欧州関連

ポーランド農民によるウクライナ国境封鎖が拡大、5ヶ所の検問所で妨害

ポーランド農民はウクライナ産農産物に対する関税停止の延長に失望、9日から両国間の検問所(シェギーニ検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問、ヤゴディン検問所)を封鎖していたが、12日にウスティルーフ検問所とウーリニフ検問所でも抗議活動を開始し、検問所の封鎖が5ヶ所に拡大した。

参考:Поляки блокують загалом 5 пунктів пропуску на кордоні – Митна служба

影響を受けるトラックの範囲(7.5トン以上と3.5トン以上)が拡大

欧州議会の国際貿易委員会は先月末「ウクライナ製品(農産物や加工品等)に対する輸入関税や割当上限の一時停止措置」の1年延長を27対7で可決、この案が5月の本会議で可決されると当該措置の期間が2025年6月まで延長されることになるのだが、この結果に失望したポーランドの農民組合は1日「我々の忍耐力は限界に達した」「ブリュッセルの決定は受け入れがたい」「ポーランド当局の消極的な姿勢によってゼネストを宣言する以外に選択肢がなくなった」「ウクライナ国境を再封鎖する」と表明。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

個人経営の農民ら加盟する労働組合(Solidarność/連帯)は「31日の会合で全農民が参加するゼネストを全会一致で採択した」「このゼネストはウクライナとポーランドの国境を完全に封鎖し、各州の道路や高速道路も封鎖することから始まる」「ゼネストの期間は2月9日から3月10日まで」と発表していたが、ウクライナ国家国境庁は9日「ポーランド人農民による抗議活動(トラック通過を1時間1台に制限)によってシェギーニ検問所、ラーヴァ・ルーシカ検問、ヤゴディン検問所の通過が困難になっている」と明かした。

ポーランド政府は検問所での抗議活動を止めるよう呼びかけ「シェギーニ検問所」の封鎖が解除されたものの、ポーランド人農民は12日にシェギーニ検問所での抗議を再開、さらにウスティルーフ検問所とウーリニフ検問所でも抗議活動を始め、各検問所のトラック通過は1時間1台~3台に制限されている。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウスティルーフ検問所とウーリニフ検問所では3.5トン以上のトラック通過が制限を受けており、影響を受けるトラックの範囲(7.5トン以上と3.5トン以上)が拡大した。

因みにハンガリー農民も9日からザホニー地区で抗議活動(国境封鎖)を開始したものの、今のところトラックの通過を妨害していない。

関連記事:ポーランド農民がウクライナ国境封鎖、ポーランド農業相も農民の行動を支持
関連記事:欧州議会に失望したポーランド農民、ウクライナ国境封鎖を9日から再開
関連記事:ポーランドの運送業者と政府が合意、ウクライナ国境の封鎖は17日に解除
関連記事:ウクライナ国境の封鎖72日目、ルーマニア人農民も2つの検問所を封鎖
関連記事:ポーランド首相、現政権で反ウクライナ的態度をとる人間は絶対に許さない
関連記事:ウクライナ国境の封鎖61日目、ポーランド人農民が検問所の封鎖を再開
関連記事:ウクライナ国境の封鎖51日目、ポーランド政府が一部封鎖の解除に成功
関連記事:ポーランド人が抗議活動を再開、ウクライナへの入国を待つトラックは5,000台以上
関連記事:ウクライナ国境の封鎖45日目、再開される抗議活動は来年3月まで続く可能性
関連記事:ウクライナ国境の封鎖43日目、ポーランドの裁判所が抗議活動の再開を許可
関連記事:ポーランド新首相、民主主義のために戦うウクライナへの支援を呼びかける
関連記事:ウクライナ国境の封鎖38日目、ヤゴディン検問のみ封鎖の解除が実現
関連記事:ウクライナ国境の封鎖33日目、ドローンや暗視装置の輸入に数週間の遅れ
関連記事:26日目に突入したウクライナ国境の封鎖、スロバキア人も12月1日から封鎖に合流
関連記事:ポーランド運送業者によるウクライナ国境の封鎖、2024年2月1日まで延長
関連記事:ウクライナ国境の封鎖は19日目に突入、人道援助、LNG、ガソリンの輸送に支障
関連記事:ポーランド人によるウクライナ国境封鎖は15日目に突入、トラック輸送が停滞

