トルコのヴァランク産業技術大臣は今月15日、CNNの取材に対して「英国がトルコ製UAVの導入を真剣に検討している」と語り注目を集めている。
参考:UK interested in Turkish drones, we presented options: Minister
英国がトルコ製UAVを本当に導入すればNATO加盟国のポーランドがTB2を導入した以上の衝撃をもたらす
トルコが開発した無人航空機「バイラクタルTB2」は24時間以上の偵察・監視ミンションに加え、専用に開発された精密誘導兵器シリーズ「MAM」を携行することで地上や海上を移動する目標を遠距離(レーザー誘導式のMAM-Cなら最大8km、GPSと慣性航法を追加したMAM-Lなら最大14km、小型の主翼を備えたMAM-Tなら30km~80km)から攻撃することも可能で、昨年のナゴルノ・カラバフ紛争で目覚ましい活躍を見せたため「戦争のルールが変わった」とまで言われている。
この活躍を受けてトルコのヴァランク産業技術大臣は「多くの国からトルコ製UAVを販売して欲しいという要請が届いており、近いうちに欧州の空を飛んでいるバイラクタルTB2とアンカを目にすることになる」と語っていたが、NATO加盟国のポーランドが今年5月にTB2を24機導入すると発表、6月にはアルバニアがTB2を調達するための資金を予算に計上、ラトビアのパブリクス国防相はトルコを訪問してTB2導入を示唆する発言を行うなど待望の欧州進出が実現のもになったため海外メディアは「NATO加盟国がTB2の実力や有効性を認めた」と報じている。
一方でTB2は中東やアフリカ諸国からの受注も相次いでおり、今年4月にモロッコがTB2を13機導入、8月にはイラクがアル・ジュブリ国防相がトルコとTB2導入で合意したと発表、10月にはエチオピアへのTB2輸出が成立(ルネサンスダムで対立するエジプトを刺激しないため非公式の取引らしい)したと噂され、ブルガリア、ハンガリー、セルビア、ソマリアといった国も水面下でTB2導入交渉を進めているらしい。
上記の情報が全て事実ならTB2の運用国はトルコ、カタール、リビア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モロッコ、ポーランド、イラク、エチオピアの計9ヶ国に拡大したことになり、これにアルバニアやラトビアなどが加われば二桁の国がTB2を導入することなるのだが、ここに英国が加わるかもしれないというニュースが飛び込んできた。
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英国のベン・ウォレス国防相は昨年12月に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が主催の会議でTB2の活躍を取り上げ「これは無人航空機の分野でトルコが如何に先んじているかを示す一例だ、トルコが開発したシステムはシリアやリビアで何百輌も戦闘装甲車輌や防空システムを破壊することに成功した」と語り、英国防省も「アルメニア人を大勢撃破してナゴルノ・カラバフの占領地域返還を決断させる状況に追い込むのに決定的な役割を果たした」とTB2の活躍を認めて安価で武装可能な無人航空機を調達することを検討していると言われていた。
さらにEU離脱後の英国は防衛産業分野の協力や安全保障問題についてトルコと急接中で、今年4月にはウォレス国防相が空母プリンス・オブ・ウェールズにトルコのアカル国防相を招待して艦内を案内(クイーンエリザベス級空母の設計図売却の噂もある)するなど両国の親密さは加速度的に上昇しており、管理人は英国がTB2を導入したり両国が無人航空機の共同開発を行うのではないかと思っていたがヴァランク産業技術大臣は15日「英国がトルコ製UAVの導入を真剣に検討している」と明かして注目を集めている。
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CNNトルコの取材を受けたヴァランク産業技術大臣は「我々はトルコ製の武装無人航空機に大きな関心を示している英国に提案を行っている」と明かして「彼らは真剣に検討を行っており決断を行う必要がある」と付け加えたが、何を英国に提案したのかについてまでは明かしていない。
恐らく英国に提案しているは「バイラクタルTB2」か今年9月に実戦配備に入ったばかりの「バイラクタル Akinci」のどちらかだろう。
新型のAkinci/アキンジ(オスマン帝国時代に偵察や先遣部隊として用いられた軽騎兵を指す語句)は大型の双発機で米国のMQ-9を上回る最大離陸重量を誇り、ペイロードはTB2の10倍に達するためトルコ軍が最も期待している無人機航空機の1つだ。
本機はEO/IRセンサーに加えTB2ではオプション扱いだったAESAレーダーを標準搭載、精密誘導兵器MAMシリーズに加え国産対戦車ミサイルL-UMTAS、国産精密誘導キッドを装着したMk.81/Mk.82/Mk.83、国産バンカーバスターSARB-83とNEB-84、国産巡航ミサイルSOM-A(射程250km)、国産短距離空対空ミサイルMerlin(推定射程65km)、国産中距離空対空ミサイルPeregrine(射程不明/AIM-120D相当らしい)、国産対レーダーミサイルなどを運用をすることが可能でISR任務と本格的な戦闘任務の両立が可能になっている。
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まぁTB2とAkinciのどちらを英国に提案しているのかは今後の続報で判明すると思うが、仮に英国がトルコ製UAVを本当に導入すればNATO加盟国のポーランドがTB2を導入した以上の衝撃で、MQ-9を英国に輸出している米国のGA-ASIは完全に青ざめるに違いない。
因みに英国防省は今年3月、海軍のクイーン・エリザベス級空母に搭載することを想定した電磁式カタパルトとアレスティングワイヤに関するRFI(情報提供依頼書)を発行しているだが、、このシステムに要求される射出/回収性能はF-35BやF-35Cなどの戦闘重量に対応していないため有人機よりも小型な無人航空機向けだと言われている。
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もし英国に提案しているトルコ製UAVがこれに関係あるなら現在開発を進めているTB2の艦載機バージョン「バイラクタルTB3(TB2よりも大型化しており2022年に初飛行予定)」の可能性も出てくるので、英海軍のクイーン・エリザベス級空母でトルコ製UAVが運用される日が来るのかもしれない。
TB2の有効性についてはポーランドの国防相が興味深い説明を行っているので興味のある方はぜひ一読されることをお勧めします。
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※アイキャッチ画像の出典:baykarsavunma
イギリスがトルコのUAV導入!?
