクライナはスムイ方面の安定に戦力を投入し他の戦線はロシアが地道に進軍しており、ロシアの本命の攻勢軸は恐らくはポクロウシク北側の兵站線への攻勢なのかなと思う所。
またドニプロ方面はウクライナ側の防衛ラインがどこに存在しているのか不明だし、カミアンスケは抜かれては非常に不味い箇所で後方に一応の防衛ラインはあるでしょうけど何となくロシアが思っているより大きく突破しそうな気がしますね。
Clement molinという方によると、ロディンスケやラジン周辺では7/11~7/18の1週間に450発の空爆があったそうです。
コンスタンティノフカやコマール方面よりも遥かに頻度が高く、ロシアの攻勢は滑空爆弾によって支えられているのでしょう。
去年の初夏くらいに軍事ブロガーのFighterbomberが、滑空爆弾の有効度が下がっているって発信してた記憶があるから、未だに有効なのはちょっと驚きました。電子戦はイタチごっこですからロシア側が対応させたのだと思いますけど、ウクライナ側は何か対策しないんですかね?そんな余裕はないのかな
去年の夏にはロシア側のGPS Gronassを妨害する電子戦技術が開発され,滑空爆弾の精度が著しく低下しました。
ロシアがPole21を大規模導入してウクライナ側のエクスカリバーやHIMARSが当たらなくなったのと同じ構図ですね。測位システムを妨害すれば誘導弾の有効性は大きく落ちます。
が、滑空爆弾のメリットは「パッケージがデカくて雑なので拡張しやすい」ことにあり。
衛星からのゲインを増やす専用アンテナや、不正な信号をフィルタする回路なんかを追加してまた当たるようになってるみたいです。
イタチごっこは戦場の常ですね。
が、パッケージ全部を自国で作れるロシアの方が改造の速度が速いので有利ではありますね。
情報ありがとうございます。
ゼレンスキー大統領たびたび対空火器の支援要請しており、週間700発~1000発の滑空誘導爆弾が投下されていると、会見で触れてきました。
『ロシア空軍はパーツ不足で稼働できなくなる!』という楽観論が流れていましたが、前提の情報が間違っていて現実を突きつけられると厳しく感じますね…。
(2024年10月7日 ロシア、週に滑空爆弾800発超 無人機400機も攻撃 日経)
(2025.8.2 ロシア軍、無人機3800機攻撃 7月だけで滑空爆弾5100発も 共同通信)
米軍がBー1爆撃機をアフガンで酷使して、予想より早く退役させざるを得なくなったという話がありましたが、今は設計寿命無視してでも運用してもいつかは部品供給特にロシア機はエンジンが足りなくなるでしょうね。
戦車は増産できてもエンジンはそうそう生産増やせないでしょう。
ただロシア空軍の機体が足りなくなるのとウクライナの継戦能力のどちらが早く尽きるかは…。
今後どうなるのか気になりますね。
滑空誘導爆弾の射程距離が伸びていること、ウクライナの対空火器が消耗・後方に下げている影響も気になっています。
レーダー回避のために、低空飛行からのトス爆撃は、戦闘機に負荷がかかりそうですが、攻撃に余裕がでれば消耗も抑えられるのかなと。
(ウクライナ戦争の戦訓を考えれば)投下直前直後それなりの速度さえでればよいわけですから・搭載量が多く・搭載数も多くできて・頑丈・扱いやすく・整備しやすく・製造しやすいなど、戦闘機の基本的な面も見直されるのかなと考えています。
@Witchwatch99 などまだ楽観論を主張する者はいますが現実が主張を打ち砕いてますね
どういった方なのかは存じ上げませんが…
日本に何の関係もない遠い戦場の話しで、上司上官でもないわけですからね。
(自分が)ウクライナ前線歩兵として、政治家・上官が楽観論だけ主張していたと仮定したら、何とも悩ましい気持ちになっただろうなと。
大本営発表は、基本的に、劣勢な側が「我が方は負けていない、我が方は勝っている」と言って偽るものです。
戦術的には「敵の猛攻を受けてます、増援下さい」ですけどね。大した事が無くても常にそう言うモンでしょう。死にたくなければ。
踏みとどまれという圧力が相当に強いんでしょうね。
多かれ少なかれ、双方ともあるのでは?
ソース忘れましたが、第二次大戦中の米国でも、国民を鼓舞するため、意図的な戦果の過大報告や損害の隠蔽はあったようですよ。
まあ日本ほど酷くはなかったでしょうけれど。
自軍司令部に嘘報告してしまったが為に、ウクライナ軍は増援を派遣することも無くシヴェルシク方面の重要な拠点・ヴェルフノカミャンスケを陥落されてしまうとは・・・いずれにせよ現地部隊は今回の嘘報告について「許される嘘」という認識だったのだろうか?って思います。
ちゃしぶやーるって水源がある都市でしたっけ?
運河は来てるけどね。台地の上にあって大きな貯水池があるでもないので水源というより、水管理の上で必要な土地かも
ポクロウシク-コンスタンティノフカ分断、ドニプロ州侵攻、チャシブヤール攻略というドネツク戦線の山場を越えたからか、最近まで優先されてこなかったサブ戦線(ボルチャンスク、シヴェルシク、ドニプロ川東岸)にテコ入れし始めたのかな?
特にシヴェルシクはチャシブヤール陥落(目前)で一気に重要性が上がったから歴戦の部隊が投入されてもおかしくないし。
ただの感想です。
この状況から、スターリングラード以降のドイツ軍みたいな、露助の敗走を是非見たいものです。
その条件が、兵站か、指導部か、ウクライナ側の戦力か、正直よく分らないのですが……