 

※アイキャッチ画像の出典:pexels 国境封鎖とは無関係のイメージ

危機的なアウディーイウカ、ウクライナ軍は夏に何も準備してこなかった前のページ

変化のないドニエプル川の戦い、クリンキー集落内はグレーゾーン扱いが妥当次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トルコとウクライナが軍事協定を締結、バイラクタルTB2とエンジン技術を交換か

    トルコのエルドアン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は16日、トル…

  2. 欧州関連

    ゼレンスキー大統領、ロシアは年末までにウクライナの政権交代を狙っている

    ゼレンスキー大統領は20日「ロシアは我々の政権を排除するためならどんな…

  3. 欧州関連

    活気づくC-130更新需要、欧州で新たな中型戦術輸送機の開発が決まる

    フランス、ドイツ、スウェーデンの3ヶ国はC-130とCN235に代わる…

  4. 欧州関連

    遂にNATO加盟国までバイラクタルTB2を導入、ポーランドがトルコ製UAV導入を表明

    シリアやリビアの内戦で鍛えられナゴルノ・カラバフ紛争でブレークしたトル…

  5. 欧州関連

    トルコとスペインがトルコ海軍向け大型空母の建造で協力すると合意、無人機分野でも協力

    トルコを訪問したスペインのサンチェス首相とエルドアン大統領は首脳会談後…

  6. 欧州関連

    ポーランド法務相、着弾事件のミサイルはウクライナ軍が発射したものと発表

    ポーランドメディアは26日「11月に着弾したミサイルがウクライナ軍もの…

コメント

    • 名無し
    • 2024年 2月 13日

    日本でも特に侵攻初期から2023年の前半辺りくらいまでは、日本人の国民生活をある程度犠牲にしたり苦しい思いをしても民主主義と国際秩序を守るためにウクライナを支援しろという意見がかなりありましたが、他のコメント欄にもあるようにEUや米英の政治家や生活に余裕のある層と同じである種どこか他人事だからこそ主張できることであり、いざその負担がのしかかってきたら大半が掌を返してふざけるなと政府批判に転じるでしょうね

    不法移民の保護を主張して国境の壁に反対し、じゃあお前らが面倒見ろと現地から大挙して輸送されてきた途端に逆切れしてバス会社を提訴するとしたニューヨーク市のような左派やリベラルみたいに

    54
      • 774
      • 2024年 2月 13日

      そんなん最初から口だけに決まってるやん
      値上がりや増税で文句言う国民が遠い国の昨日今日知ったようなよくわからない国の為に自身の生活犠牲にするわけない
      残念なことに多くの国民はウクライナ戦争をスポーツ観戦の感覚で見てる

      21
      • たむごん
      • 2024年 2月 13日

      仰る通りです。
      ウクライナ復興増税やります!これ何%が支持しますかね?

      ウクライナが、日本に何ができるのか。
      日本の安全保障に、どんな影響を与えてきたのか。

      ヨーロッパの問題ですから、並行して、これらも再度問われるでしょうね。

      11
    • 古銭
    • 2024年 2月 13日

    ウクライナ側は農相や通商代表のような政治家に始まり偽情報対策センターやASMAP UAのような公的機関,メディア,各種利益代弁者・機関等と国家を挙げての非難と対決姿勢を続けているので問題を軟着陸させる切っ掛けがどこにも見当たらないのが現状です。
    ある意味では見慣れた東欧の日常ではあるのですが。

    13
    • hogehoge
    • 2024年 2月 13日

    ポーランド農民組合を全面的に支持します。
    ウクライナ産農産物を域内に入れるにしても工業用アルコールにすべきであって、いきなり食用市場に無制限放流するのは幾らなんでもEUは無責任過ぎる。
    ウクライナしか見えていないが、この対応はEUは結束が固まるどころか、ポーランドでは国粋派の躍進につながり大きく結束を揺るがすだろう。

    36
    • ななし
    • 2024年 2月 13日

    とはいえ、ウクライナが負けるとウクライナ難民が万人単位でポーランドを含む周辺国になだれ込むと言われてますから
    それをわかっててやってんのかな?と思うんですよね
    国境をガチガチに封鎖して難民を入れさせないつもりなのかもしれませんが

    5
      • 2024年 2月 13日

      確かフィンランドがロシアが中東とかの難民送りつけてるのを、国境バリケードとかで来ないようにしてましたっけ?
      まあ、ポーランドは前にベラルーシが中東からの難民を送り付けて、それを入れないと人権や人道に反してるとか言われて、難民を武器にされてた経験あるんですよね。

      まあ、フランスがEU抜けたイギリスに難民送り付けようとしてたりもあるし、来ても他のEU諸国に押し付ければ良いとか思ってるのでは?

