ドイツのキール世界経済研究所は7日「2023年8月~10月分のウクライナ支援額は過去最低だ」「昨年の同時期との比較で87%も減少した」「これ以上支援が遅れればプーチンの立場が強化されるのは明らかだ」と警告した。
参考:Ukraine Support Tracker: New aid drops to lowest level since January 2022
これ以上支援が遅れればプーチンの立場が強化されるのは明らか
民主党が支配していた下院は「使用用途を大統領に一任したウクライナ支援資金(通称:白紙の小切手)」として累計1,000億ドル以上を承認、この資金の範囲内でバイデン政権は議会承認を得ることなくウクライナ支援を自由に実行していたものの、下院の過半数は「もう白紙の小切手は認めない」と主張する共和党に移り、バイデン政権は夏頃から「ウクライナ支援資金の枯渇を見越した追加資金の獲得」に動いていたものの、今のところ追加資金の獲得は実現していない。
EUも新たなウクライナ支援資金を獲得するため「EUの通常予算内から500億ユーロの経済支援」と「予算外の資金=欧州平和ファシリティを活用した200億ユーロの軍事支援」を提案、来週開催されるEU首脳会議で取り上げられる予定だが、ハンガリーはウクライナに対する支援(経済支援だけは同意する可能性がある)もEU加盟協議の開始も阻止すると公言しているため、欧米は支援継続を裏付ける資金が確保出来ておらず、ウクライナも「手に入るかどうか分からない資金」を宛に2024年度予算を編成している。
ウクライナ政府は税収の全てを軍事分野の支出に割り当てているため、その他の支出は欧米や世界銀行からの支援や融資で賄われており、ゼレンスキー大統領も先月「もし社会保障への財政支援が途切れると我々は軍事分野の支出を減らすか、社会保障への支出を全く行わないかを選ぶしかない。いずれにせよ危機的状況に陥ることは確実で戦争の行方に大きく影響を及ぼすだろう」と述べたが、バイデン政権は「残り僅かな支援資金を節約するため1回あたりの支援規模を縮小している」と発言、キール世界経済研究所(IfW)も「2023年8月~10月分のウクライナ支援額は過去最低だ」と発表した。
2023年8月~10月分に約束されたウクライナ支援額は21億1,000万ユーロ(殆どが米国とEU以外からの支援)で、昨年の同時期との比較で87%も減少、IfWが追跡している42の支援国の中で8月~10月に支援を発表したのは20ヶ国に過ぎず、キール世界経済研究所は「ここ最近の数字が示すのは支援国の躊躇で、ウクライナはドイツ、米国、北欧諸国など支援を続ける少数の国に依存している。米国の継続支援が不透明なのでEUが500億ユーロの支援策を可決することに期待するしかない。これ以上支援が遅れればプーチンの立場が強化されるのは明らかだ」と警告している。
因みにキール世界経済研究所が「支援に積極的」と評価している欧州(NATO加盟国を含む)の国はクロアチア、フィンランド、ドイツ、アイルランド、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国、カナダの11ヶ国で、現在提供されているウクライナ支援について「その大部分は過去に約束された複数年にまたがる支援プログラムによるものだ(デンマーク、ドイツ、ノルウェーは過去に約束した複数年計画の一環として8月~10月に12億ユーロ、10億ユーロ、6.62億ユーロの軍事支援を提供)」とも指摘。
追記:西側諸国は2022年1月~2023年10月までに「約250億ユーロ相当の重装備提供」を約束し、そのうち米国分が43%、EU加盟国分が47%、残りの10%は英国、カナダ、オーストラリアなどからの支援だが、上位10ヶ国の軍事支援額(730億ユーロ以上)で見ると米国分が占める割合は58%でトップの地位を維持しているものの、急速に追い上げてきたドイツの支援額も170億ユーロを越えており、ウクライナに対する軍事支援の大部分を米独が提供している格好だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
仮に支援縮小による(軍事費の社会保障等への転用も経た)戦線後退や社会不安が顕著になった場合、予算委員会委員長を筆頭に与党や協力政党構成員の多くが(その他の支出への言及を避けつつ)”国家安全保障と防衛部門は国内収入のみで賄っている”などと国内向けに財政の健全性アピールをしている都合上、ウクライナ現政権は過去の発言を訂正して財政の実情を大衆の目に晒すか他者への責任転嫁の二択を求められるかもしれませんね。
2023年7月20日に、シュミハリ首相が15億ドル(2000億円超)の融資を受けると発表しており、日本が保証していますから実質的に肩代わりすることが確定ですね。
ウクライナの国別融資残高は把握していないのですが、日本が復興資金の融資を名目に保証するのであれば、債務整理を先にするのが道理なんですけどね(日本人向けの言い訳でしょうが…)。
日本国民は、復興支援の名目で債務保証を行うと国内向けに説明されてきましたが、梯子を外されています。
アメリカ・EUが、約束したものを支払わずに、世界銀行の融資枠を優先してドンドン使っていくことになるため、日本が肩代わりしてく金額がドンドン増えていく形になりそうです。
岸田首相が、6000億円超(45億ドル)の追加支援を発表していましたが、ここにも世界銀行向けの保証が含まれています。
ウクライナは、米国・EUから資金調達できないわけですから、世界銀行の融資枠を優先してドンドン使っていく、日本が肩代わ岸田首相が、45億ドルの追加支援を突然発表したのは、足りなくなることを見越してますね。
2兆円近い金額になりますから、『国会で』どこまで追い貸ししてくいのか・資金使途を追跡できているのか・汚職対策など、議論すべき内容なんですけどね…
>…ウクライナも「手に入るかどうか分からない資金」を宛に2024年度予算を編成している。
追記です。
すいません。
途中、並び替えたのですが、一部文章が残っていて分かりにくくなっています。
それどころか絶望的な戦況で徹底抗戦のゼレンスキーを強制的に下ろしかねないですね
それぐらいやりかねない 西側は ゴディンジエムみたいに殺害はされないでしょうけど
負けがほぼ確実なのでロシアに兵器を使うよりは、着服したほうがいいと思うでしょうから腐敗もさらに進む
ジャベリンとバイラクタル、市販改造ドローンでBTGと戦えって言われて頃よりはずっとよい条件なので抗戦を諦める状況でもない
第一次世界大戦の西部戦線の一日の死者は2000人
今後も死神の仕事が忙しくなりそうだ
「終わりの始まり」ではなく「終わり」だね、ウクライナは
ドイツ、DW紙によるとウクライナへの関心が4月の25%から9月には9%まで低下しているうえ、コロナ対策債の返済などが待つ今後の財政危機に備える必要があって債務が圧迫してる中、それでも今年支援を強める傾向にあったのはどういう後押しがあるんですかね。日本と同様の逆らえない立場なのか。単純に今年で紛争を終えるためにと反転攻勢に期待したのでしょうか。
そして英国…米国と並んで戦争を維持してきた国なのに額としては1割に満たないのは、相変わらずの言葉だけの国ですね…
経済対策などでもそうですが、世論(国民)が事実を認知する事・世論調査・政策実行、このそれぞれに、タイムラグがあります。
例えば、公共事業の実行がが不況時に間に合わず、既に景気回復した後で効果が小さくなる事が、よく問題になります)。
ドイツは、特にウクライナ戦争初期ヘルメット支援から、途中から武器支援に急旋回しました。
仰る通り、その逆に支援急減少が、有り得ると考えるべきと思います。
マスコミ報道(経済指標発表)
→国民が認知
→世論調査
→政府が意思決定