ちょっと信じられん。観測気球的な発言なのでは?
切羽詰まっているのかのう。
トルコリラが最安値更新してますね…
信じられないって何で?
観測気球ってなんにしても通ぶれる言葉でいいね
強い興味があるのは確かなんでしょうが、導入の可否は評価試験の結果次第。
コスト面も含めイギリスの運用構想を満足できるか、サンプル購入し独自の規格基準で評価してからでしょう。
日本も試験的に導入したら?
次期装甲車はそうやって比較してるんだから。
アキンジの武装がオールトルコですが、イギリスの武装は使えるのかな
そのあたりの改修やってもまだアメリカ製より安いですよ、って事なんだろうか
バイラクタルの武装の真骨頂は、バイラクタルありきの無推進滑空爆弾(MAM)だから、載せれるイギリスの武装が無いでしょう。
重いロケットエンジンが載ってないから、ヘルファイアの半分の重量で、ヘルファイアと同等の弾頭量、エンジン無いけどヘルファイアと同等以上の射程というチート兵器。
チートもナニも推進剤無い時点で運用の幅が狭まるでしょ(高空を飛ぶプラットホームにほど射程が伸びる)。チートが発揮出来るのは相手に高性能なレーダーと長距離対空ミサイルが無いときだけだからな。離島攻撃する時にESSM積んでいるような艦が近くに居たらアウト、地上でもASTER 30-SAMP/Tや中SAM、S-300ミサイルシステム、パトリオットPAC-2あたり装備されてたら、そもそも攻撃の機会なんて無いと思うが。
ほうほう、イギリスが購入を検討しているバイラクタルに、MAMを載せずにイギリスの武装を載せると、それらが解決できるんですかね。
正規戦回帰と言われても、目の前にあるMOOTWが辞められる訳ではない。「高性能なレーダーと長距離対空ミサイル」を持たない相手と戦うのに膨大なコストを蕩尽したイギリスにすれば、適正な値段で適切な性能の機体が欲しいのは当たり前。
うちの国でも研究用に2、3機は買って欲しい所
お試しするのも躊躇われるような高額な兵器ならともかく安いんだから
百聞は一見にしかず、まずは使ってみることが大事だと思う
グローバルホークをすでに3機買ったから財務省が文句言ってくると思う
納入前にすでに時代遅れになりそうだよなぁ・・・
用途が違うんだし…。
バイラクタルのデザイン、可愛くねぇんだよなぁ。
も少し何とかならんか。
あと、武装も買わにゃいかんのがネック。
ミソ作れんのかなぁ。
用途も違えば値段も全然違いますよ
来年度概要求に「小型の攻撃型UAVの運用に係る研究」として3,000万円を計上してるけど、これじゃ買えないね。
運用要領の研究てことだから情報収集かバーチャルシミュレーションでもやるんだろうか。
小型と言うならスイッチブレードあたりの話では?
そもそも安いの基準ってどれ位だよ。日本で使うならバイラクタルTB2の衛星通信は欲しい所だから1機+システム一式含めりゃ多分10億円で済まないだろ。具体的にどういう使い方を想定して研究用としてこんな高価な機体買えと言ってるの?1回マップでMQ-9とバイラクタルTB2の巡航速度でそれぞれ同心円描いてみて比較したらどうかな。正直、バイラクタルTB2レベルだと展開時間が長すぎてかなり事前に予測なりして展開してないと活用も出来ないと思うんだが?これは攻撃にも言える事で速度が遅いと言う事は弾薬補充にも時間が掛かると言う事。
TB2はシステム込みで1機あたり6億円もしないけど、衛星対応にすると倍になるのか?
ありえんだろ。
因みMQ-9はシステム抜きの米軍調達価格で約35億円ぐらい。
嘘はやめよう
TB2の機体単価は500万ドル システム込みで1150万ドル
衛星通信版はこれの1.5倍と言われている
リンク
モロッコの価格530万ドルにはからくりがあり、偵察に必要な地上の情報分析機器を購入していない
おそらくモロッコのTB2は観測と攻撃しか行えない
UAV界のカーデンロイドだな。立場が逆だけど
自衛隊はかつて防弾装備の検証にAK47やRPKを買ったと銃の雑誌で読んだので、そういう前例があると言い切ってこれを買わないかな。1から作るよりはパク・・・お手本があった方がいいと思うんだ
ぶっちゃけAESA積んで空母運用出来るなら、シークラッタの問題はあるかもしれんが早期警戒機としてはありかもな。
残念ながら自衛隊にはこういった無人機を試験調達する予算すらないのだ
非武装化して警察・消防や行政が購入するメリットは在りそうだな
防犯や防災と無人機運用ノウハウ目的に
それよりも試験的に自衛隊が購入できればいいけどね
米軍に邪魔されるだろうが
それはすでに海保がシーガーディアンを購入してやってる
海保?
海保も導入しろと書いてないがw
海保は海の警察だからじゃない?
要はお値段と要求する性能が合致するかだけの話。
確かこの機体かどうかは忘れたが、トルコが無人機を強襲揚陸艦で運用とかの話もあったから、F-35Bを補完させるとかの話も考えているのでは?