      8
        • D-day
        • 2024年 2月 13日

        ポーランドは移民受け入れに抵抗が強いですし、移民にとっても魅力が高いわけではない。
        むしろポーランド人が移民して西側からうざがられています。
        以前にシリア難民が入った時に自国の通過(キャンプはさせた)を徒歩でさせ国境を解放してドイツに送り込む実績があります。
        だからドイツが難民来るぞ、のニュースでビビってるわけです。

        16
      • 歴史と貧困
      • 2024年 2月 13日

      >ウクライナが負けるとウクライナ難民が万人単位でポーランドを含む周辺国になだれ込むと言われてますから。
      問題は、既に社会の上下の相互不信が高まっていることです。
      「難民爆弾が嫌なら援助しろ」は、EU上層部やゼレンスキー政権にとって都合の良い主張。(客観的に考えても可能性の高い事実でしょうが)

      >それをわかっててやってんのかな?
      コロナ時も我慢を強いられ、結局約束された分配はまだ実施されない。
      NATOが支援すればロシアなど1年で倒せると豪語していたのに、倒せていないどころか劣勢。
      そうした経緯がある以上、「上に都合の良い話など信じられない、信じたくない」という感情論が爆発します。
      つまり、【お前たちの欺瞞の言葉など分かりたくもないわ!】が抗議側の意見でしょう。カトリック法王に抗議するプロテスタント暴動のように。

      16
      • 一般通過OSINT
      • 2024年 2月 13日

      > ウクライナが負けるとウクライナ難民が万人単位でポーランドを含む周辺国になだれ込む
      いざという時ポーランドの国家安全などの理由で無理やりでリヴィウでイドリブのようなバッファゾーンを作り出して難民を全部そこにぶち込めばいい、後に永遠に勝ち目のない終わりもない戦争という蟻地獄を作り上げれば途方暮れる難民も武器と殺人のスキルしか持たない惨敗兵も勝手に自滅するだけ、今のシリアで既にこの手段の有効性を示したからなぁ

      11
      • Easy
      • 2024年 2月 13日

      EUは良くも悪くも国境間の移動制限を非常にゆるやかにしているので。ポーランドに入ったウクライナ人は,より良い生活を求めてより金持ちの国、具体的にはドイツとかフランスに移動します。
      EUにとってウクライナ人は絶対的正義かつ善なる神聖不可侵の存在ですから、やってくるウクライナ人の群れを止める道義的理由はありませんね。
      我々日本人は、大変だなあ,と地球の反対側から傍観することしか出来ません。

      18
        • たむごん
        • 2024年 2月 13日

        仰る通りです。
        日本は、極東情勢が大変ですからね。

        人権先進国のEUが、地球の裏側で対応する事を、傍観するのが大事ですね。

        4
    • ab
    • 2024年 2月 13日

    毎回思うんだが、農産物の関税額なんて対ウクライナ支援総額からすれば多寡が知れているし支援効果なんてごく薄い
    そもそもこの話は「海路で農産物を輸出できなくなったウクライナへの支援」と考えるのが筋なのだから、EUを通過してEU域外へ輸出する際の支援があれば問題ないのではないのか、なぜこんな形で不和の種を撒くのか

    12
      • 歴史と貧困
      • 2024年 2月 13日

      一言で言えば、EUの中にもこれを機に儲けようと考える者達がいるため、でしょうね。

      江戸時代の 東北で冷害 ⇒ 江戸廻し米が不足 ⇒ 商人が農民の救荒用備蓄まで買い占め などに見られるように、仲買人など色々な思惑や利権が絡むのは世の常で。本当に苦しんでいる人達への支援は、いつも後回しです。

      8
        • クル
        • 2024年 2月 13日

        安い小麦を大量に仕入れるチャンスですからね
        アフリカとか中東より高く買うよって言えば輸送も短距離で安上がり、ウクライナの業者が断る理由はありません
        経済の混乱は立場の弱い東欧で売り捌いて押し付ければOK
        商売の筋と仁義さえ気にしなきゃこんな美味しい商売は無い
        売り得確定の転売商品が向こうから買ってくれって流れてくるようなもんです

        10
      • 古銭
      • 2024年 2月 13日

      金額だけ見ても今戦争でウクライナの総輸出に占める農産物の割合は増加して五割を超えていますし、産業,税収,従事者の生活(と大企業)等の維持まで考慮すると支援効果として小さくはないかと。

      域外への輸出に対する支援はただでさえ限界な中東欧諸国のインフラ負担を悪化させる上に支援額も膨大、そして支援(場合によっては戦後までも)がいつまで必要かわからず青天井となりかねないのも痛いところでしょう。実現に時間がかかるのもイメージ戦略として望ましくありません。
      対して域内への輸入で生まれる被害や補償も青天井ではありますが、割合で言えば苦しみの殆どを中東欧諸国が引き受ける上に西欧主要国は補償を行わないという手も選択可能です。事の終わりも中東欧諸国が実力行使したので本位ではないが、という形を取れるかもしれません。

      増加した輸送コストをEUが負担するというのは、現在のウクライナの農産物輸出において最も重要かつ効率的なドナウ川を使った場合でも戦前の黒海輸送と比べてコストが四倍以上かかることもある現状を考慮すると簡単なことではありません。それがいつまで必要かわからないとなれば猶更です。
      そして肝心のウクライナの側も、EU圏内で売った方が儲かる上に将来性もあるので一度権利を手に入れた以上手放したくはないでしょう。戦前からEUに対する関税、あるいは関税割当無しの輸出実現はウ国にとって最重要目標のひとつでした。

      9
    • 名無し
    • 2024年 2月 13日

    封鎖!封鎖解除!封鎖!
    ざっくり言うとこんな感じか…
    こいつらいっつも内輪で揉めてるな

    4
    • ab
    • 2024年 2月 13日

    こんな誰も得しない政策を継続するようなEUの意思決定システムが一番やべえわ

    24
      • kitty
      • 2024年 2月 13日

      「劣化ソ連」と言った人は冴えてたなあ。

      16
        • lang
        • 2024年 2月 13日

        EU&NATO=ソ連説

        加盟は自由意志のようですが、加盟すると抜けるのは難しい 抜けようとするとイギリスみたいに袋叩きで見せしめにするわけですね
        加盟国の権利を尊重とはいいますが、ウクライナ支援反対や難民の受け入れ反対で当選した代表がすぐ翻意するあたり、裏では経済的な脅迫で従わせようとするわけです

        集団安全保障とは聞こえがいいのですが、加盟国の主権はなくなり腐敗し国家としては弱体化していくわけです

        主権を失った国の国民はいったい誰が国のために命を賭けようと思うでしょうか?
        弱体化していくとさらにEUやNATOに依存するはめになるわけですね なんかもう手遅れ感でてますが・・・

        そもそもEUやNATOから見て国家主権って邪魔じゃないですか?いらないですよね?

        8
    • たむごん
    • 2024年 2月 13日

    ウクライナの金儲けを助けるのは、ビジネスの話ですからね。
    農民は被害者ですから、犠牲にされて、戦っているということでしょう。

    日本も、復興支援会議で、何兆円の負担を背負わせられるのか注目しています。
    永遠に戦争、永遠に金を要求されるのならば、無理に付き合う必要もないでしょう。

    6
      • lang
      • 2024年 2月 13日

      あんまり寄付を要求すると
      もうロシアに全部面倒見てもらおうってことでウクライナ併合を後押しすることになりそうです

      3
        • たむごん
        • 2024年 2月 13日

        ゼレンスキー大統領『クリミア奪還まで戦争』って言ってますからね。

        そこまで寄付をくれということでしょう…いつまでなんでしょうかね。

        1
    • 朴秀
    • 2024年 2月 13日

    というかこの件でゼレンスキーの動きが見えてきませんね
    今までのように向こうが折れて助けてくれるとでも考えているのでしょうか

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP